スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

「花弁散る彼の下で…」雑乱パロ第16話





 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




「整備は順調に進み、住民達も喜んでくれていますよ」


土地の視察から数日が経ち、漸く作業が安定したのを見計らい、昆奈門は単身でお乱の元へと訪れていた。


「今のところ食糧は配給してるし、水路が出来上がれば畑の収穫も望めるようになります」


昆奈門から村や里の報告を聞き、お乱の目に安堵の色が浮かぶ。


「良かった‥」


呟き、伏せた目を再び昆奈門へと上げた。


「本当は不安だったんです。
昆奈門様には失礼だと分かってはいましたけど、外のことは何一つ分からないのが恐くて‥」


申し訳なさそうに眉を歪めるお乱に、昆奈門はフフッと微笑む。


「信用と信頼は全く別ですからね、不安に思うのも仕方がない」


然程気にもしていない、といった感じの昆奈門だが


お乱は「それでも」と言葉を紡いでいく。


「私は昆奈門様に里の全てを託した身です。
ならば私は心の底から貴方を信頼し、一切疑ってはなりません。
それこそ全てを託した私自身を疑うというものですから」




余りの深刻そうなお乱の表情が痛々しくて、昆奈門は小さく溜息をついた。


「相当な生真面目の様だな、お乱殿は」


己よりも小柄な彼女の頭を優しく撫でながら、更に言葉を続ける。


「先程の言葉はまるで、夫への告白の様に聞こえてしまったのは私の気の所為‥なのかな?」


僅かに頬を染めて、恥じらう素振りを見せた昆奈門の姿に


今度はお乱の顔がボンッと音がしそうな程に一気に赤く染まった。


「こ、昆奈門様っ!?
私はそんなつもりはっ‥戯れはよして下さいっ」


「はははっ、その様に堅苦しく考えてしまうから、そう聞こえてしまうのですよ」


笑い声を漏らす昆奈門へ、からかわれたと気付いた彼女は羞恥で抗議の声を上げる。


「もぅ、昆奈門様ったら」


少し怒ったような表情を浮かべるお乱に、昆奈門は微笑んだ。


「失礼。
だが、貴女は悲しげな顔よりも今のように表情豊かな方が似合いますよ」


自身より遥かに年下である昆奈門にそう言われ、お乱の鼓動が大きく脈打つ。






「そんなことを言われたのは、初めてです」




漸く、昆奈門は彼女の笑った顔を見ることが出来たのだった。




[第一章]完
前の記事へ 次の記事へ