こんなものを見つけたよ。
話題:小説風日記
さらりとした質感が肌を撫でた。その途端、体全体にぱっと大きな花が咲く。
「これはどうかな?」
やや粗い生地の、大柄の花模様をあしらった布地をあてがって女性が言った。
ちょっと派手かな、と考えて、私は床に置かれた袴を指差す。
「あれに合わせてみたら、どうなりますか?」
側では友人が椅子に座り、鏡の中の私を覗き込んでいる。私たちは今、卒業式の着物を見にやってきているのだ。
私が指差したのはワイン色に白い小花を散らした袴だ。胸元から裾にいくにつれて徐々にワイン色が濃くなるグラデーションが美しく、一目惚れした。
「これにもきっと合いますよ」
そう言って、女性は大柄の花模様の着物にワイン色の袴を履かせてくれた。
「いいね!」
私の心の声を代弁するかのように、友人が声を上げた。
やや暗めの白地に、紅と白の線とで描かれた花が舞っている。鮮やかな上半身とは対照的に、透明な水面に一滴ずつ赤ワインを落としたような変化を見せる袴は、全体を上品に引き立てていた。
私が即決したのは言わずもがなである。
* * *
「ふ〜! 本日の目標達成!!」
店員の女性に見送られ、私と友人は店を後にした。本日の大きな課題が済んだことに、自然と私の肩から力が抜ける。
そのあとは、近場のファッションビルをふらつき、ウィンドウショッピングを楽しんだ。
アパートに向かうバスに揺られていると、友人が小さな袋からきらきら光るものを取り出した。
「それ、ピアス?」
ちがうよー、と笑って、友人はそれを耳につける。
「イヤリング。思い切って買っちゃった!」
アンティーク調のイヤリングだ。白い滴のモチーフが耳元で揺れている。それは、大人っぽい友人にとてもよく似合っていた。
「痛くない?」
「全然。つけてみる?」
片方のイヤリングが渡される。私はそれをまじまじと見つめた。
こんなに可愛いものが、私に似合うのだろうか。
自分には釣り合わないという気持ちと、耳に感じるであろう衝撃を覚悟して、初めてのイヤリングをつけてみた。
……。痛くは、ない。
耳に妙な重さを感じるだけで、耳の肉を挟む痛みは全くなかった。
「あ、ありがとう」
恥ずかしさが込み上げて、私はそれを早々に耳から外していた。
私と同じ歳の友人は、こんなものを当たり前のようにつけているのだろうか。
大人っぽい化粧に、髪はサイドを編み込み、残りを肩に流している。ロングスカートからは踵の高いヒールが覗く。そして、耳元で揺れるイヤリング。
同性ながら、魅力的だなぁと思う。と同時に、自分の素朴さに恥ずかしくなってしまったりもする。
私もいつか、堂々とイヤリングをする女性になるのだろうか。
そんなことをぼんやり思いながら、私はバスに揺られるのだった。
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要は一緒に着物見に行った友人が大人っぽいよねってことです。
あと着物いい感じの見つけたよってことです←