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P.S.13







『罰、ってさ』


『うん?』


『自分が自分に科す罰なんだけど』


『はいはい』


『期限をつけてもいいのかな?』


『ん〜……ゴメン。どういうこと?』


『えっと、ね。罰に満足して、気にしなくてもいいのかなって』


『……それって、フレイ』


『――やっぱり、好きって気持ちは止まらないのよね』








P.S.―ピーエス・13―







キラ君とラクスさんのささやかな幸せを打ち壊し、引き離してしまったアタシ自身の罰は、恋を凍結させることだった。




離れてもラクスさん一人を想いつづけるキラ君に、アタシは想いを深くしない。





何も進展させないことを選んだ。







そんなこと自己満足だってのは百も承知だ。








アタシがキラ君への想いを凍らせた所で、元に戻ることはない。





ラクスさんが流した涙も、キラ君が流した涙も、決して戻らない。



そんなことは初めから知ってる。




でも、例え知っていても、アタシは自身を罰しなくてはならなかった。









頭に焼き付いたラクスさんの悲鳴と泣き顔が、アタシを闇の淵へと落とすのだ。






そんなの堪えられなかった。





キラ君が好きで好きで、仕方なくて。


善悪の判断ができなかった。




未成年で駆け落ちしたのが悪い、悪いのはアタシじゃないという認識が、ミリアリアを止めなかった。










ラクスさんさえいなければ、キラ君だけだったなら。



キラ君はアタシを見てくれる。





そんな根拠のない考えに支配されていた。






ラクスさんがいなくなって、どうしようもない罪悪感に襲われたけれど、アタシは少し期待していた。






あんな悲痛な叫び声を上げていたラクスさんを頭の隅に追いやり、キラ君との関係の進展する可能性への期待。









そんなこと考えちゃ駄目なのに。


卑怯で醜い自分の心を見ない振りをして、アタシはキラ君を見守った。




傷ついている彼を、慰められるチャンスが巡ってくるかもしれないと期待して。





ミリアリアには、自分を追い詰めてるって言ったけど、それは半分が嘘だ。


後悔で罪悪感で追い詰めてたけど、半分は期待してた。






空白となった彼の隣に、自分がおさまることを。










そんな考えが直ぐに無駄だと思い知らされたのは、キラ君にラクスさんから電話があった時だ。




たった一度きりの電話。



何を話したのか。



内容は知らないけれど、電話を終えた時のキラ君の背中。









フラフラと一人出て行く姿に、アタシは何も言えなかった。後から気になり外に出てみれば、キラ君は空を見上げながら泣いていた。
あの綺麗な紫水晶の瞳から、いくつもの涙を流して。



隠そうともせず、拭おうともせず。



愛しい人の名を時折呟きながら。






あの姿にアタシは打ちのめされた。








改めて、彼の心を深く刔ったのが自分だということを知った。





二人を引き離した所で、彼の心に空白はできなかったのだ。
離れ離れになっても、傍にいなくても、想い続けてる。








アタシの期待は粉々に砕かれた。




もうそれは見事に。バラバラに。



本当はそこで諦めなきゃいけなかった。









でもアタシはこの想いを捨てることができなかった。







だからせめてもの罰として、彼を泣かしてしまった贖罪として、想いを深めもしないし告げないというの決めた。








アタシの決意は固かった。








でも、この間の、ラクスさんの誕生日の日のキラ君を見たら、その決意は綺麗さっぱり吹っ飛んだ。


どこまでも都合良い自分の頭を最低だと罵りながらも、アタシの凍結させていた想いは溶けて、また深くなり始めた。




あんなに傷ついている彼をほって置け、見守るだけにしろ、なんていうのがそもそも無理な話だ。



どう思われてもいい。





図々しい、図太い、最低女だって罵られても構わない。







アタシはキラ君が好きだ。



スッゴク、スッゴク。





ラクスさんの想いを聞いたことはないが、きっと負けないくらい好き。




頑固者と知られたアタシの決意を簡単に吹き飛ばしてしまうのだから。






アタシは彼に想いを告げる。




望みがなくても、構わない。



たった一人で涙を流させるくらいなら、気持ち悪いと思われても、アタシはあの人の隣にいたい。
震える背中を撫でて、抱きしめてあげたい。




彼の傷が少しでも癒えるなら、アタシは何度でも傷ついたって構わない。





アタシは、キラ君に、好きだ、と言おう。



もう止まらないんだから、仕方ない。







こうなりゃ自棄だ、開き直ってやる。










開き直って、潔く、告ってやる!







潔くフラれても、彼が、心から笑うまで、付き纏ってやる!












アタシは頑固者だ。



決めた。アタシはそう決めたんだ。






もう決めたッ。








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P.S.12






『……遠慮してるの?』


『うん』


『私はフレイが大切だから言ってるの。新しい恋もしないから、心配でっ』


『うん、知ってる。ありがと、ミリアリア』


『………いいの?』


『……うん』


『フレイっ』


『―――まだ、好きなの』








P.S.―ピーエス・12―







秋が終わった。


ラクスさんが連れ戻されて三ヶ月経ち、二月になった。






雪が積もり一面が銀世界。
山も白で染まっている。




あれからキラ君は普通だった。


何も変わらない。



普通に働いて、普通に暮らしてる。






あれ以来ラクスさんから連絡はない。
それを悲しむ様子はおくびにも出さず、過ごしているキラ君をただ見つめるのが苦しくてたまらない。
あんなことがあったから、私は、彼に対する想いが凍りついてしまった。







ミリアリアは想いを遂げればいい、と言ってくれたけど、そんな気持ちにはなれるわけがなかった。



キラ君のことは今でも好き。








でも、何もせず、黙って見つめることが、私の罰だと思っている。






駆け落ちまがいなことまでして、傍にいたかった二人を引き裂いたのは私だ。







後悔という言葉の意味を、初めて知った。
なかったことになればいいのに、と何度願ったか。
でも過ぎたことは変わらない。





ラクスさんはいなくなり、キラ君は独りになった。



















「あ」





「――おかえり、フレイちゃん」







学校の帰り道、積もった雪を避けながら歩いていると、偶然キラ君と鉢合わせた。





あれから私とキラ君は普通だ。




会えば話をするし、笑い合うこともある。






だからキラ君は、いつものように笑ってくれる。












「ただいま。どこか行くの?」






だから私も笑う。
キラ君が普通に振る舞うのなら、私も合わせて普通に。







「うん、コンビニにね。フレイちゃんも一緒に行く?」


「いいの?」


「行く?」





私は頷いた。
ラクスさんに対する罪悪感がドクンと自己主張したけど、でも、なんだか今のキラ君を一人にしておけないと、感じてしまった。






女の直感とはよく言ったものだ。






でも本当に、独りにしておけない。








だって、今日は。


今日は、ラクスさんの誕生日だもの。
















サクサクと雪を踏みながら、道中、私たちは当たり障りのない話をした。





学校の話、仕事の話。







「フレイちゃん寒くないの?そんなに足出してさぁ」





「それってセクハラ?」








女子高生の生足はブランドだ。
出せる時に出さなくて、いつ出すの。








「いや、でもやっぱり寒いでしょう?」


「…いいの!」







寒いけど、慣れれば気にならない。











「――ラクスさんの高校は長かった?」




「うーん。そうだね、ラクスのとこはお嬢様学校でワンピースタイプの制服だったし。生足は厳禁な校風って言ってたかな」








キラ君は今でも普通にラクスさんのことを話してくれる。自分から話すことはないけど、聞けば教えてくれる。










「ストッキングとか穿くの?めんどくさ」



「まあ萌えるけどね!剥いたりしたから」



「………………さいてー」










キラ君は変態だ。



ラクスさんに関してだけど。










「もう剥けないのかなぁ」





いつも、明るい声で話してくれるのに、今日はやっぱり違う。



なんか辛そう。












「……ラクスさんに、会いたい?」




いつもなら、こんなこと聞かない。



でも、今日ぐらい、キラ君は素直になってもいいと思った。




キラ君が甘えていいのは、ラクスさん。
でも今、彼女はいない。





何も進展させないのが罪だと思っていても、やっぱり私は性格が悪いから。




キラ君に甘えてほしいと思ってしまった。














「――うん。すごく」





キラ君は一瞬驚いていたけど、すぐに目を細めて穏やかに笑った。




ラクスさんだけに見せていた、特別の笑顔。



見えないラクスさんを想っていることなんて直ぐにわかった。
私の気持ちを知っていても、ラクスさんへの想いを隠さないキラ君は酷いとも思ったけど、とても誠実だと思う。












「だって、彼女、寂しがり屋だから」








私は知ってるわ。




貴方も寂しがり屋だって。







「……そっか」




「うん」









キラ君は優しい。









元気だして欲しいと、握った手を、振りほどくことはないのだから。







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P.S.11







『ご、ごめッ――!!』



『まさか!フレイ、オマエが連絡したのか』





P.S.―ピーエス・11―





「だって……!!」




パパはアタシの肩を掴んで聞いてきた。


アタシは頷くしかできなかった。肩を掴むパパの腕の力が抜け、やがて離れた。





「どうしてそんなことっ!!!」




あまり聞かないパパが怒った声。



その声を聞いてると、本当に起こってしまったて実感がわいた。






「あ、アタシ!!キラ君が、好きでッ!!っそ、それで!!!」







ぽろぽろ涙が零れて止まらなかった。


足の力が抜けて、アタシは地面にへたりこんだ。






「ごめんなさいっ、ごめんなさいッッ!!」




泣き叫んで、化粧とかもぐちゃぐちゃ。



でも、そんなことを気にしている余裕もなくて。アタシはただ、謝ることしか頭になかった。






「も、う。いい――――」




ずっと沈黙を守っていたキラ君だったけれど、小さく呟いてアタシの腕を引き上げた。






「キラく「もう、泣かれるのはたくさんだ」









―――――――――――

――――――






ラクスさんが連れ戻されて、一週間が経ったが何も連絡はない。キラ君は、何事もなかったように振る舞っていて、アタシは不思議でならない。もっとあからさまに落ち込んでくるかと思ったのに。





あの夜のことは、ミリアリアに報告した。







アタシの我が儘でミリアリアを巻き込んでしまったのは事実で、ミリアリア自身も知りたがっていた。

だからアタシは、包み隠さずあった事を全て話した。








「うっ、そー…。ご、ごめんフレイ。そこまで、ヤバイなんて思わなかったから」





「ううん。謝んないで、アタシが悪いんだからさ」






ミリアリアはアタシの為を思ってやってくれただけ。止めなかったアタシが悪い。







「…ね、フレイ。気になるから一応言っとくケド。あまり自分を追い詰めないで。どうせ、傷つくだけだよ――」





「ん、ありがと…」




心配かけて、ごめん。



でも、自分を追い詰めることでしか二人への償いができないのよ。








○●○●○●○●○




あのことがあって以来、店には入りにくくなった。でもキラ君の様子が気になって仕方なくて、そぉーっと覗いた。



キラ君はちゃんと仕事していた。特に変わった所はない。それどころか、めちゃめちゃハイテンションだ。





心配して、損したかも…って思うくらいにキラ君は本当に元気そうだった。





アタシは少しホッとした。でも、その日の夜にラクスさんから電話があった。








アタシは直ぐにキラ君を呼びに行った。



キラ君は慌てて、電話をとった。







「…も、しもし―――」




〔き、ら。お元気…でし、て?〕





「……うん。元気だよ」







キラ君は凄く優しい声で話してた。



会話聞こえないけれど、相手がラクスさんだということは分かった。







〔わ、わたくし――また高校に通うことになりました〕





「……うん」




〔だから、……だから――〕



「…ら、くす?」





〔………キラは、キラで頑‥張って〕




「…ラクっ」





〔さ、よなら―――プッ〕









カチャン。




「……キラく、ん?」





電話を切ったキラ君は、無言のまま家から出てしまった。何があったの?





聞きたかったけど、聞きにくい雰囲気が漂っていた。





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P.S.10



P.S.―ピーエス・10―






キキィーッと、タイヤのゴムの音と眩しいライトが駐車場に響く。

このタイミングで、この駐車場に止まるのはラクスさんの両親しかいない。







もう間に合わないと、分かってはいるがアタシは叫ばずにはいられなかった。











「逃げてーッ!!早く、早ッッ」




嗚咽が込み上げてきて、ちゃんと言葉が出せなかった。


キラ君やラクスさんは、意味が分かっていないらしく車からアタシを遠ざけようとしてくれていた。







「フレイさん、車がッ。危ないですっ」



そんなの、どうでも良いから――ッ!







「逃げ「……ラクスッッ!!!」




アタシの声は、後ろから聞こえた声に遮られた。瞬時に、アタシの体から血がひいていくような気がした。













「……ッ、お父さっ――!!」





ラクスさんの瞳も、驚愕に見開かれ真っ青になってカタカタ震えていた。

隣にいるキラ君も、目を見開いて固まっている。






もう目の前が真っ暗になって、何も考えられかった。次に気付いた時は、骨が軋むような音がしていた。






そして、ラクスさんの甲高い、悲鳴。








「いやっーーー!!キラッ」





キラ君は、ラクスさんの父親らしき人に頬を撲られていた。
キラ君は地面に倒れ込んで、口の端から血が出ていた。










「この、不良がぁっ!」




「止めてッ、お父様!!わたくしが悪いのですっ。わたくしから家を出たいって言ったのですからっ!!」




泣きながら、ラクスさんはお父さんに必死になって言いかけている。
すると、今度は車からラクスさんの母親だろうか、
女性が出て来て、ラクスさんの肩を掴んだ。








「いい加減、目を覚ましなさい!ラクス。貴女は聡明な子なのだから分かるでしょう?」




「わたくしは間違ってなどいませんっ!!お母様たちは、どうしていつも決めつけるんですかッッ!!」







ラクスさんは頭をフルフルと振って、母親に訴えている。だが、アタシから見てもラクスさんの両親は聞こうとしていない。



大声で騒いでいるせいか、パパたちも駆け付けて来た。


ママが、泣いているアタシに気付いたのか抱きしめてくれたけど、涙は止まらなかった。










「な、なんだこの騒ぎはっ…」


「なんか、クラインさんのご両親らしいっすよ」




状況を理解しているスタッフさんが、パパに言ってくれている。パパは、うげって顔をしていた。





「さぁ、帰るのよ!!」



「離してッッー!!」





ラクスさんの母親は、無理矢理ラクスさんを車の中に押し込んでいる。


そんな時、黙っていたキラ君が動いた。


キラ君がラクスさんの父親の肩を掴み、振り向いた所でその頬におもいっきり腕を振って殴っていた。









―――――バキィッ…!





「ヤマトッ!!殴ったら、ヤバイだろ」




パパが慌ててキラ君を止めに入った。
パパの言葉をキラ君はまったく聞かず、ラクスさんの父親に叫んだ。








「っ、なんで…!なんでいつも、話を聞いてくれないんだよっ!!今までだって、一度もッッ!!」



「あなたの言うことなんて、聞く必要はないですっ」




「キラァッッーー!!!」




車からラクスさんが身を乗り出して、キラ君の名前を叫んでいた。でも、ラクスさんの母親が押さえていて車から降りれない。






「この野蛮人っ!二度と娘には近づかないでッッ!!」



「やめて、やめて!!キラァーーッ!」






ラクスさんの悲鳴は、すごく哀しく響いた。








そのまま、車は何処かへ行ってしまった。







アタシは、こんなことを望んだわけじゃなかったのにッ――――!!!






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P.S.9





『それから、わたくしはキラと会うのを禁止されてしまったのですわ。どこへ行くにも、誰かがついて来て…』



『こう見えても、ラクスは名家のお嬢様なんだよ?だからお付きとかがベッタリ』






『…ぅわ』


『お付きだなんて…欝陶しいだけでしたわ。――――わたくしはキラに逢いたくて、家を抜け出していました。そうしたら、ついに外出禁止…になってしまいました』






P.S.―ピーエス・9―





キラ君とラクスさんから語られる、昔話。


ラクスさんの丁寧な口調とか柔らかな物腰とか、お嬢様っぽさは前から感じていたけれど、やっぱり、名家なお嬢様だったんだ。




ラクスさんの話しを聞いていると、ラクスさんのご両親は相当キラ君は嫌われているらしい。


外出禁止とか、有り得ない。






「いくら、話しても父や母は耳を傾けては下さいませんでした。キラだって、何度もお家に謝りに来て下さったのに………」


「そしたら、ラクスのお父さんに殴られちったの」




ブンと、キラ君は軽く腕を振った。ラクスさんも隣で暗い表情で苦笑いをしていた。






「お父様には、百回くらいは―…殴られましたわよね?」



「んー?千回かな…」




小さく笑いを零して言うキラ君。


ラクスさんは傷があるわけではないのに、頬を優しく撫でていた。キラ君もそれを甘受けしている。






そうこうしているうちに、コンビニについてしまった。いつも長く感じていたのにキラ君たちに話しを聞いていたら速く感じる。




それほどキラ君たちの話しに聴き入っていたということが、わかる。



そこで、話しは中断された。









コンビニでは、夏の売れ残りの花火が安くなっていてラクスさんは、キラキラとした瞳でキラ君の所に持っていていた。

どうやら、キラ君に花火を買ってと言っているようだ。




普段も黙っているだけで綺麗だけれど、時々見せる表情は可愛い。

いろいろな面で、アタシはラクスさんには勝てないと思う。








キラ君も口に出さないだけで、ラクスさんにベタボレだし。眼を見れば、一目瞭然。



めろめろビーム(?)みたいなのが、始終キラ君からラクスさんに向かって出てるし。





こっちが、恥ずかしいくらいに。









コンビニでは、ラクスさんの花火とお菓子と飲み物を少し買って出た。

ラクスさんは、コンビニにいる間ずっと楽しそうにしていた。帰路についている途中、ラクスさんに聞いたらコンビニは初めて来たらしい。



そこまでのお嬢様なのか……と、アタシは結構驚いた。






なんだか、本当の箱入り娘って感じ。


きっと、ご両親に蝶よ花よと大事に大事に育てられてきたんだろう。








家につけば、お店の駐車場で花火をすることになった。ラクスさんに花火のことを聞いたら、やっぱり初体験らしい。






ラクスさんはすごくウキウキとした、表情でバケツに水を容れに行ったキラ君の方向を落ち着きなく見ていた。


キラ君がバケツを持って来ると、花火に火をつけた。


色が変わったりするやつとか、いろいろやった。ラクスさんは一つ一つに、感嘆していて正直…ものすごく可愛い。





花火の僅かな明かりでキラ君とラクスさんの横顔を覗いた。その表情は、とっても幸せそうで穏やかだった。その表情を見た途端に、消えかかっていた罪悪感が襲ってきた。







すっかり忘れてた、アタシはラクスさんの家に此処の場所を言ってしまったんだ。








キラ君とラクスさんは、ほんの小さな幸せを望んでいるだけなのに。



どうして、それがアタシには分かんなかったのッッ?!!



電話したのは、夕になる前。今は、10時を過ぎている。もし、あの後直ぐにこっちへ向かって来ているとしたら………!







サァーっと血の気がひいていくような、気がした。今になって、やってしまったことの罪に気付くなんて……!!!










「ぁ…!っ、に‥‥げ―――」






カタカタと唇を震わしながら、必死に言葉を紡ぐ。でも、言葉になんなくて。


キラ君とラクスさんも、様子が可笑しいアタシに首を傾げている。喉の奥から必死に声を絞り出して、アタシはキラ君とラクスさんに叫んだ。











「お願いッッ!!速く逃げて、キラ君ラクスさん――!!!」








アタシの叫びが終わった後、駐車場に一台の車が荒々しく入って来た。








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