『ご、ごめッ――!!』
『まさか!フレイ、オマエが連絡したのか』
P.S.―ピーエス・11―
「だって……!!」
パパはアタシの肩を掴んで聞いてきた。
アタシは頷くしかできなかった。肩を掴むパパの腕の力が抜け、やがて離れた。
「どうしてそんなことっ!!!」
あまり聞かないパパが怒った声。
その声を聞いてると、本当に起こってしまったて実感がわいた。
「あ、アタシ!!キラ君が、好きでッ!!っそ、それで!!!」
ぽろぽろ涙が零れて止まらなかった。
足の力が抜けて、アタシは地面にへたりこんだ。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいッッ!!」
泣き叫んで、化粧とかもぐちゃぐちゃ。
でも、そんなことを気にしている余裕もなくて。アタシはただ、謝ることしか頭になかった。
「も、う。いい――――」
ずっと沈黙を守っていたキラ君だったけれど、小さく呟いてアタシの腕を引き上げた。
「キラく「もう、泣かれるのはたくさんだ」
―――――――――――
――――――
ラクスさんが連れ戻されて、一週間が経ったが何も連絡はない。キラ君は、何事もなかったように振る舞っていて、アタシは不思議でならない。もっとあからさまに落ち込んでくるかと思ったのに。
あの夜のことは、ミリアリアに報告した。
アタシの我が儘でミリアリアを巻き込んでしまったのは事実で、ミリアリア自身も知りたがっていた。
だからアタシは、包み隠さずあった事を全て話した。
「うっ、そー…。ご、ごめんフレイ。そこまで、ヤバイなんて思わなかったから」
「ううん。謝んないで、アタシが悪いんだからさ」
ミリアリアはアタシの為を思ってやってくれただけ。止めなかったアタシが悪い。
「…ね、フレイ。気になるから一応言っとくケド。あまり自分を追い詰めないで。どうせ、傷つくだけだよ――」
「ん、ありがと…」
心配かけて、ごめん。
でも、自分を追い詰めることでしか二人への償いができないのよ。
○●○●○●○●○
あのことがあって以来、店には入りにくくなった。でもキラ君の様子が気になって仕方なくて、そぉーっと覗いた。
キラ君はちゃんと仕事していた。特に変わった所はない。それどころか、めちゃめちゃハイテンションだ。
心配して、損したかも…って思うくらいにキラ君は本当に元気そうだった。
アタシは少しホッとした。でも、その日の夜にラクスさんから電話があった。
アタシは直ぐにキラ君を呼びに行った。
キラ君は慌てて、電話をとった。
「…も、しもし―――」
〔き、ら。お元気…でし、て?〕
「……うん。元気だよ」
キラ君は凄く優しい声で話してた。
会話聞こえないけれど、相手がラクスさんだということは分かった。
〔わ、わたくし――また高校に通うことになりました〕
「……うん」
〔だから、……だから――〕
「…ら、くす?」
〔………キラは、キラで頑‥張って〕
「…ラクっ」
〔さ、よなら―――プッ〕
カチャン。
「……キラく、ん?」
電話を切ったキラ君は、無言のまま家から出てしまった。何があったの?
聞きたかったけど、聞きにくい雰囲気が漂っていた。
NEXT
P.S.―ピーエス・10―
キキィーッと、タイヤのゴムの音と眩しいライトが駐車場に響く。
このタイミングで、この駐車場に止まるのはラクスさんの両親しかいない。
もう間に合わないと、分かってはいるがアタシは叫ばずにはいられなかった。
「逃げてーッ!!早く、早ッッ」
嗚咽が込み上げてきて、ちゃんと言葉が出せなかった。
キラ君やラクスさんは、意味が分かっていないらしく車からアタシを遠ざけようとしてくれていた。
「フレイさん、車がッ。危ないですっ」
そんなの、どうでも良いから――ッ!
「逃げ「……ラクスッッ!!!」
アタシの声は、後ろから聞こえた声に遮られた。瞬時に、アタシの体から血がひいていくような気がした。
「……ッ、お父さっ――!!」
ラクスさんの瞳も、驚愕に見開かれ真っ青になってカタカタ震えていた。
隣にいるキラ君も、目を見開いて固まっている。
もう目の前が真っ暗になって、何も考えられかった。次に気付いた時は、骨が軋むような音がしていた。
そして、ラクスさんの甲高い、悲鳴。
「いやっーーー!!キラッ」
キラ君は、ラクスさんの父親らしき人に頬を撲られていた。
キラ君は地面に倒れ込んで、口の端から血が出ていた。
「この、不良がぁっ!」
「止めてッ、お父様!!わたくしが悪いのですっ。わたくしから家を出たいって言ったのですからっ!!」
泣きながら、ラクスさんはお父さんに必死になって言いかけている。
すると、今度は車からラクスさんの母親だろうか、女性が出て来て、ラクスさんの肩を掴んだ。
「いい加減、目を覚ましなさい!ラクス。貴女は聡明な子なのだから分かるでしょう?」
「わたくしは間違ってなどいませんっ!!お母様たちは、どうしていつも決めつけるんですかッッ!!」
ラクスさんは頭をフルフルと振って、母親に訴えている。だが、アタシから見てもラクスさんの両親は聞こうとしていない。
大声で騒いでいるせいか、パパたちも駆け付けて来た。
ママが、泣いているアタシに気付いたのか抱きしめてくれたけど、涙は止まらなかった。
「な、なんだこの騒ぎはっ…」
「なんか、クラインさんのご両親らしいっすよ」
状況を理解しているスタッフさんが、パパに言ってくれている。パパは、うげって顔をしていた。
「さぁ、帰るのよ!!」
「離してッッー!!」
ラクスさんの母親は、無理矢理ラクスさんを車の中に押し込んでいる。
そんな時、黙っていたキラ君が動いた。
キラ君がラクスさんの父親の肩を掴み、振り向いた所でその頬におもいっきり腕を振って殴っていた。
―――――バキィッ…!
「ヤマトッ!!殴ったら、ヤバイだろ」
パパが慌ててキラ君を止めに入った。
パパの言葉をキラ君はまったく聞かず、ラクスさんの父親に叫んだ。
「っ、なんで…!なんでいつも、話を聞いてくれないんだよっ!!今までだって、一度もッッ!!」
「あなたの言うことなんて、聞く必要はないですっ」
「キラァッッーー!!!」
車からラクスさんが身を乗り出して、キラ君の名前を叫んでいた。でも、ラクスさんの母親が押さえていて車から降りれない。
「この野蛮人っ!二度と娘には近づかないでッッ!!」
「やめて、やめて!!キラァーーッ!」
ラクスさんの悲鳴は、すごく哀しく響いた。
そのまま、車は何処かへ行ってしまった。
アタシは、こんなことを望んだわけじゃなかったのにッ――――!!!
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