※性描写有りの為ご注意。
傍にいさせてほしいと言った。
もう近くにいるだろうと返された。
貴方が好きですと言った。
私は愛してる、と貴方は答えた。
虚像だけの愛に僕は騙されたフリをしながら、今までずっと貴方の隣りにいさせてもらっていた。ただ、馬鹿みたいにずっと笑っているだけで、貴方は僕を見てくれるから。
視線に込められた哀れみや蔑みに、気付かなかった訳ではない。時には怒りや憎しみがない混じるその瞳は、背筋が凍る程、怖かったけど、同時にとても綺麗だった。
時たま気が向いた時にだけ与えられる、ほんの少しの愛情に満たされている自分のなんと愚かなことか。
触れてもらえるがだけの理由で、獣染みた性交に溺れる自分のなんと惨めなことか。
ただの性欲処理の為に、自分勝手に抱かれるというのは、決して嬉しくなんかない。何の前触れもなしに押し倒されて、僕の気持ちも関係なしに身体を求められるのは、何処かを確実に破壊しつつあるのに、拒む事すら知らないかのように受け入れていた。
今日も今日とで始まった淫らな夜宴。貴方の指先が滑る度に身体は熱くなるけど、それと比例するように心は冷めていく。
「………っ、ん…ぅ」
「声は抑えなくていい。聞かせなさい」
的確にかつ事務的な動きで、僕の熱を引き出す貴方の手が恐くて今すぐ引き剥がしたいのに、そうすることが出来ない。愛撫する手の温かさに、触れる体温の冷たさに、訳も分からず混乱しそうになる。
胸の頂きを強く摘まれた瞬間に走った鋭い痛みに、声をあげると貴方は酷くいやらしい笑みを浮かべた。
「君の身体はなかなか面白い。痛みさえも快楽になるみたいだな」
「ちが……や、…あっ!」
「素直になれば、よくして差し上げるものを」
身を包む衣服を切り裂くようにして剥がされ、生まれたままの姿にさせられた所でベッドに身体を押し付けられる。大きく開かされた足の付け根が外れそうだ。
自分の恥ずかしい部位を惜しげもなく晒すのは流石に戸惑われ、身を捩って体勢を立て直そうとしたのを彼はどう捉えたのか。余計に力強く押さえられ、身動きができなくなってしまった。
突如、下半身に伸びた手が頭をもたげ始めている自身をするりと撫で上げ、先走りを拭い、そのまま後孔の方へと滑らせた。男を受け入れたことがあっても尚、そこは固く閉じていて、指一本さえ入りそうにない。
なのに彼はそれに構うことなく、愛液で濡れた指をまとめて押し込んできた。
「いっ…、あ、くっ…!」
「もっと力を抜きなさい」
「や…、痛っ…ぁ…」
彼は深く溜め息をつくと、きつい中を割り開くように指で内壁を擦ったり、引っ掻いたりした。繋がることだけを考えられた乱暴な行為に身体は悲鳴をあげていたけど、さして気にする事もなく、入れていた指を抜かれ、代わりに猛った熱いものをあてがわれる。
それが何なのかなんて確認しなくても分かった。僕は先の痛みを予想して首を横に振り、必死に拒否した。
「嫌…、待って…、………あぁッ!!」
制止の声も無視され、押し入ってきた熱に叫びそうになる。身を裂かれるような激痛に呼吸が上手く出来ない。
十分にほぐしてもいないのに、大きく獰猛な彼自身を挿れられて、痛みに涙が溢れた。
馴染むのも待たないまま開始された律動に息が詰まる。ぼやけた視界の中、口端を吊り上げて笑う貴方が映った。
「…っ、やはりきついな…」
「いやぁ…、あっ、はぁ!」
激しく揺さぶられるがままに僕の身体も上下する。何度もシーツと擦れた背中が、摩擦によりヒリヒリとしたけど、それ以上に無理矢理開かされた秘部が裂けて痛い。
流れ出た生暖かい血が滑りをよくしているけど、襲いくる圧迫感だけは消えそうにもない。
「ひぁ、あ、あぁ…や、め…!」
「冗談を。こうされるのが好きなんだろう?もっといい声で鳴いてみせなさい」
「ひっ…ああっ!」
突き上げては、引き抜きを繰り返し、気儘な動きをもって僕を翻弄する。これは既に愛し合う者同士がお互いを確認する行為なんかじゃない。相手を蹂躙し、力で捩じ伏せる強姦だ。
意識さえも朦朧とし、もう何がなんだか分からなくなってきた頃、頭を掠めていくものがあった。それは陽炎のようにゆらゆらと不確かな姿で表れていたが、僕にはなんだかはっきりと分かる。自分が唯一、心を寄り添える人の影。
心から大好きだと、思える人。手を伸ばせば握り返してくれる掌の温かさも、自分を見て柔らかく微笑んでくれる優しさも。全てが愛しかった。
なのに、なんで僕はここにいる?本当に大切なものを手放してまで、何故この手はこの人を選んでしまった?全部、僕の弱さが導いた結果なのだと分かっている。
でも、助けてほしかった。抱き締めてほしかった。あの凛とした穏やかな声で、名前を呼んでほしかった。
「……ユ…、リ…っ、…ユーリ…」
堪らず口にしてしまってから、ハッとした。急に現実に戻った脳が弁解の言葉を指令するより早く、頬に衝撃が走る。殴られたのだと理解するまでそう時間はかからなかった。
恐る恐る見上げれば、目を細めて見つめてくる絶対零度の瞳が自分を見下ろしている。
「今、私を誰と勘違いした?」
「ぁ……、」
「あの薄汚い青年と?笑わせてくれるじゃないか」
「…団長…っ、ひ、やあぁっ!」
途端、開始された律動は僕に痛みと快楽をもたらす。抉るように何回も突き上げられ、もう局部は麻痺してしまっている。
動きに合わせて、彼の顔の横で揺れる自分の足が宙を蹴る。無我夢中にシーツを掻き寄せ、力強く掴んでみるが衝撃はやり過ごせない。零れ出る嬌声も今はもう掠れてしまった。
より荒々しくなる上下運動に息も跡絶え跡絶えになってきた頃、最奥に温かいものが流し込まれた。どうやら彼は達したらしく、やっと終わりの見えた行為に安堵する。ベッドに投げ出された四股を動かすことさえ困難な程、体力の消耗が激しかった。
「まさかこれでお終いではなかろうな」
「ぇ…」
「夜は長い。壊れるまで抱いてやろう」
告げられた言葉は死刑宣告にも近い響きで、僕に絶望をもたらした。ケタケタと笑う声が耳に纏りつく。
逃げをうつ腰を掴まれ、容易く押さえられてしまった。再び内部を侵略するものに今度こそ消せなかった悲鳴をあげ、全力で嫌がっても、彼はただ楽しそうに笑うだけで、何も状況は変わらなかった。
「や……あぁ、ん!」
「実に面白いものが手に入ったものだ…なぁ、フレン・シーフォ?」
「あっ…団長、…ひぁ…」
「愛してるよ、フレン」
「……っ、…ぁ」
獣のような狂宴は、それから夜が明けるまで続けられた。
僕が聞いたあの言葉が嘘か本当かなんて確かめることもないまま、ただ僕らは身体を重ねていた。
何が正しいとか、何が正義だとか考えることなく、この手を取っていたのは確かに自分で。
本当は理解していたのに、目を背けていた。自分の信じた者はおかしいと、間違っていると気付いていたのに。
始めはただ、一人で全部を背負おうとする彼を助けたかっただけだった。力になりたかった。
なのに、いつから歪んでしまったのだろう。こんな無意味な愛を交わしてまで、手に入れたものはなんだったのだろう。失ったものが大きくて、もう分からないよ。
でも、まだここにあるんだ、今更かもしれない。だけど、伝えたいよ。
…ユーリのことが大好きなんだって。
こんな風に、胸中だけに止めて、現実から背を向ける僕はなんて狡いんだろうと思う。
許してほしいとは言わないから、だから。
次に会った時に、その声で名前を呼んでほしい。
漠然と、それだけを願った。
○後書き○
あれ〜?やっぱりアレフレなのにユリフレになってしまいますねぇ…。何故と言わずとも分かっています。私がユリフレ信者だからです!!(どーん)
微妙な鬼畜風味なアレフレでした!しかも裏だなんて、マイナー街道まっしぐらですね(笑)
ここまでお付き合いしてくださった方、ありがとうございます!