フレンが変態のアブノーマル道具プレイです。ユーリはかなり酷い目に遭います。駄目な方は閲覧をお控え下さい!大丈夫な方だけどうぞ!











もしも、今まで生きてきた中で「最悪な日」を言え、と言われたなら。

間違いなく、「今日」だと答えるだろう。






「…何の真似だ」


紫水晶の瞳にはっきりと怒りの色を浮かべ、その青年は目の前に佇む男を睨みつけていた。

今は激しい怒りに歪んでいるが、すっきりと整った美しい顔立ち。
濡れ羽色の髪は腰まで届き、白い肌をより一層引き立てている。
その容姿は一見、女性と見間違うほどだが、今は彼の性別を見誤る者は皆無だろう。

彼は衣服を一切、身につけていなかった。

膨らみのない平坦な胸も、下腹部の茂みの下から覗く性器も、間違いなく男性のものだ。

彼は豪奢なベッドの上で上半身を起こしたまま身じろぎひとつせず、相変わらず視線を目の前の人物から外そうとしない。
できることなら今すぐにでも飛び掛かって殴ってやりたかったが、彼にはそれができなかった。
目の前の男が友人だから、ではない。

彼の両手首は、後ろ手にしっかりと縛られていた。

脚は拘束されていない。
だが圧倒的に不利な体勢で、しかも相手の考えが全く分からない以上、その暴力的衝動を抑えるしかなかった。


「そんな顔で睨まないでくれ、ユーリ」


彼―――ユーリの前に立つ青年は、少しだけ申し訳なさそうに眉を寄せたが、すぐに普段通りの笑顔を見せ、ユーリに一歩近づく。


「寄るんじゃねえ。何の真似か、って聞いてんだ。…答えろ、フレン」

フレンと呼ばれた青年は、ふう、と小さく息を吐いて動きを止め、ユーリに答えた。

「新しい治療法を試すのに、君にも協力してもらおうと思って」

「治療法、だと?」

「ああ。魔導器が使えなくなって、治癒術士は大変なんだ。もう一度医療の勉強をしなおしたり、外科手術の技術を習得しなければならなかったり。僕も彼らと共に勉強してる」

手術、という単語にユーリは微かに戦慄した。こいつはさっき、自分に向かって「治療法」に協力しろ、と言わなかったか。

「…オレで人体実験しようってのか?はっ、なるほどな」

所詮自分は犯罪者だ。自分一人消したところでどうとでもごまかしがきく。ユーリはそう考えた。だが、

「人体実験だなんて、人聞きの悪いこと言わないでくれ。僕はただ、座学で得た知識を確認したいだけなんだ」

実験には変わりないじゃねえか、と心の中で悪態をつきながら、ユーリは忌々しげにフレンを睨んだ。

「ふん。切り刻もうってんじゃないなら、なんでオレは素っぱだかにされてんだ?」

「そりゃあ、服を着たままだと汚れてしまうからね」

「……何にだよ」

血でなければ何に汚れるというのか。
ユーリの疑問に答えず、フレンは傍らのテーブルに置かれた箱の中から何やら道具を取り出した。
半透明の細長い管のようなものがついている。

「ユーリ、これが何だか知ってるかい?」

もとより医学の知識などない。そのような道具も見たことはなかった。

「…さあな」

投げやりに答えたユーリに、フレンは丁寧に説明し始めた。

「これはね、一人で用を足すことが困難な人のための道具なんだ」

「は?用を…なに?」

予想外の答えに、ユーリは自らの心臓が騒ぎ出すのを感じていた。もはや嫌な予感しかしない。

「自分で歩くことができなかったり、力を入れることができなかったり…あとは、病気や怪我で絶対安静の人のトイレの介助に使うんだよ」

「おま、…まさかそれ、トイレ、って…」

細長い管を揺らしながら、フレンが微笑んだ。

「そう。この管を『入れて』、中に溜まったおしっこを抜いてあげるんだ。立派な医療行為の一環だよ」

「……………!!」

『どこに』『何を』されるのかを理解して、ユーリは全身に氷水を浴びたような感覚に陥った。


「な…、ふざけんな!なんでオレにそんなことする必要があんだよ!?」

両脚を固く閉じ、不自由な腕をよじって必死でベッドの上で後ずさる。
そのような行為をされる理由がない以上、ある意味身体を傷付けられるよりも恐怖を感じていた。
そんなユーリの様子には構わず、フレンは道具の入った箱をテーブルごと引き寄せた。ベッドの上からすぐに手が届くようにだろう。
と、次の瞬間フレンの手がユーリの足首を掴んで思いきり引いた。
ユーリは小さく悲鳴を上げてシーツの上に仰向けに転がされ、間髪入れずにフレンがその身体にのしかかる。
そのまま掌でユーリの頬をいとおしげに包み、鼻先が触れるか触れないかの距離まで顔が寄せられる。
切なげなため息がユーリの唇を撫でたが、それはユーリの全身を粟立たせただけだった。

「ユーリにもしものことがあった時のためだよ」

「…っ、な、…!?」

「ユーリの面倒を見るのは僕だけだ。他の誰かにこんなことをさせるなんて絶対に嫌だからね」

にっこりと笑うその瞳に、ユーリは僅かな狂気を感じて当惑した。
もし将来そういう事になって誰かの助けが必要になるとしても、今こんなことをされるいわれはない。

「あくまでも人助けだってんなら、実際に今それが必要なやつにしてやったらいいじゃねえか…!」

するとフレンは不快感もあらわに、ユーリの頬を包む掌に力を込めた。
ユーリの身体が小さく揺れる。

「僕は医者じゃないし、他人にこんな事はできないよ。ユーリ以外の誰かのものなんて、触りたくもない」

仄暗い光を宿した空色の瞳に見つめられながら、ユーリは心底憤っていた。

何が立派な医療行為だ。
患者の選り好みなど、言語道断だ。
人助けが聞いて呆れる。
土下座して医者に謝れ。

「オレだって所詮他人だろうが。そこまでしてもらう理由もねえな」

精一杯の拒絶だったのだが、フレンは少し目を細めただけだった。
しかしその身に纏う雰囲気にどす黒いものが増した気がして、ユーリは再び身を固くする。

「酷いな……僕はユーリを他人だなんて思ってない。とても大切な、僕の半身だ。だから…」

フレンの右手が頬を離れ、そのまま降りてユーリの性器に触れた。ユーリの腰が大袈裟に跳ねる。

「っひ……っ!!」

「何だって、してあげられるよ」






「やめろッ、この、離せってんだよ!!」

「ユーリ…大人しくしてくれないか」

冗談ではない。
フレンがやろうとしていることは、ユーリにとって到底受け入れられるものではなかった。
全力で脚を振り回し、激しく抵抗する。
と、ユーリの蹴りがフレンの頬を掠めた。
爪で切れたのか、その頬にうっすらと朱い線が浮かび上がる。

「ッ痛…」

一瞬、ユーリの脚を掴んでいた力が緩む。
ユーリはフレンの腕を振り払い、ベッドから逃れようとした。だが腕を縛られているせいで上手く動けず、すぐに再びフレンの腕に捕まった。
顔を乱暴にシーツに叩きつけられ、横を向いた身体にフレンが馬乗りになる。

「うっぐ…!っくそ、どきやがれ!!」

「聞き分けがないね…仕方ないな」

やれやれといった様子のフレンはユーリに跨がったまま傍らのテーブルに手を伸ばすと、箱の中から何やら茶色の小瓶を取り出し、片手で器用に蓋を開けた。
半分ほど液体の入ったそれを、ユーリの鼻先で揺らす。

「これは何だと思う?」

状況から考えれば、身体の自由が効かなくなる薬か何かだろう。
ユーリは怒りでどうにかなりそうだった。
こんなものまで使う気か。

「…薬を飲ませて大人しくさせるってか。どうしようもねえな。…最低だ、おまえ」

冷たく言い放つが、フレンは顔色ひとつ変えない。それどころかむしろ楽しげに言った。

「半分当たり。でもこれは飲み薬じゃない」

「ッ!冷てっ…!?」

フレンは瓶の液体をほんの数滴、ユーリの脚に垂らした。身体をずらして反対の脚にも垂らす。

さほど間を置くことなく、ユーリの身体に変化は訪れた。

「……あ…なん、だ、これ…。あし、が…!」

両足の感覚が全くない。動かすどころか力を入れることすらできず、視認できていなければ本当に足があるのかすら分からなかった。
今まで味わったことのない感覚に、ユーリはパニックになりそうな自分を必死で抑え付けてなんとか正気を保とうとするが、震える口からはカチカチと渇いた音が漏れた。
うまく喋ることができない。

「あ……、な、に…した…ん、だ……!?」

「魔導士と治癒術士が共同で研究して作った新しい麻酔…みたいなものかな。飲んだり注射したりするんじゃなくて、皮膚に塗るタイプなんだって。これならあまり患者の身体に負担もないし、素晴らしいと思うよ」

ユーリは己の太股を撫で摩るフレンに、本来の用途で使えばだろ、と言ってやりたかったが、それよりも次に目に映った光景に忘れかけていた恐怖を甦らせた。

例の細長い管のついた道具を手に、再びフレンがユーリの性器に触れたのだ。
恐怖で縮み上がっているそれは、触れられても何の反応も示さない。足と違って触れられる感触はあるが、今はひたすら不快なだけだった。
くにくにと捏ねられて形を変えるそれを、フレンはまるで愛しいものでも見るかのような眼差しで見つめている。
あまりにも異常なその光景に、ユーリは胃の中から込み上げるものを堪えるのに必死だった。
口を開けば吐いてしまう。
額に脂汗を浮かべ、蒼白になって震えるユーリにようやく気付いたのか、フレンが顔を上げた。

「大丈夫?ユーリ」

聞き方は子供の頃と変わらないが、やっていることはあの頃からはまるで想像できない。
何がこいつを変えてしまったのかと考えると、悲しくて涙が溢れた。

「心配しなくていいよ。…なるべく痛くないようにするから」

「!―――――ッ」



フレンが何やら用意するのを視界の端に捉えながら、ユーリは絶望のあまり、全身から力が弛緩していくのを感じていた。





ーーーーーー
続く