続きです。裏表現がありますので閲覧にはご注意下さい。






「…ん、あっ、ふぅっ…ん!」

「ユーリ…っ、ん、ユーリ……!」



結局あれからユーリはフレンに抱かれ続けていた。
ユーリがわかるだけでフレンは既に二度、ユーリの中で達していたが、腹やら顔やらにも出されているので正確な回数は定かではない。
時間がどれくらい経っているのかも分からなかった。
フレンが中で出した精液が潤滑剤代わりになっているおかげか最初のような痛みはないが、その痛みがあまりに強烈すぎて感覚が麻痺してしまっていた。中を掻き回される度にぐちゃぐちゃといやらしい音が響き、合わせている肌もねばついて何とも言えない感触だ。

「っは、ぁ、ユーリ、イくっ…」

「あッ、んあ、あぅっ!!」

激しい突き上げに声があがる。だが快感によるものというよりは無意識というか、動きに反応して思わず声が出てしまう、といったほうが正しいような気がした。
最中にフレンはユーリの性器もしきりに愛撫していたが、達したかどうかの記憶すらユーリには曖昧だった。

「ん、っ、んぅ、…っ、!はぁっっ……!!」

「んぁ、ーー…っ!」

フレンの唇がユーリの唇に重なる。と、いっそう中を押し拡げられたと思う間もなく、熱い欲望が身体の奥へと注がれていくのを感じた。
強く抱き締めてくるフレンの身体が小刻みに震えて、漸くユーリを散々嬲り尽くした塊が引き抜かれた。

「ッひうっ…」

まるで内蔵を引き擦り出されるかのような感覚に思わず声が漏れる。

「ユーリ…」

名前を呼ぶフレンに顔を向けることすら出来ずに、ユーリはそのまま意識を失った。





「うー…、っ痛う……!」

翌朝ユーリは目覚めるなり、身体のあちこちを襲う痛みに呻き声をあげた。特に腰と尻の痛みが酷く、暫く動けないほどだった。
なんとか身体を起こしてふと見れば、シーツにこびりついた精液やらなんやらの中に僅かに赤いものを見つけてしまった。

「…女かっての」

最初に無理矢理挿入れられた時に切れたのかも知れない。あまり深く考えたくなかった。
フレンの姿はない。さすがに気まずくて帰ったか。
一瞬そう思ったが、すぐにその考えを振り払う。あいつはそういうタイプじゃない。

さてどうしたもんか、と頭を掻こうとして、相変わらずウィッグを着けたままであることに気が付いた。あれだけ動いたのによくまあ外れなかったもんだ、と思うと同時に、こいつのせいで酷い目にあったという怒りが沸々と湧き上がる。
が、すぐに自業自得か、と溜め息をつき、力任せに「それ」を取り去ってテーブルに放る。長く艶やかな黒髪が、ユーリの背中に流れた。


誰かが階段を上る足音がする。少しの間の後、部屋の扉が開く。湯の入った洗面器とタオルを手にしたフレンは、ユーリを見てその場に立ち尽くした。

「…よう。おはようさん」

「え、あ、お、おはよう…。ええ!?」

目の前にあるのは、フレンのよく知るユーリの姿。美しい黒髪が、窓からの風に揺れている。

「…とりあえず、身体拭きたいんだけど。それ、使わせてくれるんだろ?」

「あ、ああ」

ぼんやりしているフレンからタオルを受け取り、顔を洗って身体を拭いていく。

「あ、て、手伝うよ」

「いいって」

あちこち痛くて軋む身体を自力で清めるのは結構骨が折れたが、手伝ってもらうのは嫌だった。
後ろの処理をしている最中にふとフレンを見れば、顔を真っ赤にして必死で目を逸らしている。昨日、自分を散々に犯した張本人の反応とも思えない。

そうしていつもの服に着替え、漸く人心地つく。痛む腰をさすりながら、ユーリはベッドに腰掛けてフレンを見上げた。

「ほら、おまえも座れって」

自らの隣をぽんぽんと叩いて言うユーリのことを泣きそうな瞳で見つめ、フレンが頷く。

「…うん」

隣に座るなりユーリの髪に伸ばされたフレンの手を、ぱし、と軽く叩き落とす。

「先になんか言うことあんだろ?」

「…ごめん」

意外に素直に謝られて、少しユーリは面食らった。何か言うかと思ったが。それで毒気を抜かれてしまった。

「まあ、オレも悪かったよ。ちっと驚かしてやろうと思っただけだったんだけどな。…そんなに気に入らなかったか、あの格好」

「…そういう、わけじゃ…」

「?そうなのか?オレはてっきり、髪が短いのが余程気に食わなかったのかと思ってたんだが」

「ユーリは、僕がユーリの髪を好きなのを知ってるだろう?だから僕に黙って切ったりしないと思ってた」

「………」

「だから、何がそうさせたんだろうと…もしかして誰かに何か言われて切る気になったのか、とか思ったら、堪らなかった」

なんとなくわかって来たが、ユーリはさらに続きを促した。

「で?」

「だいたい、やっと会えると思ってたのに君は用事が出来たとか言付けするだけで、しかも聞いた事ない人物を友人とか言って代理に寄越して、君にとって僕に会うことは大したことじゃないのかって、腹が立ってきて」

「いやまあ、悪かったって…。服まで変えたのはさすがにやりすぎたと思ってるよ」

「…そこが一番頭に来るんだ」

「は?」

「ユーリが自分からあんな面倒な事する筈ないし、何がどうなってそんな話になったんだか知らないけど、エステリーゼ様が一枚噛んでるのは言付けの手紙から気付いたからね。一体何がしたくてこんなことユーリにさせたのかとか、言うこと聞くユーリもユーリだとか思ったらもう訳がわからなく」

「待て待て待て!!ちょっと落ち着けって!」

一枚噛んでたとか言うな、と思いながらも、ユーリは自分が考えていた「理由」がほぼ間違いないと確信した。

「おまえ、オレがエステルに甘い事に妬いてんだろ」

「…そうだよ」

「で、ついでに自分が名前も聞いたことない奴をオレが『親しい友人』とか言ったから、そいつにも妬いたわけだ」

「そうだよ!悪いか…!?」

フレンの腕が腰に回り、きつく抱き締められる。愛おし気に髪を撫でる優しい手つきに身を任せながら、ユーリもフレンの背中に腕を回した。

「全く…、嫉妬っつーか、独占欲強すぎだろ。オレ、髪切るのもダチ作るのもいちいちおまえに断んなきゃダメなのかよ?」

「ごめん…」

ユーリの肩に顔を埋めながらフレンが消え入りそうな声で謝罪する。

「…もういいって。オレも…もうこんなことしねえから。ちょっと、不安になったし」

「不安?」

顔を上げたフレンと正面から見つめ合う。

「オレは、おまえはすぐ気付くと思ってた。気付いて、『何やってるんだ!』とかいう反応されるもんだと思ってた。でもおまえの態度がおかしくて、もしかして本気でわかってないのかと思ったら…、嫌でたまらなくて、哀しかった」

「ユーリ」

「ハンクスじいさんの反応がトドメだな。オレの存在ってそんなもんなのかと思ってさ。まあ何か妙だとは思ったみたいだけど。だからさ、」

いったん言葉を切ったユーリが少し俯く。伏せられた長い睫毛が、頼りなさそうに震えていた。

「…お互い様なんだよ、オレも。おまえの中で、オレっていう存在がその程度なのかと思ったら、すげえ腹が立って、…不安になった」

「ユーリ……!」

フレンの唇が重なって来る。暫く互いの舌を絡ませて、熱い息を吐きながらやっと唇を離すと、フレンはユーリの耳元に囁いた。


「僕は絶対、君を間違えたりしない」

「…ああ。オレも」

「はは…、なんか馬鹿みたいだな、僕たち」

「全くだ。エステルに踊らされて、とんでもない目にあったぜ」

「それは…」

何か言おうとしたフレンを逆に抱き締めて、ユーリはわざと拗ねたように呟いた。

「だってさ、どう考えてもただの強姦だよなあ、昨日のアレは…」

「!!ごっ…」

「帝国の法の模範たる騎士団長ともあろうお方が、マズいよなあ。普通だったら、訴えられてもおかしくないぜ?」

「………」

腕の中で固まるフレンの反応が可愛くて仕方がなかった。

「ま、オレは男だし、訴えたりしねーから安心しな。感謝しろよ?あんだけ酷いことされて、まだ相手してやるってんだから」

「…ユーリは意地が悪いよ」

「おまえの相手できるのは、オレしかいねえからな」

弾かれたように顔を上げたフレンの額に口づけてユーリが笑う。


「次は優しくしてくれよ?」

「…それはユーリ次第かな」



自分たちは幸せだ、と心から思った。





ーーーーーー
終わり