解説(5)

「ワールド・スタンダード」(2014.11脱稿)

「寓話的な何か」「0.0025」に続く3部作の第3弾で、タイトルの由来は急に頭に降って湧いた言葉を直感に従って使う事にしたものです。そう言えば、ピチカート・ファイヴにこういうタイトルの曲があったような気がしますが、特にそこから拝借したという訳ではないです。

「がっつりエロ」と宣言した通りの内容になっていればいいのですが、いかがでしょうか…しかし、エロは普段の5倍ぐらい脳味噌を使うので、書き終わった後の燃え尽き感がハンパないですね(^_^;)どうしても「キス→愛撫→挿入→絶頂」というプロセスは一緒なので、他のR18作品との差別化が難しい所です。似たような語彙や表現になってしまうのは出来る限り避けたいのですが…(´Д`)

そもそも、「インターコンチで高いシャンパン飲んで夜景見てセックス」なんていうバブリーなシチュエーションは、2014年現在的に許容範囲なんでしょうか?アラフォーなので最近の傾向がわからない…でも頑張りました!牧のために!(笑)この手のバブリーさは牧だからこそですよねっ?だって好きなんだもん、ちょっと古いタイプの、色気が滲みまくってる男が!東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦みたいなさー!

そして、何故ロイヤルパークや横浜ベイホテル東急(旧パンパシ)じゃなくてインターコンチなのかというと、やはりあの特徴的な建物が一番「ザ・横浜」って感じがするんですね。しかし私、インターコンチは行った事はあるけど泊まった事はないんだよなあ…その辺はまあ、妄想オンザビーチ(意味不明)という事でお許し頂きたく…(>_<)

ちなみに今後書きたい予定のエロシチュですが、とりあえずこんな感じ↓

●神の自慰ネタ(牧が見ている編/見ていない編)
●神の襲い受ネタ
●玄関開けたら即エッチ

…ろくなもんじゃねえ( ̄∇ ̄)しかも自慰ネタなんて2パターンだよ!(「どっちから先に書こうかな〜♪」とほくそ笑んでいる私は終わっている…)神さんすみません!だいたい私、攻の事が好きすぎていろんな物をダラダラ垂れ流してる情念系の受が好きなんです。例えるなら椎名林檎みたいな…今回の作品も、後半は椎名林檎の最新アルバム「日出処」の中の、「ちちんぷいぷい」という究極の誘い受ソング(※個人の見解です)を百万回ぐらいリピートして完成させました。

次回作ですが、大人牧神ならではのしっとりした内容になる予定です。他にちょっとした小ネタも書きたい…これから寒くなるし、ますます牧神にとっていい季節ですよね!と言いつつ、一年中どの季節でもしっくりくる牧神は京都みたいなものだと私は思ってますが…(*´∀`)毎日、牧神の事ばかり考えている私は楽しくて仕方ありません(笑)こんな私ですが、今後ともよろしくお付き合い頂ければ幸いです(*^o^*)

ワールド・スタンダード(2)

ワールド・スタンダード(1)

客室へ向かうエレベーターに、俺たち以外の客は乗らなかった。それをいい事に、牧さんは重厚な扉が閉まるや否や俺の手を握ってきた。少し冷えた肌に、牧さんの温もりと骨張った指の感触がひどく心地よかった。

「今日はありがとうございました」

その手を握り返しながら礼を述べる。牧さんは階数表示をじっと睨んだまま微動だにせず、唇だけを動かして「何が?」と言った。

「買いたかった物も買えたし、飯も美味かったし、高いワインも飲んじゃったし、夜景も綺麗だったし…これ以上ないぐらい幸せな誕生日デートでしたよ、今日は」
「その内容じゃ、今日の予定の半分程度しか消化してねえぞ」
「えっ?」

そこでようやく牧さんの目が俺に向けられ、早くも情欲の暗い陰りが宿っている事に息を呑んだ。間違いなくあと一時間後には、俺の体はキングサイズのダブルベッドに沈められている。

「明日のチェックアウトは昼の12時だから、まだあと13時間ぐらいはあるよな」
「極力考えないようにしてたのに…」

思わずぼやいてしまった直後、ポーンという柔らかいチャイムと共にエレベーターが該当の階で停止する。扉が開いても通路には人気がなく、繋いだ手は特にほどかれずにそのままだった。

11月25日に誕生日を迎えた俺が、その週末の誕生日デートとしてリクエストした行き先は横浜・中華街だった。しかし夜はホテルに宿泊、しかもこのインターコンチネンタルに、というのは牧さんの希望というか差し金であった。

おまけに、部屋は通常のツインやダブルよりもワンランク上の「クラブインターコンチネンタルルーム」で、何もかもが特別な日にふさわしい空間と言えた。そんな場所で今夜、確実に俺は骨も残らないぐらいに食らい尽くされる。人間の皮を被った、百獣の王であるこの男に。

とは言え、この段階から牧さんが俺への性欲を隠しもしないというのは珍しい気がする。ワインに催淫剤が仕込まれていた訳でもあるまいし、などとくだらない妄想を働かせているうちに目的の部屋の前で足を止める。この扉の向こう側に滑り込んだらもう―――牧さんに抱かれるのは、これが初めてではないはずなのに俺は震えた。もちろん俺自身が、あられもない姿を晒して幾度となく絶頂に達する場面を期待して震えたのだ。

「あっ、ちょっと待って…」

胸ポケットから引き抜いたカードキーを、カードスロットに差し込もうとした牧さんを慌てて制する。思いきり不審げな眼差しが俺の片頬を貫いたが、構わずに空いている方の手を胸に当て、二度三度と深呼吸をしてみせる。

「心の準備ですよ。部屋に入ったら、まともに息が吸えなくなるから今のうちに…」
「賢明だな」

繋いでいた手が一旦緩められたかと思ったら、もう一度深く繋ぎ直されて五本の指を絡め取られた。尖った関節で指の間を刺激され、その絶妙な力加減に堪えきれずに息が漏れる。二人のセックスが、部屋に入る前から始まっている事を否が応でも実感させられる。

「ねえ、牧さん…」
「何だ?」
「部屋に入ったらすぐ…キス、しませんか?」

―――最初からそのつもりだったくせに、いかにも俺からの申し出を承諾したといった様相を呈しながら牧さんが「わかった」と答える。つくづく悪い男に捕まった気がしてやまないが、そんな男に心底惚れているのだから我ながら救いようがない。

そうこうしているうちにドアロックが解除され、ゆっくりと扉が開けられる。牧さんに手を引っ張られて室内に引きずり込まれた俺は、背後で扉が閉まる気配を察知したと同時にその扉に全身を打ちつけられた。

「んっ…」

鼻先を掠めたのは微かなワインの香りだった。牧さんの右の手のひらが両目に覆い被さり、視界が暗転する。その暗転した状況の中で唇が重ねられ、舌を入れられるという事態に俺の平常心は失われた。再び軽い酩酊感を生じつつあるのは、アルコールの強く残る舌で口内を隈なくなぞられているせいだろう。

やはり、部屋に入る前に深呼吸しておいたのは正解だった―――そんな事を一瞬だけ考え、すぐにその思考は掻き消される。間断なく仕掛けられるキスに頭が上気し、脳髄が痺れていく。
やがて唇が離れると共に手のひらも外され、急に視界が明るくなった俺の目の前に牧さんの顔があった。どれほど欲情を滴らせた瞳で俺を見ているかと思ったが、意外にも牧さんの表情は穏やかだった。昼間、横浜港大さん橋から見た海が自ずと連想されるようだった。

「先、風呂入ってきな」

珍しく紳士的な提案をしてくるので少なからず驚いたが、それを指摘したらこの場で即座に押し倒されそうなのでやめておいた。正直シチュエーションとしては嫌いではないため、俺がもう少し切羽詰まった状態だったらそうなるように仕向けていたかも知れない。

「それとも俺が先に入った方がいいか?」

その問いかけには首を横に振り、牧さんの腕の中からすり抜ける。通路から部屋の奥へと無言で突き進み、ポケットから取り出した財布と携帯をライティングデスクに載せた。

「あっ、神。風呂上がったらバスローブ着ろよ。サイズ、両方ともLLにしてもらったから」

牧さんも同じように自分の財布と携帯、さらには左手首から外したタグ・ホイヤーのクロノグラフをデスクに載せながらそう言ったので、俺は何の事かわからずに牧さんを振り返った。

「お前のサイズならLでもいいんだろうけど、丈が足りねえだろ?だから、予約した時に頼んどいた」
「牧さんって本当にマメですね、そういう所…」

牧さんの、その種の気遣いにはつくづく感心させられる。絶対に、今までの彼女たちは牧さんと別れたくなかっただろうな―――そんな事もふと頭をよぎったが、それを口にするのは差し控えておいた。愚かな失言をしてしまって、牧さんの気分を害する羽目にはなりたくない。

「じゃあ、すみませんが先に…」

牧さんの前を通り過ぎようとして腕を掴まれ、チュッ、と殊更に派手な音を立てながら唇を頬に押し当てられる。つい先ほどあんなに濃厚なキスを交わしたくせに、今の挨拶的な軽いスキンシップの方が俺には数倍照れ臭かった。





密かに家から持参していたルームウェアを着ようかどうしようか迷ったものの、やはり、わざわざ牧さんが頼んでくれていたLLサイズのバスローブを着る事にした。確かに丈は足りているけれど、サイズが少し大きいかな…と鏡に映る自分を覗き込んでいる所へドアが開き、「丈、足りてるだろ?」と声を掛けられる。

「そうですね、丈は一応足りてますけど…」

ちょっとサイズがね、と言いかけて口ごもる。着慣れない物を着るのは裸でいるより気恥ずかしい。どこか居心地の悪さを持て余している俺をどう思っているのか、牧さんが俺の全身をチラリと一瞥する。

「そうだな、お前今、現役の頃より3キロは落ちてるだろうから68キロぐらいだもんな」
「えっ、何でわかったんですかっ?」
「ん?抱いた感じで」
「うわ、マジか…」

何だか眩暈がするような見解だったが、恐らく牧さんの中で理屈ではない何かが働いているのだろう。それ以上の追及は無意味だと悟った俺は、「ああ、すみません。風呂どうぞ」と言って洗面台を離れた。すれ違いざま、牧さんに「待ってる間にシャンパン飲んでていいから」と耳元で甘く囁かれて一瞬だけ体が跳ねた。

バスルームを出ると、いつの間にかローテーブルにはシャンパンクーラーと二つのグラスが鎮座していて、牧さんが今日のために用意してくれたシャンパンがクラッシュアイスに埋もれて冷やされていた。何気なくボトルに視線を落とし、ラベルに書かれた横文字を確認した俺の目が驚きで見開かれる。

「牧さんが持ってきたシャンパンって、クリュッグ・ロゼだったんだ…」

高いシャンパンには縁のない庶民の俺でも、名前だけは聞いた事がある。まともに買えば一本四万円は超えるはずの銘柄だ。多分、牧さんのお父さんが商社勤務だから、そのつてでもう少し安く手に入ってはいるだろうが―――俺はシャンパンには手をつけず、昼間買ったペットボトルの緑茶の残りを飲み干した。すっかり温くなったそれの、何とも言えない渋みとえぐみが舌を刺激する。

「何だよ、まだシャンパン飲んでねーじゃん」

落ち着かない気分のままソファーにもたれてテレビを流し見していると、バスルームから出てきた牧さんの声が斜め上から降ってくる。牧さんの褐色の肌には白いバスローブが恐ろしいほど似合っていて、俺は自分が、あと30分もしないうちにこの体に組み敷かれるであろう運命について考えた。

「クリュッグ・ロゼなんて開ける勇気は俺にはないです」

無意識のうちに拗ねた口調になってしまったが、牧さんはさして気づいていない様子だった。と言うより、華麗にスルーされたといった具合か。

「そうか?まあ別にいいけど、俺が開けてやるよ」
「わー牧さんカッコいいー」
「その抑揚のない言い方やめろ」

有無を言わさずリモコンを奪い去られ、テレビの電源を切られてしまう。もちろんテレビの内容などまるで頭に入っていなかった俺は、「勝手に消さないで下さいよ」とは言えなかった。もう一つのソファーに腰を下ろした牧さんがボトルを手に取り、ソムリエナイフで器用にキャップシールを剥がし始める。その一連の作業が本職のソムリエのように美しくて、ただ言葉もなく見守り続ける以外になかった。

「…何?惚れ直した?」

ナプキンでボトルをくるみ、いよいよコルクの栓を抜く段階の手前で牧さんがニヤリと笑った。全く癇に障らないと言えば嘘になるが、とてもこんな風にシャンパンを開ける自信のない俺は「はい」と肯定してみせる。俺の従順な反応に牧さんの眉が動いた。

「いつもそんだけ素直だったらいいんだけどな」
「素直じゃない俺が好きなくせに」
「確かにそうなんだけど、素直じゃないお前を素直にさせるのが好きなんだ、俺的には」
「性格悪っ…」

ボソッと俺が悪態をついたタイミングで栓が抜かれ、二つのグラスに金色がかったピンクの液体が注ぎ分けられる。きめ細かい泡が絶え間なく立ち上る様は、シャンパンの上質さを物語っているようだった。飲むのを何となくためらっていると、牧さんの方からグラスの縁をかち合わせてきて「乾杯」と告げられる。

そこで俺もようやくグラスを目の高さまで持ち上げ、優雅にたゆたいながら発泡している液体を透かし見た後に一口含んだ。本来ならそこで、芳醇な香りがどうとか味わいがどうとか論じなければならないのだろうが、基本的に性に合わない事はしない主義なので「美味しいです」と述べるだけにとどめておいた。

「それにしても、本当にいい眺めですね」

窓から一望するのはどこまでも広がる夜の海と横浜港、そしてライトアップされたベイブリッジだった。今は、昔ほどベイブリッジの夜景がもてはやされている時代でもないと思っていたけれど、やはり釘付けになるほど幻想的な光景だった。まるで、この世界で牧さんと二人だけになってしまったかのような―――だが、それはまさしく俺が欲して止まない世界であり、他の人間が入り込む余地はない。

「やっと…」

二人同時に声を発して、顔を見合わせる。「お先にどうぞ」「いや、お前から言えよ」などという様式美とも言うべきやり取りを経て、年の功という事で―――とは口が裂けても言えないが、牧さんから先に切り出した。

「やっと二人きりになれたな」
「…びっくりした」
「どうした?」
「俺も今、同じ事言おうとしてたから」

そうか、という牧さんの短い返事がひっそりと呟かれ、やや長めの静寂が流れる。もうそろそろベッドに移動した方がいいのかな…と、ベッドのサイドテーブルに備え付けられたデジタル時計に目をやった隙に牧さんが動いた。立ち上がり、俺の背後に回ったかと思ったら腋の下と膝裏に手を差し入れられ、そのまま横抱きの姿勢で担ぎ上げられる。

「えっ、嘘…!」

いわゆる「お姫様抱っこ」の状態である事にはさすがに驚いたが、大した距離ではなかったため抵抗するまでには至らずベッドへ運ばれる。男としてはやや沽券に関わるかも知れないが、日常的でないこの状況下ならそれもありかな、とあっさり受け入れられてしまう。そもそも「牧さんの嫁」という立場を容認している俺には、最初からタブーという物は存在しない。

「お前ぐらいの体重だったら全然余裕だ」

逃がさない、とばかりに俺の体を押さえ込んだ牧さんの目にあの情欲の陰りが蘇る。もうここから先、牧さんから紳士的な態度は欠片も見られなくなるのは疑いようのない事実で、それもまた俺の望み通りの展開だった。





「ワールド・スタンダード(2)」に続く→

☆拍手お返事☆

当ブログにお越し下さった方、拍手やコメントを送って下さった方、本当にありがとうございます!ぶっちゃけ、今までの同人活動でマイナーカプやマイナージャンルには慣れっこの私ですが(SD以外では邦楽バンドやジャニーズなどやっておりました)、やはり反応を頂けると涙が出るほど嬉しく、大変励みになります(*´ω`*)
よろしければ、ぜひまた覗きに来て頂けると幸いです。
以下は拍手お返事です↓



2014.11.1「毎回楽しみに…」の方
嬉しいお言葉、本当にありがとうございます!私の書いた物を楽しみにして下さっている方がいると思うと本当に心強く、8年ぶりに同人活動を再開した甲斐がありました(≧∇≦)3部作の第3弾も鋭意執筆中でございますので、脱稿出来次第UPさせて頂ければと思います。
またぜひ遊びにいらして下さい!(*^o^*)


2014.11.1「牧仙ファンなんですが…」の方
あら!ありがとうございます!ようこそ牧神の世界へ(≧∇≦)これを機に牧神にも興味を持って頂ければ、書き手冥利に尽きるというものでございます。個人的に牧と仙道の会話を書くのは大好きなので(暴走するオッサンに手を焼く後輩、みたいな図式が…)、そのうちまた仙道も登場させたいと思っております。よろしければ、ぜひまた遊びにいらして下さいね(*^o^*)
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プロフィール
嬉野シエスタさんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 5月10日
地 域 神奈川県
血液型 AB型