Twitter140字短文まとめ(6)

Twitterで随時更新中の、140字短文まとめ第6弾です。
文章修業の一環として、「診断メーカー( shindanmaker.com )」の140字SS用腐向けお題で引き当てたネタに基づいて短文を書いています(診断メーカーが元ネタじゃない物もあり)。
短文は随時こちらで更新しています。→ twitter.com



不意に背中を叩かれ、振り返ると武藤さんが「よっ」と片手を上げていた。
「あれ、そのTシャツどっかで見たな?」
「あ、これはその…」
「あー、どうせ牧とお揃いとか言うんだろ?」
黙った事で肯定の意を表すと、武藤さんも無言のまま呆れたような笑みを見せる。
「あ、いえ…これガチで牧さんのでした」

(お題「おそろい」2015.10.16)



珍しく風邪を引いて寝込んでいる牧さんに、甲斐甲斐しく世話を焼くのは俺の特権だ。
「他に必要な物ありますか?」
俺の声に反応した牧さんが、殊更ゆっくりと視線を上向ける。
「…手」
「えっ?」
「繋いで、神」
差し出された手を柔らかく握り込みながら、「もう、 子供じゃないんだから」と俺は笑った。

(お題「もう子供じゃないんだから」2015.10.20)



※大捏造設定です
俺と牧さんは従兄弟同士だが、周囲の人間には伏せられている。暗黙の了解で、誰にも知られてはいけない事になっていた。自主練習を終え、部室に戻った俺を牧さんが待っていた。後ろ手に鍵を閉めた次の瞬間、力強い腕に上半身を拘束される。思わず、「紳ちゃん…」という昔の呼び名が唇から漏れ出た。

(お題「従兄弟同士」2015.10.26)



ああ、またか…と人知れずため息を吐く。斜向かいのテーブルから、牧さんを盗み見ている女の視線―――コーヒーを啜り、限りなく冷たい視線を走らせて牽制する。「神、どうした?」という穏やかな問いに、カップから唇を離した俺は静かに微笑んだ。「大丈夫ですよ、ちゃんと殺しておきましたから」

(お題「愛なんて綺麗なものじゃない」2015.10.30)



「幸せとは何か」ありふれた疑問である。バスケを生業にしていられる事か、生涯の伴侶を得て共に暮らせる事か。「ま、両方だな」と呟くと、「何がですか?」と神が尋ねてきた。「んー、まあ独り言」「…はい」それだけか?と視線だけで促す俺に、「牧さんが幸せだったら別にいいですよ」と神が笑った。

(お題「幸せって何だろう」2015.11.4)



普段はこんな誘い方はしないのだが、ふと思い立った風に「今日、する?」と聞いてみる。
漆黒の瞳を見開き、瞬きを繰り返した神が「今日ですか?あー、えーと…まあいいですよ」と意外な答えを返した。
「あ、いいの?絶対断られるかと思った」
「ですね、いつもは応じませんけど…今、急に勃ったんで」

(お題「誘い」2015.11.8)



近頃、よくニュースで取り上げられる「パートナーシップ条例」―――今、まさにテレビでその話題に触れた所で隣の伴侶に「なあ、神」と声をかける。即座に「お断りします」と返され、「まだ何も言ってねえよ」と唇を尖らせた。
「だって…俺はほんと興味ないんで」
「…絶対諦めねえから」
「嘘でしょ?」

(お題「時事ネタ」2015.11.23)

Twitter140字短文まとめ(5)

Twitterで随時更新中の、140字短文まとめ第5弾です。
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「牧さん、まだ寝ないんですか?」と神に尋ねられ、「んー、あともう少しな」と答える。
「じゃ、俺は先に寝てますね」と返された直後に視界が薄暗くなり、ほんの一瞬唇を掠め取られる気配を感じた。足早にリビングを立ち去る神を見送り、己の口元を指でたどりながら惰性でつけていたテレビを消した。

(お題「おやすみのキス」2015.9.14)



「明日は…」牧さんの誕生日ですね、と続けるべきセリフを飲み込む。「晴れますかね」などという無意味な問いに差し替えたのをどう思ったのか、「そうだな」と牧さんが眠たげな声で応じる。実際眠いのだろうと会話を切り上げようとした俺に、牧さんの唇から優しい言葉が放たれた。「いつもありがとな」

(お題「明日になったら」2015.9.17)



最初は同じコートに立てればいいというだけの、純粋な願いに過ぎなかった。それが関係が深まるにつれて欲深さもエスカレートし、そして今―――
「どうしてほしい?」と吐息混じりに促され、俺は微かに我が身を強張らせた。唾液を飲み込み、褐色の肌に手を添えながら震える声で懇願する。「イカせて…」

(お題「貪欲」2015.9.20)



「今日、何の日かわかりますか?」と言った神の、心底照れ臭そうな様子が全てを物語っていた。わざわざ言及するのが女子みたいで恥ずかしい…といった所か。真摯な眼差しと共に神に向き直り、「付き合い始めてちょうど一年だよな?」と答える。顔を赤らめ、瞳を伏せた神に触れるだけのキスを施した。

(お題「一周年」2015.9.24)



ガタン、というスーツケースの重厚な音で我に返る。もう何十回、遠征に向かう牧さんを見送り続けてきただろうか。いつもならごく普通に「いってらっしゃい」と告げる所だが、不意に思いついたセリフを口に出してみる。「留守は守りますから」やや驚いたように、褐色の瞳を見張った牧さんの姿があった。

(お題「おるすばん」2015.9.30)



冷え切った夜気に向かって盛大なくしゃみをした俺に、牧さんが「寒いか?俺のマフラー巻けよ」と言いざま自分のマフラーを解いてくれた。ありがたく受け取って自分の首に巻き付けると、「よく似合ってる」という優しげな声が響く。汗や体臭、香水の入り混じった牧さんの匂いがあらぬ欲情を生み出した。

(お題「似合ってますよ」2015.10.13)

Twitter140字短文まとめ(4)

Twitterで随時更新中の、140字短文まとめ第4弾です。
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確かに俺は牧さんの事が好きだった。が、あくまで手の届かない存在でいてもらった方が良かったのか、伴侶として得ている今の方が幸せなのか―――やはり後者の方が幸せなんだろうと結論づけると、欠伸を噛み殺した牧さんと目が合った。「何だ、神?」幸福論について考えていた、とはあえて言わない。

(お題「君だから」2015.8.11)



神を泣かせるのが好きだ―――と言うと誤解を招きそうだが、事実なので仕方がない。しかも半分は、「泣かせる」ではなく「鳴かせる」という字面の方であるのだが、これも発音だけでは伝わらない事だ。そんな仄暗い考えを密かに巡らせながら、俺は神の目尻にうっすらと滲み出た涙を指の腹で拭い取った。

(お題「涙を拭う」2015.8.13)



もっと早くから神とこうなりたかったと言うと、決まって「牧さんって貪欲なんですね」と言われる。貪欲で何が悪いのかと思うが、「今時、貪欲な男の方が天然記念物並みに珍しい」らしい。今一つ釈然としなかったが、その後の「でも俺は、そんな牧さんが好きですけどね」の一言で救われた気分だった。

(お題「独占欲」2015.8.16)



牧さんが遠征から帰ってくる日は、携帯を見る回数が普段の軽く二倍を超えている。そして今も、無意識のうちにそうしてしまってから苦笑する―――牧さんと暮らし出してからそれなりに月日は経つのに、我ながらそわそわしすぎだと思う。もう見ないでおこうと決意するものの、三分後にはやはり見ている。

(お題「そわそわ」2015.8.19)



珍しく牧さんが酔っ払ってんな、と思っていたら「神、こっち来て」と手招きされる。どうせ酒臭い体で抱きつかれるだけなので無視していると、さらに甘ったるい声で「じーんー」と呼びつけられる。全く面倒臭いオッサンであるが、そんなオッサンを誰より愛してしまっている自分が一番面倒臭かった。

(お題「ったく、しょうがないなぁ」2015.8.22)



軽く伏せられていた牧さんの目がおもむろに開かれ、「朝なんか来なきゃいいのにな」と呟く。ダメですよ、と俺は即座にかぶりを振って牧さんの言動を制した。「牧さんはそんな事願ったらいけないんです。朝なんか来なければ、なんて…」その手の薄暗い願望は、俺一人が抱いていればいいだけの話だった。

(お題「特になし」2015.9.8)

Twitter140字短文まとめ(3)

Twitterで随時更新中の、140字短文まとめ第3弾です。
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濃密な時間が過ぎ去った後、俺の腕の中でまどろむ神が好きだ。この安らかな顔を堪能するためなら何でもしたいし、出来ると思う。俺は腕に力を込めて神の体を引き寄せ、伏せられた瞼の先で揺らいでいる睫毛に見入った。もうどこへもやりたくねーな、という呟きは生きた言葉と化し、薄暗闇の中に落ちた。

(お題「閉じ込めていたい」2015.7.31)



些細な諍いで険悪な空気になってから一時間、先に折れたのは今回も牧さんだった。九割ぐらいは彼から謝ってくると言っても過言ではない。
「ごめん神、俺が悪かっ…」
「何ですぐ謝るんですか?」
「え?」
「俺なんか…俺の事なんか甘やかしたら絶対駄目ですって!」
「…いや、悪いけど意味わかんねーわ」

(お題「ああ、もう降参」2015.8.2)



「本当に…」
ふと口をついて出た言葉に、牧さんが目の動きだけで反応する。相変わらず眼力の強さは天下一品だが、俺も負けじと先を続けた。
「本当に、俺と付き合っちゃって良かったんですか」
おもむろに伸びてきた牧さんの手が、俺の頭をくしゃりと撫でる。
「可愛いすぎだろ、お前」
「…そうですかね」

(お題「可愛すぎだろ」2015.8.5)



素焼きの皿に、オガラと呼ばれる麻の茎を積み重ねて点火する。たちまち燃え上がった炎から、一筋の煙が赤く染まり始めた空に消えていった。
それを真摯に見つめる横顔に「なあ、俺が死んだ時もこんな風に迎え火…」と尋ねたら、「牧さんは迎え火なくても帰って来られるでしょ」と薄笑みを浮かべられた。

(お題「お盆・迎え火」2015.8.7)



公衆の面前だが電車の中であるし、寝たふりをすれば堂々と牧さんの体に密着できるだろうか。そんな策をあれこれ講じていた俺の耳に、牧さんの低めの声が流れ込んでくる。
「眠かったら今のうちに寝とけよ、辻堂までだいぶ先だから」
そのありがたい誘いに従い、俺は牧さんの肩口に己の右頬を押し当てた。

(お題「電車の中の居眠り」2015.8.9)

Twitter140字短文まとめ(2)

Twitterで随時更新中の、140字短文まとめ第2弾です。
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親知らずを抜く際に打った麻酔は、数時間経った今も切れていなかった。
ソファーにもたれて撃沈している俺の頭を、「大丈夫か?」と牧さんの手が優しく撫でる。俺は小さく頷き返し、のろのろと口を開いて言葉を紡いだ。
「この状態で…」
「ん?」
「この状態でキスしたら、どうなると思いますか…?」

(お題「麻酔」2015.7.23)



「神…?」
薄暗闇の中、ソファーに埋もれていた神が泣いている事に気づいたのはその時だった。
何かあったのか、というセリフを寸での所で飲み込む。神の隣に腰を下ろし、細身の体に腕を伸ばして引き寄せる。「すみません」と震える声で神は言い、わずかな逡巡ののちにこう告げた。
「…抱いて下さい」

(お題「僕の半分」2015.7.24)



背が高いという事は、高い所の物を取る時に一切困らないという事だった。今も図書館で、最上部の棚の本を難なく引き抜いてため息をつく。「おい、神」と声を掛けられて振り返ると、牧さんが右手に携えていた何かを俺に寄越してきた。
「あ、俺の生徒手帳…」
「上ばっかじゃなくてちゃんと下も見とけ」

(お題「放課後の図書館」2015.7.27)



近所のスーパーまで、米と醤油とサラダ油を買いに行く。ここまでは単なる「買い出し」だろう。前を歩いていた牧さんが不意に俺を振り返り、「暑いな、スタバ寄ってく?」と言った。
もしかしてデートに昇格したのかな、などと考えていると、牧さんも「これでデートになっただろ?」とニヤリと笑った。

(お題「デート」2015.7.29)



最近では体を繋げた後も、さほど強い痛みが残るという訳ではなかった。それでも牧さんが、殊更に俺を気遣ってくれるのが嬉しくて痛いふりをしてしまう。俺はただ、牧さんの特別な存在でいられるならばどんな犠牲も厭わない―――それだけの話だった。大丈夫ですよと俺は笑い、唇の端を微かに緩ませた。

(お題「痛みの理由」2015.7.31)



★神の手を取って広げさせ、指一本一本に舌を這わせる。羞恥心を煽られたらしい神があからさまに狼狽したが、構わずに行為を続けた。目の縁を赤く染めた神の唇がほどかれ、ほの白く光る前歯がちらつく。おかしくなりそう、という欲情にまみれたセリフが息遣いと共に漏れ出たのを耳の端で捕らえた。

(お題「おかしくなりそう」2015.8.4 ※書き下ろし)
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プロフィール
嬉野シエスタさんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 5月10日
地 域 神奈川県
血液型 AB型