スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

氷のくじら

話題:本の感想



個人的感想と脈略のない文章とネタバレにはご注意ください






才能溢れる美しい文章、登場人物の性格と心情を上手に描く…。初めて辻村さんのご本を拝読した時の第一印象は、今回の氷のくじらを読んでも損なわれる事はなかった。






序盤はこの小説に登場する人物を主人公、芹沢理帆子が他人に抱く個性に名前を付けて紹介している。その全てが彼女が尊敬し愛してやまないドラえもんとその作者、藤子・F・不二雄先生の『SF』から来るもので、発想がなかなか面白い。私は自分自身にどうあてはめるだろうか、と考えてみたりもした。

この小説、全章のタイトルがドラえもんの道具で占められている。どこでもドア、もしもボックス、先取り約束機、どくさいスイッチ…。知らない人にも章の冒頭には道具の効果を紹介しており置いてけぼりを喰らう心配はないが、ドラえもんを知っている方がより楽しむ事が出来るのではないかとも思う。また、タイトル通りの内容となっていて絡ませ方が上手。特にツーカー錠とどくさいスイッチは印象的。


友人、元彼氏、入院中の母親…。何処にも本音さらけ出せない、居場所を見出せない中で突然現れた男性。同じ学校で新聞部に所属するという別所あきらの存在は、理帆子を饒舌にさせ何でも話せる不思議な存在となる。文章が物凄く自然だった為か、私が物凄く鈍い為か(後者の方が大きい)最後に彼の正体を明かされる時が来るまで違和感はあったがまるで気付く事はなく、物語を思い返して初めてそう言えば…と納得した。それを踏まえて読み返すと、一度目に読んだ時とは違った感情が沸く。彼が登場するラストはとても印象深く好きなシーンだ。


沢山の登場人物の中、私が一番リアルさを感じたのが若尾大紀。半端な努力で頑張っている気分になり、それに酔う。自分を否定する人間には敵意を示し、頼りにし縋っている理帆子に愚痴を言って優しく慰めてもらう。どこまでも楽な方へと逃げて何事にも向きあわない。物凄く滑稽で愚かで好ましくは思わないが、そんな所に人間性を感じる。

若尾のエスカレートする嫌がらせは読んでいてゾッとする。本気で情けなくなり怒りをも覚えた。どうしようもない理由でいつまでもダラダラと関係を繋いだ結果、自身だけではなく友人や郁也にも危険に晒す羽目になり、若尾を更に現実から分離させるに至る。……もしも早々に関係を断ち切っていたとしたら、こんな事にならずに済んだのだろうか…、想像がつかない。


理帆子と母親の汐子の話には胸に込み上げるものがある、自分と私の母親を重ねながら読んでいた所為かも知れないが。理帆子にでもなければ汐子でもなく、二人の関係に物凄く感情移入した。理帆子と失踪した夫へメッセージを残す、第八章の『タイムカプセル』は温かくて優しくて、涙が自然と出てくるほどに感動する。





はい、という事で『氷のくじら』の感想でした。文才のなさと頭が弱いばっかりに書きたい事の半分も書けていない状態ですが、終了とさせていただきます。お付き合いして下さった方、本当に有難うございました。








私の『スコシ・ナントカ』は色々考えた結果『少し・不真面目』に落ち着きました。何に対しても不真面目だったりするのでピッタリかな、と。…『少し』ではなく『凄く』かも知れない(笑)
前の記事へ 次の記事へ
カレンダー
<< 2009年12月 >>
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31