雨の強さは一向に弱まる気配がなかった。時折遠くで雷が聞こえては、近づき、また遠くなり雨が強さを増す…繰り返されていた。
決して狭くない部屋に漂う異様な緊張感からか、または屋敷が大きく敷地が広いせいか、夜中の雷雨という天候もくわえ、ここにいる以外の人間の気配は全く感じられなかった。雨が音を吸い込んでいたのかもしれない。時折落雷を想像させる激しい音は、張り裂けそうな緊張感を緩めるどころかより高めていた。
……コツ…!コツ…!コツコツコツっ…!
家屋の内部に響く扉を鳴らす音。一斉に皆手を止め、振り向く瞬間にはすでに白服がひとり玄関へ向かい、ひとりは鷲巣に耳打ちをする。
「…追い返せっ…! 腰を折りおって…!」
「はっ…!」
ふたりの白服が離れ、その場の熱が急激に引くのを感じていた。
「…ククク…ツイている…!」
その場にいる誰もがアカギの思考を読み取る事ができない。その場の流れは確実にアカギのものだった。これで流れが変わって喜ぶのは少なくともアカギではないはずだ。安岡が驚き、呆れたように言った。
「何を言うんだ…アカギっ…!」
そのやりとりに含まれるニュアンスの匂いを嗅ぎ、鷲巣は全く面白くない。屈辱にやまない歯ぎしりを隠そうともせず、アカギを睨みつける。
「鷲巣様っ…!」
バタバタと足音が近づいて来る。場の空気がざわめいた。
「なんじゃ…なんじゃ…! もう少し静かにせいっ…!」
「鷲巣様っ…! 何でもこの大雨のせいで浸水がはじまっているらしく近所の有志が集まり、何でも救助のための道具をいくつか貸して欲しいとのことでして…」
「無能っ…! 朴念仁っ…! 追い返せと言ったろうに…!」
「しかし…」
追い返せの一点張りにおろ…おろ…している白服を助けるかのようにアカギが声を発した。
「…駄目だ…彼らの自由にさせればいい…」
その言葉で苛立ちがピークに達した鷲巣は、なぜじゃ! 大声で聞き返す。イライラする、何でもわかったような顔をして、感情のないふりをして、本当は誰よりも死にたがっておるくせに!
「…放っておけばまもなく警察も見回りに来るぜ…」
続く
※すいません、気分で書いてます。ちょこちょこコメントに続き追加します〜