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隠れヲタの日常+HP用日記
「・・・告白は、・・・実は親友から受けたんだ。信じられるか?ずっと幼なじみだったのに。」
「えぇ?!」
フェリクスは突拍子のない奴なのだ。ヴェネチアーノはそう確信する。
しかもフェリクスの親友というのなら、ヴェネチアーノにも思い当たる節がある。きっと隣のクラスのトーリス・ロリナイティスだ。クラスこそ違えどフェリクスといつも一緒にいる温厚そうな男子生徒である。今正にルートと会議中の文化役員だ。確かに彼は真に心根の優しそうな人物に見える。優しいの定義に収まり切らず、うっかりすると“お人好し”の部類にされそうな具合だが、フェリクスの理想論がまさしく彼の人物像のことを言っていたのならば、もう二人は両思いではないのか。
「良いじゃない。親友であってもなんでも、自分の理想に当たってる人ならさ。」
何を悩む必要があるの。
「ね?」
ヴェネチアーノがフェリクスの肩を叩いて目配せをする。もう辺りはすっかり夜の臭いに満ちあふれ、民家のある集落にも明かりが煌々と灯っていた。もう二人の家も近い。
フェリクスはただ「うん。」と言って笑った。そして、「ありがとう。明日にでも返事をすることにする。」と言った。その声色を聞く限り、彼は幸福そうであった。
幸福は伝染するものだ。
「ルートも良い奴だよ。ちょっと怖い風にうつるかもしれないけど、彼は俺の話をいつだって真剣に聞いてくれるよ。俺が一人で話してても、ちゃんと“うん、うん”って聞いてくれるんだ。他の奴みたく俺をホッポリだしたりしないよ。情けないっていう言葉も、ルートが言うと、すごく優しく聞こえるんだ。」
ヴェネチアーノは体全部を駆使して捲し立てた。目に涙が滲みかける。急に、いや更に、恋人のことが愛おしく感じたのだ。フェリクスは「本当に優しい人なんだね。」と言った。今はその言葉が、より素晴らしい響きに感じられた。
二人はそれから手を繋いで歩いた。明日はこの両側に互いの恋人達も引き連れようか・・・などと言い合いながら、それぞれの家路についた。
end
つづき
「何を悩んでいたの?」
ヴェネチアーノは再びフェリクスの手を握った。さっきより温度の低くなった手の平を、今度は両手で包み込むようにした。安心を送り込むのだ。よく考えれば、ヴェネチアーノ自身がよくルートにやってもらうことだった。
「・・・告白をされたんだ。」
やっと顔を上げたフェリクスの頬はうっすらと上気していた。そして、自分の肩に手を回しているヴェネチアーノの顔を除き込む。目は熱を帯びたように朦朧としていて、ブロンドの髪が風に揺れて輝いた。金の稲穂のようだった。
ヴェネチアーノはどぎまぎした。まるで自分が告白を受けたように顔が真っ赤になり、「えっ、えっ・・・」と、しどろもどろになりながらフェリクスから目線をそらした。どうしてこうも恥ずかしくなるのかは彼自身も意味不明だった。もう、これはフェリクスから漂う色気がどうのこうのとしか説明のしようがない。
「すごい!誰に告白されたの!」
気を取り直し、改めて、至ってまじめにフェリクスの返答に耳を傾けた。
「・・・・。」
しかし、フェリクスからの返事は途絶えてしまった。先に歩き出されてしまったので慌てて後を追う。
ヴェネチアーノはよくよく考えてみる。フェリクスは単純に綺麗な少年のイメージであった。それでいて利発だった。恋人の二人や一人、いても全く可笑しくないような人の種類なのである。
「ねぇ、何をそんなに悩んでいるの。」
横で連れたって歩くが、依然隣の金髪少年は唇をぎゅっと結んで、熱っぽい目をしているだけであった。自分でも何を答えれば良いのか、完全にパニックになっている様子であった。しかし、告白一つで何に悩むことがあるのだろう。
「じゃあ、質問を変えるね。」
会話を持続させることはヴェネチアーノにとっては重要なことなのである。
「フェリクスはどんな人が理想なの?」
一瞬、ハッとなってヴェネチアーノに視線を移したフェリクスだったが、すぐにまた頬を染めて、今度は眉間に皺を寄せた。口をぷぅっと膨らまして、何かに耐えるようであった。
「優しい人が良い。」
「優しい人はいいね。」
やっと口を開いたフェリクスにヴェネチアーノは嬉しそうに彼の言葉に食いついた。優しい人は万能だと思う。優しい人はどんな時でも自分の見方でいてくれるような気がする。
「でも、只、優しいだけじゃ駄目なんだ。人間って大概は優しいんだから。そうすることが礼儀だし上手くやっていく方法だと思っているんだからね。俺は、“心が優しい人”が好きなんだ。心から優しい人。優しい振りをしている人じゃなくって、そういう遺伝子を初めから持っている人が良い。」
だから、完璧を求め過ぎる人よりは、適応能力がある人の方が良いし、許してくれたような真似をする人よりは、自分から許さずにはいられない人の方が良い。
フェリクスはこんな長い理想を大して考えた様子もなく、何かを空読みしているかのようにすらすらと口にした。天を見上げ、両手で空を仰ぎ、先ほどよりは余程落ち着いているように見えた。ヴェネチアーノはそんなフェリクスの横顔を眺めて、「誰のことを言っているのだろう」と、頭の片隅でうっすらと想った。
キャラの名前を借りただけの小話につきキャラ崩壊注意 泣
携帯からは非常に見にくいですなんでやー
優しい人
この季節、田舎町では黄色い稲穂が波のようにサラサラと流るる。季節柄、農道の周りは黄金一色、頭上は雲という名の魚が泳ぐスカイ・ブルーだ。空と言うだけに「sky」。そんな色彩に挟まれた広大な土の上を、学校帰りの二人は仲良く並んで歩いていた。
「今日は本当にありがとう。助かったよ。」
左側を歩くヴェネチアーノがいつものようにのんびりとした調子で、隣のフェリクスに笑いかける。夕方の狭い野道は藁や草の臭いがした。暖かで懐かしい風が舞う。
「俺こそ。それにしても、ルートさん早く還ってこられるといいな。」
フェリクスがサイドで流れる自分の髪をかき分けながら言う。彼の髪は綺麗なブロンドで、まるで人が手を加えたような直毛だった。よって肩まで長く伸ばしていても誰も見苦しいとは思わなかったし、何より本人が自負していた。その仕草にヴェネチアーノは只感心して彼のブロンドを眺めていたが、「ルート」という名前がフェリクスの口から出たので、顔を曇らせた。日は陰りを増す一方だ。
「また、委員会なんだって。」
「ルートさん、たしか委員長なんだろう?」
「うん。俺は、よくあんな面倒くさいことができるなぁ、っていつも感心するんだ。」
彼らの学校はまもなく文化祭の頃だった。ヴェネチアーノの恋人であるルート―本名はルートヴィッヒという。学年は二人より一つ上だ―は三日前に文化委員の長に抜擢されたのである。彼は体も大きく、体育会系であったのでそれなりにガッチリとした体格をしている。そのせいで変な威圧感があると言う人間も居るが、誠実で生真面目で賢く、それでいて別に驕り高ぶっている訳でもなく、世間からは周囲を上手く取りまとめる役として一目置かれていたのだった。それに加えて完璧主義者でもあったので、「どうにか今年の文化祭も良いものにしたい」と、連日遅くまで学校に他の役員達と居残っているのだという。
しかし、恋人であるヴェネチアーノは何一つ困った様子ではなかった。毎日一緒に下校をしていたので、彼は彼の恋人をその委員会が終わるまで、しんとした教室で何十分も待っていなければならなかった。当然だと思っていた。本人は決して気に病んでいた訳ではない。放課後にはたくさんすることがあった。一人でも本を読んだり、黒板やノートに絵を描いたり、鼻歌だって歌っていられた。ヴェネチアーノは絵や歌が大の得意だった。例え何もすることがなくても大好きな「シエスタ」をすればいいだけの話だった。それに加えて、彼は恋人を待っている時間があるということは「なんてロマンチックなんだ」とも思っていた。とにかく何も苦痛ではなかったのだ。しかし気の毒なことに、その彼のお相手というのは全く別の思考をする質だったので、とにかくルートにとっては大変な苦痛であったらしい。秋の夕暮れだ。日も短くなって、空気もだんだんと澄んできた。彼にとっては、そうなると只苦痛だけであった。彼の性分からすると、自分の責任の件で恋人を放課後の学校に長時間待たせる訳にはいかなかったのだ。よって、一人情熱的なヴェネチアーノの「ロマンチック」な時間とやらは、そうそうに彼自身の恋人から没収されることとなった。
「俺のことはいいから、他の友人と早く帰ってくれないか。」
ルートは三日経ってからやっと、非常に言いにくそうにこう述べた。ルートの顔からは「すまない」という言葉があふれ出ていた。これに対してヴェネチアーノは別に何とも思わなかった。ルートがルートであったからだ。
「はい。わかりました。」
敬礼のポーズとともににっこり返事をして、それからの帰り道は、しばらく友人のフェリクスと一緒にすることを決めたのである。
フェリクス自身も「それは丁度良い」と喜んだ。フェリクスもヴェネチアーノと同じ境遇だったのである。いつも下校を共にしているフェリクスの親友も、偶然文化祭の実行役員の一人で、会議にかり出されたということだったのだ。「一人で帰るのは寂しいと思っていたところなんだよ。」と、普段から仲の良かった二人はすっかり意気投合した。ちなみに、フェリクスには“親友を待つ”という選択肢はなかったらしい。
西の空に金星が出た。スカイ・ブルーはどんどんと色を変化させ、紺色のグラデーションを作り始めた。フェリクスとヴェネチアーノは楽しく会話をしながら道をまっすぐ歩いてきた。会話の内容には、もちろんルートとヴェネチアーノの可愛らしい恋の話もあった。が、突然フェリクスが足を止めた。止まって、顔を俯かせる。より透明になってきた夜の風がフェリクスの長めブロンドをきらきらと撫でる。
「ど、どうかしたの?」
ヴェネチアーノは驚いてフェリクスに駆け寄る。手をとってみたが、フェリクスは黙り込んだままだ。
「気分でも悪いの?」
慌ててフェリクスの背中を抱くヴェネチア―ノ。しばらく二人ともそのまま静止していたが、フェリクスが息をはぁっと吐いた。沈黙が破れた。
「悪い、ヴェネチアーノ。俺、ずっと悩んでて。」
「・・・え?」
突拍子もない発言に、始終どこか抜けているヴェネチアーノは人の何十倍も対応に困った。
つづく
性 別 | 女性 |
年 齢 | 33 |
誕生日 | 5月20日 |
職 業 | 夢追人 |
血液型 | O型 |