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優しい人3

「・・・告白は、・・・実は親友から受けたんだ。信じられるか?ずっと幼なじみだったのに。」

「えぇ?!」

フェリクスは突拍子のない奴なのだ。ヴェネチアーノはそう確信する。

しかもフェリクスの親友というのなら、ヴェネチアーノにも思い当たる節がある。きっと隣のクラスのトーリス・ロリナイティスだ。クラスこそ違えどフェリクスといつも一緒にいる温厚そうな男子生徒である。今正にルートと会議中の文化役員だ。確かに彼は真に心根の優しそうな人物に見える。優しいの定義に収まり切らず、うっかりすると“お人好し”の部類にされそうな具合だが、フェリクスの理想論がまさしく彼の人物像のことを言っていたのならば、もう二人は両思いではないのか。

「良いじゃない。親友であってもなんでも、自分の理想に当たってる人ならさ。」

何を悩む必要があるの。

「ね?」

ヴェネチアーノがフェリクスの肩を叩いて目配せをする。もう辺りはすっかり夜の臭いに満ちあふれ、民家のある集落にも明かりが煌々と灯っていた。もう二人の家も近い。

フェリクスはただ「うん。」と言って笑った。そして、「ありがとう。明日にでも返事をすることにする。」と言った。その声色を聞く限り、彼は幸福そうであった。

幸福は伝染するものだ。

「ルートも良い奴だよ。ちょっと怖い風にうつるかもしれないけど、彼は俺の話をいつだって真剣に聞いてくれるよ。俺が一人で話してても、ちゃんと“うん、うん”って聞いてくれるんだ。他の奴みたく俺をホッポリだしたりしないよ。情けないっていう言葉も、ルートが言うと、すごく優しく聞こえるんだ。」

ヴェネチアーノは体全部を駆使して捲し立てた。目に涙が滲みかける。急に、いや更に、恋人のことが愛おしく感じたのだ。フェリクスは「本当に優しい人なんだね。」と言った。今はその言葉が、より素晴らしい響きに感じられた。

二人はそれから手を繋いで歩いた。明日はこの両側に互いの恋人達も引き連れようか・・・などと言い合いながら、それぞれの家路についた。

 

end
more...!

優しい人2

つづき

「何を悩んでいたの?」

ヴェネチアーノは再びフェリクスの手を握った。さっきより温度の低くなった手の平を、今度は両手で包み込むようにした。安心を送り込むのだ。よく考えれば、ヴェネチアーノ自身がよくルートにやってもらうことだった。

「・・・告白をされたんだ。」

やっと顔を上げたフェリクスの頬はうっすらと上気していた。そして、自分の肩に手を回しているヴェネチアーノの顔を除き込む。目は熱を帯びたように朦朧としていて、ブロンドの髪が風に揺れて輝いた。金の稲穂のようだった。

ヴェネチアーノはどぎまぎした。まるで自分が告白を受けたように顔が真っ赤になり、「えっ、えっ・・・」と、しどろもどろになりながらフェリクスから目線をそらした。どうしてこうも恥ずかしくなるのかは彼自身も意味不明だった。もう、これはフェリクスから漂う色気がどうのこうのとしか説明のしようがない。

「すごい!誰に告白されたの!」

気を取り直し、改めて、至ってまじめにフェリクスの返答に耳を傾けた。

「・・・・。」

しかし、フェリクスからの返事は途絶えてしまった。先に歩き出されてしまったので慌てて後を追う。

ヴェネチアーノはよくよく考えてみる。フェリクスは単純に綺麗な少年のイメージであった。それでいて利発だった。恋人の二人や一人、いても全く可笑しくないような人の種類なのである。

「ねぇ、何をそんなに悩んでいるの。」

横で連れたって歩くが、依然隣の金髪少年は唇をぎゅっと結んで、熱っぽい目をしているだけであった。自分でも何を答えれば良いのか、完全にパニックになっている様子であった。しかし、告白一つで何に悩むことがあるのだろう。

「じゃあ、質問を変えるね。」

会話を持続させることはヴェネチアーノにとっては重要なことなのである。

「フェリクスはどんな人が理想なの?」

一瞬、ハッとなってヴェネチアーノに視線を移したフェリクスだったが、すぐにまた頬を染めて、今度は眉間に皺を寄せた。口をぷぅっと膨らまして、何かに耐えるようであった。

「優しい人が良い。」

「優しい人はいいね。」

やっと口を開いたフェリクスにヴェネチアーノは嬉しそうに彼の言葉に食いついた。優しい人は万能だと思う。優しい人はどんな時でも自分の見方でいてくれるような気がする。

「でも、只、優しいだけじゃ駄目なんだ。人間って大概は優しいんだから。そうすることが礼儀だし上手くやっていく方法だと思っているんだからね。俺は、“心が優しい人”が好きなんだ。心から優しい人。優しい振りをしている人じゃなくって、そういう遺伝子を初めから持っている人が良い。」

だから、完璧を求め過ぎる人よりは、適応能力がある人の方が良いし、許してくれたような真似をする人よりは、自分から許さずにはいられない人の方が良い。

フェリクスはこんな長い理想を大して考えた様子もなく、何かを空読みしているかのようにすらすらと口にした。天を見上げ、両手で空を仰ぎ、先ほどよりは余程落ち着いているように見えた。ヴェネチアーノはそんなフェリクスの横顔を眺めて、「誰のことを言っているのだろう」と、頭の片隅でうっすらと想った。


つづく

優しい人(独伊+立波)

キャラの名前を借りただけの小話につきキャラ崩壊注意 泣

携帯からは非常に見にくいですなんでやー


優しい人

この季節、田舎町では黄色い稲穂が波のようにサラサラと流るる。季節柄、農道の周りは黄金一色、頭上は雲という名の魚が泳ぐスカイ・ブルーだ。空と言うだけに「sky」。そんな色彩に挟まれた広大な土の上を、学校帰りの二人は仲良く並んで歩いていた。

「今日は本当にありがとう。助かったよ。」

左側を歩くヴェネチアーノがいつものようにのんびりとした調子で、隣のフェリクスに笑いかける。夕方の狭い野道は藁や草の臭いがした。暖かで懐かしい風が舞う。

「俺こそ。それにしても、ルートさん早く還ってこられるといいな。」

フェリクスがサイドで流れる自分の髪をかき分けながら言う。彼の髪は綺麗なブロンドで、まるで人が手を加えたような直毛だった。よって肩まで長く伸ばしていても誰も見苦しいとは思わなかったし、何より本人が自負していた。その仕草にヴェネチアーノは只感心して彼のブロンドを眺めていたが、「ルート」という名前がフェリクスの口から出たので、顔を曇らせた。日は陰りを増す一方だ。

「また、委員会なんだって。」

「ルートさん、たしか委員長なんだろう?」

「うん。俺は、よくあんな面倒くさいことができるなぁ、っていつも感心するんだ。」

 

 

彼らの学校はまもなく文化祭の頃だった。ヴェネチアーノの恋人であるルート―本名はルートヴィッヒという。学年は二人より一つ上だ―は三日前に文化委員の長に抜擢されたのである。彼は体も大きく、体育会系であったのでそれなりにガッチリとした体格をしている。そのせいで変な威圧感があると言う人間も居るが、誠実で生真面目で賢く、それでいて別に驕り高ぶっている訳でもなく、世間からは周囲を上手く取りまとめる役として一目置かれていたのだった。それに加えて完璧主義者でもあったので、「どうにか今年の文化祭も良いものにしたい」と、連日遅くまで学校に他の役員達と居残っているのだという。

しかし、恋人であるヴェネチアーノは何一つ困った様子ではなかった。毎日一緒に下校をしていたので、彼は彼の恋人をその委員会が終わるまで、しんとした教室で何十分も待っていなければならなかった。当然だと思っていた。本人は決して気に病んでいた訳ではない。放課後にはたくさんすることがあった。一人でも本を読んだり、黒板やノートに絵を描いたり、鼻歌だって歌っていられた。ヴェネチアーノは絵や歌が大の得意だった。例え何もすることがなくても大好きな「シエスタ」をすればいいだけの話だった。それに加えて、彼は恋人を待っている時間があるということは「なんてロマンチックなんだ」とも思っていた。とにかく何も苦痛ではなかったのだ。しかし気の毒なことに、その彼のお相手というのは全く別の思考をする質だったので、とにかくルートにとっては大変な苦痛であったらしい。秋の夕暮れだ。日も短くなって、空気もだんだんと澄んできた。彼にとっては、そうなると只苦痛だけであった。彼の性分からすると、自分の責任の件で恋人を放課後の学校に長時間待たせる訳にはいかなかったのだ。よって、一人情熱的なヴェネチアーノの「ロマンチック」な時間とやらは、そうそうに彼自身の恋人から没収されることとなった。

「俺のことはいいから、他の友人と早く帰ってくれないか。」

ルートは三日経ってからやっと、非常に言いにくそうにこう述べた。ルートの顔からは「すまない」という言葉があふれ出ていた。これに対してヴェネチアーノは別に何とも思わなかった。ルートがルートであったからだ。

「はい。わかりました。」

敬礼のポーズとともににっこり返事をして、それからの帰り道は、しばらく友人のフェリクスと一緒にすることを決めたのである。

フェリクス自身も「それは丁度良い」と喜んだ。フェリクスもヴェネチアーノと同じ境遇だったのである。いつも下校を共にしているフェリクスの親友も、偶然文化祭の実行役員の一人で、会議にかり出されたということだったのだ。「一人で帰るのは寂しいと思っていたところなんだよ。」と、普段から仲の良かった二人はすっかり意気投合した。ちなみに、フェリクスには“親友を待つ”という選択肢はなかったらしい。

 

 

西の空に金星が出た。スカイ・ブルーはどんどんと色を変化させ、紺色のグラデーションを作り始めた。フェリクスとヴェネチアーノは楽しく会話をしながら道をまっすぐ歩いてきた。会話の内容には、もちろんルートとヴェネチアーノの可愛らしい恋の話もあった。が、突然フェリクスが足を止めた。止まって、顔を俯かせる。より透明になってきた夜の風がフェリクスの長めブロンドをきらきらと撫でる。

「ど、どうかしたの?」

ヴェネチアーノは驚いてフェリクスに駆け寄る。手をとってみたが、フェリクスは黙り込んだままだ。

「気分でも悪いの?」

慌ててフェリクスの背中を抱くヴェネチア―ノ。しばらく二人ともそのまま静止していたが、フェリクスが息をはぁっと吐いた。沈黙が破れた。

「悪い、ヴェネチアーノ。俺、ずっと悩んでて。」

「・・・え?」

突拍子もない発言に、始終どこか抜けているヴェネチアーノは人の何十倍も対応に困った。

 

つづく

バレンタインデー




高い天井にブーツの音を響かせ、メロは足早に自室のある寮へと向かっていた。
ウィンチェスターの冬は極寒だ。円形のアーチがいくつも連なる外の廊下は、当たり前だが外界同然の寒さである。素晴らしく風通しの良いそこで、メロはマフラーが鼻までくるように被り直す。肩ほどの髪が白いマフラーから幾房も溢れ北風とともにサラサラと流れた。
きちんとボタンの閉められたピーコートは黒、膝丈程度の短パンも黒、おまけにハイソックスやブーツまで、とにかく身にまとっているものは全て真っ黒。しかしそんな取り合わせも、彼が着れば派手なくらいに見える。青白い肌、痩せこけて影になった鼻筋。ギョロギョロと動き回る大きな目。オカッパのように切り揃えられたブロンドの髪など、それはそれは魅力的であった。
メロは満足げに両手に紙袋を抱えている。
勢いよく寮の入口のドアを開ければ、なんとも甘い香りが鼻をくずぐった。メロにとってその匂いはある意味でとても重要なものだったし、身近なものだった。だからそれが何の匂いであるかはすぐに理解できた。

寮の一回は談話室や広い共同キッチンがある。
メロは通路から明かりが漏れたキッチンを覗いた。
そこにいたのはリンダだった。彼女は流し台の傍に立ち、何やら両手を動かしながら本と睨めっ子をしている。

「Hai!リンダ!」
メロがドアから手をふる。
「!あら、メロじゃない。おどろいたわ。」
リンダは顔を上げてメロを見た。
「鼻が真っ赤ね、どこか行ってた?」
「物資調達にさ。ところでリンダはここで何をしてるの?」
メロはリンダが手の平でコロコロと転がしているものを見つめた。リンダは少しドロっとしたチョコレートを丸めている。
「トリュフ作ってるのよ。明日はバレンタインデーでしょ!」
「旨そう!俺も食べたい!」
「ダメよ。ボーイフレンドにあげるんだから。」
「でも、材料ならある。」
メロはそう言うと、自分の抱えていた紙袋から何枚もの板チョコレートを机の上にばらまいて見せた。リンダは納得する。そして「メロはいつでもチョコレート持ってるもんね。」と溜め息混じりに呟いた。物資調達の物資とは、彼にとってはチョコレートなのである。施設を出なければチョコレートは買えない。

「そこにレシピはあるけど、もう遅い時間よ?まさかあげたい相手がいるとか?」
「自分で食べれるんだよ。」「……とめても無駄でしょうね。」

メロは言うなりコートやマフラー、手袋を脱ぎ、腕捲りをしてキッチンに立った。たまには板チョコレート以外のチョコレートだって食べてみたい…。メロはいつものように、問題を解く加減でトリュフを作り始めた。何しろ好奇心だけはあるし、思いついたことは何でも即座にやらないと気が済まない質なのである。故に人の話は大抵聞かない。彼の同室の相方なら、メロをそんな風に言って咎めるかもしれない。
ボールに生クリームを入れて軽く煮立て、刻んだチョコレートを入れる。
そこに少量のリキュールを加えて混ぜ合わせる…。


…メロのトリュフが出来上がったのは真夜中だった。


始めてにしてはなかなか上出来だった。見目も良いし、味も申し分ない。丁寧に皿に乗せされた何粒かのトリュフを大切に持ち、メロは寮の2階の自室に向かった。 自室の扉をそっと開けると、中はもう真っ暗だった。…と、言うのも、メロには同室の相手がおり、寝るのも何もその相手と同じ部屋で過ごしていた。その相手は――ニアと言う少年だが――、帰りの遅いメロを夜遅くまで、自分の睡眠時間を削ってまで待っているような性格ではなかった。よってこんな夜遅くに部屋に電気がついている訳もないのだ。

メロはゆっくりと手探りで自分のベッドまでたどり着く。慣れた部屋であるから、そのくらいのことは容易であったが、問題なのは、作ったトリュフだった。
後先考えず何でもかんでも自分本位に行動するメロにはよくある話で、行動を起こしたあとのその結果、今回の場合ならトリュフだが、メロはその残ったトリュフをどうするか全く考えていなかった。こんな暗闇の中で、食べてしまうのは心底勿体無いし、歯磨きをするにもこんな中では億劫である。電気をつけるにも、ニアはすっかり夢の中だろうし、彼の寝起きの悪さなら心得ているので憚れた。 仕方がないから
「もう寝るか。」
という決断を下す。
作ったトリュフは明日にでも大切に食べようと、机の上に置いて、メロも眠りについた。



「メロ、一限目遅れますよ。」
朝、ニアの声で目を醒ましたメロは、自分がスウェットにも着替えずに眠ってしまっていたことに気がつき、昨晩のことを寝ぼけた頭で必死に思い出す。

「メロ、昨日はどこに行ってたんですか?確かチョコレートの買い出しかなんかに行くと言って、それから戻らなかったでしょう。」
ニアは壁に掛かっている衣装鏡の前に立ち、白いシャツに袖を通しながらメロに問う。

「あぁ〜、確かトリュフ作ってて。」
「トリュフ?」
「なんかバレンタインとかでリンダがさぁ…」
リンダが……
メロは勢いよくベッドから降りると、思い出したという風に二人のベッドの隣になる机に駆け寄る。机というか、トリュフの乗った皿に。

しかし、そこにあったのはトリュフではなく、ただの皿であった。ココアパウダーの跡があるのだから、トリュフ自体は乗っていたはずなのだろうが…。
一瞬、メロの思考が停止する。おかしい。昨日確か、暗闇の中ではあったがこの場所に置いたハズだった。

ボケっと突っ立っているメロの横で、ニアが機嫌良さげに言い放つ。
「あ、そこにあったチョコレート、美味しかったです。ごちそう様でした。」
「…は?」


「だって、今日はバレンタインでしょう。」
ダッテキョウハ、バレンタインデショウ。

メロの頭の中をニアの言葉がかけめぐる。all things he said!!怒りを押しつける理由と場所がわからなかった。とにかく怒りだけが感情を支配しているのは解るが、("ありがとう?""バレンタインでしょう?")
メロの思考は以前固まったままである。
「メロ、さきに授業に行きますよ。あなたの気持ちは十分伝わりました。」

「…!!ちがーーーーーーう!!!!」

やっと出てきたメロの言葉はなぜか弁解の言葉であった。
しかしその叫びも、ニアが部屋から出ていった後のドアに当たっただけで、酷い勘違いをした彼に届きはしなかった。






終わっとく。

オチはニアが酷い妄想癖を持っていたということで…勘弁して下さい…

二人とも12歳くらい……です…ぶるぶる
あ、最初のメロの容姿に対する語りは長々といらなかったですね。いや、メロが好きすぎてね、ついついあの顔立ちの説明?を書いてしまいます。

過去に書いたルナミ


せっかくルナミが良い感じに再熱してるし、なんか巷の評判も良いみたいなんで載せてみます。
まぁ、倉庫化したHPにあるのと同じだけど。






★★★★



――だから、オレがいるんだ!――

ニッと笑ったルフィの顔は、どこか幼さが残っていた。

なのに、本当にたくましく思えたのだ。


ドキドキした。



[命を繋ぐ]



 船の上で過ごす「日常」が好き。もちろん宝探しや、冒険もやめられない。…というのも、きっとあいつの影響だ。あんまり危険なのは好ましくないけど。
 今日のグランドラインの気候はめずらしく穏やかで、これは絶好のみかん収穫日和といえた。
風と波がおとなしく船を進めてくれている中、私は一人、ベルメールさんのみかん畑にいた。

 みかんでやまずみになったバスケット。
ふとした拍子にその一個がすべり落ちた。
「あ。」
船の上で勢いよくころがるみかん。腰を落として、慌てておいかける。すると、そうこうしている私の目の前に、いきなり現れた「誰か」。
みかんはそいつの足下で止まった。
私自身、みかんを追いかける事に夢中だったわけだ。急に止まれるわけがない。その「誰か」にぶつかりそうなって、あわてて手をついた。


「何してんだ、ナミ?」

心底不思議そうだといった声が頭上から降ってくる。

ルフィだ。
ルフィはそのみかんを拾うと、私へと差し出した。

「はい!」
「ありがと。みかんもいでたら転げちゃったのよね。」
そう言って受け取り、何事もなかったように振る舞って踵を返せば、
予想通り。ルフィは私にぐいっと手の平を向けると、
「そのみかん、くれよっ!」

満面の笑みで言った。

 正直、そんな風に頼まれるとつい許したくなる。でも、グランドラインの気候ははちゃめちゃだし、みかんなんてかなり貴重な物になってくるのだ。この船の非常食にもなりかねない。
「だーめ。」
「けちくせぇなあ。」
ルフィは唇を尖らせる。
「……。」
あいつのころころ変わる表情を見てると、こんな真っ昼間からだけど、なんだか可愛いと思ってしまう。そんな自分は、もうかなり重傷だ。

思わず誘い出したくなって、
「みかんはあげらんないわ。だけどそのかわり、ちょっと付き合わない?」

ルフィの腕を引いた。

★★★★

 みかん畑の木陰に座る私とルフィ。
たわいのない話で盛り上がっては、時折恥ずかしい程見つめあってキスをする。
そのたび、私はあんたのために生まれて来たんだと思えた。この先、偉大な海賊王になるであろう
この男のために。なぜだか、図々しい感情だとは思わない。
そして育ててくれたベルメールさんはもちろん、顔も名前め知らない両親にさえ感謝をした。
「そう言えば、あんたの両親はどんな人達なの?」
ふと気になって聞いてみる。
この船で仲間の生い立ちを聞く事はタブーな気はしたけど。以前から気にはしていたことだった。
「よくわかんねぇ。」
あっけらかんとルフィは言った。
「私と同じね。」
なんとなく解りきっていた答えだったのかもしれないと、そんな質問をした自分を少しだけ責める。思わずルフィから目をそらしてしまった。

「でもさ、ナミ。」
声にドキリとする。ちょっと力強くて、いつもより引くい声。
私の好きなルフィの声だ。
「オレのじいちゃんも、父ちゃんもみんな、ちゃんとさ…オレがナミを見つけたみたいに、そばに『良い女』がいたんだろーなっ!」
―だからオレがいるんだ!―


 ニッと笑ったルフィの顔は、どこか幼さが残っていた。なのに、本当にたくましく思えたのだ。
ドキドキした。


そうか。
私は、
私とあんたの、
ルフィの…
「命を繋ぐ存在」なんだ。


「それって素敵ね。」
ルフィのその一言は、私のこれからの人生を物語っていた。海よりも深い彼の声と眼差しは、余計に涙を誘うものだった。
ルフィはいつものように「しししっ!」と笑うと、私の腰に腕を回して抱き寄せてきた。
私も反射的にルフィの肩に腕を回す。


「ナミ。」
「ん?」
「すっげぇ好きだ。」
「ふふ、私も。ヤバいくらい好き。」


そう言ってまた、キスをした。








えんど


修正加えましたけど。
私のルナミ観をまとめたような小話。
お粗末様でございました。。。