※アサヒ君は塔谷家の養子で、わけあってアキヒカに育ててもらってます。故にパパママ。
※アキヒカ22〜23才設定。アサヒ10才程度。
※アキヒカ達は相手のことを名前で呼んでますが、使用というか、一種の愛情表現です←←
※せっかく車の免許とったから、初心者のうちにアキヒカネタに使わせてもらいます(笑)
「夏休みだよなぁ〜」
「世間はね。」
部屋の中に居ても、セミが遠くの方で鳴いている音がするし、まだ朝方だというのに、妙に明るい外の景色。
テレビの時報は8:00。
たまたまつけていたチャンネルではワイドショーが始まった。テレビの中では、声の高いイマドキの女性アナウンサーが、よく晴れた夏空の下、「今夏のオススメスポット」だという、テーマパークの紹介を始めたところだ。
ヒカルはその番組を別に何を考えるというわけでもなく、ただじぃっと眺めていた。
テーブルの上の食事にはほとんど手をつけてない。香ばしく焼けたパンも、冷えていた牛乳も、すっかり冷めてしまっていた。
それとは逆に、ヒカルの向かいに座っているアキラはパラパラと新聞をめくりながら朝食後のコーヒーブレイク中。食事に手をつけないヒカルに耐えかねたアキラが、新聞から目を離した。
「ヒカル…、朝食。」
「ん〜?」
「ちゃんと食べて。」
「…オレ夏バテかも。」
「でも、食べないと身体を悪くするだろう。」
僕たちは特に身体が資本なんだ。
まるで絵本の世界に入ったようなテーマパークをかけまわるアナウンサー。頭にはリボンのついたネズミのミミをつけている。
ヒカルはアキラに諭されパンを一口カジると、またテレビに吸い込まれていく。
なんとなく、
懐かしい気持ちがするのだ。
「おはよう。」
眠そうな目を擦り、リビングに入ってきたのはアサヒだ。
「おはよう、アサヒ。今パン焼くからね。」
「おはよー。」
アキラはニッコリ笑うと新聞を畳んで台所に向かう。
相変わらず出来た主夫だよなぁ…と関心するのはヒカルだ。
すっかり着替えをすませたアサヒがちょこんとヒカルの隣に座る。そしてヒカルと一緒になってテレビに目を向けた時……。
「あぁぁー!!」
「ぅわあ!!な、なんだよいきなりデカイ声でーーー!!」
「どうしたっ?!」
突然大声をあげたアサヒにヒカルは目をぱちくりさせる。台所にいたアキラも驚いた様子でカウンターから顔を出した。
アサヒは目をキラキラさせて二人の顔を交互に見ると、興奮した様子でテレビ画面に向かって指をさす。
「これっ!今、テレビに写ってるの!!ネズミーランドだよー!!!」
今まさにテレビの中でアナウンサーが飛び回っているテーマパークこそが、可の有名な"ネズミーランド"だったのだ。
「何?鼠?」
アキラが頭の上にクエスチョンマークを飛ばす。
その辺はまぁ、彼だから仕方ない。
「夏休み前から、学校ですごく人気だったんだ!!ナオ君もひなちゃんもお父さんとお母さんに連れてってもらうって言ってたよ!!」
椅子から立ち上がり熱弁を繰り広げる息子に、ただただ「へー」とテレビを見つめるアキラとヒカル。
確かに、カメラには親子づれや恋人たちの姿が多く写っている。
囲碁騎士に夏休みなんて現実的な話でないが、世間はすっかり夏休みなのだ。
ヒカル自身、そういえば…と、自分の幼い頃の夏休みを思い出す。
一人っ子だったせいもあっただろうが、散々甘やかされて育ってきた自信がある。
長い休暇になれば、大好きなテーマパークも、動物園も望めば連れていってもらえた。
懐かしさを感じるのは…そんな幼い記憶が残っているせいなのだろうか……。
ヒカルはチラリとアサヒを見る。目を輝かせて、一心になってテレビの中を見つめている。
つまりは、
「そういうこと」なのだろう。
「よし!!ならさ、
行こうぜ、ネズミーランド!!」
「本当おおぉっ!!?」
「えっ?」
ヒカルの発言にアサヒは驚きと嬉しさを隠しきれずに驚嘆する。パンと牛乳を運んで来たアキラが「いつ?」とカレンダーを覗き込む。
「いつにしよっか。俺とアキラが手合い、指導碁、研究会ない日っ。」
ヒカルの突然の提案に、「んー…」と唸りながらカレンダーと睨めっこを始めるアキラ。
「どうやって行くんだ?」
「都内だろ?車に決まってんじゃん!久しぶりに俺が運転するしさっ。」
「ちょっと待て!君、ペーパーだろ?!いったい何年乗ってないと思ってるんだ!」
「だってアキラが乗せてくれるからさぁ…、甘えちゃうんだよ…。」
「とにかく、運転するなら僕が車を出す!今のままじゃ、君はATだって満足に運転できないだろう!」
「なんだよそれ!ちょっと練習すりゃ、感覚くらいすぐ思い出すってー!」
「お母さん!」
いつものように言い合いを始めた二人だったが、アサヒの声で一時中断となる。
「ありがとう!!」
すごく嬉しいよ!
満面の笑みで勢いよくヒカルに抱きついたアサヒに、アキラがしばし休戦だな…と、愛しそうに息子の頭を撫でた。
「俺はさ、この三人で、楽しいこと、いっぱいしたいんだ。それだけなんだって。」
クスリと笑うヒカルの顔は、どこか満足気だった。"家族という幸せ"を知ってる自分は、きっとアキラと一緒に、それをアサヒに目一杯教えていく役割があるはずなのだと思っていた。
例え血は繋がらなくとも。
「楽しみだな。」
「今度の休日、絶対な。」
運転の話はまた今度でいいや。と、ヒカルは心の中で一人ごちた。
END
久しぶりアキヒカ番外編!!
拍手くれた方にリクエストして頂いたのがあったので、番外編です!養子の制度的には親子ではないですが、この話ではアキラママの策略でこんな風になってます。←詳しくは連載中の8話で(笑)