※一応前回からの続き。そして完結編。
「はいこれ着てー。」
リビングに上がらせてもらって(以前は自分の家でもあったわけだから"上がって"で、いいか。)、上着を脱いだところだった。
落ち着く暇もなく、ポーランドから手渡されたのはエプロン。
薄いカーキと白のチェックの極普通のエプロンだ。そういえば、自分がここに居た時に使っていたもの。
「え、これ着るの…。」
今来たばかり…と付けたそうとしたが、ポーランドはすでに台所に消えてしまって居ない。
「まったく。」
溜め息混じりにそのエプロンを装着すると、なんだか懐かしさが込み上げて来る。
確かにいつも俺はこれを着てご飯を作っていた。
(………。)
途端に悲しくなってきて、ぶんぶんと首を横に振り、嫌なことは考えないようにする。
…それにしても。自分の私物、エプロンまで大切に置いていてくれるなんて、
(可愛いとこもあるね。)
嫌な気分になっていたのも瞬く間に一新し、今はちょっとニヤけてしまうから、やっぱりポーランドの威力ってすごいんだ。
「リトー早くだしー。」
「はいはい。」
されども、
振り回されいる感は否めない。
(あははは…。)
俺は渋々台所にむかった。
「何するの?」
カウンターから除きこめば、しっかり準備の整ったポーランド。
ふりふりピンクの、どう考えても女性用のエプロンは、もはや予想通り過ぎて変な汗もでない。
「あのな、今からパルシュキ作るん。」
ガサガサと戸棚からボウルや泡立て器を取り出して、いつになく真剣な表情。
「パルシュキ?この前俺が作ってあげたばかりだよ?」
「だって…」
「まだ食べ足りないの?」
カウンターから勢い良く離れるとポーランドの隣りに立って準備を手伝う…。
しまった。
呆れた…って声色だったかもしれない。
「あれ美味しかったからさ、俺も作れるようになりたいし。」
「え?」
「自分でも作れるようになりたいんっ!!そんで、リトが居らんでも美味しいの食べれるようになって、
…それから、リトにも美味しいって言ってもらえるようなん作りたいんっ。」
口をぎゅっと堅く結んで、うつむき加減。頬が少し…赤い。
一瞬動かなくなったけど、またいそいそと用意を始める。
「………。」
目をパチパチ。
呆気にとられたのは俺。
完全にやられた…と思ったのも俺。
そうやってポーランドの忙しく動く背中をボーっと見ていたら、
無言でレシピ本を渡された。
「いや、本なくても大丈夫だから…。」
やっと出てきた言葉は、なんて空気の読めてないこと。
そうじゃないだろ。
「覚えてんの?リトすげぇ。」
「君の…たくさん作って来たから。」
俺は、さっきのポーランドの発言が本当に嬉しかったし、胸がすごくドキドキしたけど……でも、ちょっとね、引っ掛かる部分もあって。
向かいにいるポーランドの両肩を掴むと、ちょっとだけ膝を崩して彼と同じ目線に立つ。
今度はポーランドの方が目をパチクリさせている。
「俺にパルシュキ振る舞ってくれるの?嬉しいよ、もちろん教える。でも一度しか教えないからね。"今日"しか、教えない。
パルシュキ食いたいなら、いつでも俺を呼べばいいじゃん。"居なくても"とか、言わないでよ、お願いだから。」
彼の目を見つめて、一心になって話す。急にフッと目線が外れたと思ったら、そのままポーランドが俺の胸の辺りに倒れこんで来た。
そしてぎゅっと服を掴まれる。
「ポーランド?」
「ありがと。」
くぐもった声。
そうだった。
ずっと寂しかったって、
言ってたもんね。
「こちらこそ。」
銀に近い金色の髪の上、頭の上にそっと感謝を込めてキスを落とす。
「あー。リト今キスしたっしょー。」
ムクリと起き上がったポーランドは、いつものあの表情だ。
「したよ?」
「昼間からえっちやしー。」
「……ぇっ…ち…って…。」
「あれやし。パルシュキは後でもええし?」
「教えます。パルシュキ。今直ぐに。」
さぁー、始めよう!!!
わざと大きな声を出して背筋を延ばし、いらぬ邪念を振り払う。
「きっと二人で作ったら、今まで以上に美味しいの作れるよ。」
「超楽しみやしー!」
ポーランドが嬉しいそうにニコッと笑う。
俺にとってそれは最高の幸せなの。
そしてそれは美味しいパルシュキを作るための最高のエッセンス!
俺はいつだって君の話を聞いていたいと思うんだ。
だから頼っていいんだよ。
俺は君が好きなんだから。
だからまたTELして。
君の声を聞かせて―――
end
トリフェリです。フェリが誘い受けになってしまった。最後グタグタですいません。
トーリスは真剣になったりキレたりすると男言葉になるといい。