猫と桜



桜の開花時期なのに大雨だった。

春の嵐は無残にも桜花をもぎ取ってゆく。

そして雨が降り続く。

立派な桜のじゅうたんもぐしょぐしょで、擦り切れていた。


にゃあん。


猫の声がした方向を見ると、真っ黒な猫がちょこんと佇んでいた。

ぼくに背を向けて。

そおっと近付いてゆき、その猫の視線を辿る。

小さな湖の向こう側、三毛猫がこっちを見ていた。

『あのう』

「はい?」

背後から女性の声がして振り返る。

『うちの猫に用ですか?』

そう言った彼女の視線の先には黒猫。

よく見ると黒い首輪をしていた。

……、……?

もしかしてぼくは、飼い猫を攫おうとでもしている風に見えたのだろうか。


「いえ、ただ視線の先が気になったもので」

ほら、と三毛猫を指し示せば、彼女は安堵の色を浮かべた。

『そうですか、すみません。私てっきり……変な人かと』

「まあ、それは否定しませんが」

『え!?』

驚いた顔の彼女に微笑んで話を続ける。

「可愛らしい黒猫ですね、名前は何と?」

『あ、はい。さくらです』

「桜の時期に、さくらという猫と出会うとは。すごい偶然です」

それはまた不思議な縁があったものだ。

『そうですね、ここはさくらのお散歩コースなのでよく出没しますけど』

「撫でても?」

『どうぞどうぞ』

つやつやした毛並みは、手触りが良かった。

撫でれば気持ちよさそうに目を閉じる。

「さくら」

呼べば、にゃあんと返事をしてくれた。



to be continued.

花園



車窓からはどんどんさびれてゆく景色が見えた。

黒ずんだ建物、ひびの入った家。

下車した駅は無人で、余計に不気味だった。


コツコツとヒールを規則正しく鳴らして歩きながら、目の端に映る浮浪者を視界にとらえる。

パイプ椅子に座り込む白髪頭、地面でいびきをかく男性。

小汚い店から出て来るのは、滑舌の悪い前歯の無い人。

すれ違うのは自動車いすに乗った老人や、ホームレスばかり。

何だ、ここは。

キュッと襟を正して歩みを速める。

ここを真っ直ぐ抜けるだけ、大丈夫だ。

日は高く昇り、空は青い。

近くにスラムが在るらしいが、ここはまだ安全なはずだと聞いた。



to be continued.

五人の箱庭



狭い世界の中。

木の葉が風に揺られてサラサラと音を奏でている。

雨上がりで透き通った水色の空は、地面に近づくにつれて白い色彩が増す。

『んーーー』

どうして雨の後の晴れ空は、澄んでいる様に感じるのだろうか。

『でもあっつ〜〜い』

遠くの地面がゆらゆら見える、この暑さと言ったら。

『あ゙ーーー、っぐ』

ゴッと鈍い音がして、脳天チョップを受けたことを理解する。

「うるせえ」

振り返ればじっとり睨む男、幼なじみのムラサキが居た。

『チョップしなくても良いじゃんバカ』

仕返しにとムラサキの頭目掛けて手を振り下ろすも、呆気なく避けられた。

「口に出すなら「寒い」にしとけ、これ重要」

『寒い!寒いっ!さーむーいーーー……』

反応ナシデスカ。

『ツっこめよ!』

「何でだよ、若干涼しい気がし

『ないから!』

それはムラサキの気のせいだ、温度は変わらない。

「帰り道で何やってんのよアンタ達、コント?」

後ろから掛けられた声の主は、友達のミーちゃんだった。

『ミーちゃん!聞いてよ、ムラサキが暑いのに寒いって言えって』

「はいはい知ってるから、大声で言ってたから」

ミーちゃんが、冷たいです。

「気の持ちようだ」

「寒いとか言っても暑い事に変わりは無いわよ、バカなの?」

うっと言葉に詰まるムラサキ。

ざまあみろ。

「ミ〜〜〜ちゃーーーん!!」

ガバッと、このくそ暑いのに走り寄って来た男はミーちゃんに抱き付いた。

「暑い」

「愛しの彼氏、ユキヤだよおおおおおっ

構わず頬をスリスリする。

「ごめんムラサキ、やっぱ気の持ちようだわ。寒いわうちの彼氏。ってか捨てたい」

真顔で言うミーちゃんの目が死んでいた。

「嫌だーーっ!!捨てないでくれよおおおおっ」

(((激しくうぜえ)))

『あ、そこにゴミ箱が』

「はい廃棄ー」

ガバッと頭を鷲掴んでミーちゃんはゴミ箱に近づいてゆく。

「痛い、髪が抜けるよミーちゃんっ!?頭突っ込もうとしないでっ!!」

((どっちがコントだっ))


「やほーサーヤちゃん」

背後からいきなり現れた!?

「ユキヤと一緒に帰ってたの。走って行っちゃうと思ったらカノジョさんね」

ふむふむと納得する彼はユキヤの友達の……誰だっけ?

『お名前をどうぞ?』

「うわひっどい、名前忘れちゃったの?」

こくこく頷くと笑われた。

「ちょっとショーゴ、うちのサーヤにちょっかい出さないでよ」

ミーちゃんが間に入って私を庇う。

「何なのこのボディーガードさんは。自己紹介しようとしてただけなのに」

「は?今更何……、サーヤあんたもう1年経つのにまだ覚えてないの」

相変わらずの無関心というか、ねえと言われる始末。

『のの人』

「の?」

『なんとかなのーって口癖だから、ののくん』

「っ…ふっ、ののくんって超バカっぽい」

「本当ひっどいの」

「「「『あははははは』」」」



to be continued.

人を喰う者



遅れ気味な私の手をそっと包む大きな塊。

それが手だと気付いて、彼を見上げた。

逆光で彼の表情は見えないけれど、微かに笑った気配を感じる。

私はぎゅっと、彼の大きな手を握り込んだ。

『どうして……』

どうして貴方の手はこんなにも。

『どうして、あったかいの?』

私の手は、とても冷たいのに。

「さあ」

繋いでいない方の手も添えられる。

『あったかい』

涙が出そうなくらい、優しさが痛い。

私のもう片方の手まで引っ張って、両手で覆い込んでしまった。

「すぐ暖まる」

私は貴方達の敵なのに。

後ろに付いていた者に視線を送ると、サッと影が消えた。

一度帰還して現在の情報を持ち帰るのだ。

『……私は間者よ?』

「分かってる」

分かっているのに、どうして放っておけないの。

「行こう」

冷えていた手は貴方の温もりで暖かくなった。

『うん』

人を喰らう化け物を、退治する為の弱点を探れと命を下された。

他でもなく彼らが、彼がそうなのだ。

「……っ!危ない!」

彼は私を抱き込み、右半身に強烈な打撃を受ける。

「う、ぐっ……」

彼ごと吹っ飛ばされるが、痛みは全て彼が引き受けてくれていた。

『守らないでよ』

私は、貴方と一緒には居られやしないのに。

「大丈夫だ、俺の回復力を見くびらないでもらおうか」

ああ、どうしてこの人は。

『……皮と、骨まで』

貴方のものになれたら良いのに。

「どうした?」

『何でもない』

そう言って、彼の肩を抱き寄せる。

『痛い?』

「そのうち治るさ」

彼を支えて歩き出す。

前を歩く集団から、遅れてはいけないのだ。

人間より強い彼らが集団行動をとるのは、自らの身を護る為。

仲間意識など通常は持ち合わせていない……目の前の彼だけは別の様だが。

『人間みたい』

「人間の母親から産まれたからな」

強靭な肉体を持つ化け物とは言え、痛いものは痛いし感情も有る、人間と同じだ。

恐れられる原因は、人を喰らうという一点に他ならない。

『どうして人間を食べるの?』

「じゃあ聞くが、何で牛や豚、鶏肉を食べるんだ?」

私達は動物を食べて生きている。

同種を食べない事を前提に、狩っている。

『人は、美味しい?』

「美味い。だけどな、」

ぐりぐりと彼は私の頭を撫でる。

「会話出来るものを、食べたいとは思わない。人間だってそうじゃないのか?」

もし牛や豚や鶏が、人語を話せたら。

人はそれを食べるだろうか。

『私は、食べたくないな……』

「そうだろう?」

ザザっと、草を踏み分ける音がする。

3、4……いや、7か?

「まずいな」

人より回復が早くても、さっきの傷はまだ癒えていない。

それにいくら強くても、多勢に無勢だ。

『……すー……』

大きく息を吸う。

私が戦うべきは、今だ。

『はー……』

息を吐ききって、支えていた彼の体を突き飛ばす。

「っ?!」

私の役目は情報収集と、集団から離脱させる為の餌だ。

一部でも全部でも喰われた上で化け物を連れて来いということだ。

少し喰われて逃げ出せば、私を化け物は追うだろう、そこを大人数で叩く。

『……!』

正面に見える人影へ、真っ先に突っ込んで行く。

私の同業者でも、彼らは私みたいな捨て駒じゃない。

懐に忍ばせたナイフを手繰り寄せ、相手の首に突き立てる。

『いち……』

駆け寄ってきたもう1人に、催涙スプレーを振り掛けて、同じ様にナイフを突き立てた。

『にいっ?!』

ドスっと鈍い音がして、体が宙に浮いている事に気付く。

視界の端に男が見えた、殴られたのだ。

近くの木に左半身を強打して、体勢を立て直す。

燃える様な痛みが走ったが、相手は暗殺者だ、待ってはくれない。

拳銃を取り出して狙いを定め、瞬時に放つ。

『さん』

銃は音が大きい為、使いたくなかったが仕方無い。

くるりと反転して、銃を構えたもう一人も撃ち抜く。

『よん』

そして彼の元へと走る。

左がぬめっている気がするが、構うものか。

「おらあっ!」

彼の周りには2人が倒れていた。

今彼と対峙している男が最後の1人だろう。

『作戦失敗だ!帰還しろ!』

男は私を振り返り、視線を私の左脇腹へと移す。

「殺すまでもない」

そう吐き捨てると瞬時に去って行く。

「大丈夫か!?」

正しいこととは何だろう。

人間を喰らう化け物を殺すこと?

化け物と呼ばれる優しい人を護ること?

『だい、じょーぶ……じゃないかも』

血が出過ぎている。

「今止血するからな」

どこか遠くに音を感じて、私は微笑む。

『良かった、生きてて』

貴方が生きていて良かった。

「ああ、生きてるから死ぬなよ!」

違うんだけどなあ。

『貴方が生きて……良かった』

ああ、涙で前が滲む。

「お前は自分の心配をしろ」

自分……、きっともう助からない。

全身から力が抜けて、頭から血が降りていく。

視界が狭くなる、私は黄泉へと足を踏み入れてしまっている。

『お願い』

彼の手を握る。

このまま死んで、土に返ると言うのなら。

『私を食べて』

「何、言ってるんだ!お前は助かる、俺が助ける!」

分かっているでしょうと、私は首を振る。

『貴方に食べられたい』

無駄になる命なら、貴方の血肉となって一時でも貴方の中で生きたい。



to be continued.

砂漠の国

書きかけ小説整理中です。



この世界は嘘で塗り固められている。

認識が少しずつずれて、やがては……自分ではないものになってしまうのだ。


私がこの世界にやって来たのは3ヶ月程前になる。

自ら来たのではなく、気付いた時にはここに居た。

「何だ、また考え事か?」

短髪の黒髪に美しい赤い目のこの男と共に、私はこの地へ降り立った。

『まあね』

彼はジェイと呼ばれ、私はクオネと呼ばれている。

私達は何も覚えてはいなかった。

どうやって生まれ、どうしてここに居たのか、まるで分からない。

最初の記憶は、広大な砂漠の中でジェイと並んで立っていたものだ。

彼は私をクオネと呼び、私もまた彼をジェイと呼んだ。

自己紹介もしていないのに、何故だか互いの名が分かった。

「行こう、クオネ」

彼は微笑み、手を差し出す。

私は戸惑いもせず、それを握ったのを覚えている。

『ジェイ?』

歩いて歩いて、彼と並んでひたすらに歩いていた。

「ん?」

『何で砂漠なのに暑くないの?』

風も無いのに暑くない、汗も出ないし疲れさえしない。

「何でだろうな?……お前は、ここが何処だか知ってるか?」

『知らない』

心にわだかまりがあるのは分かるのに、何一つ思い出せなかった。

「俺もだよ」

『じゃあ何処へ向かっているの?』

立ち止まって振り返れば、一直線に続く足跡が見える。

「真っ直ぐ歩いてれば、どっかには着くだろうと思ってな」

……ガクッときた。

『行こうと言っておきながら、行き先は未定だと?』

「そうじゃない、俺は此処じゃないどこかへ行こうって意味で言ったんだ」

どちらにせよ、砂漠地帯に居ても仕方がないので歩くしか道はなかったのだけれど。

『どうして私に声を掛けたの』

「俺は砂漠に女を放っておく程、非道じゃないからな」

にっこり笑顔で返されて複雑な気持ちになった。

「何だよその顔は。俺が声を掛けなかったら、お前は俺を置いて行く気だったのか?」

問われ、考える。

私はきっとジェイと同じ行動に出ただろう。

そうするのが当然だと、刷り込まれたかの様に声を掛けるに違いなかった。

『一緒に行こうって言うよ』

繋いだままの手をぎゅっと握り締める。

「ふっ」

ジェイは笑いを漏らして、くしゃくしゃと頭を撫でた。

その仕草に見覚えがある気がして、じいっと彼を見つめる。

「ん?撫でられるのは嫌いか?」

悪かったなと言って、彼は再び手を取り歩き出した。

『嫌いじゃない。何だか……懐かしい気がしただけ』

ぷいっと横を向くと、今度はわさわさと頭を撫でられる。

「拗ねるなよ」

『拗ねてないよ』

そうしてるうちに何かが見えた。

『ジェイ、前』

建物だろうか。オアシスには見えないので、街だろうか。

陽炎のせいでよくわからない。

「前、っ!?街……か?」

オアシスなら、よくある展開で偽物な訳だが。

『蜃気楼だったりして』

口にして早くも後悔する。

いくら疲れないからと言っても、歩き続けるのは御免だ。

「蜃気楼か。蜃気楼だとしても、まあ良かったんじゃないか」

『は?良かった?』

意味が分からない。

「蜃気楼が何故見えるか知ってるか?」

『知ってるよ、温度差で光が異常に屈折して起きるんでしょう』

その通り!と、ジェイは人差し指を立てる。

「だが、俺が聞きたかったのはそれじゃなくてだな……うーん、聞き方を間違えたな」

ふむ、と顎に手を当てる。

「街が見えるのは何故か」

『だから、光が屈折して…
「何を映してる?」

何とは、街に決まっている。

『どこかの街……っ?!街?!』

蜃気楼は、存在しないものを映し出すことは出来ない。

言い換えれば“蜃気楼に写し出されたものは存在する”ということだ。

「例えあれが蜃気楼だとしても、この世界は砂漠地帯だけじゃないっていうことだ」

満面の笑みを向けられて、急に冷静になる。

『この世界で、私達が考える常識が通用するならね』

すっぱり切ってやると、眉間に皺を寄せて悲しそうな顔になった。

「そうだよな、うん。これ、夢とかだったらいいのにな」

記憶が無くて、暑くなくて、疲れもなくて。

それなのに彼の手の感触だけが妙にリアルな夢だ。

『現状を見なさいよ』

自分にも言い聞かせる。

『今居る世界だけが唯一の現実でしょう』

夢だとして、夢の住人にとっての現実はこちらだ。

醒めることのない夢なら、今がすべて。

「案外大人なんだな」

自分の考え方が大人びているとは到底思えなかった。

『私は子供よ』

大人になりたくないと願った、馬鹿なやつだと。

そう考えて、はっとする。

『っ、』

体がガタガタと震えだし、気持ち悪くなってきた。

『ジェイ』

繋がれた手をきつく握り締める。

「っと、何だ?大丈夫か」

背中をポンポンとあやされて、泣きそうになった。

『ごめんなさい、もう少しだけ』

涙を流したくなくて、上を向く。

必然的にジェイの顔を見ることになってしまった。

「辛いのか」

真剣な顔をして聞いてきたかと思えば、左の手のひらで目を覆われた。

『分からないの』

自分が何だったのか。

「そうだな」

『怖くて寒くて』

砂漠なのに。

「ああ」

『なのに一人じゃなくて』

一人なら何とも思わず、取り乱しもしなかっただろう。

「俺が居て良かったな」

砂漠の温度を感じないくせに、彼の手は温かで優しい。

『私が居て良かった、でしょう?』

虚勢を張ってはみたが、いっぱいいっぱいだった。

「お前で良かったよ」

言ってそっと背中に右手を添えるから。

目を覆う彼の左手に両手を重ねて、しゃくりあげないように必死だった。


その後、街は蜃気楼ではなかったので割と直ぐ着いた。

「おや、いらっしゃいね」



to be continued.

Not Title


書きかけ小説整理中です。




深夜の月光を見ると思い出す。

外の空気に触れたくて、深夜に家を抜け出したことを。

どこに行く訳でもなく、ただぼんやりとして。

空虚な胸を抱きながら、空を仰いだ。

優しくて冷たい色の月に、思いを馳せて。

哀しい唄を口ずさみ、溢れる涙をそのままに。

凍えた風が蝕もうとも、気にもとめず。

次第に涙は頬を伝い、服を濡らす。

見えない未来への不安と、生きることへの恐怖と。

今は亡き人の温かさを思い出して。

叶わないことを思う。

取り返しのつかないことを、幾度も思い返す。



To be continued.

美しくないもの

ノンフィクション。
書くのが辛すぎて断念しました…




最後に画筆を握ったのは確か、高校生の頃だ。

「もう少しこう…」

まだ若い美人教師が、私の絵を修正していく。

ペインティングナイフを使い、描き込まれる狼の毛並み。

色を重ね、混ぜ、出来上がる濃淡。

私の絵なのに、私意外の手によって変えられていく。

キリキリと胸が痛んだ。

「はい、毛の流れをもっとよく思い出して」

渡される木製のパレットが、ずっしりと重かった。

集中して描いても、ダメ出しは止まない。

それはそうだろう、描かれた作品は例外なく、美術館に展示されるのだ。

入部して程なく取り組んだ油絵を、高校展に出すという。

初めての油絵が、最後の油絵となった。

美術の授業で描くことはあっても、それ以来自分の意志では描いていない。

写生画が大嫌いになった。

私は逃げ出した。

絵から、先生から、自分から。

才能が無いのは解っていた、向いていないのも。

だからやめた。

日々絵を描くことが、負担にしかならなくなっていたから。

重かった。

言葉も視線も溜め息も。

何もかも、全部。

幽霊部員になっても、先生は何も言わなかった。

私など、眼中に入っていない様で。

黙々と授業を進めていた。

それがまた悲しかった。

私は幾度も、筆を握り直した。

思う様に描けないことが分かっていたから、怖かった。

結局いつも描けなかった。

キャンバスは白いまま。

「ふぅ…」という、呆れた溜め息が鮮明に思い出される。

屈辱だった。

絵が好きなだけでは、どうにもならない現実があって。

私は挫折したのだと。

思い知らされた。


絵が駄目なら彫刻をと、滑石を彫る。



Die Fortsetzung folgt.

罪を犯した者



私がもっと早くに気付いていれば…!

いや、薄々気付いてはいたのに。

もっと早く行動に移していたなら…!

「っ、何処へ行くの?」

小さな相棒が、腕に抱き付く。

『あの建物へ』

巨大化した3mの私は、相棒を抱え走り抜ける。

『此処で、待っていて』

目指す建物から少し離れた場所に、相棒を下ろす。

「…本当にいいの?」

目指している建物は、私達が通っていた軍学校だ。

『あぁ。今から私は罪を犯す。それでも君は私と来るの?』

彼女は悲しそうな顔おして、大きく頷いた。

「うん」

『…じゃぁ、待ってて』

そう言い残し、駆け出す。

手には巨大な槍を持って、汚れた母校へと行く。

建物に入り、目当ての相手を見つけた。

「お前は…!聞こえるか、A134が反逆を起こした、直ちにこちらに…」

ブシュッ。

「ぐわぁあああっ!」

こいつが居なければ、こいつさえ居なければあの事件は起きなかった。

誰かが死ぬ事も無かったのに。

『くし刺し。痛いですよ、これからもっと』

「っは、何を…ぐふっ」

こいつの無線で集まって来る奴らの大半は、裏の関係者だ。

「…A134を止めろ!最悪殺しても構わない!」

ほら、どいつもこいつも自分の事ばかりで、私達の命なんてものはまるでゴミの様に。

ブシュッ。

「がはっ…」

ブシュッ。

「あ゛ぁぁあ!」

全般で6人をくし刺しにしてやった。

『…チッ、まさか同期を応戦させるとは…』

見知った顔が向かって来る。

槍を放り出して逃げてもいいが、普通の人間にこの槍は重すぎる。

『おい、抜け!槍を引き抜くから押さえろ!』

初めて見る巨体に恐怖したのか、唖然としていた。

『こいつらを死なせたいんだったら、このまま槍ごと放置するが?』

戸惑っていた一人が押さえにかかる。

『押さえろ!槍を引き抜く!』

応戦に来たはずの同期達は、必死でこいつらを助けようとする。

『本当にバカだよ。こいつらは自分さえよければいいのに』

ガッ。

一気に引き抜き、来た道を引き返す。

『救急車を呼べ!』

「…!!救急車、救急車だ!」

哀れで仕方無かった。

「ぉ、お前か?!」

本当の敵とは戦った事などない者を応戦させるなんて。

『退け』

何を考えているのか。

「…ひぃいっ」

もとの大きさに戻った私は、急ぎ足で出入り口へ向かう。

そこには二つの人影があった。

『教官…』

思わず涙が零れた。

この教官は何も知らないんだ。

裏で何が起きていて、私達が実験台にされ、日々死んでいく事を。

だから彼らは私達に優しかった。

『すみませんでした!』

深々と頭を下げる。

この人達になら、殺されても良いと思った。

「顔を上げろ!」

コツンといつもは痛いはずのバットが、緩く頭に当たった。

『教官?』

わしゃわしゃと、髪を撫でられた。

『私は罪を犯した、それなのにどうして…』

「我々は裏の事を知っている」

「君の危機感もよく分かるのだ」

『え?』

教官達はにっこり微笑む。

「謝るのはこちらの方だ」

「知っていながら、何をする事も出来ない。辞める事すら許されないのだ」

知っているからこそ、優しくしてくれた?

『…っ、教官…』

背を押される。

「早く行きなさい」

『教官、今までお世話になりました!…っ、ありがとう、ございました!』

最後まで教官は笑ってくれていた。

「…泣いてるの?」

相棒が寄り添う。

『泣いてない…』

さぁこれから何処へ行こうか。

罪を背負い、何処までも逃げ続けよう。



To be continued.

光明という無念

この世界はめちゃくちゃだ。

戦いで死んでしまったら、足から伸びた白い布により、地面に吸い込まれて行く。

「…ぐっ、どうしてとどめをささない?」

敵だった彼は聞く。

『一緒に行かない?』

手を差し伸べる。

「正気か?」

この世界は狂ってる。

地面に吸い込まれて行った人間は、人間を殺害する兵器となり果てる。

『殺人鬼にはなりたくないでしょう?』

「それも一興じゃないか?なぁ…」

死体に話し掛ける彼の目の前で、火を放った。

『こうすれば、殺人鬼になる事は無いの』

仲間も数人やられた、こうするしか仕方無い。

「…っ、く」

仲間を思う気持ちは、彼だって変わらない。

「俺だけが生きてちゃいけないんだ、そうだろう?なぁ」

『あなたを庇って死んだ者達はどうするの』

みんながみんな、あなたを慕っていたんじゃないの?

「…情けない」

『そうね。情けないなりに生きてみなさいよ』

…彼は今度こそ、私の手を取った。

「…あぁ、それが逝ってしまった奴らの願いなら」

こうして、私達の戦いは 続いて行く。

「ほら、乗れよ」

仲間の1人が6人乗りバイクを指す。

『すごい、こんな乗り物…』

「…運転できるのか?」

彼が仲間に問う。

「あぁ、たぶんな」

曖昧な返事をして、ニヤリと笑う。

「…」

無言の彼を載せたバイクは走り出した。

山道を走り抜ける。

「おい!止めろ!」

彼が大声で叫んだ。

「…っ、」

急カーブを曲がりきれなかったのだ。

『…!!』

ガシャン!

派手にガードレールに突っ込み、宙を舞う。

『いやぁああああああああああ』

そんな、

こんなところで、

こんなところで終わる訳にはいかないのに…!

まだ私は、何もできていないのに…!

…結局、誰も救えやしなかった。

私は、無力だ。



To be continued.

幻アリ修正案

いつでも逃げ込める夢を望んでいた。

普通でない壊れた世界を望んでいた。

特別な場所を。

私でも役に立てる居場所が、ずっと欲しかった。

最初から何一つ決まっていない、自由な世界。

そんなものは、有るはずがないのに。

そう私は、誰かに受け入れて欲しかった。

ありのままの私を、誰かに必要として欲しかった。

例えそれが、一番大切なものを失うとしても。



 To be continued.

自殺できただけ



楽しみも喜びも無い代わりに
苦しみが無い世界

私は、
誰かが私を殺してくれるのを
ずっと待ってる。

でももしかすると
今って言うのは
死後の世界かも知れない

だって今生きているって
保証は無いでしょう?

この世界で死んでから
私の生は
始まるのかも知れない

おかしくは無いでしょう?
だって誰も
見たことが無いんだから。

理屈を並べているだけで
自殺しようとは思わないけれど

苦しみの無い世界なら
そこへ逃げたい。

何かの小説で読んだ
ある人の様に
そのままの理由で
私にも出来るだろう。

そう、 ただ
高い所から飛ぶことが
出来てしまった。

ただ それだけだ。



To be continued.



空っぽな自分


命に代えても
欲しいものなんて

たくさん在る。

笑顔や 平和や…

兎に角たくさん。

命は安くないと
分かっていても

自分の命は、
何よりも安いに違いない。

だって ねえ

私には何にも無いんだから。



To be continued.


Crazy Alice


大きな屋敷の中のひとつの部屋。

私はここから出られない。



もうこの部屋に監禁されて何日が過ぎたんだろう。

日を数えるのが馬鹿らしくなるくらい、沢山の時間を過ごしている。

監禁と言っても、繋がれている訳ではなく、部屋では自由で。

窓だって有る。

でもここは最上階。

見下ろし見えるのは遥か遠くの地上。

落ちたらひとたまりもない。

もう私は、何故閉じ込められているのかさえ思い出せない。

豪華な食事、綺麗な衣服。

言えば何だって与えてもらえる。

私はどうしてここにいるのだろう。



二週間前から、自らをチェシャと名乗る男が部屋を尋ねて来るようになった。

真っ黒な癖っ毛に、黒いネコ耳。

名前から想像するチェシャ猫色では無い男。

彼は出会った時から人懐っこい。

「やぁアリス!」

「この屋敷に可哀想な小鳥が閉じ込められているって聞いたんだ」

「それで侵入したんだけど……、捕まっちゃってね」

「君は猫が好きなんだろう?聞いたよ」

「だから話し相手になってこいと言われてね」

「でも一石二鳥だ。もともと君に会いに来たんだから」

「しばらくここにいるよ。よろしく!」

チェシャはとてもお喋りで。

「今日は何の話を聞きたい?」

面白い話しをしてくれる。



でもそれも今日でお終いだ。

「そろそろ帰って来いって連絡が来てね」

「帰らなきゃならなくなったんだ…」

あぁ そう…

チェシャも私をおいていくんだ。

ここに一人、永遠に。

「帰らないで」

また一人になるのは嫌。

嫌だよ。

嫌だ、嫌だ、嫌だ…!

「…アリス、泣いているの?」

そうだ、そうしよう。

「ねえ、帰らないよね?」

引き出しから一丁の銃を取り出す。

銃口を窓の外に向け、見える人影を撃ち殺す。

ねえ、そうでしょう?

自分の口元が笑っている気がした。

「…ふふ。いいよ」

チェシャはこんな私を見ても微動だにしなかった。

「いいよ、アリス。一緒にいるよ」

それどころか髪を撫でられる。

「でも、ここは窮屈すぎる」

「僕と一緒にここから逃げてしまおう?」

手を引かれ、部屋を出る。

あぁ こんなにも簡単な事だったのに。

哀れなアリス。君の狂気が大好きだよ





ED.狂気の果てに

Trigger-mother-

アリウムで連載中の

【Trigger】

使いたいネタが浮かび、構想してあったシーン用に書いてみたので一応載せておきます。
※人物※
ミレイ=主人公
ミリア=母親
シュヴァルツ=社長


【-mother(仮)-】
※社長の回想偏


殺したく無かった…

だが、彼女がああしてくれないと、わたしには殺せなかった。

いや、それは正しい表現ではないな。

どうしたって、わたしには彼女を殺す事などできなかったのだから。

あの日を…今でも、悔いている。

「ミレイを…よろしくね」

彼女はそう言って崖の端に立ち、こちらを振り返った。

「シュヴァルツ…ありがとう」

それ以上、ミリアが言葉を紡ぐ事は無かった。

「ミリア!」

不意にに差し出された手を握ろうと、わたしは必死に手を伸ばして。

でも届かなかった。

ミリアはそのまま後ろ向きに、倒れて落ちて行くばかりで。

当たり前だ。

彼女には、わたしの手を取ろうという意志が無かったのだから。

「っく…ミリアァアアアア!!」

あぁ…きっと、助かる事はないんだ。

助かったとしても…貴女は、必ずその命を、自ら絶とうとするに決まってる。

貴女の愛娘、ミレイと…俺の為に。

貴女は優しいから。

逃げるなんて選択は、貴女の中には…最初から無かったんだ。

なんて馬鹿な人。

なんて…

なんて綺麗な笑顔だっただろう。

とても死に行く人間には見えなかった。

聖人の様な微笑み。

いや、聖母というのが妥当か。

それは間違い無く俺に…俺達に、向けられたものだった。


 Continue..



【-I'm mather(仮)-】※母親視点偏


怖いのよ。

私の存在が、忘れられてしまう事が。

大切な人にとって、私がいない日常が当たり前になってしまう事が。

死ぬよりもずっと辛くて耐えられないの。

私がこの世に、最初から存在していなかったみたいで、すごく怖いけれど。

でもそれよりもっと、私のせいで誰かに迷惑がかかる事の方が…辛い。

今みたいに苦しい。

私は、苦しくて辛いのが嫌だから。

だから私は、自ら手を下さなければ。

優しすぎるあの人には、優しいままでいてほしいから。

そして何よりも、自分で片を付けられない私なんて、あの子には見せたくないもの。

せめて私は、私の正しいと思った道を歩み続けたい。


 Continue...



はい、本編とは繋がらない複雑なお話しです。

主人公の過去。

主人公に直接関係のある、最初の物語。

この物語の、First storyです。


私が常に、またはフッとした時に思ったメッセージを込めて書いて参りました。

この【Trigger】

私にとって、一番大切な物語になりそうです。笑

ハトアリ「茶が不味い」

こちらも夢の場所に…

そのうち?更新されるかと思われるハトアリ、帽子屋屋敷での夢の書きかけです。


【茶がうま…くない!!!(仮)】


「つぎの昼にお茶会をしようと思ってね。是非お嬢さんに来てほしい」

と、ブラッドに言われて来てみれば。

ががががががががががが!!!

すごく恐しいオーラを放ったブラッドが、無表情でマシンガンをブッ放していた。

「ブ、ブラッド?!わわわわわおい、待ってくれ!!」

それもエリオットに向かって。

「哀れだね」
「いい気味だよ」

その横で、ディーとダムはニヤニヤしながらそれを眺めている。

「すまねえ!!本当に悪かっ…!」

ががががががががががが!!!

目には見えないけど、当たって無いって事は避けてるのよね?

『ねえ、あの2人は何を遊んでいるの?

一番暇そうな2人に聞いてみる。

「あ、お姉さんだ、僕たちと遊ぶ為に来てくれたんだね」
「僕たちに会いに来てくれたんだよね、お姉さん」

また人の話を聞いてない。

『ブラッドにお茶会に誘われたのよ』

一応、きちんと否定しておく。

「ボス?ボスなら今取り込み中だよ」
「バカうさぎと追いかけっこしているよ」

追いかけっこ…ってレベルじゃないでしょうアレは。

「ヒヨコうさぎがボスの紅茶をひっくり返しちゃったんだ」
「それだけじゃないよ、にんじんまでぶちまけちゃったんだ」

テーブルに目をやると、なるほど無残な状態に。

『どうしたらこんな事になるの…』

テーブルがオレンジ色だ。

「…アリス!」

声のした方を見ると、走り寄ってくるエリオット。

『エリオット…来ないで』

背後にブラッドが見えるから。

「!?」

「おやお嬢さん、屋敷にいるのに遅かったじゃないか。…とりあえず、そこを退いてくれないか」

言われて気付いた、エリオットが私の背後にいる。

『いつの間に…』

耳が垂れてる。

「君は、エリオットを庇うのか?」

怖い。

『そんなつもりは無いわ』

「私はエリオットに、貴重な紅茶を台無しにされたんだ」

マシンガンが杖に変わる。

『それは…残念ね』

そんなに紅茶が大切なら、金庫にでも入れておけばいいのに。

「ああ残念だ。すごく、残念だよ。君に、飲ませてやりたいと思って取り寄せたのに」

今にも杖で殴られそうな気配…

「…はぁ」

溜息と共に殺気が消えた。

「お嬢さん、そいつを連れて行ってくれないか。煮るなり焼くなり好きにするといい」

半ば強引にエリオットを押しつけられて、私はエリオットの部屋へ来ていた。

「助かったぜー。」



 continue...



久し振りに書いてはみたものの、ラストが決らないうちに書いてしまいぐだぐだで。

続きを書く自信があまりありませんが…

う〜ん、悩みどころですね。

クラウス「花畑」

夢の場所に…

そのうち?更新されるかと思われるクラウス夢の、書きかけ。


【花畑(仮)】


突然クラウスに呼び出されて。

「今日は良い天気ですよ、絶好のお散歩日和ですアユムさん」

クラウスと散歩に出掛ける事になった。



『教会は良いの?』

手を握ったまま、すたすた歩いて行くクラウスに聞く。

「ええ。少しだけの予定なので大丈夫です」

笑顔でクラウスは嬉しそうに答えた。

『一体どこまで行くつもり?』

聞いても、答えてくれない。

「着いてからのお楽しみです」

どんどん、森に入って行く。

『本当にどこまで行くの?』

ずいぶん歩いて来たけど。

「もうすぐですよ」

どこに連れて行かれるのか、さっぱり分からなかったけど。

不思議と不安は無かった。

木に囲まれた細い獣道で、先を歩いていたクラウスが立ち止まる。

「アユムさん」

名前を呼ばれて手が離された。「あなたをここに、連れて来たかったんです」

クラウスがサッと退くと、景色が広がる。

『う…わぁ…』

一面の白。

ううん、白い花。

「キレイですね」

さっきまでの、木ばっかりだった景色はどこへやら。

『うん、すごく!』

花を摘んで帰ったら、きっとエマも喜ぶだろうし。

「アユムさんの笑顔が…とても」

一瞬耳を疑った。

『えっ!?』

聞き間違い…?

「クスッ…何でもありません」

自分の頬が熱くなっていくのがわかる。

『クラ…ひゃっ!』

クラウスって呼ぼうとした途端、わたしの頬にクラウスの指が触れた。

「すみません、冷たかったですか?」

ビクッとして、指を離す。

『う、うん…』

突然の事とはいえ、わたしが嫌がってるみたいで、ちょっと可哀相だった。

だからクラウスの手を取って、額に当てた。

『でも、気持ち良い』

ひんやりとして、気持ち良い。

『手の冷たい人は、心が暖かいんだって』


 Continue...



ここまでしか書けていなかったり…あぁヤバイですね。

また書き直しそうな暗さ!

あぁ…

確かなことは

未完。


いつからか、彼は私にとって大切な人になっていた。

最初はありふれた、ただの友達だったけど。

彼を知って、憧れて、私にとって大切な人になった。

その頃はまだ、恋愛感情なんて持ち合わせてなくて。

今思うと、あの頃から彼を好きだったんだ…きっと。

「好きな人…?」

『うん、教えてよ!』

苦労して聞いたは良かったものの、無性に悲しくなって。

それでも、笑顔で応援しちゃったりなんかして。

私、何やってんだろう…って。

本当にバカだったなぁって実感する。

何年も経った今になって、あの頃を思い出したのは…さっき見付けた日記のせい。

真直ぐに、素直な言葉を書き綴った日記帳。

決意とか、嬉しかった事とか、悩みや苦しみなんかが、いーっぱい詰まった毎日。

『少しずつ正直に生きようと思います』

当たり前の事なのに、忘れてる言葉が並んでた。

短い間でも、積み上げて来た大切なものが確かにあった。

『会いたいなぁ』

彼は今、どうしてるんだろう。

どこで何をして、何を思ってるのかな。

離れて過ごした時が長いから。

私は何にも解らない。

『うー…』

ぼやきながら柔らかな布団に沈むと、直ぐに眠気に襲われた。




「よぉ」

声に気が付き、振り返ると彼がいた。

『えっ!?あ、久し振り…』

夢だと解っているのに、しどろもどろになって答える。

「…ぷっ」

変わらずに笑う彼を見て、緊張が解けた。

「一緒にまわる?」

その問いの意味を理解出来なかったけど、まわりを見回して気付いた。

ここ、美術館だ。

『うん』

その後は無言で絵画観賞。

沈黙は気まずくはなかった。

ただ、胸が…くるしかった。



…ぼんやりと、まわらない頭を回して。

さっきの夢を、曖昧な記憶を呼び起こす。

『あぁ…』

一緒の時を過ごしたんだっけ。

…もっと、見たかったなぁ。

夢で、居たかった。

『はぁ…』

夢で会った人は、自分に会いたがっているんだって、どこかで聞いた事がある。

でも、そんなものは迷信にすぎない。

何年も会ってない人物に、理由も無く、急に会いたくなるものではないんだし。

『んー…』

夢に見る程好きだったのかと自分で関心。


確かなことは。

今も彼が好きだって事だけ。


continue..




いつか、仕上げたいです(^^;

最遊記オチナシ

最遊記の夢小説を書きかけて断念しましたが…一応掲載。笑


act:?

今日悟浄が、新しいマンションに引っ越したらしい。

と言う事で呼ばれたから、早速行ってみる。

コンコン。

「お。いらっしゃい」

さすがに中は清潔感たっぷりで。

部屋の真ん中には、白い円卓。

「よぉ!」

そこに座ってる悟空が目についた。

『あれ…八戒は?』

聞くと奥から八戒の声が聞こえる。

「今コーヒー煎れてますんで、ちょっと待ってて下さいね」

『はーい』

熱いコーヒーが運ばれて来て、ホッと一息。
隣で悟空は差し入れに買って来たケーキを頬張っている。

「三蔵、遅いですね。そろそろ来ても良い頃なんですが…」

三蔵がまだ来てない。

『私、外見て来るね』

そう行って部屋から出ると、三蔵がいた。

『三蔵ー?』

おばちゃんと何やら話し込んでいる。

「丁度いい。お前も来い」

言われて、話に混ざる事になった。

「続けてくれ」

おばちゃんが話だしたのは、悟浄の部屋の事だった。

「あんな安い物件がある訳ないじゃないか。だからね、言いにくいんだけど…あそこには出るんだよ幽霊が」

いきなり何を言い出すかと思えば…

『…え、幽霊?!』

「そうだよ、赤ん坊のね。ノイローゼになる前に早く引っ越した方が良いよあんた達。忠告はしたからね」

そう言っておばちゃんは去って行った。

「…だそうだ」

『え…』

悟浄の部屋の前まで、とりあえず歩く。

『本当…かな』

「さぁな」

三蔵がドアノブに手をかけた瞬間。

おぎゃぁ…おぎゃぁ…

『ひっ!?』

「…!?」

三蔵は驚いてドアノブから手を離した。

すると、何も聞こえなくなった。

『幻聴…』

「…じゃねぇだろうな。イタズラにしては悪趣味だ」

言いながら再度手をかけると。

おぎゃぁ…おぎゃぁ…

やっぱり聞こえる。

『赤ん坊なんて、いなかったよ?』

「だろうな」

おぎゃぁ…おぎゃぁ…

声は止まない。

そのままドアを開けると、有り得ない光景が見えた。

「お前ら…それは何だ」

悟空、悟浄、八戒の腕にはしっかりと赤ん坊が抱かれている。

「何だと聞いてるんだ」

3人は答えない。

『え?!』

フッと視界がかすんで、真っ白になった。

「チッ…」

ゴチッ!!!

「…ッ!!」

凄い音がすると、視界が晴れた。

「あ、三蔵。やっと来ましたか」

ドアを開けたのは八戒、でもそのドアは外開きで。

見事に額に直撃。

『だ、大丈夫?』

左手で額を押さえている三蔵は八戒を睨む。

「…大丈夫だ」

八戒はどこ吹く風。

「?どうかしましたか?」

どうかって…

『今ドアが額に…』

三蔵の額を見て、苦笑する。

「もしかして、僕がやっちゃいました?すみません三蔵」



…続き、書けませんでしたorz

強盗と俺

Short story書き出し


【強盗と俺(仮)】


飛び込んで来た男はナイフを持っていた。

「………」

ここはコンビニで、俺はその店員。

深夜をすぎて、明け方に差し掛かろうとする時間帯は特に眠い。

「金を出せ!」

叫ばれて、あんまり回っていない頭を回そうと頑張ってみる。

確か、監視カメラ…あったよな、うん。

でもグラサンに帽子にマスクじゃ、顔が見えない気がする。

「聞いてるのか?!」

ボーっとしてた俺に痺れを切らしたのか、胸ぐらを掴まれた。

『聞いてます、聞いてますから離して下さいって』

舌打ちしながらも、離してくれた男をまじまじと見つめる。

「早くしろ!」

…このおっさんメタボだ、酒の飲み過ぎ。

重たい瞼を擦りながら中年男に、試しに言ってみた。

『あー…、嫌だって言ったらどうなりますかね?』

返答は勿論予想通り。

「殺されたいのか?」

そんなナイフで刺されても死ぬ訳無いだろ。

…と、頭に浮かぶものの、片隅では刺し所が悪かったら死ぬな…とか考えてた。

『殺してどうするんですか、罪が増えるだけですよ』

我ながら何を口走っているのか不明だ。

本当に刺されたらどうするんだろ、俺。

「…っ」

男がたじろいだ。

『何なら…俺を殺してみます?』




続きはまたいつか。

勉強しなくては(^^;

ねーねーママぁ

少年「ねーねーママぁ」


ママ「なぁに?」


少年「あそこの家にお姉ちゃんがいるよぉ」


ママ「…Σ?!(ボロ家から貞子が!!)」


少年「…ママぁ?」


ママ「みっ、見ちゃいけませんっ!!」


少年「でもお姉ちゃん手招きしてるよぉ」


ママ「何ですって?!」


少年「ママぁお姉ちゃんと遊びたいなぁ」


ママ「いけませんっ!」


少年「えぇー、いいでしょママぁ」


ママ「ダメったらダメですっ!」


少年「ママのケェチ!いいもんっ!僕遊びに行ってくる!」


ママ「ちょっ、待ちなさい!」


貞子「(ニヤ…)」


ママ「ひぃいいっ!」


少年「お姉ちゃーん、来たよー、僕と遊んでー?」


貞子「(ギロリ)」


少年「Σお、姉…ちゃ…ん?」




…ダメだ、落ちなし。
ごめんなさい、
<(_ _)>
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プロフィール
浦乃皐月さんのプロフィール
性 別 女性
誕生日 5月16日
地 域 大阪府
系 統 おとなしめ系
職 業 サービス
血液型 AB型