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097.愛しい人【学園的な100題】



さようなら。
もう振り返らない。

でも、ほんの時たま、思い出させて。
大事な大事な、思い出の1つとして。

焦がれる程に恋することができなかった。

深く、愛したから。
強く、信じたから。

君の全てを知りたかった。
でも本当は全てなんて、いらなかった。

手がぶつかるだけで、
言葉を向けてくれるだけで、
ほんの少し時間をくれるだけで、

とても嬉しかったから。





それ以上はいらなかった。

それ以上知れば、きっとそれ以上を望むと知っていたから。
それ以下になれば、きっと身勝手に傷つくだろうから。

眠る前、携帯越しに送られる「おやすみ」の一言。
目覚めたとき、送られる「おはよう」の一言。
何気なく向けてくれる、ほんの一言だけで、ボクは誰よりも幸せになれた。

いつだって、ちっぽけな携帯の向こうにいる君を思い描いて、すぐにでも触れたかった。

絡め合った指先のように、
重ね合った唇のように、
抱き合った身体のように、

決して1つになれないながらも、互いを確かめ合えれば、それでよかったのに。

知るほどに、知りたくなった。
子供じみた好奇心と独占欲で、お互いを潰してしまうほどに。

くだらないことを話した。
くだらないことで笑った。
くだらないことがあんなにも楽しかった。

でも、今は
もう 違う。

ありがとう。
知り得なかった多くを教えてくれた人。

去りし日の君の笑顔が見たいから。
在りし日のボクを思い出して欲しいから。

さようなら、愛しい人。





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