2012-4-6 08:06
見知った子供の頃とは、お互い大きく違ってしまった。
突然の再会を喜ぶ間もなく、胸の奥に去来した感情は、単純でよく知ったものだった。
来る夏を予感させるぬるい空気に、肌が汗ばんだ。
もしかしたら、緊張していたのかもしれない。
窓際に立つボクの前に、机に向かう君がいたから。
差し込む穏やかな光は、夕刻であることを忘れさせた。
その背に落ちた光は、制服の白シャツから透ける柔肌を嫌と言うほど引き立てる。
いつになれば君は気付くだろう。
肩甲骨の辺りに浮かぶホクロをボクがいやらしく愛でていることに。
肌を透かすシャツ越しにその体を弄りながら汗ばむ襟首に歯を立てたい、この衝動に。
シャーペンを操る長い指と、ヒラヒラ作業をこなす手を羨望に似た眼差しで眺める。
無理矢理に腕を取って、この首に回させながら、その唇を貪る夢想に酔った。
愛なんてくだらないと笑うのは、君を愛するその見返りに、君に愛されることを望んでしまうから。
初等の6年を過ごす最初の日に、君を見つけた入学。
別の路行く君に別れも告げずに立ち去った卒業。
一目見たあの日に抱いた想いは、呆れるほど稚拙で清いものに過ぎなかった。
手を握るだけで十分だった日々を、体を持て余すたびに忘れるよう努めた。
仲良く、なんの邪心もなく手を繋いだあの至福の日々を。
誰にも、例え自分にも汚させたくなかったから。
その努力も半ばに途絶え、今や何も知らず、無邪気に笑う君を静かに視姦するに至る。
どうかどうか。
君がボクの気持ちに気付きませんように。
「 」
振り返った君の無警戒な笑みも。
優しくボクを呼ぶ声も。
もう二度と離したくないから。
2012-4-4 06:47
鮮やかに色づく夢に、心は躍る。
きっとあんなことができる。
きっとこんなことをしよう。
輪郭の中の空白に、色を置く。
きっとこれがいい。
やっぱあれがいい。
描いた最良の理想に見合う空想を日がな一日、追い求めた。
それはきっと、ちょっとだけ
許された気がしていたのかもしれない。
鼻歌さえ交えながら、乙女のように夢をみた。
柄にもないと自覚するまでの短い間。
ただ純真に夢だけを追ったあの頃とは違うと、気付くまでの楽しく儚い時間。
あんなことができたかも。
こんなことをしたかった。
空白を染める安っぽくみすぼらしい色に、突如として興が醒める。
抱く望みはいつだって叶わぬと知った昔。
ばかばかしい熱意も捨てたはずだった。
それなら、これは
何なんだろう。
壊した空想の成れ果てに覚える、淡い寂寥。
抱いた夢を退かした後の、言い知れぬ虚脱。
ただ戻るだけに過ぎない。
味気なく、色味のない日常に。
きっと、
それが私にはお似合い。