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078.約束【学園的な100題】






あの日見た夢を

きっと私は忘れないだろう。





思い描いた、鮮やかな未来を。

手にしようと足掻いた、理想の自分を。





あの日簡単に語った未来を

今、私は実現する。





未だ見ぬ世界へと

今こそ足を向ける時なのだ。





例えもう、

あの日のように

隣に君がいなかったとしても。





空高くに昇り、下界を見下ろそう。

地平の先を踏破し、隠された場所を探そう。

深い海の底へ落ち、悠久の孤独を知ろう。





限りあるこの命が消えるその時までに

見たい世界をこの目に刻もう。





ありふれた、平穏な日常を望んだのは

守るべき君がいたから。





憧れを捨て去ってまでも、

共に歩みたい君がいたから。





気づけばもう、残されたものは

捨て去ったはずの果てなき憧憬。





ふたりで生きるために諦めた

私らしさを今こそ掴もう。





冷え切った空をこの身一つで飛び、

切り立った山をこの脚で征覇し、

母なる海の神秘をこの肌で感じよう。





あの日、共に見ようと約束したその景色を

私は一人でも見に行こう。





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064.小さな手【学園的な100題】






ただ一心に願って、

ただ純粋に想って、

その小さな手を引いた。





君が不安に押し潰されないように、

僕が不安を隠せるように、

ただ、前のみを見て。





炎天の中、

あてどもなく、拠り所なく、

ふたり手を繋いで彷徨った。





伝わるぬくもりが

最大の慰めになればと、

握る手に力を込めた。





弱々しく返される力に

僕が勘違いをしたと気づくのは

もっとずっと先のことだった。





ただただ一途に、

ただただ切実に、

あの時、僕は思った。





何を賭しても

君を、君だけを守ろうと。





君の盾となり、剣となり、

傷を負わせ、そして負傷し、

それでも君だけはきれいなまま、

あらゆる苦痛と無縁な世界に

連れて行けると思っていた。





愚かしくも単純に思っていた。

それが可能なのだと。





握り返す小さな手を引いて、

いつも、いつの日も

君を守っていけると疑わなかった。





その手がいつの間にか

僕の手をすり抜けていくことにも気づかず、





ただ彼方を、

ただ前のみを見て歩んでいた。





この地の先、

その丘の向こう、

あの雲の下へ。





いついつまでも共に、

在りし日のように、

このまま手を繋いで行けると。





それは僕の

唯一の願いだったのかもしれない。





彷徨い、見つけた先の場所は

君には安息の地ではなかった。





君が求めていたものが

今となってはよくわかる。





もう握り返すこともない、

その小さな手が





いつの日にか

望むものを手にできるよう





僕は君の手を離そう。






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