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008:徒競走【学園的な100題】


スカートを揺らして、スーツを着こなす君と、
夜の街を手を繋いで恋人同士歩きたかった。





そんな無邪気な希望が叶う日は、
全て終わったその後だなんて、あの頃は考えもしなかった。





夢にも思わなかった辛い現実の中で

ただ一人、変わらず仕舞の私だけが、
バカみたくはしゃぐ気持ちに歯止めを掛けられなかった。





君を待つ時間は、こんなにも長いものだっけ?

私のところに帰ってくれるなんて、
どうして疑いもせずあの頃は思ってられたのかなぁ。





あの日の君の微笑みが、
あの日の君の言葉が、

きっともう、
私だけのものじゃなくなってる。





わかってる、全部。





それなのにどうして

どうして、
こんなにも待ち遠しいんだろう。





特別な意味なんて君にはないだろうに。

ただ、
私との時間を作ってくれる。

それだけでもう、

幸せで浮かれる自分だけ状況把握が出来ずにいるんだろう。





笑い合って、繋ぎ合って、
好きあったあの日。





あの日と変わらない私が、まだ君を見つめている。

その目はもう、こちらに向くこともないのに。

もしかしたら、戻って来るかもなんて夢を見ながら、自分を笑った。





スーツを着こなす君を盗み見て、眼鏡の奥の視線を探る。

あの日の眼差しを向けて欲しかったから。





君の視線が信号機の点滅を捉えたのを認め、君の手を取り走り出した。

まるで恋人みたいに。





スカートを躍らせながら、颯爽と隣を走る君に見惚れ、改めて思い知った。









何よりも誰より

大好きなんだと。









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