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036.くわえたパン【学園的な100題】



啜るコーヒー。
かじる菓子パン。
食べ慣れた安っぽくも懐かしい味。





夢なんて、いつの間にか捨ててしまった。

でもひとつ、残したのは後ろ盾のない希望。
寄りかかればグラつき、縋れば殊のほか力強いソレひとつ。





描こうとした夢はいつから打算の色に染められたんだろう。
煌びやかに飾り立て、紛らわすように取り繕った。
見合わぬ意地で、欲したものがあったから。





まばたき一つ。
咳払い。
何ら変わらぬ日常の一コマ。





夢から醒めた味気ない寝起き。
それに似た何かが、やたらと飾った夢の成れ果てを喰らい尽くしているようだ。

遥かに望んだ彼岸へと、渡す舟はいずこに消えた?





啜るコーヒー、かじる菓子パン。まばたき一つ、咳払い。





変哲のない日常の中に、新たに描いた夢はささやかな願いなのかもしれない。

君の待つ場所へと走りながら、この先も君と共にあるコトこそが全てだと思った。





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070.思い出【学園的な100題】



至るトコロに君がいる。

この道の先に、あの店の中に。

君が。
あの日のままの君が、
すぐ隣で笑ってる。





遠く遠くにいる君の、
あの手のぬくもりが蘇る。

久しい声の気配に振り返り、
君がいない街並みに姿を探した。

夏の盛りに懲りもせず、
汗ばむ手を取り、あの木の下を並んで歩いた。





至るトコロに君がいた。

この見慣れた景色の中に。
あの、行くはずだった場所に。

君が、
あの日のままの君が、
笑ってた。





遥か遠くにいる君の、
あの眼差しが思い出せない。

巡る月日のその中で
君がいない街並みをひとり歩く。

冬の寒さに睦まじく、
温い手を取り歩きゆく、誰かの姿を見てられなかった。






去りゆく日々は、思い出に。

君も、
あの日々も、
あの喜びすらも、

いずれは霞み、美しく歳月に埋もれていく。






至るトコロに君がいる。

この先も、その先も。





永久に変わらぬ、思い出の中にだけ。





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