2017-1-2 14:29
054:カレンダー【学園的な100題】
使い古したそれは使われることもなく、
ただただ、古くなっていくのを待つだけ。
よもや予定を書くためにも
今日の暦を調べるためにも使えないそれを
ただただ、見返すだけで
いつでも私はあの日に還ることができる。
初夏の小雨降る金曜の午後。
ひとつの傘に寄り添って登ったあの坂道で
初めて触れてくれたその手は
冷えたこの手をあたためてくれた。
夏の暑さを凌いで逃げ込んだ車の中で
初めて教えてくれたアナタの気持ちと
あの日の深い緑。
並んで座ったそのときに
不意に触れたその唇の熱さと
その腕に抱かれた安堵。
何もかもが懐かしく眩しく、
愛しく恋しく狂おしく、
鮮やかに思い知らされるこの想いは
いつまでもアナタのそばに
寄り添うことはできるのだろうか。
役を終えてもなお、
捨てられぬこのカレンダーのように。