2012-2-29 18:58
温い布団に縮こまり、ほっと一息夢を見る。
黒い意識の底の底。心地よさだけ感じていた。
まどろむ気色に足先が、紛れた冷気を感じ出す。
溺れるものは久しからず、ただ夢にすがりついた。
しかし、すぐ
いつもと違う気配を感じた。
その名に覚えがありすぎて、浮き立つ気持ちが夢見を切った。
静けさ満ちる部屋の寒さも嬉しくて、寝ぼけ眼で携帯を開いた。
遠くに住まう君に、この煌めきをどう言おう。
この美しさを、君とみたい。
発信音のすぐ後に、「外をご覧」と聞こえた声はとても優しい。
先を越された悔しさと余るばかりの嬉しさに、眼下の色は輝きを増した。
2012-2-28 12:04
おでかけ日和の薄曇り。
人ゴミ嫌いの君に連れられ原宿へ。
人酔いしがちな君を仰ぐと
こちらを見ていた目と目が合った。
訝しげな私に微笑む君は
構わず雑踏へと足を進める。
どういう風の吹き回し?なんて、
野暮なことは聞けなかった。
洒落た街並み攫う、おめかし上手の人波に
いつの間にか、はしゃいでいた。
子供じみた私に呆れる君は
それでもどこか嬉しそう。
君とふたりでいついつも、仲睦まじくいれたらいいな。
繋いだ手を大きく振って、そんなことを思っていた。
残暑ひそめる薄曇り。
嬉し恥ずかし思いやり。
年に一度の記念日を君と一緒に迎えたら
わがままばかりが増えていく。
おしゃれなカフェのテラスに座り
ウィルキンソンを飲みながら、
次も一緒にいれますようにと、願掛けた。
秋めく風が吹く街で
2012-2-27 02:03
なんの根拠もなく信じていた。
愚かしいほど一心に、
痛ましいほど真剣に。
どうしてなのか、わからない。
けど、確かに信じていた。
ずっと手を繋いで、あらゆる困難を乗り越えていけると。
それはとても幸せな夢だった。
何もかもが希望に満ち、
順調に進む気がしてた。
でも、気付いてしまった。
その理想の稚拙さに。
現実は希望を奪い、
全ては移り変わりゆくことに。
ねぇ、それでも
繋いだこの手を、離さないで。
そしたらきっと、
どんな困難も耐えていけるから。
希望がなくとも、
一緒に創っていけるから。
あの頃から、私たちは大きく変わってしまった。
人は皆、誰しもが孤独だと知ったとき、この手はいつだって君と繋がっていると知り得たから。
ねぇ、だから
繋いだこの手を、離さないで。
繋いだその手を、離さないから。
ふたり一緒に歩いて行こう。
目の前に転がる、幸せを分かち合おうよ。
2012-2-24 12:21
向き合うように並べられた机に座って、お向かいの君を盗み見る。
小さい部屋の中で、誰かが論じている声が遠くに聞こえていた。
ふてぶてしく座った君の、視線の先を知っている。
たぶん、きっと
私ならそんな顔をさせないよ。
そっと囁いてみたら君の不機嫌は直るかなと、バカバカしいことを考えた。
私の隣に座ったあの子が別の男と話す度、君の眉間にシワが寄っていくのを伺い見るしかできない自分なのに。
あの子の声に重なる自分以外の声を、苛立ちながら聞く君を内心でせせら笑った。
あの子の声に重なる別の声を聞いて安堵する私は、もしかしたら君と同じくあからさまだったかもしれない。
早くこっちを見なよ。
子供じみた君の嫉妬に、安堵を少し分けてあげるから。
早くこっちを見てよ。
そしたらきっと、あからさま過ぎる自分の滑稽さに気付くはずだから。