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083:叫び声【学園的な100題】






ともすれば止まらない衝動を抑えることにも慣れ、

あぁ確かに歳だけは重ねたのだと

妙なところで感心する。




物分かり良くあいづちを打つその裏では

吐き出したところで所詮、

応えが返ってくることも

返そうと努められることもないだろうと、





疾うに打ち切った期待を

未練がましく冷ややかに見ていた。





その口は空っぽの甘言を紡ぎ、

その手は身勝手だけを持って翻っている。





どうして。

どうして、どうして。

そんなことが出来るのか。





尋ねるまでもないと

冷静に誰かが答えたのを聞いた気がする。





本音を隠し、

当たり障りないことを言い始めたのはいつの頃か。





押し殺すことに慣れたこの声を

ただ一人には届けたかった、そのはずだった。




明確な悪意と甘ったれた期待を孕んで吐き出した

切実で稚拙なまでのこの気持ちは

あの日、 ただただ望まれぬことを知った。





黙殺の先にある明確な応えも、

これからの眼前に広がる空洞と

傍らに立つ者の先にのみ待つ穏やかな未来も、





真実を見据える能力を欠いたこの眼球の裏に

そこそこな鮮明さで描き出された。





曇ったまなこが克明に見せた唯一まともな未来図を

それでも信じきれない私を

きっと、人は愚かと呼ぶのだろう。





ただひとつを、

ただ一人を望むことすら

私には許されないのだろうか。





この想いすらも

嘲笑の的にしかならないのなら





いっそ、この命ごと

誰か断捨してくれ。





どれだけ張り上げても届かぬ声が

それでも伝えたいと願うこの想いを

喚き散らす、その前に。





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010:屋上【学園的な100題】





晴れの日も雨の日も

病める時も健やかなる時も

いつだってアナタのそばにいられたらいいのに。





離れていても繋がってるだなんて

欲深な私はそれだけじゃ満足できない。





アナタの笑顔ひとつ、

アナタの声のひとつ、

何ひとつ見落としたくない。





空だけが広がるあの場所で

眼下の街を見下ろしながら

ふたりきりの世界に身を置き、

笑い合っていられればいいのに。





あの町の一角で、一緒に食べた朝ごはん。

あの坂を登って、ぶらぶらと散歩をした昼下がり。

あの光る観覧車の下を、手を繋いで歩いた帰り道。





これから先の日々に

そんな、ささやかな幸せが

ずっとずっと、満ちていればいいのに。





淡い月が浮かぶ空の下で

煌めく街をアナタと見たその事実が

せめて

いつまでも褪せないよう形に残した。





ずっと一緒に居ようと

確固たる約束が出来ればいいのに。





ずっと一緒だよと

いつも言ってくれるその言葉を

素直に信じきれればいいのに。





頷くほどに愚かでも、

割り切って微笑むほどに賢くもない私は

ただ、曖昧に笑って抱きしめるしか出来ない。





想いを口にしないのは

応えがわかっているから。





それでも





ふたり年老いた歳月のどこかで

また

この場所で





変わりゆき、そして

変わらないでもいるであろうこの街を

眺められたらと請い願うばかり。






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