2017-1-3 00:11
053.幽霊【学園的な100題】
悪夢にうなされて目覚めても
隣に心配そうにしている君がいるだけで
瑣末な恐怖はすぐに笑い話に変わった。
泣きながら見たことを話せば、
その側から君が笑い飛ばしてくれたから。
壁も床も広く思える闇深い部屋の中で
唯一絶対にして確かだった君のぬくい存在が
どんなに大きいものであったか。
もう大丈夫だと言って
抱きしめてくれたその優しさが
どんなに嬉しかったことか。
その腕の中でまどろみながら見る夢が
どんなに穏やかなものであったのか
ついぞ、君は知ることもないのだろう。
君が不安なときには
君がしてくれたように
深く確かに抱きしめ続けていたかったことも。
独りにしないでというワガママに
君が応えてくれていたことも
なんのかんのと言いながら
君が好いていてくれたことも
ひとり、暗い部屋で目覚めるようになって
ようやっと知った。
隣の部屋で何かが落ちた音に
外で騒ぐ陽気な気分の人たちの騒ぎ声に
無様にビクつく私の隣に
もう誰もいないことも。