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026:居眠り【学園的な100題】




時は止まったまま、


音だけが足早に去っていく。










夢と現の違いを覚えていたはずだが、


今はどちらにいるものやら。










とめどない回想の中で


あの日、そこに置き忘れた


かけがえのないもの達を見遣った。










今となっては眩しく、


掴むには遠すぎるそれを


諦めきれずにいるのだと今まさに悟った。










去った日々の中で


何もないと強く思っていたこの手に


溢れかえっていたそれは


今、渇望して止まないもの達。










夢と現の狭間でしか見れず、


朧げな道の中でしか見れない、


触れることもできない落し物。










この止まった時の中で


一つ一つ集めることができたなら


私は元に戻れるのだろうか。










あの日の私に。


持てる者であった私に。


色を見ることが出来た私に。










その目に宿すことができずにいた


不確かな未来を見据える賢さが


あの日の私にあったのならば










きっと、


もっと早くに気付けていたんだろう。










捨ててはいけなかったものに、


置き忘れてはいけなかったものに、


遜色なく豊かであったことに。










色のなくなった世界で


見据える先のなんと味気ないことか。










何も失うもののないことの


なんと虚ろで気怠げなことか。










あの日見た世界も


確かこんな世界だった。










振り返ればとめどなく煌めく


美しい青春の日々たちですらも。










いつの日も


私は無いものばかりを強請っては


手にすることができないことに


腹を立て続けている。










今その瞬間に


手にしているもの達が


零れ落ちていることにすら気付かずに。









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