2009-9-15 23:53
1の続きです^^
実はPCから投稿しようとして、物凄い回数失敗したために、ケータイから直打ちしています(笑。
初S.Y.K文章は投稿が難産出した。。。
これまで、一度として殺生を行なったことがないとは言わない。
冥府に送った妖怪の数は、両手、両足の指すべてを使っても足りないほどだ。
それでも、屠ると決めて手にかけた。
今回のように、偶然に殺してしまうようなことは、なかった。
己の失態から、他者の命を奪ってしまったことは、なかった。
宿への道を進みながら、悟浄は奥歯を噛み締める。
堪えがたい衝動を逃がすように、体の横で利き手が拳を握った。
容赦のない力に、短く揃えた爪が掌に傷跡を刻む。
夜目にも鮮烈な赤で飾られた刃が、月明りに照らし出された光景を、脳裏から追い出すことは叶わなかった。
「随分と、遅いですね」
「うん」
心配に揺れる瞳にぶつかったのは、玉龍の翡翠色の眼だった。
こくりと頷きながらも、彼の表情に妖怪退治に向かった二人を案ずる色はない。
「けど、もう帰って来るよ。妖怪の気配、消えたから」
「そうですか、それはよかった」
感知能力の高い彼が言うのならば本当だろう。
玄奘はいくらか安心して、ほっと吐息を零した。
悟浄や八戒の実力は、これまでの道中でよく知っているが、だからこそ普段ならばすでに帰還しているはずの彼が戻らぬ現在、不安を覚えてしまった。
鎧戸を開けたままの窓から、そっと表通りを覗く。
ちょうど通りの向こうから、こちらへと歩んで来る二つの影を見つけた。
「帰って来たようですね。玉龍、ありがとうございました。もう夜も遅いですし、休んで下さい」
「……うん、わかった」
「お休みなさい」
「お休み、お師匠様」
部屋を出て行く青年を見送ってから、玄奘もまた廊下へと出た。
他の宿泊者に配慮して、階下へと続く階段を、極力音を立てずに降りていたら、見慣れた金髪頭と遭遇した。
「あれ、姫さん?なんだ、まだ起きてたのか」
「妖怪退治をお願いしたのに、先に寝てなどいられません。お疲れ様でした、八戒」
労いを込めて微笑むと、相手もにっこりと笑みを返してくれた。
「姫さんにそう言ってもらえるなら、頑張った甲斐もあるってもんだな。どう?惚れ直した?」
「最初から惚れてなどいません」
嘯く男を一刀両断したところで、玄奘はもう一人の姿が見えないことに思い至った。
八戒の後ろから、馬鹿なことを言っていないで、さっさと階段を上れ!とか言って来ると思ったのに、影すら見つからない。
*続く。