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ありがとう(銀新)

銀さんの幼少時っていいよな。銀さんの小さな頃ってあんな感じでしたけど、いや松陽先生の塾に入門する前じゃなく、先生と出会う前の話が前提としまして、その頃って死体の上で真剣抱えて握り飯食ってるようなガキでしたけども、当然の如く出自すら不明な感じですけども、そんなちっこい銀さんと新八くん(16)を、うっかりボーイミーツボーイさせてみますと色々面白いよね。

うっかり時を駆けてみればいいよ、新八くんは。時をかける少年になってみるといい。たまぁに、こう、ネタとしてタイムスリップしちゃえばいいと思うよ(新八くんにとってはたまった話じゃないな)

新八くんから見た銀さん(小)って、すぐ分かるだろうね。人間としての心根はきっとずぅっと変わらないと思うから(三つ子の魂百まで)、松陽先生と出会う以前のちっさい時から、銀さんってあんな感じなのだろうね。すなわちふてぶてしく、何もかもに対してやる気があまりなく、怠惰で、結構世の中を冷めた目で見ていて、すきあらば自分がどう楽するかを考えている、だからこそ生命力は誰よりも逞しい、だからこそ必要に応じて強く逞しく生きてきた、そんな感じの銀さんなんだろうね(いや、すげえ褒めてるよ?)

でもね、どこぞで誰か困ってる人があったらこっそり助けてしまうような、自分こそがいっつも腹を空かせている張本人なのに、そんな自分の身も顧みずフラフラの野良犬にひっそりと握り飯を与えてしまうような、自然と居着いた古寺か何かで毎日会う婆さん(きっとその古寺に旦那か息子が眠っているのだろうな)に、クソババアとか悪態を吐きつつも、誰がババアじゃガキがァ!だのと逆に悪態を吐かれつつも、そのババアが死に体になっていると誰よりハラハラしてしまうような、自分だって孤児なのに、身寄りなく息を引き取ろうとしている婆さんの枕元に駆け付けずには居られないような、そんなひねたガキだったのでしょうね。なんとなく。
銀さんだもの。

だからね、新八くんはすぐ分かるよ。銀髪だの赤眼だのはさておき、そういった外見の特徴だけでなく、どんなにちっさくともその心を感じるからね。「あっ、銀さんだ!」……って、どこの世界に居ようとも、どんな姿で居ようとも、すぐに分かって下さると思うのです。新八くんだもの。

銀さんのとっておきの、新八くんだもの。


でもさ、でも、銀さんは松陽先生と出会う前なので、そもそも“命”の概念をあまり理解してないかとは思うのですよ。だから自分や、この間道端で出会ったよくわかんねーメガネ(新八くんでしかない)に危機が及ぶとなると、ふっつーに殺しに行くと思うよね。ためらいなくいく。タマ取る気でいくよね、だってそういう世界に生きてるもん。

当たり前ですよ、あの年頃の少年が何の後ろ盾もなく、しかも混乱極まる動乱の世をどうやってしぶとく生きぬいていけようか。強くなるしかねえ。誰よりも。
だから物心つくまえに、自分を守るために誰かを殺めた事はあるだろうね。銀さんの剣って、松陽先生に出会って教えられて、さらに強くなり、しっかりとした型はそこでできたとは思うけども、基本は斬り覚えだよね。斬って覚えてきたの。身体に叩き込んできた。それが生きることに直結してたから。
だから、ほら、九ちゃんのおじいちゃんにも「その剣……我流か」とか言われてたじゃん。型は知ってるし必要に応じて利用するだろうけど、その型を習う以前に既に剣を振るってたからね。そりゃあ我流な面が強くもなろうて。

だから、『よくわかんねーけど何かやたら親しげに俺に話し掛けてきたメガネ(新八くんでしかない)』が、その辺フラついてたチンピラかゴロツキかによって危険な目にあおうものなら、小さな銀さんは即座に殺りにいくんだ。普通に。実際殺さずとも、躊躇わず剣を抜いてかかって行くのである。

んで、その場は収めるじゃん?相手がビビって退散したので、殺さずに収められたとする。でも銀さん的には人を殺害せずに済んでも、あーあ、って思ってんのね。
それとはまったく別の理由で、あーあ、って思いつつ、刀をパチンとし鞘にまってんの。

「(コイツ、もう俺の前から消えるな)」

とか、ふっつーにビビってる新八くんを見て思ってんの。だって銀さんったらこんな小さい柄して、大人の男を殺りに行ってんだもん。これが普通の人間にビビられねえはずがない。
それが理由で銀さんはきっと、友達をたくさん無くしたと思うよ。友達どころか友達になりかけてた年が近い子も、皆退散しちゃったと思う。怖がられて。疎ましがられて。

だって命の概念が違うんだもん。根本的に違う。子供達ってその辺の『何か知らねえけど、コイツやべーわ』ってのを直感的に見抜く能力に長けてるもんね。すぐ気付かれちゃうよ、銀さんが人を斬り慣れていることなんて。人を殺すことをためらわない日常にも。


だからね、銀さんは少し諦めつつも、

「(でもまあ、コイツが死なねーから良かった)」

とか諦観を抱きながらも、新八くんに向ける顔だけは飄々としている訳です。もちろん新八くんは、びっくりしちゃっております。自分が生まれるずっと前から、こんなにも小さい頃から、銀さんは剣を振るってたんだな、と思って。

でもさ、そのまま銀さんが、

「じゃあな」

って、くるっと踵を返して立ち去ろうとしたらね(新八くんが逃げるだろうとさっさと予測しているので、あまり躊躇わず立ち去る構え)、新八くんは後ろからぎゅうっと銀さん(小)を抱きしめに行くといいと思う。
銀さんの小さな背を、後ろから抱き締める新八くん。

そして、「(えええ何だよコイツ!)」ってなる銀さん。

銀さん「……。……え、あの、離してくんない」
新八くん「はなしません!」(キッ)
銀さん「……。いや……俺言ったよね、『じゃあな』ってカッコよく背中で言ったよね?とりあえず今の俺ってすげーカッコ悪ィんだけど、退場シーンに水差されるってものすげえカッコ悪ィんだけど、少年の心をズタズタにする行為なんだけど」
新八くん「黙っててくださいよ!何ですかアンタ、子供のくせして!子供の頃から寸分違わず銀さんじゃないですか!」(←泣きそう)
銀さん「てか本気で訳分かんねーな、お前。何で俺の名前知ってんだよ。言ったっけ?」(とても訝しげ)
新八くん「あ……(銀さんやっぱり無駄に鋭いよ!)」(ダラダラダラダラ)(滝汗)

そんな会話を続けているうちに、必死な新八くんに気付いて少し肩の力を抜く銀さん(小)。殺気も削がれて、少しふっと笑う銀さん。

「まあいいや。お前、ほんっと変な奴。眼鏡掛けてるだけがアイデンティティーみてェな奴なのに」
「うっ、うるせーよ?!僕の眼鏡なんだと思ってんだこのガキは!マジでアンタの人間性変わってねーな!」(汗汗)

でもそんなですね、図らずもいつものような会話をしていた矢先に、

「お前……俺のこと、怖くねーのかよ。人殺そうとしたんだぞ」

とかね、銀さんは平然と言うでしょ。マジで普通のテンションで言う。銀さんだから。
しかしそれを聞いた新八くんはですね、少し唇を噛んで、より強く銀さんを抱き締めてくれると思うよ。

「こわくないですよ。──だって、銀さんですもん」

って、小さな銀さんをぎゅうっとしてくれます。やさしく、温かく。ただ抱き締めてくれる。
今までずぅっと一人で生きてきて、生きるためなら何でもした小さな銀さんを、ぎゅうっとしてくれる。その温かな腕で。身体いっぱいで抱き締めてくれる。
そしたら銀さん、大いに同様しつつもちょっとときめく。

「……え。あ、そ、そうなんだ。お前、俺のことが平気なのかよ」

って、ちょっと頬を染めて言います。少年っぽく動揺しちゃってます。
新八くんは何度も力強く頷く。

「当たり前じゃないですか、銀さん」

後ろを振り返って確認してきた銀さんの大きな赤いお目目に、にっこりと笑いかける。そしたら銀さん益々ときめきますけど、でもツンデレはちっさな頃から標準装備されているので、プイって明後日な方向向いちゃうよね。

「お前ほんっと変な奴だし……さっぱり訳分かんねェ。つか眼鏡だし地味だし、地味だし眼鏡だし眼鏡だし」
「いや地味と眼鏡を何回言うの?!ほんっとアンタはとことんまで銀さんでしかねーよ!何でそんなちっさい頃から僕いじりが確立されてんのォ??!!」(ガタタッ)
「……でもよ、」(ぽりぽり)(頬を掻く)
「え?……どうしました、銀さん?」

「もうこんな事がねえように、俺がずっと護ってやる。だから俺と一緒に来いよ」

再びくるっと振り向きがてら、ニッと笑った顔はやっぱり銀さんでしかないのである。どんなにちっさくとも、木刀じゃなく真剣を差してても、そこにあるのは銀さんの笑顔でしかない。
新八くんが出会って、恋して、今や日々いつも一緒にいる、銀さんのものでしかないの。

新八くんはその言葉に物凄いドギマギとして、「(う、うわあ……銀さんったら!)」とか思っちゃって、でもそんな自分を押しとどめて、ちょっとはにかんだ感じで笑うのね。

「ありがとう。すごく嬉しいよ」

って、そこはほら、分別のある少し大人のお兄ちゃん的な返しをしておくんですね。そしたらちっさい銀さんはブンむくれるけどな。

「あ、テメー流しやがったな。自分だけ大人ぶりやがって、眼鏡叩き割んぞコノヤロー」(もういつものテンション)
「それは止めてェェェェェェ!?僕どこに眼鏡屋があるか分からないもの、ここの世界ではマジなお上りさんだもの!」(ガタタッ)

でもね、そうやって散々じゃれついて遊んでいてもね、突然の空腹にはたと気付くふたり。

「……お腹空きましたよね」
「あー。確かに」
「じゃあ僕、助けてもらったお礼にご飯作りますよ」(にこっ)
「マジでか。てめーちょっとは使える眼鏡じゃねーか、役に立つ時もあんじゃねーか」(お目目キラッ)
「アンタの中での、僕の認識って何なの?」(眼鏡透過率ゼロパーセント)

そして新八くんがどこかでアウトドアにご飯を作っている最中にですね、銀さんは水を汲みに行ったりすんの。その道中でお花を見つけて、ぷちっと摘んでみたりして。いつもなら気にも留めない光景も、少し変わったものに見えたりしてね。

「(アイツに似てる)」

とか、白い清楚なお花を見て思ったり。あのメガネにやろう、とか思ってんの。アイツこんなん好きだろ、メガネだし、みたいな。
完全に恋に落ちてるんですよ。新八くんに初恋しちゃってるんですよ、もう銀さんったら!!!!

けどそんな風に寄り道しつつ元の場所に思って帰ってきたらですね、もう新八くんはいなかった。作りたてのご飯を残して、新八くんは消えちゃったのです。
もちろん銀さんは探すよ。必死になって探すよ、でも新八くんは帰っちゃったのです。元いた世界に。

銀さんは物凄い探して、でも新八くんは居なくて、探し疲れた頃に、
「(やっぱりアイツも、他の人間と同じじゃねーか)」
って膝を抱えて思う。バカだなオイ、俺は何をまだ期待してんだ、と。俺が誰かを護れる筈があるかよ、アイツだって分かってたんだよ、と。

「だから俺を置いてったんだな……アイツ」

一人で結論を出す。もう慣れっこになってる孤独を噛みしめる。
でもね、違うよね。新八くんだって帰りたくて帰った訳じゃない。ご飯作り終えて、ふう、ってしてるうちに身体が消え始めて、新八くん本人も物凄い驚いたって訳だよ(経緯)。でも銀さんに訳を話せなかったからね。経緯はどうあれ、突然のお別れになっちゃったから。

そりゃあ銀さんも黄昏れるよ。当たり前ですよ、あんなちっこいのに。普通にやさぐれるよ、懐いてたお兄ちゃん(メガネ)が、急にどっかに行っちゃったんだもん。
でもね、そうやって黄昏れているうちにですね、銀さんの膝を抱えた小さな手のひらから、白いお花がハラリと零れ落ちるの。銀さんが新八くんのために詰んだお花。銀さんが、新八くんに似てると思って摘んできたお花。

それを見て、

「……アイツがそんなんする訳ねーよ」

って、何となく確信した銀さんなのである。吹っ切れた。
アイツは俺を置いてったりしねえ。そんなんできる奴じゃねーな、と。

そして、また会えんじゃねーかな、と、ふっと確信めいたものが頭に閃く銀さんである。
そしてですね、腹を満たすためにも無駄に黄昏れることはやめて、まずは新八くんが作り残していったご飯を食べる。ガツガツと食べる(銀さんは生命力に溢れてますな)

銀さんの初恋はそんな感じがいいですよね。てか松陽先生にふっとついてく気になったのも、先生にどこか新八くんと似たものを感じたからではないでしょうか。おおらかでいて、芯のある強さね。決して剣の腕だけじゃなく。しなやかな逞しさ。伸びやかな美しさ。
そういう何かを直感的に感じてさ、素直に先生のとこに行ったのだと思う。



そしてそれは……図らずも晋助と同じ好みを有するきっかけになっている訳です(始まりの第一章)












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