テレビをつけると海外の駅か何かの一角でとある日本の映画の宣伝番組をやっていた(その国が舞台になっている)。
その映画のシリーズはその国でもとても人気らしく、またテレビカメラがあるからか自らインタビューを受けたがる人も多く、始終テンションが高かった。

向こうの人はいつでもテンション高いんだなーとテレビを見ていると突然画面が切り替わり、緊張したような面持ちのニュースキャスターが現れた。

『緊急速報です。先程××(聞き取れない)で地震が発生しました。震度、被害状況は今のところ確認出来ていませんが、非常に強い地震が発生したとの事で多数の負傷者が出ている模様です。繰り返します…』

うわぁ…何処の国で起きたんだろう。

そんな事を思いながらテレビのチャンネルを変えると、何処の放送局でも同じような状態でひたすら××で発生した地震について報じていた。

仕方無く暫くそれを眺めていると画面が切り替わり、何処かの国の景色を背景に、慌てた様子の外人アナウンサーが英語で何かを一生懸命に訴えていた。
何を云っているのかはよく分からなかったが、余程被害が甚大だったのがアナウンサーの表情から見て取れた。

それから少ししたところでテレビ局が日本語の字幕を入れ、アナウンサーの云っている事が分かるようになった。

『首都の〇〇は停電になりパニックになっており、また地震の揺れによりビルの壁面や硝子の破片が落ちてきて非常に危険です。一部報道によると倒壊した高層ビルで瓦礫の山になっている場所もあります』

次第にアナウンサーの声が涙声になってきているのが分かった。
その国は地震の少ない印象だったので、大地からの揺さぶられ突き上げられる感覚は慣れていないのだろう。
ましてや首都が壊滅しかけるような揺れだ…恐怖が強いのだろう。
画面に映し出される映像に被害の大きさを感じつつ、関係の無い筈の自分も恐怖を覚えた。
映像が流れている間、アナウンサーの姿は映し出されなかったが泣き声に混じり

『ああ…神様…』

と云う言葉が聞き取れた。

その言葉のすぐ後に突然、悲鳴が上がり画面が元に戻る。
慌てているのか映像の揺れが酷い。

アナウンサーの悲鳴とも泣き声ともつかぬ声をBGMに彼らが背景にしていた崖に面した森が土砂崩れのように流れだし、崖の下へ向かって流れ落ちていく。
崖の下は海か何かになっているのか、凄まじい水飛沫が上がっていた。
それと同時に激しい揺れが起こり、カメラは何処を撮しているのかは分からない。
ただアナウンサーの絶望したような泣き声と、恐らくカメラマンのものと思われる怒声、それ以外の撮影スタッフのものと思われる複数の声が暫く流れると画面は日本のテレビ局へと戻っていた。
テレビの前の視聴者と共に同じ映像を見ていたニュースキャスターは言葉も出ないのか、強張った表情で恐らく手前にあるモニターを見つめたまま硬直していた。

そして放送中止の表示と共に画面から消えた。

再びチャンネルを変えたが何処も放送中止になっていた。
あまりの衝撃的な映像に放送出来なくなったのだろうか。
インターネットではTwitterや2ちゃんねる、あちらこちらのブログサイトで先程のニュースについて盛り上がっている。

そして暫くしてテレビが復活して分かった事は、『その国がほぼ壊滅した事だった。