話題:今日見た夢

夕刻、奇妙なものが空を漂っているのが見えた。
大分高い所にあるようだが、自身が知り得る航空機とは違う形をしたそれは、夕日に照らされて赤い光を反射している。

何だあれは?
そう思いつつ眺めていると、それは猛烈な速さで此方へと向かって下降してきた。
あっ、と思った時にはそれは目の前にあった。

大きめのバランスボール程の銀色の球体に、所々から鋭いパーツが突き出た見た目。
金属なのかも分からない滑らかな表面には細い光の筋が縦横無尽に張り巡らされ、青白く輝いていた。

突然、目の前に現れた正体不明の物体の存在に思考が追い付かない。
蛇に睨まれた蛙の如く動けずにいると、それは音も立てずに下部からチューブを伸ばすと私に向けた。
どうやらカメラらしく、チューブの先端にはレンズらしきものがチラチラと見える。
それは何かを調べるように私の周りを一頻り這い回ると球体の中に戻り、今度はそれと入れ替わりにアームが出てきた。
滑らかに動くそれにはボールペンのペン先を大きくしたような機械が取り付けられ、その先端は此方に向けられている。
未だ脳の処理が追い付かないままそれを見ていると、向けられた先端が眩く光を放った。

それと同時に左の鎖骨よりやや上の方に鋭い痛みが走る。
焼鏝を当てられたような、鋭利な刃物で切り付けられたようなそんな痛み。
あまりの痛みに喉が引き攣り、押し殺したような呻き声が漏れた。
痛みの所為か、無意識に溢れた涙で滲んだ視界には、アームの先端から細く煙を上げる球体が居る。
次いで痛む箇所に目をやると、皮膚が盛り上がり小さく何かが刻まれていた。
青黒く浮かぶそれは模様、或いは数字に見える。
立て続けに起こる訳の分からない出来事に呆然としていると、目の前の球体が視界から消え、やや遅れて凄まじい音が耳を劈いた。

『大丈夫か?』

咄嗟に伏せていた顔を上げると、件の球体の代わりに重装備姿の男が立っていた。
その足元にはひしゃげた球体が転がり、再び浮き上がろうとしているのか、地上数センチをフラフラと彷徨う様に浮かんでは落ちるのを繰り返していた。
それを押さえるように足で踏み付けると、男は鈍い音を立てるそれについて色々と教えてくれたが、あまりにも非日常的な内容に所為かなかなか理解出来ない。
ただ、それが地球外からやってきた事と、どうやら人類を選別しているようだという事だけは何となく理解した。

『心配しなくてもいい。選ばれたという事は、君にとって悪い事にはならないから』

そう言って此方に向けられた男の目が、レンズのように一瞬だけ輝いた。