風紀委員の仕事を済ませて一緒に帰るのはいつものこと。だけど、零とあたしの間が少し変化した。今は、…

『恋人』

いつも普通だったことでさえ、恋人になった途端に意識して、何気ないことにドキドキして。汗ばむ手。

普通に手を繋ぐことでさえ緊張して。心臓は常になりっぱなし。


「どうした?」

いつになったら慣れるのか。手を繋いで帰る時に零に話かけられた。普段はあたしの方が零に話しをするけれど、付き合い始めたら、上手く話せない。

(この胸の鼓動をどうにかしてよ。)


「ね…つでもあるのか?」

そう言った零は優姫の背までかがみ額をこつんとくっ付けた。零の顔が近い。それだけで体温上昇。顔の赤みも増して、ゆでダコみたいなあたし。


「……だだ…大丈夫だよ〜。ほら、元気だよ〜…」

鼻が擦れるくらい近くて胸がギュッってして痛い。これ以上、スキを増やさないで。

「ならいい…ケド…」

パッと零は優姫の額から自分の額を離す。頭をくしゃくしゃと乱暴に撫でられて。乱暴なのに優しくて。

「…ぜ…ぜろっ…ありがと」

その言葉に微笑した零。夕日が最後の光を放って眩しい。零が笑うとあたしは苦しい。

刹那。

それは不意討ちのように優しいキスで。ただ一瞬触れるキスなのにそこからじわりと熱くなる。

「ぜ…/////」

「行くぞ…//」

強くて大きくて乱暴なのに優しくて。繋がれた手はまた汗ばんでいた。

「優姫」

零は歩みを止めると照れて横を向きながら言った。

「土曜日に一緒にどっか行くか?」

あたしの返事はわかっての通り。それは、零からの初のデートのお誘いだった。


つづく