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僕らはいつも

ふと気付くとベッドの上にいた。ちゃんとかけられた毛布。窓の外は朝の陽気に溢れていた。包丁の音がキッチンからする。


「きゃぁぁああ!!」

その悲鳴にびっくりした零はキッチンまで向かう。


「どうした!?」
「あ、ぜろっ」

優姫はにっこり笑うと零の方まで寄って来た。

「見て見て!卵焼き作ろうと思ったら、卵の双子が出てきたの!//」

そう言って興奮する彼女に眉をひそめた。…心配して損をした。でも、こんなに嬉しそうに笑う優姫につい口元が緩む。結わえた長い髪を触るとまたはにかむ優姫。

不意討ち。

俺たちは結婚した。今は二人暮らし。

最初は散々な朝ごはんで、一緒に作っていたけれど、結婚したからかも知れないが、優姫はかなり料理が上達した。

優姫曰く、『大好きな人に喜んで貰いたいから』だそうだ。

そんな事を言ってくれる彼女に愛しさが込み上げた。口にはださないけれど。


「…使うの勿体ないな、双子卵」
「別に使えば言いだろ」

「零と壱縷くんと同じ双子だよ!?卵でも勿体ないよ」
そう言った優姫はルンルンとまたキッチンに向かう。楽しそうに料理をする彼女につられて久しぶりにキッチンに向かう零。


「あれ?零どうしたの?」
「久しぶりに料理が作りたい」

「零と一緒に料理とか久しぶりだね。わーいっ」


そう言った優姫はぱたぱたとタンスに向かい、零のエプロンを持って来た。


「可愛いー!///」
「お前なぁー」

優姫のフリルピンクのエプロンを着せられ、不満そうな零。

「それしかないの。黙って手を動かすっ!」

「……」

二人で朝ごはんづくり。そんな日曜日の朝は二人にとっての宝物。

「あ!双子卵!!」

「使わないとな。それにこれは元は1つなんだ。だから、一緒にさせた方がいい…」

何故か、少し寂しそうに言う零を優姫も感じとったのか、零が作り始めた卵焼きを見つめた。


「ほら優姫、あーん…」
「…え///…あ〜〜っ…」

零の手作りふわふわ卵焼き。相変わらずな美味しさ。

「おいしい〜〜////」

優姫の高い声が響くキッチン。零は満足そうに優姫を見つめた。二人の朝はとても賑やか。毎日、笑顔。

そんな毎日をずっと過ごそう、…ね?


約束だよ。


fin
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深まる、キモチ。

最近のデイクラスは雰囲気が変わった。零がホストになった文化祭以降、何故か零を見つめる視線が痛い。

それもそのはず。

コスプレなんて絶対しない零がホスト姿で舞台に上がったのだから。みんな興奮したっておかしくない。ないけど…。優姫はため息をついた。

「35回」

沙頼は優姫を見つめ首をかしげる。

「どうしたの?ため息ばっかりだけど。」
「あぁー、視線が痛いの」

優姫はうなだれると沙頼はくるりと振り返った。零くんの事か、と沙頼は思う。
今日も黒いオーラが立ち込めていたが、前よりも近寄り難くなくなった気がする。

「優姫。零くんと何かあったの?」

「ないよ…。あったのは周りの変化かなー。なんかわかるの、零の事をチラチラ見る女の子の視線…」

はぁあ、とため息をついた優姫に沙頼は36回目と呟く。

沙頼は周りを見渡すと、確かに鈍感な優姫でもわかるくらい零に対する女の子の視線が痛い。

優姫と零が付き合ってる事実は理事長でさえ知らない。けれど、やはり彼女としてはこの視線はそわそわするなぁと思う。

「零くんって優姫より鈍感だったりする?」

沙頼の言葉にコクリと頷いた優姫。ちょうど同じ時に、零は立ち上がるとクラスを出ていった。

「零くんどっか行ったわよ、優姫」
「うえぇ!?何で!?」

「サボりじゃないの?次は夜刈先生の倫理。それでなくとも守護係のあなたたちには眠いわよね」

その沙頼の発言にガバッと立ち上がる優姫。


「頼ちゃん、行ってくる!」
「行ってらっしゃい」

走っていく優姫を心配そうに見つめたが、彼女にはきっとわかって貰えないだろう。なんせ、彼女は零くんの事になると一直線な子だから。

***

昼下がりの絶好お昼寝日和な空の下、優姫は銀色の影を求めて走る。

最近の零は、夜間部の人と同じくらい人気になってしまった。遠くに感じてしまう時すらある。

「どこにいるの…」

走り疲れて歩きながら、額にかいた汗を拭った。ハッとしたように、優姫はまた走りだす。

**

「リリィ、髪噛むな」

リリィの馬小屋に零は居座っていた。少しブラッシングしたら上機嫌なリリィ。零が大好きだからというのもあり、髪を噛む。

「はげる」

リリィは零の髪をカミカミしながらも、視線を横に向けた。瞬間的な行動に零も夜を見つめるとちびがいた。



「優姫かよ。なんでここにいるんだ」
「授業サボるからだよ!」

はぁと零はため息ついて眉間に皺をよせた。そして、一言。

「お前もサボッた事になるだろ、ばーか」
そう言うと零は干し草の上に座りこむ。リリィは優姫に威嚇していた。かなり怒っているのが、ひしひしと伝わる。

「零って馬にまでモテるんだ…」

新種の敵に優姫はたじろく。リリィの側で座る零の側に行きたいけれど、これじゃ行けそうにもない。


「零。夜刈先生の授業に戻ろうよ」
「お前が戻れば言いだろ」

「ちょっと!これでも零の彼女なんだよ!!心配してる彼女の言葉に従ってよ!」

「…授業中なんか俺より居眠りしてる奴に言われたくないな」

フッと笑う零にイラリときた。

「ひどい!意地悪!!零のばか!!ばかーっ!」

「…うるせぇな」

零は立ち上がり、優姫の手を引っ張った。
「うわぁ!!」

勢いよく体勢を崩し、干し草の上に倒れる。優姫の上に零は覆い被さった。

「俺が上にいれば、リリィに殺られないな」

「…///なっ…//」

鼻が擦れそうな距離に戸惑う優姫に意地悪起動中の零。

「本当は俺といたくて来たんだろ。今さら恥ずかしがるなよ…?」

近くで感じる零の甘い声に気が狂いそうになる。自分の顔が真っ赤なのがわかる。

近い。近い。近い。

「〜〜〜///」

「本当に面白い奴。遠ざかれば近づいて。近づいたら離れてく」

「違うよ!離れないよ!」
「ふ〜ん?」

意味深に相づちをうつ零に赤い顔で頷いた。

「じゃあ、証拠」

零は自分の唇に指差す。耳まで真っ赤になる優姫にまた苦笑いしながら。

「〜//////」

チュっと軽くキス。

「よくできましたー」

そう言って、心臓抉りの満面の笑みな零に、また、心を奪われたんだ。

また、『好き』が増えたんだ。

fin
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