スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

愛しい人

ホスト仕事をほったらかし、優姫の手首を掴みながらサクサクと歩く零。人混みの中をすり抜けて、外の露店を通り抜け、人気のない体育館裏。


体育館で行われてるバンドの演奏が微かに聞こえ、青空が広がる屋外。

ようやく手を離す零は優姫の方を向く。

「なに泣いてたんだ」
「知らなくて良いよーだっ」

まだ、意地を張る優姫の額にでこぴんする。

「いたっ!!」
「素直じゃないからだ」

「なによぅ!零の方が素直じゃないじゃない!!」

ぽかぽかと零を叩くがあまり効果はないらしい。今日は珍しく抵抗しない零。

優姫は動作をやめて顔を覗きこむ。いつもと同じ、眉間にしわ。


「…ごめん。約束破って」

小さく掠れた声にドキドキしたり。独占欲で嫉妬したり。でも、素直過ぎる零もたまには良いかもと思いクスリと笑う。


「なに、笑ってんだ」
「だって零が素直だから」

からかわれたのが不快なようでまた眉間のしわは不快なる。

そこも好き。

「見るんじゃねぇよ」

優姫が自分を覗きこむから恥ずかしがり彼女の顔を自分の手で覆う。


「あのね。零。あたしさ…零が…」
「俺が大好きってか!?」


「なっ////」

「そんな事知ってるから」

フッと静かに優姫の反応がおかしくて笑う。こんなホスト服着ている彼氏が、零じゃないみたいな。でも零で。

ドキドキで心臓がもたない。零もそうだと良いな、って思う。


「零はあたしを好き?」
「なんだよ、いきなり」

優姫の質問に戸惑う。今度は優姫が眉間にしわ。


「言えないんだ。ふーん、ふーん…」
「俺が言うと思ってんのか?」


「別に、期待してないよーだっ」

「うわっ!!」

すっとんきょうな零の声に満足気な優姫。
後ろからギュ。彼氏彼女の関係になってから、零は後ろから抱きしめられるのは慣れないのか。

昔はそんなに反応しなかったのに。


「ちびのくせに馬鹿力だな」
「だって、どっか行っちゃいそうだもん」
「行かねーよ。ってヲイ!!肉掴むなって!」

「なによ!筋肉だから良いじゃん!肉じゃないよー!ほらほらっ」

「やめろ!触んなっ!」

「くすぐったいんだ!可愛い〜!」

「誰もくすぐったいなんて言ってないだろ!」

「えいえい☆」

「やめろっておいっ!」

零の反応に満足な優姫。今日の事も許してやろうか。今日はあまり抵抗しないって事は実は申し訳ないって思ってんだよね。


「だから触んなっ!!」

「じゃあ、あたしのお気に入りのお店の苺パフェを奢ってね」

黒主学園祭をしまいにはほったらかし、パフェ店に二人で逃亡。

いつもいつも、こんな楽しい日常が続きますように。


fin
続きを読む

No.1ホスト錐生零!

零の宣伝効果もあってか、クラス前は長蛇の列になっていた。男子たちは自分の好みの女子に目をつけていた。

その列に優姫もムスッとして並んでいた。
ムスッとしてる理由は、約束を破ったこと、そして、女子にモテモテなとこ。どの女子も零目当てで来ているってわかったから。


「さっきの花束投げた人、かっこいいよね!」
「ね〜!彼女いるのかな?狙っちゃう?」

(やめて。やめて。やめて〜!零はあたしの彼氏なんですっ。)

って言えたら最高だけど、かなり美人さんがいるからそんな事言えるわけもない。

美人だし、背も高いし、スラリとしてても胸とかあるし…。

あたしなんて自慢できるとこないのに…。本当にあたし零の彼女なのかな、って自己嫌悪に陥っていた。


かなり混雑するホストクラブのクラスイベント会場。『錐生くん指名で』って声ばかり。零はきっと諦めてちゃんと仕事をしてるんだろなって思った。

でも、すごく嫌。

***

諦めたように零は女子に接待していた。冷たい感じがまた好印象(?)らしく、ドンペリと言う名のオレンジジュースをいれてやったりとか。


クラス前にいた男子は優姫の存在に気付き血相変えて優姫に聞いてきた。

「黒主!錐生はまだ仕事…」

優姫はカチンと来てその男子を睨んだ。

「あたしに恨みあるの?酷いよ!!今日は零と露店をまわる約束したのに…」

「ごめんって!!」

「ごめんじゃ済まないよっ!」

優姫はそのままクラスに入る。止めにかかろうとしたが、小さいからか、捕まえ損ねた。

クラス内には銀髪のホストさんがいた。隣には、他クラスの子、『撫子』がいた。

顔を朱色に染めて、零を見つめる。本当に嫌。やだやだ。

「錐生くん…あの…っ」

ガシャン!

撫子は持っていたコップを溢し、制服にジュースがついた。

驚いた零だが、かなり撫子の制服が汚れたので、自分のホスト服の上着を彼女にかけた。

「…それ羽織ってろ」

優姫は他の子に優しくする零にショックというか、嫉妬というかどうしようもない感情で棒立ちしたまま。

そんな優姫を発見した男子が優姫を連れてこうとした。抵抗する気すら、なくなってしまった。

後ろのざわめきに気付いていた零はその男子が優姫を掴む手を取る。

「…き…錐生…」

バレてしまったと青ざめた男子ら。優姫の泣きっ面の顔を見て、うっすら残る目にたまった涙を拭う。


「なに、泣いてんだ、バーカっ」
「泣いてないし」

強がったけれど、きっと零はわかってるのだろう。察したように優姫を連れてクラスから出ていった。


「錐生!!!すっぽかすな!!!」

男子の声はざわめきでかき消されたのだった。

fin
続きを読む
前の記事へ 次の記事へ