零の宣伝効果もあってか、クラス前は長蛇の列になっていた。男子たちは自分の好みの女子に目をつけていた。
その列に優姫もムスッとして並んでいた。
ムスッとしてる理由は、約束を破ったこと、そして、女子にモテモテなとこ。どの女子も零目当てで来ているってわかったから。
「さっきの花束投げた人、かっこいいよね!」
「ね〜!彼女いるのかな?狙っちゃう?」
(やめて。やめて。やめて〜!零はあたしの彼氏なんですっ。)
って言えたら最高だけど、かなり美人さんがいるからそんな事言えるわけもない。
美人だし、背も高いし、スラリとしてても胸とかあるし…。
あたしなんて自慢できるとこないのに…。本当にあたし零の彼女なのかな、って自己嫌悪に陥っていた。
かなり混雑するホストクラブのクラスイベント会場。『錐生くん指名で』って声ばかり。零はきっと諦めてちゃんと仕事をしてるんだろなって思った。
でも、すごく嫌。
***
諦めたように零は女子に接待していた。冷たい感じがまた好印象(?)らしく、ドンペリと言う名のオレンジジュースをいれてやったりとか。
クラス前にいた男子は優姫の存在に気付き血相変えて優姫に聞いてきた。
「黒主!錐生はまだ仕事…」
優姫はカチンと来てその男子を睨んだ。
「あたしに恨みあるの?酷いよ!!今日は零と露店をまわる約束したのに…」
「ごめんって!!」
「ごめんじゃ済まないよっ!」
優姫はそのままクラスに入る。止めにかかろうとしたが、小さいからか、捕まえ損ねた。
クラス内には銀髪のホストさんがいた。隣には、他クラスの子、『撫子』がいた。
顔を朱色に染めて、零を見つめる。本当に嫌。やだやだ。
「錐生くん…あの…っ」
ガシャン!
撫子は持っていたコップを溢し、制服にジュースがついた。
驚いた零だが、かなり撫子の制服が汚れたので、自分のホスト服の上着を彼女にかけた。
「…それ羽織ってろ」
優姫は他の子に優しくする零にショックというか、嫉妬というかどうしようもない感情で棒立ちしたまま。
そんな優姫を発見した男子が優姫を連れてこうとした。抵抗する気すら、なくなってしまった。
後ろのざわめきに気付いていた零はその男子が優姫を掴む手を取る。
「…き…錐生…」
バレてしまったと青ざめた男子ら。優姫の泣きっ面の顔を見て、うっすら残る目にたまった涙を拭う。
「なに、泣いてんだ、バーカっ」
「泣いてないし」
強がったけれど、きっと零はわかってるのだろう。察したように優姫を連れてクラスから出ていった。
「錐生!!!すっぽかすな!!!」
男子の声はざわめきでかき消されたのだった。
fin