季節はめぐる。寂しさはあなたの温かさが埋めてくれた。
***
「っ…あ…っっ…」
熱い欲望を埋められた時に優姫は声を上げた。彼女の瞳にはそれを見つめたままの銀色の髪の主。うっすら汗をかいた彼の裸体は妖艶で、怪しいほど美しい。
「っ…ああ、ぜろ…」
ギシリとベッドが軋む音と淫らな音が響くぼろぼろの部屋。部屋の壁は零が壊したままらしく崩れていた。
その部屋にはまともな家具はない。ベッドと台所に小さな冷蔵庫。零のアパートの近辺には人影さえない。
そんな寂しい場所に彼は住んでいた。
お忍びで彼に逢いに行く優姫は零の愛撫を受けながら天井を見上げた。大きな瞳にはうっすら涙を滲まし、零のされるがまま。
この時間が唯一、彼と共にいれる時間であり、寂しさを忘れられた。
「ゆうき……」
いつもは名前は呼んでさえくれない彼も、生まれた時の姿な今だけは、あたしを呼んでくれる。
愛してると言ってくれる。
小さな快楽の声と共に二人は果てた。
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煙草に火を灯す零は寝転びながら優姫を見つめた。
「なに、みてんだ」
「いつから煙草なんて…」
優姫は零の細く長い指からそれを奪うとベッドサイドの灰皿にそれを潰した。
「お前と別れてから」
「ふーん…?」
零の言葉に相づちを打った優姫は零の身体を触る。
「なに、触ってんだ」
不快そうに眉をひそめた零は優姫の手首を掴む。
「いいじゃない。さっきあたしに触ったみたいにしてるの〜♪」
「はぁ…」
「なによ!」
零は諦めたように優姫の手を離すと顔を近付けた。
「じゃあ、触ればいい。上だけでいいのか?」
「…!!///」
その言葉の意味を理解した優姫はカァァと顔を朱にした。その様子に零は苦笑いする。
「零ってやっぱり意地悪!」
そっぽを向いて恥じらった顔を隠す優姫を引き寄せた。
「ごめん。俺は…」
そう言った零は唇を彼女の背中に落とす。チリっとした痛みと共に刻印が刻まれた。
「ぜろ…あたし…」
何かを感じとったように優姫は零の方を向いた。ヴァンパイアハンターと格好の獲物。彼らの関係性はなんら変わらない。何年経っても変わらない想いもこの関係性がいつも壁として彼らの前にあった。
何年か前からお互いに身体を重ね合わせ寂しさだったり、虚無感を安心させようと努めたけれど。
でも変わらない現実があった。
「あたしたちは結ばれるのかな…」
優姫は零の胸に顔を埋めた。わかっているのにあえて聞いてみた。
零はなんて答えてくれるかな。
淡い期待はしたって無駄なのに。どこかで期待してしまう自分。そんな自分と同じキモチでいて欲しかった。
「俺たちは…偽りなんだ」
「…偽り?」
優姫は目を見開く。
「俺たちはお互いがお互いを埋めあう関係だ。でもこれは禁忌なんだ。だけど止められなかった…」
コレヲ神ハ許ハシナイ。
「ぜろ…でも…あたしは…ぜろが好きだからここに…。零だってあたしを好きって言ってくれた…。それも偽り…?」
零は首を横に振るとアメジストの瞳が潤んでいた。
「違う。どんなことがあってもお前を嫌いになんかならなかった。でも、これを偽りだって思わずには生きても行けなかった…」
これからも。
永遠に変わらないのかも知れない。
寂しさも虚無感も。この曖昧な関係も。
けれど、こうやってでも君と一緒になりたいと願ってしまった自分がいたから。
我が儘でも、どうか許して欲しい。
生きて償うから。
だから、この時を許して。
そう、今日も、偽りのアメジストたちは今日もさ迷うのだ。
END