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聖しょこらるでぃーB

聖ショコラルデー当日。正門の通り道でお目当ての夜間部の先輩を見つめる。片手にはチョコを可愛くラッピングした女の子のキモチ。

「今年もこんなに人気なんて〜」

藍堂は女子たちにウインクをすると数名が鼻血を垂らしたり気絶したりと守護係の優姫と零は大忙し。

「その線からでないで!順番守って!」

優姫は笛を吹くと、女子らも不満を溢す。
「いいじゃない、今日くらい〜」

零はそんな優姫をチラリと見つめた後、自分の近くの女子を睨みつけた。

「俺より前に一ミリでもでてみろ。泣かすからな」

女子たちは零の恐い発言に後退りした。
次々に夜間部の先輩方に渡されるバレンタインチョコ。今年もとりあえずは何もなく終わりそうだ。

「優姫、お疲れ様」
「か…枢先輩!」

両手いっぱいにチョコを持った枢にペコリと頭を下げた。

「枢先輩もお疲れ様です」
「今年は……」
「…え…?」

枢は寂しそうに笑い言葉の呑み込んだ。不思議そうに見つめた優姫だが、枢はそんな優姫の頭を撫でる。不快そうに零が二人を見ている事を優姫は知らない。

「あまり無理はしないで」
「はい!」

まだまだ他の女子たちを解散させたり仕事が山のようにある。

優姫は女子たちを解散させた後、ポケットの中を確認した。昨日は徹夜でチョコを作った。ラッピングも完璧で。後は渡すだけなのに、拒否されて。それでも作ってしまった。

零が正門の鍵やら後始末をしていた。もう夕方。いつもみたいに話したいのに遠い大きな背中。そんな事を考えてるうちに頭がボーっとしてきて。倒れてしまった。

遠くから零の声が聞こえたような気がする。

****

目を覚ましたら医務室にいた。外は真っ暗でもう夜になってしまったのかと思うと同時にポケットのチョコを確認する。もう溶けてしまったかも知れない。ラッピングもいつの間に崩れていた。


「起きたのか」

零がそこにはいた。ドキリとしたけれど、あまりに自然に話す無神経さに呆れてしまう。

「なんでいるの」

思ってもいない言葉が口から零れた。本当はもの凄く嬉しいくせに馬鹿みたいだ。

「お前を運んだ奴に言う言葉かよ…」
「…え…。零が運んでくれたの?」

自分が倒れて、それをここまで運んだのは零。何故かそれが凄く嬉しかった。

「ありがとう」
「…別に」
「でもありがとうね」
「……お前…」

零は優姫の近くに座ると顔を近づけた。

「…な…ななな//」
「倒れた時に額を擦ったんだな。消毒する」

怪我の心配をされたのにキスされるかと正直思った自分が馬鹿みたいだ。消毒液の匂いが鼻につく。丁寧に零が消毒をする額から火照る感じ。真剣な瞳があたしを見つめる。それだけで幸せだった。

「…終わり」
「あ…ありがとう//」

そう言ったら零は微かに笑った。あぁ、久しぶりに零の笑った顔。自分も笑顔になる。


「ずぅー!ぜぇろぉ!」
「なんだよ?」

ポケットから出したあたしのキモチ。綺麗なラッピングはもう型崩れしている。そのラッピングを取り、手作りのトリュフをだす。

「口開けて、かがんで」
「はぁ?意味わからねぇ」
「早く早く!」
「っ…たく…ちび…」

そう言った零はちゃんとかがんでくれて少し背伸びしてチョコを口に入れる。びっくりした顔の零にもう1つのサプライズ。

それは一瞬の口付け。

「あと2、3個チョコがあるから食べてよ!今のちゅうはお……お礼だから…///」
そのまま逃げるように走る優姫。自分の行動に驚いたのだろう。だけど、この不意討ちはない。

「なにがお礼、だ…。キスがお礼って…アイツ…」

顔を覆う手の隙間からは、赤面した零の顔が微かに見える。不器用だけど大胆なそんなバレンタインも悪くはない。

fin
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聖しょこらるでぃーA

『いらねぇ』

優姫の耳から零が放った言葉が離れなかった。いつの間にか、零は優しいから貰ってくれるとどこかで思っていたのかも知れない。自分は零の優しさに甘えてきたのかも知れないと思い始めた。だけど。だけど…

「あんな言い方しなくたって…」

優姫は久しぶりに零に拒絶されたことにショックを隠しきれなかった。友達以上恋人未満でも、他の人よりは零に近い存在だと自負していたから。だからあの言い方にとてもショックで。


「ふんだ!零になんか作らないし!」
「何を作らないの?」
「うわぁΣ頼ちゃん!」

後ろに頼ちゃんが不思議そうな顔をしていた。

****

「ふ〜ん。零くんにそんな事言われたの。じゃあチョコなんて作らなくて良いじゃない」

「……でも……」

「優姫。零くんが優姫の気持ちに気付いてないからそんな酷い事を言えるのよ?優姫が可哀想であたしは嫌」

だんだん頼ちゃんの話を聞いてると零が悪者になってゆく。でも、それでも。


「頼ちゃん!お願い!やっぱり零にチョコ作りたいから手伝ってくれないかな!?」
優姫がそういうならと頼ちゃんは不満な顔をして言った。

****
聖ショコラルデー1日前。
クラスの盛り上がりは最高潮に達していた。眉間にしわをよせたままの彼を除いてだが。

「みんな凄い盛り上がりよね。あたし、ついていけない」

「確かに。そんなに盛り上がる必要性はないよね…。ちなみに昨日から理事長がチョコチョコうるさいの」

「あらあら。優姫の後ろの人に少しでもその盛り上がりわけたらいいのにね」

頼ちゃんの発言に優姫は零をチラリと見つめた。全く無反応で寝ている。頼ちゃんの発言はさらにエスカレートしていく。

「優姫はやっぱり去年みたいに玖蘭先輩にあげるの?」

「よ…頼ちゃ…」

先生からの静かにしろ発言で静まる教室。零もむくりと起き上がったらしい。頼ちゃんは最終警告のように零の方をくるりと向く。


「なんだよ」
「頼ちゃん、もういいよ」

優姫は立ち上がると零の方を向いた。抑えた想いが溢れるように涙が止まらない。

「零のバーカーー!」

そのまま泣いて走っていく優姫を頼ちゃんは心配しあとを追う。零はふてくされ項垂れる。

「馬鹿にバカって言われたくねぇよ……意味わかんねぇ…」

*****
そんな一件があった後の夕飯はかなり気まずいもので。会話なしに黙々と理事長を囲み食べる。そんな気まずさを破るように理事長は話しだす。


「ゆっきー。明日は聖ショコラルデーだね!」

「………」

「チョコ楽しみにしてるからね!」

「………」

気まずい雰囲気は変わらなかった。優姫は立ち上がりボソッっとご馳走さまと言って部屋に向かって行く。

「錐生くん。ゆっきーに何したの?」

「なんもしてませんよ。人聞き悪い言い方止めて下さい」

「ゆっきーを怒らせるようなこと言ったんだね」

零はカチンときた。最近のイライラは半端ない。ショコラルデー、ショコラルデー。ふざけんな。

「別に。優姫がチョコあげるって言うからいらねぇって言っただけですよ。アイツは玖蘭枢が好きだから…アイツにだけ渡せば良いって思って…」

チクチク胸を抉る単語。零は舌打ちをした。

「本当に錐生くんは鈍感だね」

理事長の意味深発言に零は頭の中がごちゃごちゃでわけが分からずにいた。

続く

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