こんなに恐ろしい『雪合戦』を見るとは思わなかった。
さかのぼること二時間前。いつもより遅い目覚めだった。窓の外から声が聞こえた。
(何の声かな…)
気になったけれど、眠さには敵わなくて。でもちょっと見ようかなと思いベッドから身体を起こした。
すると枢センパイと零が雪合戦をしていた。普段から仲の悪い二人が雪合戦をしているのに驚いたが、それ以上に二人の雪玉の速さが異常だった。二人の様子に釘付けな優姫。
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「錐生くん。新年早々、君の顔を見るなんて…縁起が悪いね」
枢はフッと笑みを溢したが、零は眉間にしわを寄せる。いつも以上のしかめっ面。
「玖蘭センパイ。それはこっちの台詞ですよ。それより何故ここへ?」
零の問いかけにわかるだろうと言わんばかりに言った。
「もちろん。優姫に会いに来たんだけど。何故か一番会いたくない錐生くんに会ったわけだよ」
「それは残念でしたね、玖蘭センパイ」
「あぁ、とっても残念だよ。錐生くん」
二人のイライラはピークに達した。そんな時に枢はまた意味深に笑う。
「そうだ錐生くん。雪がいっぱいここにはあるんだし、雪合戦でもしようか?」
そう言って手袋もしない素手で雪玉を作りだした枢。じんわり雪の冷たさにかじかむ手。だが、楽しそうに笑う枢を見て、ニヤリと零も素手で雪玉を作りだした。
(アイツの顔に雪玉をくらわせる絶好のチャンスだby零)
(優姫の前で錐生くんに恥をかかせるチャンスだby枢)
二人はそれぞれの思惑、今までの憎しみ(?)を込めて雪玉を作っていく。
そして、今に至る訳、だ。
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「錐生くんからでいいよ」
「じゃあ、遠慮なく」
雪玉を躊躇うことなく投げた零。その速さは異常!!!!枢は目を見開くと雪玉が砕けた。
「錐生くんの雪玉…いい感じだったよ…まぁ。僕には敵わないけど」
枢は次は僕だねと呟き、零目がけて仕掛けた。零は血薔薇銃で雪玉を撃ち抜く。
「…錐生くん、血薔薇銃をだすなんて…反則だよ」
「そんなルールがあったんですか?玖蘭センパイ」
「まぁ、僕らの雪合戦にルールなんてないけどね…」
「ですよね、玖蘭センパイ」
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優姫は木の影で密かに枢を応援する藍堂センパイを見つけた。手にはお年玉で買ったのか高そうなカメラを持参していて、鉢巻きを巻いてる。鉢巻きの内容は『僕は玖蘭枢派!』
「…………」
また隣の木の影に理事長が目をキラキラさせながら二人を見つめていた。
「…あたし……夢見てるのかも知れない…!うん…そんな気がする…!」
優姫はそう呟きカーテンを閉めてベッドに横たわった。
fin