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聖しょこらるでぃー@

そわそわするこの季節。甘い甘いチョコレートに込めるあっかくて、甘い気持ち。聖ショコラルデーの3日前。

クラスの女子はどの夜間部の先輩あげるかとそわそわしていた。

「優姫、そのチョコ作るの?」

雑誌のチョコを見つめていた優姫は沙頼の言葉にドキリとした。隣に座った沙頼にあははとごまかし笑い。

「あたしの料理の腕前だったら不可能だよね…」

「そんなことないわよ」

沙頼の言葉に感涙した優姫はガシッと手を掴むと同時に、手伝っもらうことを承諾してもらった。クラスは聖ショコラルデーの話で持ちきり。

普通科の男子たちは夜間部にみんなチョコを持ってかれると悟ったように諦めていて、冷たい視線を女子に送っていた。


「藍堂先輩もらってくれるかな?//」
「あたしは子葵先輩!//」
「玖蘭先輩でしょ〜」

そんな会話が耳にたくさん入ってくる中、優姫はチョイスした雑誌のチョコに丸をつけた。

「優姫は誰にあげるの?」
「…え?」
「ふーん。零くんね」
「………零にあげ…ようと思ってる」

沙頼はクスっと笑い後ろで居眠りをする零を見る。
「零くん、びっくりでしょうね」
「…でも、零ってば甘いもの食べるのかな…。あたしのチョコなんて不味そう、いらねって言わないかな?」

「大丈夫よ。」
「なんで?」

優姫は全く零の気持ちに気付いていなかった。沙頼だけが二人が両想いなことに気付いている。当の二人は全くわかっていない。そんなもどかしい二人にまた小さく笑った。

*****

二人は理事長に呼ばれて理事長室に向かった。話の内容は大体わかっていた。

「二人とも。話の内容はわかってるよね」
「「はい」」

「まぁ、何もないとは信じているけど…二人ともよろしくね」

聖ショコラルデーは守護係の最も活動する日といっても過言ではない。ため息をついた零はギロリと理事長を見つめた。

「怖い顔しないで錐生くん;;」

「任せて下さい!理事長!」

優姫の覇気に零はまた、ため息をついた。理事長は『さすが優姫はわかってくれる〜』と喜びながらも、肝心なことは言う、らしい。

「優姫。お父さんにもチョコは渡してね☆」

「………」

理事長はチョコが欲しかった。らしい。

****

「なに楽しそうな顔してんだ」帰り道の廊下で、零の不快極まりないというような声に優姫はムッとした。

「コラ!零も楽しんで!」
「バカ言うな」

「もう!零だってチョコが欲しいでしょ?」

(言ってしまおうか。チョコを零に作るってこと)零は、かなりイライラしているようでちょっと寂しい。

「零―。」
「なんだ」

優姫は零の背中の一点を見つめて勇気を振り絞り口を開いた。

「零にチョコ作るから…」

その優姫の言葉を振り払うような冷たいアメジストの視線。彼は衝撃の一言を発した。

「…いらねぇ…」

それは乙女心にはあまりに痛かったんだ。

*続く

君の隣の日常


何気ない日常に幸せを感じる今日この頃。

日の光が射し込む部屋。

「ふぁあ…っ」
「でっけぃあくび」


朝は理事長・特製朝ごはんから始まる。特製といってもご飯、味噌汁、魚や、野菜炒め…。

納豆をかき混ぜる零は相変わらずとばかりに優姫を見つめ、手を動かす。

「眠いんだもん」

「お前さぁ。早く食べないと遅刻だぞ」

「知ってるしぃ!」

朝は忙しい。

***

「ゆーき…」

頼ちゃんの声に気付く様子すらない授業中の居眠り常習犯。すぅすぅと眠る彼女に半ば諦めたように頼はため息を洩らした。

***

放課後もみんなのいない教室でずっと眠り続ける優姫。


「そろそろ起きろ」

零は眉間をしかめる。優姫の肩に手をおき、ゆっさゆっさ揺さぶる。

寝ぼけながら優姫は目覚め、零の顔をぼやっと見つめた。


「……零だ…」

「…帰るぞ」

「え…」

窓の外はすっかり真っ暗。ヴァンパイアさんたちも元気に活動を始めそうな感じ。


「今日も頑張ったー」
「寝てただけだろ」

「うるさい〜!!」

さぁ、風紀委員のお仕事を始めましょ?


fin



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二人のワルツ

裏方で舞踏会を見守る優姫たちのクラス。テストの点が最低クラスは裏方で舞踏会を支える役目だからだ。

クラス委員長は文句を言い、クラス全体がどよんでいた。憧れの夜間部の人と踊るチャンスもない。華やかな衣装を準備しても踊れない。優姫は裏方で舞踏会の安全も守護係として見守っていた。


「黒主さん、錐生くんがいないわ」

クラスの女の子が優姫に言ってきた。優姫はさっきまでいたはずの零が急に消えたのに少し疑問を抱いた。

また、飢えがきたのかな。それともただのサボり?そんな不安が頭をよぎった時にはもう走り出していた。

***

零は廊下で体勢を崩す。胸の苦しさと上がる息。また、飢えに耐えられず、吸血衝動に駆られそうになる。

何度飲んでも吐いてしまう血液錠剤。けれど、優姫の血にばかり頼るのは嫌だった。怖かった。いつか本気で、あの肌に牙を立て、抵抗する優姫をよそに全ての血を吸ってしまいそうで。

そんな事は全体に避けたい。もし、そんな事になったら、生きていけないのもわかっていた。アイツの存在は俺の中ではもうとっくに大きな…大事な…。


「零!?大丈夫!?」

いつも誰よりも早く俺の場所に駆けつけてどれだけお人好しなんだ。

「血が欲しいの?なら…ほら……」
「や…め…ろ!大丈夫だ。」
「でも苦しそうだよ…?」
「いいからあっち行け!」

あまりの怒鳴り声にビクリと小さな肩を震わす優姫。血に飢えた吸血鬼になりかけて、目は充血したように赤い。

ここまで激しく当たれば、コイツも観念して帰ると思っていた。いつもいつも、コイツを試す自分。意地悪なのは重々承知の上だった。

(真っ直ぐにただ純粋に心配して。馬鹿な奴)

優姫は後ろから零を抱き締める。いつも、この腕が自分をひき止めて正しい道に導いてくれた。

「あたし…零に頼って欲しいよ…。そんな寂しい事言わないで…お願い…何処にも行かないで」

一瞬、自分の考えてた事を見破られたかと思ってしまった。吸血鬼になった事から逃げようとする自分。

いつも、本当の事を気付かしてくれる大きな存在。回された優姫の手を握ると吸血衝動は収まったようだった。震えた手を強く握る。

(恐いクセに強がるんだ)

「ごめん…。あ…ありがとう…」

『ありがとう。』零からのありがとうに優姫は驚いたように目を丸くしたが、何故か無性に嬉しくて笑顔が零れた。

「うん…!」

にっこりと笑う優姫の顔に安堵したようにうっすら微笑した。ようやく耳に舞踏会の音楽の音色が聞こえた。曲調が変わる。

零は優姫の前に手を差しのべた。

「たまには…踊ってみるか?」
「…え」
「いつも裏方ばかりだし…」

コホンと照れたように咳払いした零にまた笑顔になる優姫は、その手をとる。

「零って踊れるの?」

零の肩に手を回す優姫。優姫の背中に手を回す零。ゆっくりテンポのワルツを一曲。
「当たり前だろ。お前みたいに足は踏まん」

そう言って零はわざと優姫の足を踏む。

「なっ!なっ!零って本当に意地悪だよね!」

ムキになった優姫は零の足を何回も踏む。
「いてっ!お前!また太ったんじゃねぇーの?」

「ひどい!なによ!零の馬鹿!バカバカ!」

「バカにバカとか言われたくねぇー」

最早ワルツと言うよりはお互いの足踏みワルツとでも言うべきか。素敵なドレスとか、シャンデリアに囲まれた舞踏会ではないけれど、何故か凄く楽しい。

二人の笑い声混じりのワルツは続く。


fin

切羽

ベッドが軋む音。
何度となく接吻を交わす。
肌を優しく撫でる貴方の手が好き。

「零…」

その名を口に出せば、微かに笑うその名の主。でもいつも悲しそうで。消えてしまいそうで恐い。

「…ゆうき…」

そう言ってまた接吻をした彼がまたあたしを誘う。惑わさないで、これ以上。貴方にこれ以上溺れたらあたしは……帰れなくなる。

「帰れなくしてやる」

そう言って吸血鬼協会の零が住むアパートに枢の目を盗んで通った。三ヶ月に一回が一ヶ月に一回になり。一ヶ月に一回が二週間に一回になる。止められない。

好き。好き。
そのアメジストのように輝く瞳、首筋の刺青、銀色の髪の一本まで全部好き。

だから、あたしは帰れなくなる。枢を欺く罪悪感と零しか見えない自分。零が人間から吸血鬼になった経緯、吸血鬼を最も憎み純血種を殺そうとしている事もわかっている。
でも止められない想いがあたしをここまで引き寄せて。いつの間にか貴方に溺れた。そんな欠陥だらけなあたしを包みこんでくれるように優しい貴方が好き。

「ねぇ、あたし…零の…その…」

「なんだよ。はっきり言え、バーカ…」

そう言って頬をペンペンと叩く零に口を尖らす優姫。

「あたし、零と暮らしたいな…って思ったの。昔みたいに……」

「………………」

何故か顔色を変えた零はベッドから起き上がり服を羽織ると優姫を見つめた。優姫の乱雑に落ちていた服を広い上げて零は真顔で言う。

「もう、ここに来るな」

その言葉に目を見開く優姫。どうしてという顔で見つめたまま沈黙は続く。

「どうして…そんな…零…あたしが嫌いになった?」

「………もう、逢わない。これが最後、だ」

「あたしの質問に答えて……?あたし……は…」

涙が溢れて止まらない。優姫は嗚咽まじりに零に問いかけた。

「俺は吸血鬼ハンター。お前は吸血鬼。わかるだろう、俺たちは敵だ。」

敵、敵、敵。崩れるように泣く優姫。零の冷たい現実の言葉が胸を貫く。

「嫌だよ…!敵でもいいから…だから、逢わないなんて言わないで!」

零は優姫を無視するように微かに笑う。

「ごめん。もう逢わない。泣かないでくれ…」

「じゃあ、逢わないなんて言わないで…」
「…無理だ」

「ぜろっ…!どうして?」

「…さっき言った通りだ」

『俺は吸血鬼ハンター。お前は純血の吸血鬼。』

泣かないで。なんて優しい言葉がまた心に傷をつける。ねぇ、零。本当に別れたいって人はそんな優しい言葉かけないんだよ?
そんな泣くの我慢する顔しないんだよ?

****

零に促されようやく帰り支度をした。珍しく零はあたしを送ってくれると言ってくれて。余計、惜別という言葉が感じられた。離れたくなんてないのに。こんな終わりなんて望んでないのに。

繋いだ手を離したくない。手を繋ぎ真夜中の道を歩く。切なくて苦しくて。

また泣きそうだった。

「元気で…な…」
「本当にお別れなの?」
「あぁ。でも……」
「でも…?」

「本当の敵なら、また逢える」
「………」

残酷な運命にまた涙が溢れてしまう。風が吹き抜け、髪が乱れる。街灯の灯りが小さく灯っていた。

「…お前のいるべき場所に…行け…」

零に愛してもらった数時間前が嘘みたいで。また涙が溢れたんだ。

もう、視界は涙で滲んでてよくわからなかったんだ。


fin

僕らの雪合戦

こんなに恐ろしい『雪合戦』を見るとは思わなかった。

さかのぼること二時間前。いつもより遅い目覚めだった。窓の外から声が聞こえた。
(何の声かな…)

気になったけれど、眠さには敵わなくて。でもちょっと見ようかなと思いベッドから身体を起こした。

すると枢センパイと零が雪合戦をしていた。普段から仲の悪い二人が雪合戦をしているのに驚いたが、それ以上に二人の雪玉の速さが異常だった。二人の様子に釘付けな優姫。

****

「錐生くん。新年早々、君の顔を見るなんて…縁起が悪いね」

枢はフッと笑みを溢したが、零は眉間にしわを寄せる。いつも以上のしかめっ面。


「玖蘭センパイ。それはこっちの台詞ですよ。それより何故ここへ?」

零の問いかけにわかるだろうと言わんばかりに言った。


「もちろん。優姫に会いに来たんだけど。何故か一番会いたくない錐生くんに会ったわけだよ」

「それは残念でしたね、玖蘭センパイ」

「あぁ、とっても残念だよ。錐生くん」

二人のイライラはピークに達した。そんな時に枢はまた意味深に笑う。


「そうだ錐生くん。雪がいっぱいここにはあるんだし、雪合戦でもしようか?」

そう言って手袋もしない素手で雪玉を作りだした枢。じんわり雪の冷たさにかじかむ手。だが、楽しそうに笑う枢を見て、ニヤリと零も素手で雪玉を作りだした。


(アイツの顔に雪玉をくらわせる絶好のチャンスだby零)

(優姫の前で錐生くんに恥をかかせるチャンスだby枢)

二人はそれぞれの思惑、今までの憎しみ(?)を込めて雪玉を作っていく。
そして、今に至る訳、だ。

*****

「錐生くんからでいいよ」

「じゃあ、遠慮なく」

雪玉を躊躇うことなく投げた零。その速さは異常!!!!枢は目を見開くと雪玉が砕けた。


「錐生くんの雪玉…いい感じだったよ…まぁ。僕には敵わないけど」

枢は次は僕だねと呟き、零目がけて仕掛けた。零は血薔薇銃で雪玉を撃ち抜く。


「…錐生くん、血薔薇銃をだすなんて…反則だよ」

「そんなルールがあったんですか?玖蘭センパイ」

「まぁ、僕らの雪合戦にルールなんてないけどね…」

「ですよね、玖蘭センパイ」

*****

優姫は木の影で密かに枢を応援する藍堂センパイを見つけた。手にはお年玉で買ったのか高そうなカメラを持参していて、鉢巻きを巻いてる。鉢巻きの内容は『僕は玖蘭枢派!』


「…………」

また隣の木の影に理事長が目をキラキラさせながら二人を見つめていた。

「…あたし……夢見てるのかも知れない…!うん…そんな気がする…!」

優姫はそう呟きカーテンを閉めてベッドに横たわった。


fin
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