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永遠なんて言葉はないのに

私たちの距離は近くて遠い
手を伸ばせばそこにいるのに。届かない。


***

惜別を惜しむ時間などないくらいにヴァンパイアの私とハンターはお互いの立場のまま動きだした。

そんな矢先に彼との利害一致により彼の血を呑む機会があった。愛という感情とかではなく、あくまでもお互いの立場のための吸血。

枢が行方不明になってから私は先が見えない闇の中、純血の姫として生きなければならなくなった。

そんな中で彼の血を呑むことが、私の感情を揺さぶることとも知らず。ただ貪欲に 言葉の通りヴァンパイアという獣として彼の血を呑む。

彼の銀色の髪が生臭い血の匂いに微かに汚れた。血の匂いは私の嗅覚に甘美であり、少し己の立場を忘れさせるものであって。
我に返ったとき、銀色のハンターの血色は更に悪くなっていた。なのに止められない。

その血が私に流れて初めて彼の感情を知る私は目を見開いた。
甘くて切ない。

何故だろう。

涙が溢れた。

私は口元に残った彼の血を拭うとゆっくり話す。

「ありがとう。零。私もう迷わないよ。」

苦しそうに患部に手を当てた零は私を寂しそうな睨みで見つめた。

「…っ…」

「私はこれからも零と対立すると思う。だけど邪魔したら容赦しない。たとえ零であっても」
「俺も同じだ…ヴァンパイア…っ」


その時、私は極上の嘘の笑顔で微笑んだ。そして、彼に背を向けて再び歩きだした。

このヴァンパイアと人間の戦いが終わった先に私たちが一緒になれる未来がないのはわかっている。

どんなに足掻いても彼と共に歩む未来はないだろう。

だからお願い零。

私が死ぬときは、あなたにいて欲しい。
好きなんて言葉はいらない。あなたから貰った最初で最後のキスの温もりで私を抱きしめて欲しい。

生まれ変わったら私はあなたの側で本当の笑顔で笑いたい。叶うはずない夢を心にしまって。

涙が滲む瞳を拭い空を仰いだ。

fin
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