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赦免―永久の眠り

暗闇を照らす一筋のヒカリが辺り一面を覆う。やっと、永きヴァンパイアと人間の闘いは終わった。

決して許されるものではなく、そして、幸せになるものはいない。そんな悲しく切ない闘いが終わり最期が近い自分を察した。

優姫の夜間部の制服は血だらけだった。自分の血だけでなく、誰かわからない血までこびりついて鼻につく匂いをばらまく。ヴァンパイアにとって血は飢えをわすれさせてくれる快楽のモノ。

けれど、今は違う。

「…枢の血の匂い…っ」

いつしか自分の制服についたある人の飢えを凌ぐ為に吸った血の香りに涙が溢れた。そのまま寝そべり、アルテミスを抱く。


スベテ終わった。
ねぇ、…ゼロ…。

ヒューっと風が吹き抜けた。冬の近いのを理解できる程に寒い風で優姫は身体の身体は震えた。目を瞑ると最期に会いたいのはやはりあの人で。


どうしても
最期に
抱きしめて欲しいと思う。

あの別れた日のように優しい口付けを欲しいと思う。細いのに力強い冷たい手に包まれたいと願う。


「ぜろっ…」

溢れた想いは止まらない大粒の涙に変わり、ヴァンパイアの前と変わらない慕情が胸を締め付けた。

泣く声は嗚咽を伴い、けれど涙は枯れず。淋しい風景に優姫は目を向けた。


「…馬鹿か…おまえ…」

待ち焦がれたあの人はトリガーを向けてあたしの前にいた。


「ぜろ…」

終焉は近い。
なのに、幸福で胸がいっぱいだった。敵意を向けた瞳であってもいい。

しゃがみこんだ零はトリガーをあたしの額に当てる。ひやりと金属独特の冷たさがあたしに現実を教えてくれた。でも


「はなせ…」

彼の身体に腕をまわして抱き締める。すべてが終わるなら


この人の側で死ねるなら
もう何もいらないから


「おい…離してくれよ…っ…」

何故か彼の言葉は震えていた。どうしてか考える力はもうない。零の匂いに包まれて、零に命を絶って貰える。零の胸の中で死ねる。

なんて幸福なのか。

「優姫…離してくれ…っ…」


弱々しい子犬のように小刻みに震えた零。もしかしたら、あたしと同じ気持ちだったのか錯覚してしまいそうだった。


「枢を許して、…ね。零…ゴメンね…」

零の背中にまわした手をはらい零に昔みたいな屈託のない笑顔をみせた。

















寂しい風景に赤い鮮血が舞い、血に返る。銃声は何故か二回、地に響いた。


fin
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