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↓後編


(3)

昼休み、小平太は4年い組を訪れ、滝夜叉丸を自室に誘った。今朝の騒動?のせいで6年全員の気分は良くなかったが、それとは裏腹に空はカラッと晴れていて風も心地よく、天気は快調であった。
滝夜叉丸は小平太に連れてこられて少し緊張している様子だったが、暖かい日差しに幾らか助けられているようだった。

二人して縁側に座り、午前中にあった出来事を報告し合う。
滝夜叉丸は自分が今日の授業でどれだけ活躍したかということを、いつものように飽きることなく話始めた。それに小平太はにこにこしながら頷き、「流石な滝だなぁ。」「こんな賢い恋人を持って、私は幸せ者だなぁ。」などと言って褒めた。普通の人間なら、そんな滝夜叉丸の自惚れた性分に飽き飽きする所だが、小平太はいつも通り只々関心をして、自分の恋人を心底可愛いと悦に浸るのだった。
「…あ!また私ばかり話てしまいました。七松先輩は今日どんなことがありましたか?」
「私か?そうだなぁ。今日は早朝に仙蔵の悲鳴に起こされてしまってなぁ。あれには少し往生した。」
困ったようにして笑う小平太に、「…そんなことがあったのですか…」と、滝夜叉丸も少し眉を潜める。
「しかし、なぜ立花先輩は朝からそのように叫ばれたのです?」 滝夜叉丸は首を傾げる。自分の知っている立花仙蔵は、容易に感情を爆発させたりしない質の人である。
「なんでも、つばきあぶら…というものがなくなってしまったらしい。幾分高物だったそうだが。なぁ、滝、つばきあぶらとはなんなのだ?」
滝夜叉丸は、思わず「え…」と声を漏らした。高物?椿油だと?
妙に引っ掛かるその2つのワードについて、黙りこんで考えを巡らしているうちに、小平太から「なぁ、つばきあぶらってなーに?」という視線を受付る。
「椿油は、髪に使う液ですよ。髪が痛んだりした時にも使いますし、痛み予防にも使います。…そうですね、私も使っていますよ。髪を洗った後などや、朝、髪を纏める時など艶出しになりますし。」
滝夜叉丸も学園内サラストランキングで2位を誇る美髪の持ち主だ。"みんなのアイドル"と称される4年生に至っては、高かれ安かれ椿油などはみんなが使っている。別に珍しいものでもない。

小平太は「へー。滝はやっぱり物知りだなぁ!」と笑うと、滝夜叉丸のサイドに流れる長い髪の束をすくった。そして「私は滝の美しい髪も好きだ。」と言って軽くそれに口づけた。艶々に光るあま色の髪には適度なお手入れも必要らしい。
そんな小平太の突然の行動に、滝夜叉丸は「うっ」と目をつむって恥ずかしさに耐える。昼間っからの小平太の積極的なスキンシップにはいつも身体が動かなくなってしまう。

…しかし、滝夜叉丸が引っ掛かるのは先ほどの話。
そう言えば、今日、自分と同室の4年い組綾部喜八郎が、普段は使っていないような椿油を持っていたような気がするのだが…。それもかなり高級そうな…。
そして、確か喜八郎と立花先輩は恋仲にあるはず。しかし同室という理由で解ってきていたことだが、現在どうやら二人は喧嘩中にあるらしい…。

(…まさか。)

縁側でぬくぬくとしている小平太の隣、滝夜叉丸が勢いよく立ち上がった。何か、大変なことに気がついてしまったような…心底重大そうな顔をして…。

「どうした?滝、便所か?」
「ち、違いますよ…!!さっきの立花先輩の話ですが、その紛失したという椿油、もしかしたら喜八郎が持っているのかもしれません!!」

「えぇ!?」

小平太も慌てて立ち上がる。
しかし、小平太の場合、喜八郎が盗みを働いたかもしれない…という疑惑よりも、椿油が見つかったかもしれないという話の方に感情が先走ったらしい。

「うわぁっ。」
滝夜叉丸の腋に急に小平太の右腕が差し込まれる。そして小柄な滝夜叉丸は体力自慢の小平太によって簡単に抱きかかえられてしまった。
驚くのが早いか、小平太は「綾部喜八郎を探しに行くぞー!いけいけどんどーん!」と言って、勢いよく走り出す始末。
こうなったらもうやけくそだった。出来ることなら、立花先輩にも綾部にも関わりたくないのに!!
「は、はいはいどんどーん!」

小平太に抱えられながら、精一杯掛け声を出す滝夜叉丸であった。








(4)

昼休み中に学園中を走り回り、一人の忍たまを見つけてこい…などということは、学園一の体育会系"七松小平太"にとっては容易な話だった。
相も変わらず、「ターコちゃん156号!!」などと言って落とし穴作りに励む綾部喜八郎の姿を見つけることには、何分もかからなかった。

突然現れた滝夜叉丸と小平太に、喜八郎は穴から泥だらけの顔をすっぽり出すと、いつものあっけらかんとした調子で「おやまぁ。七松先輩に滝夜叉丸じゃないですか。」と、言った。



「罪人が連行されてきたようだ…」、と文次郎は思った。
6年い組の長屋に、小平太と滝夜叉丸に連れてこられた綾部喜八郎は手に件の椿油らしいものを持って、仙蔵の前で飄々と正座していた。
思えば、喜八郎がここに赴いてきたのは何日ぶりだろうか。

まぁ、これで少しは仙蔵の気も収まるだろう…と、半ばほっとした文次郎は部屋から早々と出ていく。人の色恋には介入したくない。しかも、厄介なのはその恋仲が仙蔵と喜八郎だという事実である。







仙蔵は部屋から誰もいなくなったことを合図に、ゆっくり机から身を捩り、喜八郎の方へ向き直った。今日は一歩も外に出ていないので、部屋の中だけで筆を動かしていた。服装も制服に着替えず、着流しのままであった。
喜八郎はそんな仙蔵の姿をじっと見ているだけで、何も言おうとしない。

「…喜八郎、まだ怒っているのか。」
仙蔵の目はいつもに増して鋭かった。
「いいえ。」
喜八郎は淡々と答える。
「では、なぜ私に会いにきてくれなかったのか。」
「せんぱいが怒ってるからですよ。」
「……。」
思わず溜め息が漏れる。
「そんなこと、ここに来て私に会って確かめなければ解らないことだろう。」
「では、そのお言葉をそっくりそのままお返しします。」
「…わ、話題を変えよう。」
話にならんわ…と、仙蔵は気を取り直すと、改めて喜八郎にゆっくりと歩みよる。仙蔵は喜八郎の手に握られた椿油の瓶を喜八郎の手ごと掴んで、自分の目の前に持ち上げた。そして、ゆっくり慎重にその椿油をしげしげと観察した。そこで出た結論は…。
「これは、私の椿油ではないのか?」
油の名前も、瓶の傷も、残りの油の量も、全て仙蔵に見覚えのあるものと同じであった。
当の喜八郎は、別になんということもなく、「はい。」とだけ言った。
これには仙蔵も怒りが沸き起こり、口をひくひくさせて「お前は今何を言ったか解ってるのか!」と柄にもなく一喝してしまった。
知らぬ間に先輩の私物を盗むとは何事か。この子はいったい何を考えているのだろう、全く善悪の区別というものがなってない。ほとほと親の顔がみたいものだ云々…
そう言って、仙蔵が頭を痛めていると、今まで何も動かなかった喜八郎が、ぐっと仙蔵の顔に自らの顔を近づけて反論を始めた。
「だって。せんぱい、これがないと困るでしょう。私がせんぱいの椿油を持っていると知れれば、嫌でも私に会わなくてはと思うでしょう。」

仙蔵は喜八郎が椿油を盗んだ「理由」らしきものに驚き、ぽかん…と口を開いたまま、目をパチパチさせた。思いもよらない、屁理屈のような理由。
喜八郎は、まだ仙蔵の顔を除きこんだまま、びくともしない。

「では、わざわざ私から部屋に呼んで欲しくて、そんな真似をしたのか。」
「そうです。せんぱいに謝って頂きたかった。そして、早く会いたかったから。」
「喜八郎…、お前はどこまでも自由な奴だな…。」
そして、
良い度胸だ。

ここは、ときめくべきなのか怒るべきなのか。仙蔵は不思議な気持ちにかられたが、とにかく、今、喜八郎が傍に居ることに変わりはないと思うと、そっと抱き寄せずにはいられなかった。
喜八郎は一つも恥ずかしがる様子もなく、それに答えて、仙蔵の肩に自分の頭を乗せた。
(良い香り。)
仙蔵の首からはほのかに塗り香水の匂いがした。久しぶりに触れる仙蔵の温度に、喜八郎は「良かったです。」とだけ言って、そのまま目を閉じた。

仙蔵は「まさか、何日も眠むれなかったのではないだろうか。」と、すっかり安心して眠り込んでしまった喜八郎を抱き寄せながら思った。
とりあえず、もう一度二人で話あって、お互い頑固な所は反省し、改めようと思う仙蔵であった。













なっがーーーーい。まさかの原稿用紙約35枚(400字詰め)www
ちょw愛が溢れすぎとるwww

こへ滝、仙綾、文三木の64CPが書きたくて全部詰め込んだらこんなに長く…。
とにかく、萌えは発散できたような気がします(笑)

そして三木エ門!「エ門」が違うんだよな、ごめんなさい。変換に出ないんだよ全く(>_<)

そして一番書きたかったのが、仙蔵と綾部の摩訶不思議な恋仲(笑)この二人の微妙な恋愛が大大大好きで、それを書きたかったんですが、これでは伝わらんなぁ…(汗)
またリベンジでもなんでもします(たぶん

ここまで読んで下さった方がいらっしゃたのならば…
ありがとうございました!
キャラ崩壊しすぎてすいません。
そして留と文が不憫でごめんなそーりー(;_;)



64CPで小話!!前編


64CPで小話!!


出演(笑)
4年い組
・平滝夜叉丸(ナルシスト)
・綾部喜八郎(不思議ちゃん)
4年ろ組
・田村三木エ門(みんなのアイドル)

6年い組
・潮江文次郎(威圧感)
・立花仙蔵(サラスト1位)
6年ろ組
・七松小平太(暴君)
・中在家長次(無口)
6年は組
・食満留三郎(あほ)
・善法寺伊作(ばか)

注1、私は留と伊が大好きだ↑。
注2、今からの小話は仙綾でこへ滝でちょっぴり文三木。

注3、なんと前後編合わせて3時間クオリティです。萌えにまかせて書いたので、文法表現等々めちゃくちゃです。


宜しい方は↓↓




(1)

ある日、食堂でのこと。
「ここ数日の"立花仙蔵"の機嫌の悪さなど、到底言葉では言い表せない。」
6年"い組"で件(くだん)の彼と同室の"潮江文次郎"は、とうとう後輩の三木エ門にそう言って愚痴る他なかった。
文次郎は仙蔵と何年も"い組"として同室をしている云わばルームメート。「おはよう」から「おやすみ」まで、1日の大抵は一緒に生活するのだから、何かとばっちりが自分にふりかかるのだと言う。会計委員会の長を務め、この学園の後輩たちからは「恐ろしい」などと一目置かれている彼でさえ、あのどこかいけすかない仙蔵には、ずっと言い負かされ続けているのだった。「相性的にしょうがないのだ。」と、別にそのことについて、彼は今更気にしていないが。

「具体的にどういう風に機嫌が悪いのです?」
三木エ門は半ば面倒くさい気に、しかし大切な先輩の機嫌を損ねぬように対面から文次郎の手をとった。文次郎はいつものように淡々と話し始める。声にいつもの威厳が感じられないのは、そうとう疲れている証拠だろう。
「…とにかく、酷い。あいさつなども無視するし、やたら私にやつあたる。髪が決まらん、食欲がない、頭が回らん、イライラする、夜も眠れない、……そんな理不尽な理由で一々暴力を振るわれたら流石に身がもたん。」
確かに、文次郎の顔にはなんだか酷い青アザが…、目の下のクマもいつもに増して酷い気がする……。
三木エ門は、そんな文次郎と仙蔵のやりとりを想像して顔をひきつらせた。どSな立花先輩…。そんな噂も聞いたような気がする。
しかし、「呆れた…。」なんて言葉は口にできない。

「立花先輩の機嫌が悪い理由を推測なさったことは?」
「まぁ、考えずとも予想はつくが…。」
「…はい。」
「どうせまた、"綾部喜八郎"関係だろうな。お前と同級の…。」
「…でしょうねぇ…。」
文次郎が三木エ門に愚痴ったのは、暗黙の了解…、仙蔵と恋仲にある綾部が三木エ門と同学年だからでもある。
仙蔵の機嫌が極端に悪い。
そして、毎日といっていいほど自分達の長屋に訪れては、仙蔵と仲良くしていた綾部が急に来なくなった。

そして出た結論は簡単なこと…。
仙蔵と綾部は確実に仲違い中だということである。


三木エ門と文次郎は同時に腕を組んで「う〜ん…」と唸った。
あの学園一摩訶不思議な二人の喧嘩など、なるべくなら介入したくない。しかし、とばっちりを喰う潮江先輩は大層お気の毒だ。と、三木エ門は思う…。

「また機会があれば、私から話してみましょう、綾部喜八郎に。くだらんことなら早々に自分から立花先輩に謝りに行くようにと。」
「すまないな。私が綾部に直接言った方が良いのかも知れないが、また仙蔵の奴がややこしいのでな…。」
「承知しておりますとも。私も直接ではなく、ほのめかす程度にしますから。」

三木エ門の親切に、文次郎の顔色が少しだけ明るくなる。三木エ門はにっこり笑うと、またゆっくり文次郎の手を両手で包み込んだ。







(2)


「ないっ…!!!!」

次の日の早朝。
6年い組の長屋から、仙蔵の盛大な悲鳴が上がった。
同室の文次郎はその声のせいでいつもより何分も早く覚醒してしまった。
部屋にはすでに悲鳴を聞いた、ろ組の小平太、長次、は組の留三郎、伊作の4人が駆けつけていた。

「なんなんだ、朝っぱらから!!」
文次郎が枕を床に叩きつけ、勢いよく仕切りを跨ぐ。

「なんだなんだ?どうした?」
他の4人も、眠い目を擦りながら、化粧箱(鏡付き)の前で正座し動かなくなっている仙蔵を、開け放たれた障子戸から見下ろしていた。仙蔵の肩がぷるぷると小刻みに揺れている。両手を膝の上でぎゅっと握りしめ、深呼吸をしてからボソりと言った…。

「私の"椿油"がどこにもないのだ……。」

その瞬間、留三郎が仙蔵に襲いかからんばかりに片足を振り上げる。
「お ま え なぁ!!そんな理由で、あんなデカイ声で叫びやがったのか!?あぁ!?自惚れも大概にしやがれっ!!!こちとら朝早くに起こされてイライラしてんだよ!!!」
凄い形相で怒りまくる留三郎に、長次と伊作が二人がかりで両肩を掴み、「どうどう」と言って押さえ込む。留三郎の低血圧をなめてはいけない。

文次郎は呆れて言葉も出なかった。仙蔵の機嫌は悪いし留三郎は五月蝿いし、朝早くに起こされるし、本当に最近ついてない…!!

まだ寝ぼけ眼なのに、先頭きって、この異様な光景を黙認していた小平太は、
「なぁ、つばきあぶらって何だ?」
と言った。





周りを騒がせているのもお構い無しに仙蔵はツンとしていて化粧箱から動かない。
彼にとって、椿油は朝の必需品であった。それは髪を纏める時に非常に役に立つのである。学園一髪が美しく、サラサラストレートだと評されている仙蔵は、自分の髪には特に気を使っていた。毎朝艶を出すために、髪を纏めるために使用してきた椿油がないということは、それイコール、一日が始まらない、長屋から出られないということに等しかった。彼にとっては、一大事であるのだ。

「ふん。貴様らには解らんわ。あの椿油は私の地元でしか手に入らん高級品ぞ。そんじょそこらの椿油と一緒にしてもらったら困る。」

「んなことは知らねぇよ!!」
留三郎がまた食って掛かる。
「まぁまぁ、…で、その椿油はいつもどこにおいてたの?」
伊作が留三郎をなだめながら仙蔵に問うた。
「この中だ。いつも使った後はここに閉まって置くのだが、今朝起きたら…、どこにもなかったのだ……。一応、辺りは探してみたのだが…。」
仙蔵は化粧箱の一つ目の引き出しを空けて見せた。櫛に、塗り香水、ハイカラな簪、強ち男が使うものとは思われぬものもあったが、その中に空いたスペースが一つ。そこに件の椿油があったのだろう空間がぽっかりとあいている。仙蔵はまた思い出したというように、「あぁ…」と項垂れて、「誰かが、捕ったに違いない…。」と力なく呟いた。

4人の視線は自然と同室の文次郎に動いた。
ハッキリ言って、一緒に寝泊まりしていない者が、仙蔵の椿油の場所など知るはずもない。よって一番疑しいのは、文次郎ということになったのだが…。(しかし、ここの4人(仙蔵と文次郎を入れたら6人)は、まだ自分たちが痛恨のミスをおかしていることに気がついていない。仙蔵のことを良く知っているものは、同室の文次郎以外にもいるのだが……。)

「わ、私が知るはずないだろうが!だいたい、私は自分の髪にそんな油を使ってみたいなどとは思わん!!」

文次郎が慌てて向けられた矛先を背けると、他のみんなも「それもそうだよなぁ。」「あの文次郎がなぁ。」「椿油なんぞ使わんよなぁ。」などと好き勝手言って納得した。



とにかく、仙蔵の機嫌はまた悪くなった。椿油の紛失で髪が上手くサラストにならないと言う馬鹿げた理由で、長屋から一歩も外に出ようとしない。
これには他の5人も呆れたというのか、「どうにかしなくては」という気にさせられたのだった。

文次郎は相変わらず、綾部の到来を待っていた。




続く〜
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