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◆ビアンカ編〜登場人物紹介≪4≫





≪第4部≫
「ビアンカと3つの願い」




◆トリニティ・ホーリーグレイル……ビアンカに襲われるアンジェラを救った謎の戦士。
正体はレベッカ。“守護天使トリニータ”を名乗る。
かつてビアンカの逆襲の為に碧眼となった。
天使の力と呼ばれる謎の力でビアンカやヴァージニア達と対決する。



◆魔女“Mrs.フィアー”……ビアンカ達を惑わし、戦いに駆り立てる魔女。
夢や異空間に現れ、契約を迫る。
その正体は全て謎に包まれている。
黒衣に長い白髪、痩身痩躯、ドクロの様な仮面をしている。
(ネーミングの元ネタはL'Arc〜en〜Cielの『浸食』の歌詞“Mr.フィアー”より)



◆ゲイル・コンラッド……フリークス・サーカス団“ラ・ディアボロス・エレファンテ”の2代目団長。
ビアンカに殺されたスプリガンの弟。



◆ピエトロ・バンディッタ……銀行強盗の一人で、シーラの幼馴染み。
フリークス・サーカス団に在籍した事がある。
身体が子供のまま成長しない小人症。


◆ダンテ、アントニオ、カロリーナ……ピエトロの仲間の銀行強盗。
それぞれフリークス・サーカス団に所属していた異形の持ち主だった。



◆アラン、クレメンタイン・メイスン夫妻……シーラの育ての老夫婦。
詳細は不明だが、魔族の娘であるシーラを実の娘のように育てた。




◆リリス&クリス・ラブーフ姉妹……フリークス・サーカス団に所属する歌姫。
身体が結合するシャム双生児。
魔女の秘密を知ると思われる。
金髪がリリス、黒髪がクリス。



◆ラファエル、ガブリエル・ガルシア兄弟……若いながらも将校を務めるアンジェラの実子。
ラファエルは祖父のカリスマ、ラファエルはアンジェラのクールな性格を継承している。










【終章】『ビアンカとマトリョーシカ』








「…久しぶりだね。ヴァージニア♪」


「そうね。ビアンカ…まさか、あなたがこんなボロアパートに住んでるなんて思わなかったわ(笑)」


「……ボロだけ余計じゃない?」


ムカつきながらも、ビアンカは親友であるヴァージニアを奥に通した。

いかにもビアンカらしい質素な…悪く言えば地味な佇まいの部屋だった。


「へえ…陽当たりもいいし…思ったよりいい所みたいね?」


「…どう致しまして。何か食べる…?」


おもむろにビアンカは、部屋の戸棚を物色し始めた。


「お構い無く…あたしは紅茶だけいただくわ…あら?」


その時、彼女は隣の部屋からガサゴソと音が聞こえてくるのに気付いた。


「…マルコはもうお帰りなの…?それとも、ミカエラが来てるのかしら…?」


「あっ…あれ?…ウサギを飼ってるの…凄く可愛いんだよ…」


「あ、あなたがウサギを?…どれどれ見せて…」


隣の部屋に行くと、小さな小屋の形をした柵の中で、真っ白い綿の塊の様な生き物が蠢いていた。


「きゃー♪かっ可愛い…」


「マトリョーシカって名前なの…」


「マト…?…あ、あなたのネーミングセンスには付いて行けそうもないかも…」


「…なんで?可愛いじゃない?」


そのマトリョーシカは、真っ白い綿の様な毛皮に、真っ赤な瞳を震わせながら2人を見詰め返していた。


「ハイスクール時代に校舎でウサギを飼ってたことがあるの。わたしの唯一の友達だったの。それを急に思い出して…」


「あら?あなたにもハイスクール時代なんてあったんだ…?」


「あったよ!?あんただってあったでしょ!?」


「まあね。最近、同窓会があったけど、誰もあたしだって気づかなかったわ…うふふ…」


「…でしょうね…」


そう言って、マトリョーシカを抱き上げるヴァージニアの紅い瞳とウサギの瞳を見比べるビアンカだった。


「お…美味しそう…(ジュルリ…)」


「Σ(゜ロ゜;ダ、ダメ!絶対、食べちゃらめぇええ!?」


睨み付けるヴァージニア。


「た…食べるわけないでしょ…」


「…だ、だって…あんたが言うとシャレになってないよっっ」


「あははははは♪それもそうね!(≧∇≦)」


その時、部屋の片隅で黒い物体が目にも止まらぬ速さで横切った。


「えっ…?」


「ネズミ!?」


「ビアンカ…あなた、ネズミまで飼ってるわけ?(笑)」


「か、飼ってない!!」


急いで立ち上がると、恐るべき俊敏さで箒を掴みネズミを追い回した。


「…なんて、逃げ足の早いっ…」


箪笥の隅に追いやられたネズミは、ビアンカのあまりの素早さに逃げ場を失った。

か細い鳴き声が哀れみを誘う。


見兼ねたヴァージニアが声をかける。


「…ちょっと…ビアンカ…およしなさいな…」


「なんでよ!?…最近、マトリョーシカの餌が無くなるから変だと思ってたんだ…台所の野菜もかじられてるし…こいつの仕業だったんだよ…」


「可哀想でしょ…」


「可哀想…?なんで?マトリョーシカにも被害が及ぶかも知れないでしょ!?」


「ウサギもネズミも、同じ仲間でしょ?…同じげっ歯類なのに…なんでネズミだけ撃退するの?」


「はっ…」


「あなたのやってる事は…あなたが“人間”にやられた事と同じではなくて…?」


箒を持ったまま、立ち竦むビアンカ。


怯えるネズミの姿に、かつて人間に迫害されていた頃の自分の姿を重ね合わせていた。


「ヴァージニア…わたし…」


「人間は勝手な生き物ね。ウサギは見掛けで可愛がるくせに…ネズミは害があるからって煙たがる…。あたしも同じ様な目に遭ったわ…あなただってそうでしょ…?」


「…ヴァージニア…」


箪笥の隅で怯えていたネズミは、そのまま2人の前を猛スピードで走り去って行った。


「…どうしたらいいの…ヴァージニア…?」


「あなたの気持ちだってわかるわ…でも、ビアンカには、あんな人間達と同じになって欲しくないの…」


マトリョーシカを渡すヴァージニア。

優しく包み込む様に抱くビアンカ。


「ごめんなさい…だって…わたしだって…この子を守りたかっただけだから…」


「わかってる。あたしはそんなビアンカの優しさが好きよ…」


「ヴァージニア…ありがとう…忘れかけてた大切な事を思い出させてくれて…」


「ふふ…どう致しまして…じゃあ、この子いただくわ♪(ジュルリ…)」


「そ、それは…らめぇええ!?」







【終】



初掲載2011-01-13

『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.26「ビアンカの願い」《第4部・最終回》








《前回までのあらすじ》

ついに本性を現したラブーフ姉妹=魔女Mrsフィアー。

再び、アンジェラ抹殺を指示するが、ビアンカは命令を拒否する。

そこへ、天使トリニータが降臨した。







ビアンカ達の前に、眩いばかりの光と共に降臨したトリニータの姿は誰もが驚愕した。

「ビアンカ…あれってもしかして…?」


ミカエラが天空を見上げながらビアンカに近付く。

黙ったまま頷くビアンカ。


「信じられないけど…あれは…あれは…」

彼女は涙ぐんでいた。

天使は言った。


「久しぶり。元気そうで何よりだ。ビアンカ♪」


「ジュリアーノ!?」


彼は、まさに眩いばかりの笑顔で彼女に近付く。


「夢じゃないよね…ジュリアーノ!ああ、会いたかった…」


もはや、溢れる涙が止まらない。

何か言葉を発しても声にならない。


「ビアンカ…ゴメンな。君には心配ばかりかけて…」


「そ、そんなことない…ジュリアーノ…」


2人は静かに抱擁した。


(…あれがジュリアーノ?)


その光景を見て、心の底に沸き起こる嫉妬の炎に気づくマルコだった。


ミカエラやシーラももらい泣きする。

ヴァージニアは、不思議そうな顔をして2人を見つめていた。


「ああ、あれが死んだとかゆービアンカの前の彼氏ね…うふふ♪可愛い顔してるじゃない。ま、ウチのルカには敵わないけど♪」



先程まで、魔女やヴァージニアに凄んでいた戦士ビアンカの面影はそこにはなく、死んだ恋人と再会した喜びにうち震える一人のか弱い“女”が、ただ居るだけだった。


「ジュリアーノ…でも、どうしてあんたが…?あんたが天使トリニータなの?」


「ああ、そのことか…」


そこへ、両目の揃ったレベッカが前に出る。

「それは、わたしが説明するよ。アニー…」


「ベッキー?…その眼は…!?」


「ああ、後で説明する。あなたの恋人ジュリアーノは、2代目トリニータとして転生した。彼はジュリアーノだけど“天使トリニータ”でもあるのさ。わたしを助け、力をくれたのもビアンカ…あなたの恋人だったんだよ…」


「そ、そうだったの…?ジュリアーノが天使トリニータ?」


「ああ、今まで黙っていて悪かった。僕が死んだ後、少しして天界に召された。そこで、ある使命を与えられたんだ。悪魔の子ビアンカを見守りながら、ある国の君主を守らないといけない。そして、最終的な目的は、世を乱す“魔女”を見つけ出すこと…」



トリニータの姿を茫然と見詰めるMrsフィアーの方を見た。


「まさか、少女だったとはな…」



2人の姿を見て、怒りに震えるフィアー。

『お…おのれぇ〜〜!?』



ジュリアーノは、それを見てニヤリと笑みを洩らすと、おもむろに何処からともなくマシンガンを取り出した。


「悪いな…往生しなよ。Mrsフィアー…」


やおら、マシンガンを乱射するジュリアーノ。


「ぎゃあああああああああ〜〜〜〜っ!?」


何の抵抗も出来ず、ただ断末魔の叫びとともに“魔女”の姿は跡形もなく消えて行った。


そこには、ただ倒れ伏すラブーフ姉妹がいるだけ。


「し…死んだの!?」


「魔女はな。彼女達の邪悪な心が生み出した怪人は消えた。恐らくもう魔力は使えまい…」


「そう…」


ビアンカは、気を失っているラブーフ姉妹の許に歩を進めた。


「可哀想な子達…こんな不憫な姿で生まれたばかりに…」


2人繋がったシャム双生児のラブーフ姉妹の姿を、自分と重ねるビアンカ。

そっと手を触れると彼女は涙した。

そこに立ち竦むゲイル団長。


「ビアンカ…分かってくれ。憎しみの連鎖は何も生み出さない。俺はコイツらまでその憎悪のスパイラルの中で生きて欲しくなかった…」


「どういう意味…?」


「お前が殺した兄貴の事だ。兄貴は、彼らフリークスを人間扱いしなかった。いつかお前の様な奴に殺される運命だったんだよ…」



「憎しみの連鎖…か…」


そこへ、耳をつんざく爆音が響く。


皆が見上げた先には、ラボミア軍の戦闘ヘリが現れた。

その窓からは、アンジェラが顔を覗かせる。


「ビアンカ…トリニティも無事か?」


「アンジェラ!?」


「アンジェラ様!!」



ヘリが着陸すると、長い髪と黒いマントを靡かせたアンジェラ総統が地に降り立った。


「お姉様!?」


ミカエラが駆け寄る。



「出たわね〜♪鬼畜女めー!」


ヴァージニアが走り寄ろうとするがルカに制される。


「よせ!戦いはもう終わった…」


「ルカ…だって…」


「我輩の言う事が聞けないのか?」


「わかった♪あなたが言うのなら…」




アンジェラは、燃え上がる幕舎とフリークスと兵士達の死体が転がる惨状を見て眉をしかめた。


「…これが、我が一族の罪禍と言うわけか…」


「アンジェラ…」

やおら、近寄るビアンカの背後に光る天使の姿を見る。


「ほう…洒落た趣向だな…」


「アンジェラ…わたし、あなたには何と言えばいいのか…」


「いや、貴様が謝る事などない。むしろ、わたしの方こそ貴様に礼を言いたいぐらいだ…」


「礼を…?」


「我が国の、我が一族の…罪を気づかせてくれて…」


倒れ伏すラブーフ姉妹に近付くアンジェラ。


「約束しよう。わたしは父を超える君主となり、この国に二度とこのような悲劇を起こさぬと…」


「アンジェラ…」


アンジェラは、ビアンカの顔を見詰めると微笑み、彼女もそれに返した。


踵を返すと叫ぶ。


「長居は無用。帰るぞ…ミカエラ!!」


「えっ…?」


「そこに隠れてるガブリエルとラファエル!貴様達もだ…」


木々の間で様子を見守っていたアンジェラの息子達が姿を現す。

「は、母上…」


「貴様達は、後でたっぷりと搾ってやる。無茶な作戦を立ておって…」


そこへ、レベッカが後を追う。


「アンジェラ様!!わたしもお供致します!?」


「トリニティか…。貴様は休養が必要だ。しばらく国へ帰ったらどうだ?」


「…そんな…わたくしは疲れてなどおりません!!」


そんなレベッカの肩を叩くビアンカ。


「ベッキー。あんたはよくやったよ。アンジェラの言う通り、一度国へ帰った方がいい。ご両親が心配してると思うよ?」


「アニー…」


レベッカは、ビアンカを見詰めると、やおら口づけをする。


「ん…」


「ありがとう。またいつか会おう♪アニー…」


「そうだね。今度は敵対しないといいね…」


「さようなら!!ビアンカ!!そして、天使ジュリアーノ様…わたし、もう行きます!!」


レベッカは微笑むとそのまま去っていった。ビアンカとジュリアーノは共に手を振る。


アンジェラと兄弟を乗せたヘリが出発する。だが、ミカエラだけがいつまでも名残惜しみ、なかなか乗ろうとしなかった。


「ビアンカたん…わたし…」


「ミカエラ。いつでも会えるさ…今はみんな休養が必要なんだ」


「わかった。すぐ会いに来るから!!」


涙を流しながら走り去るミカエラの姿をいつまでも見送るビアンカだった。


「さらばだ!ビアンカ!!」


アンジェラの声と共にヘリは上空に消えて行った。





「…では、我々も帰るとするか…」


ルカは、ヴァージニアの肩に手をやると微笑みかけた。



「ルカ…色々ありがとう…」


「ああ、達者でな」


「ビアンカ。いつでも遊びにおいでよ♪」


「うん。2人とも元気でね…」



ルカとヴァージニアは、そのまま巨大なコウモリに乗ると飛び立ち去っていった。




残った者はシーラ、セバスチャン、ゲイル団長とラブーフ姉妹、ビアンカとマルコ、そして、トリニータことジュリアーノ。






「…さて、僕もそろそろ帰るとするかな…」


「えっ…!?ジュリー…そんな!もう少し居られないの?」


「ビアンカ…僕だって名残惜しい。君といつまでも一緒にいたいけど、僕が地上に居られる時間は限られてるんだよ…ごめんな…」


「いやだ!いやだよ…帰らないでジュリアーノ!?」


涙ながらに昵懇するビアンカだが、ジュリアーノは笑顔を向けてビアンカの肩を優しく叩いた。


「…僕はもうこの世の者ではない。生者は生者と生きるのが一番いいんだよ…」


そう言ってチラリとマルコの方を見た。


「それに、今の君には立派なパートナーがいるじゃないか…」


ビアンカは、背後に佇むマルコを見返した。


「マルコシアス。ちょっと悔しいけど、君もビアンカとお似合いだ。後は任せたぜ♪」


そう言って親指を立てた。(o^-')b


笑顔で頷くマルコ。


「ああ、じゃじゃ馬の世話は俺に任せてくれ…♪」


「誰がじゃじゃ馬だって!?」


「ははは…お二人さん。お幸せに…では、アリヴェデルチ♪」


「さようなら…ジュリアーノ…」





そうして、天使ジュリアーノは去っていった。


ビアンカは、その姿をいつまでもいつまでも、最後の光が見えなくなるまで見送っていた。






「奇しくも、君の願いが2つも叶ったワケだな…」


しみじみとマルコが言う。


「願い…?あの3つの願いはミカエラが勝手に決めた事だよ…?」


「じゃあ、他に何か願い事があるのか?」



「あるよ。わたしの願いは…」








わたしはビアンカ。




人間も魔族も関係ない。





憎しみのない世界で、自分と喜びを分かち合える仲間達と幸せに暮らす事。






それが、わたしの願い…






きっと叶えてみせる。












『小悪魔ビアンカと3つの願い』ー完ー


初掲載2010-05-11



ご愛読ありがとうございました♪



また次の物語でビアンカ達と会いましょう!!

『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.25「トリニータの秘密」







【前回までのあらすじ】

ビアンカは、魔族の能力が更に開花し、自らの容姿を変化出来る様になった。


一方、倒れたレベッカの前に“天使トリニータ”が降臨する。





「あ、あなたが天使トリニータなの…?」


光り輝くその姿は、白い帽子に白いスーツと言った出で立ちで、一見“天使”などには見えない。


しかし、頭上に被さる後光と背に羽ばたく巨大な猛禽類の翼は、天使以外の何者でもない。


「わたしは、あなたを知っている。見た事はないけれど、話には聞いた事がある…」


トリニータと名乗る天使が顔を上げる。

そこには眉目秀麗な双眸が光を発して、なおも眩しく見えた。


「見える…?右目が…!!」


失われたはずのレベッカの右の瞳が復活し、身体中の傷もすべて消えていた。


「こ…これは…!?」


トリニータは、ひざまづいているレベッカに対し、膝を屈めて優しく微笑む。


「君の役目が終わった事を意味しているんだよ…」


「そんなバカな!?…だって、わたしはビアンカを倒すどころか、逆に敗れたのよ!!アニーにはもう天使のパワーが通用しないぐらい強力になってるの!!」


「…いいんだ。君の役目は、アンジェラを倒そうとするビアンカを止める事。そして、ビアンカの力を促進させる事にあった…」


「ビアンカの…?ねえ、教えて!ビアンカは何者なの?あなた方天使にとって敵ではないの!?」


間を置いて、トリニータは答えた。


「少なくとも、今のビアンカは敵ではない。我々が探していたのは“魔女”だからな…」


「魔女…」










「「さぁ、ビアンカにヴァージニア。今からでも遅くないわ。アンジェラ抹殺を続行して!…ガルシア一族の者をこの世から消して♪」」



涼やかな笑みを浮かべながら、ラブーフ姉妹は命令する。


「かしこまりですわ♪魔女様!!」


ヴァージニアは、ヤル気満々で敬礼する。

一方、ビアンカは…


「わたしは降りる…」


「なっ?…今、なんて言ったのビアンカ!?」

ヴァージニアが彼女に近づく。


「わたしはもうやりたくないと言ったの…」


それを見て、2人で1人のラブーフ姉妹がヨタヨタと歩み寄る。

その奇妙な姿にビアンカは改めて戦慄を覚えた。

ラブーフ姉妹、リリスとクリスはその4つの腕でビアンカの頬を撫でる。


「「…言うと思った♪…そうね。願いの1つは、自らの力で叶えてしまったのですものね…うふふふ…♪」」


陽気な笑い声が、むしろ空々しく、一段と不気味に聞こえた。


「…それもあるけど…わたしはもう無益な争いをしたくないし、アンジェラとは戦いたくない…」


「ビアンカ〜〜?何を今さら〜〜!?」


ヴァージニアが手足をバタバタさせながら騒ぐ。


「マルコォー?あんたも何か言ってよ!一緒に戦いたくないのぉー!?」


話を振られたマルコは、ヴァージニアを一瞥すると言った。


「俺は、ビアンカの騎士だ。姫の決めた事には逆らえないね」


「マルコ…」


それを聞いたビアンカは、目を見開いて驚いた。



「なんなのよ〜あんた達はぁ〜〜!?」


ラブーフ姉妹は、ビアンカの顔を見つめて、やおら微笑むと、再び冷たい表情に戻る。


「「まだ最後の願い事が残ってるでしょ?…それを叶えてあげるから行って…。ね?ビアンカ…」」


「うっ…?」


「そうよ!ビアンカ!?ジュリアーノよ!!彼に会いたくないの!?魔女様が願い事を叶えてくださるわ!!」

叫ぶヴァージニア。

それを見ていたミカエラは、堪らずビアンカとラブーフ姉妹の間に割って入る。


「もう許して!!わたしも元の体に戻ってもいいから、これ以上ビアンカを苦しめないで!?」

泣きながら彼女はラブーフ姉妹の腕を掴む。

だが、いきなりリリス側の腕がミカエラを掴むとそのまま首を締める。


「クリス…この娘、なんかウザいね?」


「そうね。リリス。でも、何か役に立ちそうだけど♪」


「まずい…」


その光景を見ていたマルコは冷や汗をかきながら前に出た。

「ミカエラ!?逃げろ!!」


「「離さないよ♪この娘はまた人質にするんだ…」」


言いかけた時に銃声が響いた。


「ぎゃっ…」

飛び散る鮮血はラブーフ姉妹のものだった。

見れば、ライフルを構えたゲイル団長が呆然としている。


「…どうせ、こんな程度じゃ死なないんだろうが…」


ラブーフ姉妹が倒れた隙に、ミカエラは逃げビアンカに抱き着いた。

「ビアンカ!?ごめんなさい!」


「ミカエラ…無茶すんなよ…」



そして、慌てふためくヴァージニアの許で倒れ伏す姉妹。


「「ふ…ふふふ…あははははははは…♪」」


その悲鳴の様な笑い声にギョッとするヴァージニア。

声は姉妹の頭上から聞こえてくる。

そこには邪悪な思念と気が集まり、徐々に形を帯び、ビアンカ等のよく知っている“Mrsフィアー”=魔女の姿が浮かんでいた。


「ついに正体を現したってワケだな…」


マルコが臨戦態勢に入り、それに対する。

一方のビアンカもミカエラを後ろに下げ、前に出る。


「久しぶりだね。もうあんたの言う事は聞かないけど…」


『バカな娘だ…これが最後のチャンスだと言うのに…!』


「チャンスは自分で掴んでみせるさ…!!」



『もはや、汝は用済みのようだね…ヴァージニアよ!ビアンカを殺せ!』


「えっ…?ビアンカを…そんな…」


『わらわの命令を聞けないのかい…?』


「い、いくら魔女様のご命令でも、それは…!?」

チラリとビアンカを見ると、やおら彼女はニコヤかに微笑んだ。


「相手になるよ。ヴァージニア。もっとも負ける気はしないけど♪」



「ビアンカ…その余裕綽々な態度は何なの!?」


『ぬぬぬ…!何を躊躇しているヴァージニア…』



「ラブーフ姉妹…いや、Mrsフィアー。チェックメイトだ。観念するんだね…」


その声は天空から聞こえた。

彼らが見上げた先には、宙に浮かぶレベッカと、羽根を羽ばたかせる天使トリニータの姿が見えた。


「レベッカ…!?…それにあれは…誰なの?」


「天使トリニータ…?いや、あれは…」


近づくにつれて、その光り輝く姿の全貌が明らかになる。


トリニータの顔を垣間見たビアンカは驚嘆した。


「あ、あれは、まさか…!?」






《続く》


初掲載2010-05-10



あらゆる因縁が絡み合ったまま、此処サンタ・ディアブロで、光と闇が最後の対決の時を迎える。


ビアンカは、ラブーフ姉妹は、そして、謎の使徒トリニータはどう動く!?



次回『小悪魔ビアンカと3つの願い』怒涛の最終回!!\(^-^)/


運命の帳が晴れる時、あなたは奇跡の光を垣間見る!?




いつもジャン吉小説をご愛読ありがとうございます!!


ここまで読んでくれてた人だけが、迎えられる最高のクライマックス!!\(^-^)/

最後までよろしく♪

『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.24「復讐するは我にあり」








【前回までのあらすじ】

ラブーフ姉妹と邂逅したビアンカ達を襲うレベッカ。

しかし、すでにビアンカのパワーはレベッカを超越していた。

改めてアンジェラの許へ行くビアンカだが、その身体に異変が起き始める…








「Mrsフィアー…!?」


ようやく身体が回復してきたヴァージニアは、ルカと共に簡素な食事の最中だった。


「…どうした?」


「魔女様が、あたしを呼んでる…」


「何?」



突然立ち上がると、ヴァージニアは身支度を始める。


「ルカ…あたし、行かなくちゃ…!!」









一方、アンジェラの執務室では、ビアンカが頭を抱えてうずくまる。


「ビアンカ…その顔は…!?」


「えっ……?」


ビアンカの顔は、徐々に白く肌色になり、額の角も溶ける様に消えていった。


かつて彼女が記憶をなくした時の様な“人間化”が再び起きていたのだ。


「やはりな…」


マルコシアスは笑みを洩らす。

それを見たアンジェラは、彼に問い質した。

「おいっ…貴様、これは一体どういう事だ…まさか、魔女の…?」


「違う…」


マルコは、おもむろにビアンカの手を掴む。

「マルコ…?わたしは…」


「おめでとう。ビアンカ、君は自らの“力”で容姿を変化させたんだよ。もっとも少し荒療治だったかも知れないけど…」



「自分の…力で…?」


「君は、本心ではアンジェラは殺したくないと思っていただろう?」


その言葉を聞き、改めてアンジェラの顔を見詰め返す。


「その心が、そして、容姿を変えたいという強い心と交じり合い、君の魔力を更に開花させた…つまり、魔女の力を借りずとも、君は容姿を変えられるんだよ…俺みたいにね♪」


自らの顔や額を触りながら、歓喜と驚嘆の表情のビアンカ。


「マルコ…わたし…」


「君は、この数日急激に成長を遂げた。もしかしたら出来るんじゃないかと思ってね…」


そこへ、撃鉄を引く音。
アンジェラが拳銃を構えて2人に向ける。


「…そうか。では、わたしと貴様が戦う理由は無くなったワケだ…」


「アンジェラ…」


「しかし、今となってはもう遅い…ビアンカ!!」


マルコシアスがビアンカを遮る様に立ちはだかる。


「無駄だ…」


「わかってるよ。貴様等が此処に来たと言う事は…トリニティも敗れたと言う事だろ?彼女は無事なのか?」


「レベッカは、死んではいないはず…」


「そうか…では、まずは此処から消えるんだ…何かと面倒だからな」



マルコシアスとビアンカは顔を見合わせて頷いた。


「そうしよう…まだまだやる事があるしな…」


「ああ、お互いにな…」


皮肉な笑みを洩らすアンジェラ。

その目の前で、マルコとビアンカは再び姿を消した。


「ふふふ…おめでとうビアンカ…」


アンジェラは独り呟くと、思いをぶつける様にテーブルを強く叩いた。









「ビアンカ!?」


容姿を変えて戻ってきた彼女を見て驚く面々。

「その顔は…とうとうやったの?アンジェラお姉様を…」


複雑な笑みを浮かべるミカエラ。


「安心しな。アンジェラは殺してないよ」


「良かった…でも、どうして…?」


「ビアンカは、自らの魔力で容姿を変化させただけだ。だから、いつでも元に戻せる」



それは、つまりビアンカが「人間化」したワケではなく、むしろ「魔族」としての能力が更に深まったと言う事。

その事に気づいているマルコの心境は複雑だった。



「ラブーフ姉妹は無事なの?」


「今、シーラとセバスチャンが団長を追って…」


幕舎の方でまた爆音が聞こえる。


「奴ら…何を?」


幕舎の裏に回って彼等が見たものとは…



逃げ惑うフリークス達に向かい、銃撃と火炎放射で攻撃するガブリエルの“ウォー・ローダー”と、ラボミア正規軍の姿。

そこは、まさに阿鼻叫喚の地獄と化していた。


「うはははははっ…逃げろ逃げろ!化け物ども!!」


狂気の笑みを浮かべ、攻撃を続けるガブリエル。
そこには、ラボミアの御曹司の面影はなかった。


「な…なんて事をしやがる…」


マルコは怒りに燃え、ウォー・ローダーに向かい突っ込んで行く。


「ミカエラ…あれは、アンジェラの息子達なんだろ?」


「そ、そうよ。わたしの甥っ子…だけど」


「ちょっと懲らしめてくるよ…」


言うと、ビアンカは再び蒼い肌に角を持つ姿に“変身”し、背に翼を生やし飛び立った。


「マルコ!!こんな奴ら…あっさり片付けてやろうよ!!」


「同感だな…」



マルコシアス、ビアンカは同時に手の先からプラズマの様な電撃を放射した。


巨大な稲光と爆炎が交錯すると、ウォー・ローダーのコクピットが破裂した。


返す刀で、マルコシアスはラボミア兵士にも攻撃を食らわし、彼等は木っ端微塵に吹っ飛んでいった。



「うぎゃあっ〜!!」


炎の中から、ラファエルがガブリエルを支えながら飛び出して来る。


「しっかりしてくれ…兄さん!どこも怪我はないだろ…」


「ち…畜生!奴ら…奴ら…」


「…とりあえず、ここは下がろう。トリニティ中尉は何処だ…?」


森の木々に隠れながら、兄弟は逃げる。




「余計な事をしてくれたな…ビアンカ」


ゲイルだった。

炎に包まれる幕舎を見上げながら呟く。

近寄るビアンカを一瞥すると、逃げ延びたフリークスを避難させる。


「随分と冷たいね。ゲイル団長。…ラブーフ姉妹が死ねば良かったとでも…」


「ああ、いっそ死んで欲しかったね…」


そこへ、ビアンカの平手打ちが飛ぶ。


「うっ…!?」


頬を押さえて睨むゲイル。


「…どんなつもりで言ってるのか知らないけど、あんた…」


「バカが…!奴ら姉妹がこれぐらいで死ぬものか!…奴らが何故自ら動かず、お前さんやピエトロやヴァージニアを使うのか考えた事はないのか!?」


改めて言われて、ビアンカは気づいた。

以前に、レベッカにも同じ事を言われた。

人の容姿を変え、運命さえ操れる“魔女”たるラブーフ姉妹が、自らの境遇も姿を変える事すらしないのか。


「うっ…何故なの?」


「あたしから、お答えしましょうか?」


聞き慣れた声に振り向くと、そこには巨大なコウモリと、吸血鬼ルカ、そして、ヴァージニアの姿があった。


「ヴァージニア!?…あんた、もう身体は治ったの?」


「当たり前よ♪みんなこのルカのお陰」



「ルカ卿…どうして此処に?」


マルコシアスが尋ねた。ルカは軽く笑みを浮かべると言った。


「ふふふ…我輩は、ただ此処で何が起きているのか確かめたくなっただけだ。呼ばれたのは魔女の従者たるヴァージニアだけだ…」


「魔女に…?」



「「そうよ。わたし達が呼んだの…」」


そこへ、ラブーフ姉妹が燃える幕舎の中から姿を現した。


「うっ…」


「「ビアンカ…良かったわね♪容姿を変えられる能力をマスターしたそうね…」」


それを聞いて、ヴァージニアは笑顔を向ける。


「えっ!そうなんだ!?見せて見せて♪ビアンカ、あなたの美少女な素顔見てみたいんだけど!?」


「…後でね。そんな事よりどういう事なの…?あんた達はホントに“魔女”なの?」


「「ああ、その事…?まだ疑うの…?まあ、いいわ。わたし達が何故あなた達を使うかって疑問ね…」」


「ビアンカ…この娘達はね。普通の人間なの。魔法は使うけど、魔族じゃなくてよ?」


ヴァージニアが割り込んで来る。


「「さすが、ヴァージニアね♪わかってるじゃない…続けて…」」


「どういう事…?魔族ではない…?」



「つまり、魔法を駆使して様々な奇跡を起こせるけど、それが有効なのは他人に対してのみ。魔力はあっても自分達でそれを試せない。…お分かり?」


「つまり、宝の持ち腐れ…って事か?」


マルコシアスが皮肉めいた表情でヴァージニアに言った。

一瞥すると彼女は驚愕する。


「あらっ?あなた、マルコだったの?何なのその格好は…!?って、それ、あたしの服じゃな〜い?」


「悪かったな…んな事は今はどうでもいいだろ!!つまり、アレか?ラブーフ姉妹は、ビアンカやヴァージニア等の力を借りないと魔力の使い道がないってこったろ?」


「「そう。わたし達は復讐の為に魔法を学び、誘惑された人間や使い魔を駆使してそれを実践する事にしたの…♪」」


さも楽しげに、屈託もなく答えるラブーフ姉妹達だった。


「復讐だって…?」


「「そうよ。復讐するの…あなた達を使ってね…」」


「使い魔けっこう!あたしは喜んで力をお貸ししますわ♪魔女様!!」


ヴァージニアは、わざとらしく臣下の礼を取り、かしずいて見せた。


「誰に対して復讐しようって言うの…?」


「「ビアンカ…案外鈍いのね♪

…決まってるでしょ?わたし達の親や家族を殺し、わたし達をこんな姿にしたガルシア一族によ…」」


「なっ…!?」









一方、林の中でボロ雑巾の様に朽ち果てたレベッカの前に光が射す。


「う…うん…」


〈…レベッカ…起きろ。お前はよく働いた…〉


「うっ…!?…その声は…まさか…?」



おもむろに上体を起き上がらせる彼女の前に、その光体は人の形を有してゆく。


「あ…あ…あなたが、天使トリニータなの…?」







《続く》


初掲載2010-05-08



ビアンカは魔族としての能力を覚醒し、魔女ラブーフ姉妹は真相を語る。


そして、レベッカの前に姿を現した“天使トリニータ”の目的とは?


謎が謎を呼び、核心に近づく。

いよいよクライマックスに向け、役者は揃った!!


次回をお楽しみに




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