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◆ビアンカ編〜登場人物紹介≪1≫


≪第1部≫
『ビアンカは振り向かない』


◆ビアンカ・メタネーロ(左)……悪魔の父と人間の母のハーフだと言われている。
全身が蒼い皮膚と鱗、頭部に2対の短い角、紅い瞳を持つ。
様々な虐めや差別、迫害に遭うが強い意志で立ち向かう。
冷めた口調と表向きのクールさに激情を秘めるが、本来は大人しく優しい性格だった。
フリークス・サーカス団に居たが、狼女ヴァージニアと共に脱走。
ラボミア共和国に来てから、ミカエラと会い意気投合、総統を殺害してから追われる身となる。
ケインと言う幼なじみが居た。
(モデルは『Xメン』のミスティーク、『片腕マシンガール』の日向アミ、相川七瀬、等様々……)


◆ミカエラ・ガルシア(右)……ラボミア共和国の総統の義理の娘。
一見、金髪碧眼の可憐で天真爛漫な美少女だが、実は男女両性の性器を持つアンドロギュヌス。俗に言うふたなり。
元々の名前はジョアンナ。
その奇異な身体ゆえか、明るさの中に狂気を秘め、ビアンカ曰く「病んでいる」
未来や人間の世界に絶望しており、ビアンカとは意気投合して、それは恋愛感情とも言えた。
髑髏を愛し、集める趣味がある。
(モデルは、ブラックモアズナイトのキャンディス・ナイト嬢)




◆ヴァージニア・ラバーソール……先天性の重度の多毛症で、フリークス・サーカス団に居た時は「狼女」と呼ばれた。
サイコパスに近い人格破綻者で、更に人肉を好み性格は酷薄にして残忍。
しかし、それも幼い頃からの両親の接し方や虐待による歪みもあり、本来は涙脆く弱々しい乙女な部分も持ち合わせていた。
胸に秘めるのは自分を阻害した人間への復讐心だった。
フリークス団を脱走した後に容姿を普通の人間の様に変える事が出来たが、性格は変わらず、逃走中のビアンカとミカエラを襲い返り討ちに遇い1度は死亡するものの、彼女を見初めた吸血鬼ルカの力で魔族として復活する。
(モデルは、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ)




◆エステバン・ガルシア……ラボミア共和国の総統。独裁者。
軍事クーデターにより、旧政権(ラボミア王国)を打倒し、軍事政権を打ち立てる。
周囲の国からも畏れられ崇拝されていた。
ミカエラを拾い自らの手で育て上げた。
長女のアンジェラは実子。
(モデルは、リー・ヴァン・クリーフ)




◆アンジェラ・ガルシア……エステバン総統の娘で、ミカエラの義理の姉。
エステバンに似た男勝りな性格とカリスマ性と実力でラボミアの実権を握っている。
父エステバンを殺害し、妹ミカエラを誘拐した(と思っていた)ビアンカを憎み、残酷な拷問にかけるが、魔族のパワーが覚醒したビアンカに返り討ちに遇い両手を失う。
後に復活したアンジェラは執拗にビアンカを追う事になる。
(モデルは、アンジェリーナ・ジョリー)


◆マリア・メタネーロ……ビアンカの母親。イタリア系の大手企業の令嬢だったが、ビアンカの父である男と駆け落ち同然で失踪し、やがてビアンカを産み一人で育て上げた。
しかし、信頼していた神父の信者からの告発で悪魔の子を産んだ魔女として“魔女狩り”で処刑されてしまう。


◆ベルフェゴール(ベルフィゴ・モンターニャ)……ビアンカの父。
ビアンカと同じ様に蒼い皮膚と鱗、長い角を持つ。
魔界のスパイとして地上に行った際、ビアンカの母親マリアと恋に落ちてしまう。
後に魔界に帰還するものの、マリアやビアンカの事をずっと気にかけていた。
思い詰めて、魔王を裏切り反逆しようとするが……
(ベルフェゴールは、ソロモン72柱等で割りと有名な悪魔らしい)




◆ロッソ・モンターニャ(ロフカル)……ビアンカの叔父にあたるベルフェゴールの弟。
魔界を嫌い地上界でラボミアの反政府ゲリラ『赤いコヨーテ』のリーダー。
ゲリラ活動をする傍らビアンカと出逢い、何かと世話をする。
(モデルは、チェ・ゲバラ)


◆モニカ・フラゼッタ……ロッソの恋人で、金髪碧眼の美女。
反政府ゲリラの主要メンバーだったが、刑務所に投獄されていた。
その時にビアンカと出逢い色々と世話をする。
周囲からは“モニカ姐さん”と呼ばれている姉御肌。
元々は『戦士の詩』の正ヒロイン。
(モデルは、キャメロン・ディアス)


◆アイリーン、マキ、ヴィクトリア……反政府ゲリラの主要メンバー。
モニカと共に投獄されていて、ビアンカと最初は仲が悪かった。
こちらも、元々は『戦士の詩』のサブキャラ。



◆スプリガン・コンラッド……ビアンカが在籍したフリークス・サーカス団の団長。
フリークス達を人間扱いしなかった為に逆襲に遭う。



◆ホアキン・ド・アルメイダ……ラボミアの将軍。
総統に次ぐ実力者だが、アンジェラには無能扱いされている。


◆エリック・シュバルツシュタイン、セルゲイ・イワノフ……ラボミアの将軍に呼ばれたアンジェラの親衛隊。
外国人だが、アンジェラの信頼は厚い。





【インスパイアされた作品】
ベルセルク、デビルマン、墓場&ゲゲゲの鬼太郎、ビッグフィッシュ他ティム・バートン作品全般、キル・ビル他タランティーノ作品全般、シン・シティ、Xメン、片腕マシンガール、 マカロニウエスタン、アクマイザー3、スポーン、ヘルボーイ、毛皮のエロス、

第20話「…in heaven…」《第1部完結》





「ビアンカ、地獄なんて行くまでもない…」


「何故…?」


「お前の能力(チカラ)なら魂を引き寄せる事など造作もないだろう…」


「わたしに…そんな力があると言うの?」


「お前はパパの娘だろう?念じてみるんだ…その……ミカエラの姿を…」



ベルフェゴールの言う事は本当だろうか。
地獄に堕ちた魂を引き寄せる?
わたしにそんな事が出来るの…?


でも、やるしかない。


ミカエラに逢いたい。


ミカエラを生き返らせる事が出来るのなら、わたしは何だってする。


刑務所で一ヶ月間会えなかっただけで、わたしは狂いそうだった。


ミカエラ…


何処を彷徨っているの…?


ミカエラの亡きがらに縋りながら、ビアンカは瞑想する。



暗闇の中…


悪魔達に追われ、炎の山を登るミカエラの姿が見えた気がした…


ミカエラ…


悪魔の姿に怯え、火炎に身を焦がしながらも歯を食いしばり前に進むミカエラ…


あんたは何て強い子なの…


その姿に感心しながらとめどなく涙が溢れる。



待ってて、ミカエラ…


今、わたしが助けに行くから……



ミカエラの背後に巨大な蜘蛛が現れた。


「ミカエラ…」


「その…声は…ビアンカね」


「助けに来たよ…この蜘蛛の糸に捕まって!」


「ア、アイアイ・サーよ!ビアンカ」


その蜘蛛から出る白い糸に飛び移るミカエラ。


「おお…これに捕まれば…此処から逃げられるのか……?」


他の亡者共がミカエラを追い、捕まろうとする。


「な…っ…何よあなた達はっ……!?」


追い縋る亡者共の頭を蹴り飛ばすミカエラ。


その亡者の中に、いつの間にかヴァージニアや団長。
そして、ガルシアの姿が見えた。


「おじ様………」


「ミカエラよ…行くのか…」


逃げようとする亡者達は、次第に悪魔共が押し止める。


「おじ様…さようなら…いつかまた会いましょう…」


ガルシアは別れの挨拶の代わりに敬礼をした。

ミカエラもそれに応え敬礼を返す。
瞳は涙で濡れていた。


「ごめんなさい。おじ様…わたしはビアンカと地上で幸せに暮らすの…さようなら…今までありがとう…」



蜘蛛の糸が急に上に伸びた。
一気にビアンカとベルフェゴールの居る地にたどり着く。


「う……ごほっごほ…」


死んでいたミカエラが咳き込む。


「ミカエラ…!!」


「ウム。上手く行ったようだな…傷は私が治しておいた」


血塗れだったミカエラの服や肌も、いつの間にか元通りに直っていた。


「パパ…ありがとう」


その言葉を聞き、ベルフェゴールは満足げに頷いた。
ミカエラの碧い瞳が開く。


「ビアたん…」


「ミカエラ!!良かった……」


ビアンカは、ミカエラをきつく抱きしめた。
感極まり泣きじゃくる。

「ビアたん…泣かないで…」


「…だって、もう会えないかと…」


不思議と、ミカエラは泣かずにビアンカの頭を撫でて慰めていた。


「よしよし…」


ビアンカは、なおも泣き続けていた。


「ホントに泣き虫なんだから、ビアンカたんは…ね、眼つぶってよ…」


ビアンカは、言われた通りに眼を瞑る。


ミカエラは、ビアンカの唇にそっと口づけをした。


「ん………」


「これは、わたしからのお礼…これからもよろしくね、ビアンカ」


「うん…」


二人は再び抱き合った。


周りは、いつの間にか霧が晴れ青空が戻っていた。
そして、父ベルフェゴールの姿も消えていた。


ビアンカ・ミカエラの二人は地獄を体験した事で、より絆が深まった気がした。









《第1部・完》


初掲載 2009-10-29

第19話「煉獄のビアンカ(後編)」




その男は騎馬のようだった。


何か、馬に似た生き物に跨がり鎧の様な物を着ている。


だが、姿が全て見えるワケではない…


「何故、こんな所に生身の人間がいる…?」


ビアンカは、その声に何処か懐かしさを覚えていた。
聞いた事はないはずなのに、郷愁を誘う声。一体誰なのか…


「あ、あんた誰なの…?」


闇に包まれたその姿が露になってきた。


額に巨大な山羊の様な角を生やし、蒼い肌に、紅い眼をした…恐らく魔物の類であろうその姿は…


その姿を見た途端、ビアンカは全身の肌が泡立つような感覚を覚えた。


「あ…あ……」


「お前は…」


その悪魔も、ビアンカの姿を見ると言葉を詰まらせた。そのまま、立ち止まり動かない。

ビアンカは、その悪魔から目を離せなくなった。

「ま、まさか……?」


「一つ聞こう…お前の母の名は…?」


「マリア…マリア・メタネーロ…」


「ああ……奇跡か…」


その悪魔は、何やら興奮を抑え切れぬ様子で馬から降り立つ。


そして、静かにビアンカに近付いて来た。

ビアンカは逃げようともしなかった。
いや、身体が動かなかったのだ。


「お前はビアンカか…?」


「…そう…わたしはビアンカ…」


「マリアの子、ビアンカなのか…?」


感極まったか、その悪魔は紅い瞳から涙を流していた。


「ビアンカ…私はベルフェゴール。お前の父親だ…!!」


「パ、パパなの…?本当に……」


先程のミカエラの死の際の涙とは違う、感涙を流していた。


「こんな所で逢えるとは……マリアは?マリアは元気でいるのか?」


「ママは…」



ビアンカは、自分の半生と母マリアの事。
全てを父ベルフェゴールに話した。

そして、今また親友ミカエラを亡くした事の一部始終を。


「そうか。マリアは…」


寄り添ったまま、ベルフェゴールは再び押し黙ってしまった。
不意に父親の腕がビアンカの両手を掴んだ。


「…だが、私はお前に逢えただけでも嬉しいぞ、ビアンカ…」


そのまま抱き着きたかった。
しかし、ビアンカの中には蟠りがあった。
この男が父親だった為に、自分の半生は闇に包まれているのではないか。


何故…悪魔なのに人間を好きになったの…?


何故…ママとわたしを置いて姿を消したの…?


「パパ……」


「なんだ、ビアンカ…?」


「わたしは…パパを許せない…何故、今頃になってわたしの前に現れたの……?」


「…ビアンカ……」


その言葉には、ベルフェゴールも多少のショックを受けたようだ。
俯いたまま微動だにしなくなった。


「せめて、罪滅ぼしをさせてくれないか……?」


「罪滅ぼし…だって?」


ビアンカは急に立ち上がり、ベルフェゴールの腕を振り払う。


「今更あんたに何が出来るってのさ!死んだママが還って来るの!?無茶苦茶にされた…わたしの人生を元通りに直せるとでも言うの!?」


「ビアンカ…」


「返してよ!わたしのママを…ママはあんたのせいで死んだんだ!!」


ビアンカは、ベルフェゴールの襟元を掴み泣き叫ぶ。


「う…マリアの魂は地獄に来ていない。恐らく天国だろう。我々、魔族には手が出せぬ領域だ。……しかし…」


「しかし…?なに?」


「お前の親友ミカエラ…その子の魂は、地獄に来て居るはずだ」


ミカエラが…


地獄に堕ちているって?


その言葉を聞いて愕然とした。


なんで、あのミカエラが地獄に行かないといけないの…?


地獄の暗闇で怯えるミカエラの姿が脳裏に浮かんだ。


「聞け、ビアンカよ。お前の身体の半分は私と同じ魔族の血が流れている。…恐らく此処へやって来たのも、お前の魔の血が開花し誘い込まれたのだろう…」


ああ、やっぱり…わたしは悪魔なのか……


「此処は、地獄ではまだ浅い、死んだ者が怨みを持ちながらさ迷う“怨恨の森”と呼ばれる場所だ……」


「怨恨の森……」


「お前は、その魔の身体ゆえに、彼等の亡霊に呼ばれたのだろう」


「どうゆう事なの?」



「悪魔に殺された者は例外なく地獄行きなのだよ…」


「そんな……だから、ミカエラまでも……」


「まあ、連中はお前に殺されなくとも地獄行きが決まっているような奴らばかりだがな…」


そこで、ベルフェゴールはいかにも悪魔然とした皮肉な笑みを浮かべてみせた。


「パパ……」


「…パパと呼んでくれるのか……?」


「わたしを案内して」


「なに?」


「ミカエラの居る地獄へ、わたしを案内してと言ったの…」











《続く》


次回、第1部最終回!!



初掲載 2009-10-28

第18話「煉獄のビアンカ(前編)」






「ミカエラーーっ!?」


ビアンカが駆け寄った時は、既に虫の息だった。

ミカエラは、額と胸から血を流し、その鮮やかなブロンドの髪を汚していた。
むしろ、その真っ赤な血潮さえ美しいとビアンカは思った。


「わたしが…わたしが撃ったの………!?」


震える手で、ミカエラを抱きしめる。
口唇から血を流しながらも何かを言おうとしている。


「ビア…ビアンカ……」


「ミカエラ…ダメだ…喋っちゃ…」

両手をきつく握る。

涙が止まらない。

ビアンカは、またこんな形で親友を失ってしまうのかと、自らの運命を呪った。


「ビアンカ…わたしたち、いつまでも親友だよね…?」


「当たり前だろ…」


「ビアンカ…」


「なんだい?ミカエラ…」


「ありがとう…。わたしが死んでも…忘れないでね…」


「何言ってんだよ…ミカエラ…」


「…わたし、もうダメみたい…」


不意に瞼を閉じた。
ミカエラは、うっすらと笑みを浮かべたまま、そのまま動かなくなった。


「あ…ミ、ミカエラ……嘘だろ?ミカ……なんで………」


目の前が真っ暗になった。


わたしは一体何をしたの?

こんなバカな事があるの?

人間を信じられないわたしが、唯一信じた親友を自らの手で殺してしまうなんて……



「ああああ……」


ビアンカは叫んだ。

その慟哭は、闇にコダマする。

その雄叫びだけが暗闇に響き渡る。




「あらあら、また殺しちゃったの?ビアンカ…」



何処からか声がした。


それはヴァージニアの声らしい。


「鰐女さん…唯一の親友さえ殺すなんてな…やっぱりあんたは悪魔だな…」


今度は団長だ。



「ビアンカ…貴様、ミカエラを殺したな…今度は娘まで手にかけたな…?」


最後は、ガルシア。



三人だけが闇夜に浮かび上がる。
ミカエラの動かなくなった骸を抱きながら、ビアンカは三人を睨みつける。


「うるさい…消えろ…」


「消えないよ…此処はあたし達の領域だもの…」


「此処は、何処なんだ……?」


「地獄だと言ったろう。ビアンカ…」


「…地獄……」


ビアンカは、ミカエラの口唇にそっと口づけすると立ち上がる。


「ミカエラ……わたしはやっぱり、人を愛しちゃいけないんだ…」


「そうよ。あなたは悪魔だもの」


「うるさいっ」


「お前は人間の敵だ。お前の存在が人間を破滅に巻き込むのさ…」


「黙れ!」


「悪魔には、地獄がお似合いさ…」


「なんで、わたしは此処に居る……?」



何もかもが謎だった。


自分は、ミカエラと一緒に国境を越え、山岳地帯まで来ていたはずだ。


それが、いつの間にか霧に包まれ、かつてビアンカが殺した亡者共に囲まれていた。


あまつさえ、愛する者を誤って射殺してしまった。


(わたしは一体どうなってしまったの……?)



ビアンカは、ミカエラを抱き抱えてジープに戻る。
ミカエラは、まるで眠るように身体を横たえている。
血染めの口許が微かに笑っている様に見える。


今にも起き出して、自分に語りかけて来そうだ。

「ミカエラ……」


ビアンカは、ミカエラの髪を掻き分ける。
だが、ミカエラは応えない。
絶望的な静寂がビアンカを襲う。


紅い瞳から、大粒の涙が溢れ出す。


「わたしを独りにしないで……ミカエラ…」


そのまま、微動だにしないミカエラの遺体を掻きむしる。
ビアンカの号泣が再び闇夜に響いた。



不意に、先程の三人とは違う気配がした。


ビアンカが振り向くと、大柄の男の影が見えた。


「お前は誰だ…?そこで何をしている…?」


「えっ……?」










《続く》

初掲載2009-10-27

第17話「闇のニルヴァーナ(後編)」



「罪と憎しみが敷き詰められた道を選ぶしかなかった

そして、わたしの目を見えるようにさせるには今さら遅すぎる」

(DAMN OF DESTINY『IN BETWEEN』より〜)



「ガルシア総統…?」


「久しぶりだな。ビアンカ君。……そして」


ビアンカの横に座るミカエラが碧い瞳を見開いて凝視している。


「エステバン…おじ様………!?」


口を押さえ慟哭するミカエラ。


「逢いたかったぞ…わしの可愛いミカエラよ…」


「おじ様〜〜!!」


「あっ!待て!ミカエラ…」


ビアンカが止めるのも聞かずにミカエラは車を飛び出しエステバンの許へ走り込む。


二人はきつく抱きしめ合った。

「おじ様…逢えて嬉しいわ……」


「そうか。わしもだ。元気にしていたか?」


「当たり前よ!ビアンカと一緒だもの……あっ」

ミカエラは、エステバンの表情が一瞬に変貌するのを見た。


「ミカエラよ…」


「お…おじ様…?」


「わしを殺したのは誰だ……?」




一方のビアンカも、団長とヴァージニアの二人に迫られていた。


「鰐女さん…なんで俺がお前に殺されなきゃいけなかったんだ?俺は天涯孤独のお前を養ってあげたよなぁ……」


「ビアンカ…あたしはあなたの親友だったよね…?なんで、あたしを裏切ったの……?」


「よ…寄るな……」


ビアンカはジープを動かそうとするが、車が凍ったように動かない。


よく見れば、さらに周りに死霊が集まっている。

ビアンカが殺したラボミアの兵隊達と、アークランドの警察部隊、そして刑務所の治安部隊らもゾンビの様に周りを囲んでいたのだ。


(な…なんだ…これは……!?

一体、何が起きてるの?


わたしが殺した連中が…


みんなここに集まっているの……??)




「何故…殺したビアンカ……」


今度は傍らにミカエラを連れたガルシアまでもが車に近付き、ビアンカを責める…


「ミカエラ…そいつから離れるんだ……」


「ミカエラ!こいつがわしを殺したんだぞ?」


「おじ様…ビアンカを許して!」


「何故だ?」


「わたしの為なの!わたしの為にビアンカは…」


そこへ、ヴァージニアが現れた。


「あの時のお嬢さんね?あたしを撃ったガブリエラ。いや、ミカエラって言うらしいじゃない?まさか総統の娘とはね…」


「おいっ…貴様、娘に近付くな!」


ガルシアがヴァージニアを制する様に拳銃を向ける。


「……なによ。あんただって、ビアンカに殺されたんでしょ?」


「そうだ!コイツらは人殺しだ!!」


団長が、ヴァージニアに合いの手を入れる。


「コイツらは…ビアンカは、自分が生き延びるためならなんだってするのさ…たとえ親友を裏切るのも、恩人であるアナタを殺すのも平気なのよ!?」


その言葉を聞き、愕然とするビアンカ。


確かにそうかも知れない。

わたしは、わたしのエゴだけで動いていたかも知れない。


団長を殺したのは、自分がサーカス団を抜け出すため。


総統を撃ったのは、ミカエラをこの境遇に縛り付けるのが許せなかったから。


ヴァージニアを撃ったのはミカエラだけど、その親友を救うことすら出来なかったわたしが居る。




……でも、だからと言って、わたしに他に選択肢があったの………?




わたしは、どうすれば良かったの………?



あのまま、フリークスの集団に一生埋もれてないといけなかったの?



ミカエラを、あのまま放っておけば良かったの?



ヴァージニアに、あのまま殺されれば良かったの?




そうだ。


わたしは悪くない。



わたしにも生きる権利はある。


たとえ悪魔だって、ずっと逃げ続けたり、迫害されたままなんて我慢出来ない。



わたしは…





ビアンカは、無意識のうちに後部席に設置された機関銃の所に居た。


「たとえ地獄に堕ちたって…わたしは生き延びてやる!!」


機関銃を乱射した。


死霊であるはずの彼らが、その弾丸をもろに喰らい木っ端微塵に吹っ飛んでいった。


「お…おのれ…ビアンカ……」


「悪魔め!!呪われた子め……」


断末魔の悲鳴とともに死霊達は濃霧の中を四散してゆく。





「わたしが欲しいのは我が家と呼べる場所だけ

でも、わたしは何処かの狭間で迷子になってしまった

そして、一体誰がわたしの心を石に変えてしまったの


狭間で迷子になって 希望もなく

狭間で迷子になって 恐怖もなく

狭間で迷子になって 夢もなく」



「や…やめて…ビアンカ……」


悪鬼の如き形相で機関銃を乱射するビアンカの耳に、ミカエラの悲鳴が届いた。



我に返ると、そこには血塗れで横たわるミカエラの姿があった。


「ミカエラ…!?」







《続く》


初掲載 2009-10-23





♪In Between - Dawn of Destiny♪
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