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『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.22「リリス&クリス」






【前回までのあらすじ】

執拗な追手に業を煮やしたビアンカとマルコは意気投合し、魔力であっさりと撃退してしまう。

一方、ラブーフ姉妹とゲイルはビアンカ達を出迎える。





「こ、これがラブーフ姉妹なの…!?」


ビアンカが見上げた舞台に立つ2人の…いや、2人で1人の少女リリスとクリス。


「初めまして…で、いいのかしら?わたしがリリス。ビアンカ…会いたかった♪」


右側の金髪で、勝ち気そうなネコの様な瞳の少女がリリス。


「そして、わたしがクリス。わたしが呼んだの、ビアンカ♪」


続けて、左側の黒髪のおとなしそうな少女クリスが言葉を続けた。



2人の身体は腰の辺りで結合していて、それに合わせる様にゴスロリ調の衣装もそれぞれ赤と黒で色分けされていた。


更に奇妙なのは、リリスとクリスのそれぞれ右側に右腕が2本、左側に左腕が2本ずつ生えていた。


「あ、阿修羅……」


さすがのマルコシアスも、この衝撃的な光景に固唾を飲んだ。

ビアンカ、ミカエラ等も言葉なく固まっている。

それを見てほくそ笑むのは団長たるゲイル。


「驚いたか?まさにアシュラの様だろう?…彼女らは生まれつき身体がくっついて生まれてきた双子。つまり、シャム双生児って奴だ…」


「シャム双生児…」


今まで様々な奇形を見てきたビアンカだったが、こんな姿のフリークスは初めて出会った。


「どうしてこんな…?」


「ガルシア総統の根絶やし作戦の所為だよ…奴がラボミアの少数民族や反体制を虐殺した時に使った化学兵器の副作用で、此処サンタ・ディアブロでは様々な奇形児が生まれた…」


ゲイルの説明を聞き蒼白になったのは義娘のミカエラだった。


「お、おじ様が…」



「ピエトロもそうだったのね…?」


マーメイドの様な貝殻の水着を纏うシーラが言葉を発する。


「「あら…?あなたは…ピエトロを知ってるの?」」


「わたしは幼なじみだったシーラです」


「「ああ、あなたが…?ピエトロから名前は聞いていたわ。わたし達をいつも世話をしてくれた優しいお兄ちゃんだった…」」


「死んだわ…」


静かに真相を語り出すシーラの姿を冷や汗をかきながら聞くビアンカ。



「「死んだ…?」」


「銀行強盗をして、アンジェラ達に殺されたわ…」


「「ああ、そう…」」


リリス&クリスは、重なる声であっさりと答えた。


「「魔女の指示を受けて強盗をしたのでしょ?…でも最後は“普通の人間”になれたのでしょ?」」


その言葉を聞き、一同は愕然とする。


「なんで、あんた達が知ってるの…?魔女の知り合い!?」

ビアンカが2人に掴みかかる様に前に出た。

またクスクスと笑うラブーフ姉妹。
その声だけが幕舎に響く。


「笑ってないで答えて!!」


「「知り合いなんてものじゃない…わたし達がその“魔女”なのだから…」」


「な、何だって!?」



一体どういう事だ。

あの戦慄すべき“Mrsフィアー”…

あの恐るべき“魔女”の姿をビアンカは確かに見たし、声も何度も聞いている。


そして、ピエトロやミカエラ等、超常的な魔法で“願い”を叶えて貰ったのも見てきた。

この、奇妙な姿形だが可愛らしいラブーフ姉妹の何処が魔女なんだろうか…?


「あ…あんた達が魔女だって?」


「「そうよ。Mrsフィアーは、あなたに“ご褒美”と言ったでしょ?……魔女の真の姿を見せてあげようと思ったの…うふふふふ…♪」」


その状況を黙って見ていたマルコシアスが、ゲイル団長に尋ねる。


「おいっ…あんた、このフリークス団の団長なんだろ?」


「うん…?お前は…?…てか、お前…男だったのか?」


「男だよ!!…ちょっとワケありでな。全員、変装してたんだよ。俺はマルコシアス。ビアンカの友達だ。
そんなことより、あんた、こんな“魔女”まで飼ってるのか?みんな知ってたのか?」



少し間を置いてゲイルは答えた。


「ああ…薄々感づいてはいたが…まさか、こんなに話がでかくなってるとは知らなかった。此処を出ていったピエトロが銀行強盗やってたとか死んだのは初耳だな…」


「ちぃっ…呑気なもんだな…」


「なんだと!?…だが、俺はお前達が大体何者だか分かってるぜ。官邸を襲ったテロリストってのはあんた等なんだろ…?」


幕舎に暗い静寂が訪れる。

その場にいた誰もが黙り込んでしまった。





「「あら…?天使が通った…?」」


凍り付く空気を切り裂いたのはラブーフ姉妹の一言だった。

またクスクス笑いが闇に響く。





「外へ行ってゆっくり話そうか…」


ゲイルが誘い、ビアンカ、マルコ等は全員外へ出た。







「お前達は、アイツ等に踊らされてるんだよ…」


アイツ等とは、幕舎に引き込もって出てこないラブーフ姉妹の事だ。


その場にある岩や木の切株に座り、語り合うゲイルやビアンカ達。


「踊らされて…?」


「ラブーフ姉妹がその“魔女”だとして、その願い事を餌にお前達はいいように使われてるだけだろ?」


「…そんな…」


ビアンカは、そのまま頭を垂れてしまう。

それを励ますように肩に手を掛けたのはミカエラだった。


「まあな。確かにそうだ。そんな事は承知の上だ。だが、ビアンカはそれでも願い事を叶えて貰いたくて言う事を聞いてるんだよ。俺やヴァージニアも分かっててやってるんだ…」


「ヴァージニアと言ったか?」


「知ってるのか?」


「会った事はないが、兄貴から聞いてた。彼女もあんた等の仲間なのか?」


「まあな…」





「いいことを聞かせてもらったよ…」


突如、森の中から聞き覚えのある声が聞こえた。


「うっ…?」


ゲイルの傍らに座っていたチャーチ・ウィルやパイレーツ・シルヴィアが立ち上がる。


「誰だ!?」


ビアンカ、マルコシアス等も振り返る。


やおら、木々の間から姿を現したのはレベッカと、アンジェラの息子ガブリエルとラファエルの2人だった。

その背後にも無数の兵達が控える様だ。



「レベッカ…!?」


「どうして此処が分かった…?」


マルコが臨戦態勢を取る。
ウィルやシルヴィアもおもむろに武器を構えた。


「アニー…あんたバカじゃないの?…あれだけ派手なカーチェイスを繰り広げて、しかもパトカーまで破壊してさ…。これで誰にも気付かれないとでも思ったの?」


マルコとビアンカは顔を見合わせた。
やはり、隠密行動に越した事はなかった。
ルカが言った様に派手な行動は控えるべきだったのだ。


しかし、今となっては…




「おいおい…ラボミアの軍人さんよぉ…俺のサーカス団に何の用だ?…まだ興行の時間じゃないんだがな。ああ、夕方になったらまた来てくれないか…」


ゲイルがレベッカに近づき、おどけた調子で向かって行った。

見る見るレベッカの独眼が吊り上がってゆく。


「貴様…愚弄するか…?」


「俺の客をどうする気だ…?」


睨み合う2人。


「ゲイル団長!その娘はわたしに任せて…」

ビアンカも立ち上がる。


「ああ…?」



「トリニティ中尉…この場は任せた。俺達はその“魔女”とやらを探そう!」


ガブリエル等が幕舎に向かって走る。


「お気をつけて!!ガブリエル閣下…」


「ちょっと待って〜〜!?」


突然、ミカエラがガブリエルの肩を掴んだ。

「邪魔すんな!!…って、ミカエラおばさんかよ!?」


「おばさんて呼ばないで!?あなた達と歳は大して変わらないんですからね?」


「ああ、ミカエラおばさん。俺達は母の命令で動いてるんだ。悪いけど邪魔しないでくれ…」


「おばさんじゃない!!」



ミカエラと甥っ子達が小競り合いを続ける横目に、ビアンカ、レベッカ、マルコシアス、ゲイル団長等は睨み合う。


「レベッカ…ラブーフ姉妹をどうするつもりなの…?」


「面白そうじゃん♪あんた達を倒すより、その元凶たる“魔女”を連れて帰る事を優先する事にしたよ…」



おもむろにレベッカは、例の“光剣”を伸ばした。



「…邪魔するなら、今度こそ死んでもらうよアニー…」


「ベッキー…」


再びレベッカの独眼が吊り上がる。


「わたしを…」


「!?」


「レベッカとかベッキーって呼ぶなと言っただろう!!」


赤毛を振り乱し襲い掛かるレベッカ。








《続く》


初掲載2010-05-04



因縁の地サンタ・ディアブロに誘われる様に集結した猛者達。

三度、激突するビアンカとレベッカ!!


そして、魔女=ラブーフ姉妹とは?



謎が謎を呼ぶスリル&サスペンスに次回も目を離せないぞ!?



いつもジャンキチック小説をご愛読ありがとうございます♪\(^o^)/



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『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.21「阿修羅の子守唄」








【前回までのあらすじ】

レベッカは、特殊部隊に所属するアンジェラ総統の息子達と邂逅する。
一方、ビアンカ達は追っ手に追われていた。









「奥に居るのか?リリス、クリス…?」


帽子を取り、やれやれと言った顔付きで薄暗い幕舎の中に入ってゆくゲイル団長。


ベールに包まれた部屋で、クスクスと言う嘲笑の様な声が響く。


「わたし達はいつも一緒よ…ゲイリー♪」


「俺の事は“団長”と呼べといつも言ってるだろう…?」


また、クスクスが聞こえる。

タフな外見のゲイルすら、この10代そこそこの双子にはいつも振り回されている。


「お前達、たまには外に行って稽古の一つでもしたらどうだ?」


暗闇に姉妹の4つの碧い眼だけが光る。


「いやよ!…みんなと一緒なんて…それに」


間を置いてゲイルは聞いた。

「…なんだ?」


「もうすぐ“ビアンカ”が此処にやって来るわ…」


「何?…ビアンカだと…!?」

ゲイルは、くわえていた葉巻を落とした。


「ウィリアム!…チャーチ・ウィルは何処だ!?」


「なんだ…団長…?」


ゲイルに呼ばれて、幕舎の奥から現れたのはスキンヘッドに全身刺青だらけの長身の男だった。

人呼んで“チャーチ・ウィル”

全身の刺青が天使や十字架など“教会(チャーチ)”にまつわる意趣ばかりだからだ。



「ウィル!…出掛けるぞ…」


「何処へです?」


「ちょっとその辺だ…」


「その辺って?」


「いいから黙ってついてこい!!…ああ、パイレーツ・シルヴィも呼べ…それに…」


「珍しい。わたし達の言うことを信じるの…ゲイリー?」



またクスクスと笑う魔女の様なラブーフ姉妹に振り返るゲイル。


「他でもない。ビアンカの事だからな…」


そこへ、肌も露な、海賊風の衣装を纏った美女が現れた。

彼女の名は“パイレーツ・シルヴィア”

身体中に吸盤を持ち、さらに顔半分は鱗に覆われた異形だが、自ら“海賊”を名乗る海の使者。


「何なの…?ゲイル団長…」


「俺の兄貴を殺した“鰐女”が此処に来るらしい。出迎えてやろうってんだよ!!武器を用意しとけ!」










「…もっと早く出来ないの…マルコたん♪」


相変わらず、マルコシアスの運転するトラックの背後にはラボミア特殊警察のパトカーが尾行する様にピッタリと離さず着いてくる。


「くそっ…他人事みたいに…。ミカエラお嬢さん。少しは責任感じろよな…」


「まあっ…わたしが悪いみたいな言い方ね!?」


「お前が悪いんだろ!?」


睨み付けるマルコ。 その迫力に少したじろぐミカエラ。

「ちょっと〜ビアンカたん♪なんとか言って〜!マルシアたんがわたしのこと怒ってるんだけど…」


「ああ、あんたが悪いよ。ミカエラ!!連れて来なきゃよかったかも…」


いつの間にか荷台の窓から身を乗り出し、ロケットランチャーらしきモノを肩に担いでるビアンカ。

アラビアン風の黒い衣装が風に靡いている。


「あ〜〜ビアンカたんまでそんなこと言うワケ〜!?」


「…てか、ビアンカ!!お前、何やってんだよ!?」

マルコが窓を覗き叫ぶ。


「決まってるだろ。あいつらぶっ飛ばすんだよ…」


「バ…バカ!よせ!?」


「この期に及んで遠慮してる場合じゃないでしょ!?」


「…そりゃ、そうだが…」


言うと、マルコはハンドルをミカエラに任せて自らも窓から身を乗り出し、荷台の屋根に乗ってしまう。


もちろん、女装したままだからヴァージニアに借りた赤いジャンパーやスカートが風に靡く。


「マルコ…?あんた…」


「お前だけ危険な目に遭わせられるか…」


お互い顔を見合わせる2人。

マルコシアスの紅い瞳を覗くと、軽く笑みを洩らすビアンカ。


「…いいよ。わかった。じゃあ、一緒にやろうか…?」


ランチャーを捨てるとビアンカはマルコと腕を重ね、追っ手のパトカーに向かって垂直に伸ばした。



「いくぜ…ビアンカ!!」


「いいよ、マルコ…」


「いっけええぇーーーー!!」



合わせた2人の両手から巨大な“光弾”が発射される。

それは加速しながら渦を巻き、巨大な炎の塊となって後続のパトカーに直撃した。


「うっ…うわああっーー!!!?」


爆音とともに5台のパトカーが炎上し黒煙を上げる。


「やったぜ!!」


「やったね♪」


思わずマルコに抱き着くビアンカだった。 だが、すぐに我に返り身を離す。


「あ……ご、ごめん…」


「いや…いいよ。てか、簡単に済んだな…」


「そうだね。最初からこうすれば良かったのに…」


「ま、まあな…でもほら、ルカ卿がさ…」


頭を掻きながら、弁解するマルコシアスを見て、つい吹き出すビアンカ。


「な、なんだよ…」


「あんた、ルカの言うことなら何でも聞くの…?…もしかして、ルカのこと、好きなの!?」


「バ、バカ!?…俺はそんな趣味はねえよ!!」


マルコのポニーテールや口紅をつけた唇を軽く触り、襟を引っ張りながら彼女は更に笑う。


「あはは…♪説得力ないよマルシア姫」


「なっ…ちょっ…その呼び方はやめっ…」


顔を近付けるビアンカ。
両者の距離は、まるでハグでもしているかの様な姿勢だった。


その瞳に釘付けになるマルコ。


「大丈夫…♪ヴァージニアには内緒にしといてあげるから!?ふふ…♪」


「か、勝手にしろ!」


車の荷台の上でイチャつく2人をヨソにジェラシーを燃やすミカエラは、独り運転席でハンドルを握り目を吊り上げていた。


「…ちょっと何なのあの2人……?いつからあんなに仲良しになったのかしら?」








その時、彼らの乗るトラックの前方に三台のバイクが現れた。



「ん…?」


ミカエラが気付き急ブレーキをかける。


引っくり返る荷台の上のマルコとビアンカ。

2人は抱き合ったまま倒れた。


「ミカエラ!!…急に止まるなよ!」


「マルコ…」


「なんだ?」



三台のバイクは、同じように止まる。

そこに降り立ったのは、カウボーイハットの髭面の男に、刺青だらけの大男、そして見るからに“フリークス”と分かる異形の女だった。



その姿を見て、悪寒が走るビアンカ。


「あ、あれは…?」


髭面の男が近付く。

「あんたが鰐女さんだな…なるほど、蒼い肌に鱗だらけだ。まあ、シルヴィアには負けるがな…」


言われたシルヴィアはわざとポーズを取って見せた。


「あんたは…?」


荷台から降り、ビアンカはその男を睨み付けた。


「俺の名はゲイル・コンラッド。
フリークス・サーカス団“ラ・ディアボロス・エレファンテ”の団長だ…あんたはビアンカだろ?探してたぜ…」


「わたしを探してた…?」



「大っ嫌いだった俺の兄貴を殺してくれて礼を言いたくてな…ふっふ…はっはっはっ…」


笑うゲイルに誘われる様に“刺青男”や“シルヴィア”も笑いだした。


「なっ?…だ、団長の弟…?」


「あんたに逢わせたい奴がいる。…もっとも、あんたもそれに逢いに来たみたいだがな…。せっかく武器も持ってきたんだが、どうやら不用の様だ…」



「マルコ…」


ビアンカは、彼の方を見るがマルコシアスはただ黙って頷いた。

「渡りに船だ。奴らに従おう…。なに、いざとなれば俺達は無敵だろ?」


不意に、マルコの手を掴むビアンカ。

本人は全く気付いていない様だ。


「…そうだね」


不審に思いながらも、ビアンカやマルコ等はこのゲイルと言う男に誘われるままフリークス団のある場所についてゆく事にした。










「♪♪空には影がある

その影は宙を踊り


私の心にこう呼び掛けてくる」



幕舎から歌声が聴こえてくる。


それは、澄んだ美しい声の合唱だが、どこか闇そのものが歌っているかの様な不吉なものに感じられた。


ビアンカやマルコ等がサーカス団に近付くと、異形のフリークス・サーカス団のメンバー達は一斉に姿を隠した。


「これがピエトロのいたフリークス団なの?」

シーラが呟いた。

ビアンカ、マルコシアス、ミカエラ、シーラ、セバスチャン。


その5人の姿を時に振り返りつつ、ゲイルは彼らを幕舎に案内した。



「♪♪我々は速く、遠くまで走り

明けの明星を捕まえるのだ…


時間と空間が

秘密を隠匿しておくための

唯一の防御壁となる


落ちてゆく夜


闇の中の吐息


明けの明星を捕まえるのだ…♪」



「紹介しよう。我がサーカス団が誇る歌姫“アシュラ女”ことラブーフ姉妹…」


「アシュラ女…?」


「東洋の鬼神アシュラを知らないか…?」


やがて、闇の中に浮かぶ歌姫の姿がうっすらと垣間見えてきた。


ゴスロリ調の衣装を纏った10代ぐらいの2人の少女が重なりながら歌い踊る。


だが、不思議な事に脚の数が合わなかった。

2人重なっているのに、脚は二本しか見えない。これは何を意味するのか。


ビアンカは、簡易な舞台に駆け寄って2人の姿を凝視し、愕然とする。


「こ…これが、ラブーフ姉妹なの…!?」






《続く》


初掲載2010-04-30



ついに邂逅を果たしたビアンカとラブーフ姉妹!!


その驚愕する姿とは一体!?



サプライズとショック、スリル、サスペンスの次回に目が離せないぞ☆

(※劇中歌:ブラックモアズ・ナイト「モーニングスター」より抜粋)

◆Blackmore's Night - Morning Star
www.youtube.com




いつも、エログロ・バイオレンス・ロックンロール(笑)なジャンキチック小説をご愛読ありがとうございます!!\(^o^)/


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『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.20「ガブリエルとラファエル」









【前回までのあらすじ】

変装して敵中突破を試みるビアンカ達だが、ちょっとしたミスで正体がばれそうになり、キレたミカエラが暴走してしまう。








「うう…ん……」


目を覚ましたヴァージニアが、周りを見渡すと、自らが血塗れで暗闇の中の棺桶に横たわっている事に気付いた。


「きゃああああああっーー!?」



書斎で古文書に目を通していたルカは、すぐに地下室から響く彼女の悲鳴を察知した。


「ちょっ…ルカーー!!何よコレーー!?」


「お目覚めですかな?眠り姫…」



棺桶の中で裸の上半身を起こし、慌てふためくヴァージニアの前に、わざとらしく跪くルカだった。



「…ルカ!?何の冗談よ…」


「我輩は冗談など言わぬ…」


「ああ、そうね。あたしを治療してくれていたのね…でも、なんで血塗れなの…?」


「…まあ、点滴の様な物か…?君を回復させる為に狼の血を使い呪文を唱え棺桶に浸していたのだが…」


「点滴?…狼の血ですって…!?」


床が汚れるのも構わず、裸のまま勢いよく棺桶から飛び出すヴァージニア。


「お…狼の血を使ったの!?あたしの為に同朋(ハラカラ)を、仲間を何匹殺したのーー!?」


「君を救う為だ…」


「ひ、ヒドイわ…!動物虐待だわ!!悪魔よ鬼畜よ吸血鬼よ!!」


「ああ、全然悪口になってないようだが…」


ルカは、そっと彼女の肩に手を掛けた。


「…ヴァージニア…」


「……ルカ?」


「すまない。君がそんなに怒るとは思わなかった。…しかし、すべては君の命を救う為なのだ。許せ…」


「……ルカ…」


ヴァージニアは、そっとルカに口づけした。

「…あたしの方こそ取り乱してごめんなさい…」


「…食事の用意が出来てる。…シャワーを浴びたら、すぐに戻れよ」


「了解よ、ルカ…」








トリニティことレベッカが向かった先は、ラボミアの特殊部隊が駐屯しているラメント・エロイコと呼ばれる地だった。


物々しい兵士の喧騒と、巨大な飛行場にはモンスターの様な爆撃機。


戦車と兵隊達の行進、作業する整備員達の交錯する中をジープで、この基地の司令官の居る幕舎に向かう。



「あそこです。あのテントにこの基地の司令官ガブリエル・ガルシア閣下がいます。そして、副官ラファエル様も…」


ジープに同伴していた初老の軍人ロベルタ・アルジェント少佐は漆黒のテントを指差した。


「…ガブリエル・ガルシア将軍…か。アルジェント少佐、一つ聞いていい?」


「何なりと」


「わたしは何の情報もなしに身一つで此の地に向かったのだが、そのガブリエル将軍とは…アンジェラ総統の身内の様だが…何者だ?」


少佐は、柔和な笑みを洩らし、レベッカを見た。


「ふふ…ご存知ないとは。この国の者なら知らぬ者はいないと言うのに…」


「…わたしはイタリア人だからな。この国の事情など知らないよ…」


「…左様で。…ガブリエル将軍とは、かのアンジェラ総統の御嫡子。まだ16歳の若者ですが、軍事にかけては天才的な能力を持っておられるお方。一つ違いの次男ラファエル様も兵器に関しての実質的なオブザーバーであります」


「…ア、アンジェラ総統の息子……!?」








「いよう♪…あんたが噂の“守護天使”トリニティか…!?」


幕舎でレベッカを迎えたのは、漆黒の軍服を纏った黒髪の若者。

笑みを浮かべているが、その面差しや鋭い切れ長の瞳、軍属にしては長すぎる黒髪が母親のアンジェラにそっくりだった。


「あ…ああ…トリニティ・ホーリーグレイル中尉であります!!」



少年ながら、その異様な威圧感に気圧されたじろぐレベッカは、握手を求めるガブリエルの手をうやうやしく握る。


「トリニティ中尉か?総統付きの親衛隊にしては随分と階級が低いな…僕が総統に言ってもっと上げてもらおうか?」


「いえ…結構であります。わたくしはまだ此処ラボミアでは新参者でありますゆえ…」


「ははっ…はっきりとモノを言うな♪気に入ったぞ。仲良くやろうぜ!!」


そこへ、もう一人、ガブリエルに似た雰囲気の若者が幕舎に入って来た。


「おう。来たな…紹介しよう!…我が弟にして我が軍の天才的メカニックマン、ラファエルだ…」


兄ガブリエルとは違い、茶系の髪の色に碧眼は彼らの祖父にあたる故・エステバン総統を思わせた。


「あ…君が例の…ラファエル中将です。よろしく…」


はにかみながら手を差し伸べるラファエルの姿を見たレベッカは、何か不思議な感情に襲われた。


それは、ビアンカやその母マリア等、女性にしか興味が無かったレベッカが初めて感じる物だった。



二人の“王子”を目の前に、初老のアルジェント少佐を交え緊張しながら会議を始めるレベッカ。


「……と、言うことは、その“ビアンカ”って奴とその仲間達はフリークスと何らかの関係があると睨んでいるワケだな…中尉?」


「そうです…」


「では、早速その“フリークス”とやらの情報を集めようか?」


その横で何やらパソコンを使い検索しているラファエル。


「兄さ…いや、ガブリエル将軍…早速見付けたよ」


「早いな!?」



ラファエルの周りに集まる一同。

レベッカの胸がラファエルの腕に当たり、彼は目を背ける。


「ごめんなさい。…もっとよく見せて…」


独眼のレベッカの顔を興味深そうに見詰めるラファエル。


それには気付かず、パソコンの画面に見入るレベッカ。


その画面には、ラボミア各地に点在するサーカス団や“フリークス”達の見世物を興行する団体のリストが何百と記されていた。


「ピエトロだ。ピエトロと言う名前の男が所属していた団体はどれなの?」


頷いて、ラファエルは更に検索を進める。


「あった。
…ゲイル・コンラッド団長率いるフリークス・サーカス団“ラ・ディアボロス・エレファンテ”
…此処にピエトロ・バンディッタの名前がある…」


更に詳しく検索すると、そこにはかつて所属していた「狼女ヴァージニア」や「鰐女ビアンカ」の名前も出てきて、前団長にしてゲイルの兄スプリガンは、事故で死亡した事などが記されていた。



「……ビアンカ…」


改めてその名前を目にして、自らの従妹の不幸な境遇に、その独眼に熱いものが込み上げるのに気付くレベッカだった。


「…どうかしたか?トリニティ中尉…」


「いえ…何でもありません…」


気取られてない様に密かに涙を拭うレベッカだが、ラファエルは何かに感づいていた。



「…すると、トリニティ…君はこのフリークス団体がテロリスト達の温床になっていると言うのだな…?」


黙って頷くレベッカだが、その心中は複雑だった。



その時、通信が入った。


「ガブリエル将軍!?」


「どうした…」



顔を見合わせるレベッカら一同。


「サンタ・ディアブロにおいて、ミカエラお嬢様が発見されたとの情報が…」


「何…!?」


ガブリエルは、レベッカの顔を見た。


「サンタ・ディアブロ…」


「ゲイルのフリークス団のある場所だ。やっぱり…!!」


「よし、出動するぞ…トリニティ中尉」








逃げるトラック。


追うパトカー。



此処、ラボミア最北端サンタ・ディアブロでは、まだカーチェイスが続いていた。


「しつこいわね…」


「当たり前だろ!?行方不明だったミカエラお嬢さんが発見されたんだ奴ら、地の果てまで追っ掛けてくるさっ!!」


怒りながら、更にスピードを上げるマルコ。


「マルコちゃん…」


「なんだっっ!?」


「その格好で怒ってもちっとも恐くないわよ♪」


「ミ・カ・エ・ラ〜〜…!?」


「あはははははっ…カッワイーマルシアたん」




(…コイツ、絶対イカれてる。頭のネジが外れてるどころかネジなんて最初から付いてないだろ……)

と、つくづく思うマルコシアスだった。


…と、そこへ荷台の方から壁を叩く音が聞こえる。

窓から覗くとアラビアンな扮装のビアンカが睨んでいる。


「マルコ!?何やってんの!?追い付かれちゃうよ!!わたし達、もう限界だよ。奴ら倒していい?」


「バ、バカ…よせ!!なるべく派手な事はするなとルカ卿が言っただろ……」




(…どいつもコイツも…じゃじゃ馬のバカ姫ばっかりだ…)


ここにヴァージニアが居ないだけまだマシだと思う事にしたマルコシアスだった…。







《続く》


初掲載2010-04-28



錯綜する思惑。

入り乱れる群像。


そして、更に増え続けるキャラクター達とネーミング(笑)


リリスとクリスのラブーフ姉妹、ゲイル・コンラッド団長率いる“ラ・ディアボロス・エレファンテ”


ガブリエルとラファエル兄弟…

ロベルタ・アルジェント少佐。



君はいくつ覚えられたかな!?(笑)


何より、あのアンジェラ様にお子様が居た事が作者もビックリですたい(笑)\(゜ロ\)(/ロ゜)/

散りばめられたフラグが交錯する緊迫の次回を待て♪




いつもジャンキチックな小説をご愛読ありがとうございます!!(^.^)(-.-)(__)


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『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.19「WANTED Dead or Alive」







【前回までのあらすじ】


すべての鍵を握ると思われる、謎の“ラブーフ姉妹”に会う為に、ビアンカやマルコ等は“変装”する事になった。


一方、ビアンカとフリークス団の関係を怪しんだアンジェラとレベッカも動きを見せる。



「検問よ、マルコ…」

そこには黒い制帽に黒いコート。
そして、手には小銃を構えたラボミア特殊警察が10〜20人程たむろしていた。


「…どうする?」


「どうするも何もルカに言われた通り、おとなしくして奴等を騙すしかないだろ…」


車はそのまま前に進んだ。
荷台で固唾を飲むビアンカ達。

取り囲む様に警察隊は車に群がる。


「おいっ…止まるんだ。免許証を見せて目的地を言え!!」

警察の一人が言った。

運転席のマルコは黙して語らず。
代わりに助手席のミカエラが応じた。


「あらぁ〜♪物々しい警備ね?何かあったのかしら?」


ミカエラはストレートの黒髪のカツラを被りメガネまでしている為に、ガルシア家の令嬢でありアンジェラ総統の妹が、よもやこんな所に居ようとは誰も気づかない。


「この数日間、首都の官邸で起きているテロ事件を知らんのか?」


「まあ、テロリスト!?怖いわね〜?…わたし達、ずっと旅をしてるものだから世間の事に疎くて…ごめんなさい♪」


「ふん…まあ、良かろう。…で?貴様達は何処へ向かう?…この先はラボミアの最北端だ。大したモノはないはずだが…」


ミカエラは、マルコの方をチラリと見遣る。
彼は黙って頷くのみ。
変装している彼は、一見可憐な美少女にしか見えない。

そちらを睨む警察隊。


マルコは笑顔を見せて、ウインクしてみせた。


照れる警察隊。

それを遮りながら、ミカエラは言う。


「あ…あの…わたし達は旅のサーカス団なのよ♪この街にいるはずのフリークス団と合流したいのだけど、場所が分からなくって…あなた達、何か知らないかしら?」


「旅の一座か…そう言えば、サンタ・ディアブロに見世物小屋の旅の一座が居たようだが、お前達は奴等の仲間か?」


「まあ、そんなとこね♪」


荷台を覗き込む警察隊。

「後には何を積んでるんだ…うわぁっ…!?」

そこには2mを軽く超える巨体のセバスチャンが『フランケンシュタインの怪物』のコスチュームとメイクで膝を抱えてる。

それが暗闇から、ぬっと顔を覗かせたので警察隊は胆を抜かれた。

「べ…別に、お、おで達は何もしてないど…」

冷や汗をかいたまま、更に警察隊は中を覗くと、そこには肌も露な人魚姫の姿をしたシーラと、アラビアンな扮装のビアンカがいる。


「…ふん?奇形達のサーカス団か…」


内心ビクビクしながらも、再びミカエラの前に戻り強がる警察隊。


「我々はテロリストを探している。奴等は神出鬼没で何処に潜伏しているのか見当がつかん…」


と、指名手配の紙を見せた。

そこには「WANTED Dead or Alive」と明記され、それぞれビアンカ、マルコ、ヴァージニアの顔写真が載せられていた。

わざわざ凶悪な人相に写った画像を使用した様だ。


「うふふ♪ビアンカたん…可愛く写ってるわよ」


「何か言ったか?」


「い…いえ、なんにも!?…怖そうな人達ね!?」


「そちらのお嬢さんも何か知らないか?」


警察隊は、今度はマルコに目を付けた。

マルコは言葉が分からないフリをして、ただ微笑んでいるのみ。

「あ…あ…あの、マルシアは外国人だから言葉が分からないの!?ごめんなさい!!」


「外国人…?この時期にラボミアを旅行すると怪しまれるぞ…?」

警察隊の一人はマルコを凝視した。

マルコは照れた様に俯いて、顔をそむける。


「ん…?お前、どっかで見たような顔だなぁ…」


「マ…マルシアちゃんは、ジェシカ・アルバに似てるってよく言われるの!!」



「貴様には聞いていないぞ…」


すかさずフォローしたミカエラだったが、その警察隊の態度に一瞬腹が立つ。


「ホントだ。いや、ジェシカよりクリスティーナ・アギレラに似てるなぁ…」


段々とイライラしてくるミカエラ。


「もおそんなことどーでもいいでしょ!?行っていいかしら!?」


あまりの剣幕に動揺する警察隊達。

「ああ、スマンな…長々と引き留めて…お前達は行っていいぞ。仲間と会えるといいな♪」


「ありがとう!あなた達もビアンカ達が見つかるといいわね♪」


「ああ……ん?おいっ…ちょっと待て!!」


マルコが発車させようとした刹那、再び呼び止められた。


「なぁに?」


「貴様…今、ビアンカと言ったか?」


「ええ、言ったけど…それが何か?」



警察隊の一人が先程の指名手配の紙を見せた。

警官と、紙を交互に見るミカエラ。


「…これが?」


「ここには顔写真は載っているが“ビアンカ”と言う文字は書かれていないはずだが…?」


「あ……」


確かに、その指名手配書には“テロリスト”とは書いてあっても個人名は記してなかったのだ。


「テロリストの名前が“ビアンカ”と知っているのは軍の幹部と我々特殊警察の者だけだ。あとは“ブルーデビル”“シーウルフ”“ドレッド”とコードネームで呼ばれている。…その名を知る貴様は何者だ!?」


万事休す。


ミカエラは、マルコの方を振り返る。

彼も頭を抱えていた。

荷台で様子を見ていたビアンカ等も、戦闘態勢を取ろうとした矢先…



「あーもお、めんどくさい!!」

キレたミカエラが、カツラとメガネを投げ捨てた。

「き…貴様…これは、なんのつもりだ!?」


「なんのつもり…ですって?あなた達こそ誰に向かって尋問してるか分かってるつもり!?」

金髪を振り乱し、警察隊を指差し叫ぶミカエラ。


「あー…!?」


警察隊の一人が突然、突拍子もない声を上げた。


「ん?どうした…」


「ミカエラお嬢様!?」


「へ……?」



勢い余って車から飛び降りた、その金髪碧眼の美少女は、まさしくアンジェラ総統の妹にして、ガルシア家の令嬢ミカエラお嬢様その人であったのだ。


ミカエラは興奮したまま、腰に手を当て警察隊を見渡している。

「ミカエラっ…あんた何やってん…」


思わず荷台から出てきたビアンカ。

それにも構わずミカエラはまだ怒っている。

「あなた達、頭が高いわよ!!控えい控えい!!」


「はっ…ははーーっ!?」

威厳に打たれた警察隊達は、思わず平伏してしまう。



「さぁ、行こっか!ビアンカたん♪」


茫然とするビアンカを荷台に押し込み、再び車に乗りマルコにウインクするミカエラ。


「ミカエラ…お前…」


「大丈夫よ♪マルシアちゃん」


「全然大丈夫じゃねーよ!?お前の短気で余計メンドーなことになった!!」



マルコ達の車は発車したが、後ろから数台のパトカーが追い掛けてくる。


「あら…?何よ、あれ…」


「お前を追っかけてんだよ!!」



ここに、不毛なカーチェイスが始まろうとしていた…。









極寒の大地。

銀世界に埋まる山々の麓に、みすぼらしいテントがあった。


焚き火を前に、カラフルな衣装を纏う異形の者達がダンスや曲芸の練習をしたり、食事をしている。


そこへ、カウボーイハットの長身の男が乗馬し、拍車をかけながら現れる。
前には長い髪の女を乗せて。


「きゃああー!ゲイル…激しすぎるわ!?」


ゲイルと呼ばれた男は、葉巻をくわえたまま微笑んだ。


「へっ…激しい方が好きだろうが!?」


まだ若い様だが口髭をたくわえ、不思議な威厳を称えて辺りを見渡す。


すると、そこにいたフリークス達は一斉に頭を垂れた。


前に乗る女を、さも邪魔だと言いたげに押し退け馬から降りると、更に周りを見回す。


「おいっ…リリスとクリスはまた幕舎の中か?奴らめ…全然言うことを聞きゃあしねえ…」









《続く》


初掲載2010-04-26



ミカエラの暴走で、突然の大ピンチ!?


果たして、ビアンカ達はこの危機を打開出来るのか?


そして、彼らを待ち受ける謎の男ゲイルとは…?


風雲急を呼ぶ、奇想天外・疾風迅雷・剛力招来・超力招来(笑)な展開に次回も目を離せないゾ♪\(^_^)(^_^)/





最近すっかりギャグっぽくなってきたジャン吉小説をご愛読頂き有難き幸せですm(__)m


ご感想や応援コメント等頂けると、抽選で「ビアミカ・フィギュア」をプレゼントするとかしないとか!?(笑)

尚、当選者は商品の発送をもってかえさせてもらうから覚悟せよ!!(T_T)

『小悪魔ビアンカと3つの願い』Vol.18「敵中縦断」





【前回までのあらすじ】

アンジェラはラボミアの歴史を語り、それに応じる様にレベッカは自身の“秘密”を語りだした。


一方、シーラ達を救出したビアンカは魔女に言われた「ラブーフ姉妹」に会おうとする。









「雲を掴む様な話だぜ…?」



「簡単じゃない!あなたの瞬間移動でドッヒューンと飛んで行けばいいのじゃない!」


ミカエラは嬉々としながら言う。
困惑するマルコ。

「ドッヒューンとか!?(笑)あのなぁ…ミカエラお嬢さん。瞬間移動ってのは、相手や場所が明確に分かってる時にしか出来ないんだ…魔女が行った“北”とか“ラブーフ姉妹”って、謎解きみたいな言葉だけじゃ何も出来ないんだよ…」


「…どうしようか…?」


言い出したビアンカ本人が悩み始めてしまった。


「サンタ・ディアブロだ…」

唐突にルカが口を挟んだ。


「えっ……!?」


人差し指を頭に突き立て、何か祈る様な表情で目を閉じるルカ。

「…ラボミアの最北端サンタ・ディアブロに何かを感じる…恐らくそのフリークス団の所在はそこだろう…」


「サンタ・ディアブロ……!?」


「おおっ…さすがルカ卿だ。よし、とりあえずディアブロとやらに出向いてみるか!」


マルコはビアンカやシーラと顔を見合わせる。


「待て。お前達、そのまま行く気か…?」


「ああ…」


「アンジェラやレベッカ達が待ち構え、兵が出迎えているぞ…ラボミア各地にな」


「また蹴散らしてやるさ」


「無用な争いはなるべく避ける事だ」


「では、どうすれば?」


腕を組み、少し考えた後、ルカはおもむろに口を開いた。


「お前達は目立ち過ぎる。変装でもするんだな…」

指を頭に当てながらニヤニヤと笑ってみせるルカだった。


「変装…!?」


「ルカ卿。何の冗談だ?」


「我輩が冗談を言った事があるか?変装と言ったら変装だ…」



「つまり、目立たないように人間のフリをして行けって事…?」


たまらずビアンカがルカに尋ねた。
彼は黙って頷くのみ。


「まあ、全員人間に化けるのでは意味がない…」

チラと、シーラを見遣る。


「シーラ。お前は“アルビノ”だ…」


「はい?あの…ア…ルビノって白子って事ですか!?『ジャングル大帝』のレオみたいな…?」


「ああ、魔族ではなく人間の奇形のフリをするんだ…そして、セバスチャン。お前は“巨人”…」


「そのまんまだな…」


急に話を振られて唖然としてるセバスチャンを見上げるマルコ。そして、ルカの意図にようやく気付いた。


「なるほど!フリークス団の真似をするのか!…じゃあ、俺とミカエラお嬢さんがその主催者の夫婦役でいいかな?」


それを聞いたビアンカは、何か面白くないらしくミカエラとマルコを睨み付けた。


「あら?ビアンカたん…妬いてるの?」


「べ、別に…。お、お似合いのカップルでいいんじゃない?美男美女でさ…わたしはどうせフリークスですからね!」


ミカエラを取られた事より、むしろマルコとカップル役を演じるミカエラに対して嫉妬している自分に気づいたビアンカ。


(…何だろう…?なんか変な感じ…)




「いや、マルコシアス。お前が一番目立つ」


「え……?」


「マルコ、お前は…そうだな…」


おもむろにマルコの全身を舐める様に見るルカ。



「女装でもするか?」


「なっ…!?」


「わぁ〜それ楽しそう♪♪♪\(^_^)/」


すかさず合いの手を入れるミカエラとシーラ。


「ちょっっ…冗談でしょ!?ルカ卿…」


「我輩が冗談を言った事が…」


「……ないっスね…」




かくして、ビアンカ一行は、それぞれ変装して“ラブーフ姉妹”がいると思われるサンタ・ディアブロを目指す事になった。


「…とっても似合うよ…マルコちゃん(笑)」


「う…」


奥から引っ張り出したヴァージニアのお古を着て、自慢のドレッドヘアを無理矢理ポニーテールに結わき唇に紅を差したマルコは可憐な美少女にしか見えなかった。


クスクス笑いを止めないビアンカ。

その目はマルコの紅い瞳を見詰めていた。

「う、うるさいっ…」


「カワイイですよ♪」


「わたしには負けるけど素敵よ。“マルシア”ちゃん!!」


すかさずシーラとミカエラもツッコミを入れていた。


「なんだよ、そのマルシアって…」

セバスチャンも何故か照れながら見詰める。


「ウム。上出来だな…」

ルカも頷く。


「いいか?お前とミカエラお嬢さんはフリークスを運ぶ友人役だ。絶対喋るな!」


ミカエラは、黒いカツラを被り、一見ラボミアの令嬢には見えない見事な変装をしていた。


ビアンカは頭にターバン、目元にもベールを付け、異国風な娘になっていた。


「…喋るなって…」


「クロサワの『隠し砦の三悪人』と言う映画を知ってるか…?」


「カクシトリデ…?」


「自らの仕える姫君を助け、敵中突破する物語だ。あのミフネの様にお前は何も喋らず作戦を成功させるんだ…」


「ルカ卿…」


唐突にセバスチャンが口を挟んだ。


「なんだ?」


「その映画、言葉を発しないのはミフネではなく、姫君の方ですよ…」


「そうだったか?ふふ…これは傑作だ。なあ、ビアンカ姫!?」


話を振られて笑い出すビアンカ。


「ふふふ…大丈夫。マルシア姫は無事に味方の陣地に届けてみせるよ♪あはははっ…」


彼女はいつになく楽しそうだった。


彼女の笑い声を聞くなんて珍しい事だ。


そんな、ビアンカが喜ぶ姿が見れただけでも、自分が恥をかいた甲斐があったと思うマルコだった。










「…ビアンカ達は再び姿を現すと思うか?」


アンジェラ達は、破壊された官邸を捨て、国会議事堂のあるラボミア政府ビルに本拠を移し、そこへテロ対策を練り、彼らを迎え撃つ準備をしていた。


主だった幹部を集め、トリニティことレベッカを傍らに侍らし、睨みを利かせるアンジェラ総統。


彼女が座る椅子の壁には、前総統にして彼女の父であるエステバン総統の肖像画が更に周囲を睨み付けていた。


幹部の一人が言った。

「アンジェラ閣下。既に国中に監視の目を光らせ、怪しい者ども片っ端から逮捕しております。ビアンカ捕捉は時間の問題でしょう…」


「どうだかな…貴様は奴等の力を知らん。奴等は人外の化け物だ。そこらのテロリストを捕まえるのとは訳が違う…」


「アンジェラ様…」


レベッカが口を挟んだ。


「トリニティ…何か?」


「化け物と言えば、ビアンカ達とフリークス団の繋がりを洗った方がよろしいかと思いますが…」


「フリークス団?…何故だ?」


「…あの銀行強盗だったピエトロ。彼奴はかつてビアンカやヴァージニア等のいたサーカス団と関係があったと報告を受けています」


「ほう…では、その線で探りを入れてみるか?トリニティ…」


「はっ…」


「ラボミア特殊部隊東部方面師団にガブリエルとラファエルと言う兄弟がいる。奴等と合流し、フリークス団の情報を手に入れるんだ」


「畏まりました…」


レベッカは敬礼し、頭を垂れるとそのまま退席した。










「…ぶるるっ…やっぱり、こっちの方は寒いわねぇ〜…マルシアちゃん」


「…だから、そのマルシアちゃんはよせっての…」


「じゃあ、姫(笑)」


「略し過ぎだろ!」



ビアンカ達一行は、トラックごとサンタ・ディアブロ付近に瞬間移動し、地上から“姉妹”を探す事にした。


運転席にマルコ、助手席にミカエラ。


そして、荷台には“フリークス”に化けたビアンカ、シーラ、セバスチャンを乗せて。
マルコが荷台に向けて話し掛ける。

「なぁ、ビアンカ…」


「なあに?姫」


「怒るぞ…!…あ、あの…お前が所属してた…そのフリークス団の団長は死んだんだろ?」


「まあね。わたしが殺したから…」


「その跡目は誰が継いでるんだ?」


「さあ?…わたし、ヴァージニア達と逃げるのが精一杯だったし…」


「…ふうん…手掛かりなしか…」



その時、ミカエラがマルコの口を塞いだ。


「な…なん…だ?」



「マルコ…検問よ…」


トラックが向かう先に、軍か警察と思われる集団の姿が見えた。









《続く》


初掲載2010-04-23



敵中縦断。ビアンカ一行は、鍵を握ると思われる“ラブーフ姉妹”の許へ無事に辿り着けるのか!?


スリルとバイオレンスの予感がする次回も見逃せないぞ!!?






いつも、ショック&スリル、サスペンスな(笑)django小説をご愛読ありがとうございますm(__)m


感想コメント、励まし頂けると幸いです♪
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