【前回までのあらすじ】

ビアンカは、魔族の能力が更に開花し、自らの容姿を変化出来る様になった。


一方、倒れたレベッカの前に“天使トリニータ”が降臨する。





「あ、あなたが天使トリニータなの…?」


光り輝くその姿は、白い帽子に白いスーツと言った出で立ちで、一見“天使”などには見えない。


しかし、頭上に被さる後光と背に羽ばたく巨大な猛禽類の翼は、天使以外の何者でもない。


「わたしは、あなたを知っている。見た事はないけれど、話には聞いた事がある…」


トリニータと名乗る天使が顔を上げる。

そこには眉目秀麗な双眸が光を発して、なおも眩しく見えた。


「見える…?右目が…!!」


失われたはずのレベッカの右の瞳が復活し、身体中の傷もすべて消えていた。


「こ…これは…!?」


トリニータは、ひざまづいているレベッカに対し、膝を屈めて優しく微笑む。


「君の役目が終わった事を意味しているんだよ…」


「そんなバカな!?…だって、わたしはビアンカを倒すどころか、逆に敗れたのよ!!アニーにはもう天使のパワーが通用しないぐらい強力になってるの!!」


「…いいんだ。君の役目は、アンジェラを倒そうとするビアンカを止める事。そして、ビアンカの力を促進させる事にあった…」


「ビアンカの…?ねえ、教えて!ビアンカは何者なの?あなた方天使にとって敵ではないの!?」


間を置いて、トリニータは答えた。


「少なくとも、今のビアンカは敵ではない。我々が探していたのは“魔女”だからな…」


「魔女…」










「「さぁ、ビアンカにヴァージニア。今からでも遅くないわ。アンジェラ抹殺を続行して!…ガルシア一族の者をこの世から消して♪」」



涼やかな笑みを浮かべながら、ラブーフ姉妹は命令する。


「かしこまりですわ♪魔女様!!」


ヴァージニアは、ヤル気満々で敬礼する。

一方、ビアンカは…


「わたしは降りる…」


「なっ?…今、なんて言ったのビアンカ!?」

ヴァージニアが彼女に近づく。


「わたしはもうやりたくないと言ったの…」


それを見て、2人で1人のラブーフ姉妹がヨタヨタと歩み寄る。

その奇妙な姿にビアンカは改めて戦慄を覚えた。

ラブーフ姉妹、リリスとクリスはその4つの腕でビアンカの頬を撫でる。


「「…言うと思った♪…そうね。願いの1つは、自らの力で叶えてしまったのですものね…うふふふ…♪」」


陽気な笑い声が、むしろ空々しく、一段と不気味に聞こえた。


「…それもあるけど…わたしはもう無益な争いをしたくないし、アンジェラとは戦いたくない…」


「ビアンカ〜〜?何を今さら〜〜!?」


ヴァージニアが手足をバタバタさせながら騒ぐ。


「マルコォー?あんたも何か言ってよ!一緒に戦いたくないのぉー!?」


話を振られたマルコは、ヴァージニアを一瞥すると言った。


「俺は、ビアンカの騎士だ。姫の決めた事には逆らえないね」


「マルコ…」


それを聞いたビアンカは、目を見開いて驚いた。



「なんなのよ〜あんた達はぁ〜〜!?」


ラブーフ姉妹は、ビアンカの顔を見つめて、やおら微笑むと、再び冷たい表情に戻る。


「「まだ最後の願い事が残ってるでしょ?…それを叶えてあげるから行って…。ね?ビアンカ…」」


「うっ…?」


「そうよ!ビアンカ!?ジュリアーノよ!!彼に会いたくないの!?魔女様が願い事を叶えてくださるわ!!」

叫ぶヴァージニア。

それを見ていたミカエラは、堪らずビアンカとラブーフ姉妹の間に割って入る。


「もう許して!!わたしも元の体に戻ってもいいから、これ以上ビアンカを苦しめないで!?」

泣きながら彼女はラブーフ姉妹の腕を掴む。

だが、いきなりリリス側の腕がミカエラを掴むとそのまま首を締める。


「クリス…この娘、なんかウザいね?」


「そうね。リリス。でも、何か役に立ちそうだけど♪」


「まずい…」


その光景を見ていたマルコは冷や汗をかきながら前に出た。

「ミカエラ!?逃げろ!!」


「「離さないよ♪この娘はまた人質にするんだ…」」


言いかけた時に銃声が響いた。


「ぎゃっ…」

飛び散る鮮血はラブーフ姉妹のものだった。

見れば、ライフルを構えたゲイル団長が呆然としている。


「…どうせ、こんな程度じゃ死なないんだろうが…」


ラブーフ姉妹が倒れた隙に、ミカエラは逃げビアンカに抱き着いた。

「ビアンカ!?ごめんなさい!」


「ミカエラ…無茶すんなよ…」



そして、慌てふためくヴァージニアの許で倒れ伏す姉妹。


「「ふ…ふふふ…あははははははは…♪」」


その悲鳴の様な笑い声にギョッとするヴァージニア。

声は姉妹の頭上から聞こえてくる。

そこには邪悪な思念と気が集まり、徐々に形を帯び、ビアンカ等のよく知っている“Mrsフィアー”=魔女の姿が浮かんでいた。


「ついに正体を現したってワケだな…」


マルコが臨戦態勢に入り、それに対する。

一方のビアンカもミカエラを後ろに下げ、前に出る。


「久しぶりだね。もうあんたの言う事は聞かないけど…」


『バカな娘だ…これが最後のチャンスだと言うのに…!』


「チャンスは自分で掴んでみせるさ…!!」



『もはや、汝は用済みのようだね…ヴァージニアよ!ビアンカを殺せ!』


「えっ…?ビアンカを…そんな…」


『わらわの命令を聞けないのかい…?』


「い、いくら魔女様のご命令でも、それは…!?」

チラリとビアンカを見ると、やおら彼女はニコヤかに微笑んだ。


「相手になるよ。ヴァージニア。もっとも負ける気はしないけど♪」



「ビアンカ…その余裕綽々な態度は何なの!?」


『ぬぬぬ…!何を躊躇しているヴァージニア…』



「ラブーフ姉妹…いや、Mrsフィアー。チェックメイトだ。観念するんだね…」


その声は天空から聞こえた。

彼らが見上げた先には、宙に浮かぶレベッカと、羽根を羽ばたかせる天使トリニータの姿が見えた。


「レベッカ…!?…それにあれは…誰なの?」


「天使トリニータ…?いや、あれは…」


近づくにつれて、その光り輝く姿の全貌が明らかになる。


トリニータの顔を垣間見たビアンカは驚嘆した。


「あ、あれは、まさか…!?」






《続く》


初掲載2010-05-10



あらゆる因縁が絡み合ったまま、此処サンタ・ディアブロで、光と闇が最後の対決の時を迎える。


ビアンカは、ラブーフ姉妹は、そして、謎の使徒トリニータはどう動く!?



次回『小悪魔ビアンカと3つの願い』怒涛の最終回!!\(^-^)/


運命の帳が晴れる時、あなたは奇跡の光を垣間見る!?




いつもジャン吉小説をご愛読ありがとうございます!!


ここまで読んでくれてた人だけが、迎えられる最高のクライマックス!!\(^-^)/

最後までよろしく♪