『ね、どっかであそぼ』
人気バンド「HekatoNCheiR」略してヘカケイのドラムである紫原敦と、何の因果かメールアドレスを交換する羽目になって早三日。
上記の誘い文句から、ただの一大学生である千早は大人気アイドルの一人とマンツーマンで逢うという約束を取り付けられてしまったのだ。
「あ、いたー」
「…………」
のそのそと通りの向こう側からやってきた紫原は、いつも通りと言わんばかりの様子でひらひらと手を振った。
この間のライブで初めて逢って、メールもその日から始めたというのに。
(この違和感のなさって………つーか)
「でか!」
…思わず口に出していた。
「え〜?こないだ逢ったじゃん」
「や、そーなんだけど…。いつもあんた見るのテレビだし、それじゃあんまし伝わんなかったっつーか」
「んー…まぁ木吉とかもでかいし?」
「あ、あー…そうかも?」
「オレら全員190以上あるしー」
「えええ!?」
「オレは208だけどね」
「でけえええ!」
それくらいの予備知識なら、根っからのファンである弥雅や葉佑は知っていただろう。
しかしにわかファン、というより先日のライブに付き合っただけの千早には驚きの事実であった。
(208センチって…オレが176だから………えっと、32センチ差!?)
「緋賀ちんはちっちゃいよねー」
「オレ普通のはずなんだけど……」
不思議なくらいに会話が成り立っている。
ああやっぱアイドルも人間なんだなーなどと千早は少々頭の悪いことを考えていた。
そして紫原がアイドルであるという事実もすでに忘却の彼方である。
「あ、なー今日どこ行くん?」
「んー…決めてないけど?」
「ねーのかよ!…つってもオレらお互いに何がスキとかも知らな…」
「…あ」
「あ?」
「こないだくれたまいう棒さー」
「うん?」
「初めて見た」
「あぁアレなー。へへ、珍しいだろ?この近くに駄菓子屋あんだけどさ、結構レア物置いてんだよ」
「へー、アレおいしいよねー」
「あ、お前もそー思う?あの三つオレのイチ推しだからっ」
「あとアレもうまいよ。納豆味」
「うっそ!アレ地方限定じゃん!食ったん!?」
「遠征ん時もらったー。あ、じゃー次行った時お土産に買ってくんね」
「やった!ご当地限定もんはさぁ、どーしても手に入りにくいんだよな〜…………って」
ここで千早は気づいた。
(オレらの共通点?あった)
「…あのさ、今更なんだけど」
「んー?」
「お菓子とか、結構スキだったりする?」
「うん。甘いものとかもよく食べる」
「ぶっは!マジだ」
「?」
「オレ達結構気ぃ合うかも。お菓子とか甘いもんとか、なんかちょっと恥ずかしいけど」
「……」
千早ははにかんだ。
幼く見える顔をほんの少しだけ染めて、身振り手振りで言い訳するように。
「弥雅とかさー…あ、幼馴染みなんだけど、子供かってバカにすっから。同じもんスキって、結構嬉しいよな!……って、勝手に喜んでんのオレだけだったらなんか申し訳ないんだけど」
「んー」
「わっ…なに?」
紫原が大きな手でわしゃわしゃ頭を撫でると、千早はきょとんとした目で見上げてくる。
だがその仲間を見つけたような嬉しさを隠しきれていない様子は見ていて微笑ましい。
「じゃー行こっかー」
「へ?どこに?」
「んー、イイとこ?」
「?」
言われるがままに連れられて、二人が立ち止まったのはとある店の正面入口。
「スイーツ・パレット」とかわいらしく装飾された看板が立っている。
しばらくぽかんとしていた千早はハッとしたように紫原を見上げた。
「えっ、ここスイパレじゃん」
「うん。入ろー」
「え、え、お前来たことあんの?」
「んー、何回か」
「何回も!?」
マジでか…と再び店に視線を移す。
お菓子や甘いものは好きだが、このようなスイーツ食べ放題の店には入ったことがない。
場違いではと感じている間もなく、紫原はずんずん奥へと行ってしまう。
「行くよー」
「うぇ?え、ちょっ…!」
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
「二人ねー」
「………」
(ふ、フツーに対応してっし…)
まさか男同士で来るとは…と千早は相当どぎまぎしていたが、店内には意外と男性客も多く、それほど二人も目立たない。
千早の順応性とはたいしたもので、五分とかからずに数あるケーキを満喫し始めていた。
「あ、それうまい?どこにあった?」
「うん、一個あげる」
「マジ?やたっ。さんきゅ…………えーと、むらさきば」
「あつし」
「へ?」
「敦でいいって言ったでしょ」
「あーあはは…なんか、ちょっと、急に恥ずかしくなったってゆーか…むぐふ!?」
「…そーゆーのはさー」
「ふへ?」
紫原は千早の口にケーキを突っ込むと、少々不服そうに唇を尖らせた。
(恥ずかしいとかかわいーけど、でも名前で呼んでくんなきゃ嫌だし)
「……えと、なに?」
「あつし」
「え」
「あーつーし」
「えええ…」
(…いや、フツーに呼べばいんだけど…。メールでもそうだし…でも改めて呼ぶって、なんか照れくさいんだよな…)
突っ込まれたケーキを味わいながらも頭をひねる。
すると悶々と自問自答する千早の前から突如皿が消えた。
「じゃないと没収ー」
「えええええ!?ちょっ!なんだよそれ!」
「全部もらうから」
「うわあそれ厳選したやつばっか!敦意地悪ぃ!……あ」
「ん、よくできましたー」
「…なんだそれ」
意外にも至極ご満悦な紫原を見ると、それ以上突っ込む気も失せた。
そもそもメールや本人のいない所ではちゃっかり名前で呼んでいるのだ。
違和感などは当然のようにない。
「緋賀ちん、これうまい」
「ん?どれ?」
「ハイ」
「んー、…んん!」
「でしょー?あ、それちょーだい」
…結局終始こんな調子で、二人は終了時間ギリギリまでケーキを満喫したのである。
そして帰り際。
「あ、え、敦!?オレもちゃんと払うって!」
「えー?いーよ別に。遊ぼって言ったのオレだしー」
「でも奢ってもらうわけにはいかねーって!オレだってバイトしてっし!」
「んー…でもさー、年上が払うじゃん?フツーは」
「え…?……えーと、今更だけど敦って何歳?」
「23」
「ええええ!?」
「そんな驚くとこー?緋賀ちんは?」
「…ハタチ………なんか、ごめん」
「え、いーけど。つーかなんだ、高校生じゃないんだ」
「オレ高校生と思われてたのかよ!」
「よかったー。オレ犯罪者かと思ったけど全然おっけーじゃん」
「はい…?……つか、いいん?オレだいぶ同い年くらいの感覚でしゃべってたけど」
「いーよ。じゃーお酒も飲めるんだ」
「あ、そだな。今度は飲み行く?」
「行こっかー」
「じゃあまた連絡してよ。忙しいのそっちだろうしさ」
「うん。でも緋賀ちんも連絡ちょーだいね」
「りょーかい。あ、じゃーオレこっちだから」
「んー、またね緋賀ちん」
「またなー」
背を向けて歩き出すと、なぜか今日一日がとても短く感じた気がした。
反芻すればするほど、思い返すのは向かいに座っていたあの顔ばかり。
(…23かよ。びっくりした。マジで同い年くらいって思ってた…)
(ハタチかー。かわいーし見えなかったけど、結果オーライってやつだよねー)
(……あ、そういやアイツってアイドルなんじゃん。オレ何も考えてなかったけど)
(次の休みいつだっけ…。後で木吉に確認しよー)
(イイ奴だし、趣味とかも合う感じだし、なんかこんな気ぃ合う友達久々だな〜)
(あー……早く次の休みになんないかなー)
…互いの想いに差はあれど、初めてのお出かけはなかなかどうしてうまく事が運んだようで。
片や超人気アイドル、片やただの大学生。
二人の関係がどう変わるのか、はたまた変わるのか変わらないのか。
それはまた別のお話。
終
**********
うーわーーーーー…………
だらだらだらだら(笑)
でも二人ってこんな感じするよね←
基本ノープランみたいな。
つーわけで!すんません!
ゐ子ちゃんとこの話がもうそれはそれは萌えたので、空白の紫千初デートを書かせていただきました!
あ、もちろん許可もらいました!
でも今更ながら年齢操作のよさがじんわりきてる。
いいなこれ…いいな……
あ、スイパレは突っ込んだら負けですよ←
出来はともかく楽しかったです!
会話が…もう果てしなくだらけきってるけども!
紫千クオリティー\(^o^)/
ゐ子ちゃんの意図に添えているのかすごい不安ではありますが…
あかんとこご指摘求む!!!(>_<)
本家ほんま素敵小説なんで!
是非そちらを!!!
続き楽しみにしてます!
お粗末さまでした!(土下座)
アイドルパロな紫千ー!\(^o^)/ヒイイイイイイ
ここれこれ!ホンマに!紫千が自然体で紫千で
お菓子でわちゃわちゃ可愛いよオオー!!\(^o^)/パパン
もう最初っからケーキ突っ込んだりして
安定のむっくんwwwwしかし急に
敦呼びに照れるちーくんが可愛くてツラいですー!!\(^o^)/
ホンマにちーくんがちーくんで可愛い……
そう!これが書きたい……しかし書けないあぁ紫千可愛い←
アイドルパロで書いてくれてありがとうううー!!!
すんごく嬉しかったですううー!!!!
さすがでそのまんま!ああ満足!また言って下さいー!
いくらでも書いてもらいたいのでっ<●><●>クワッ
こちらこそ紫千に関してまた言ってね!
本当に紫千か?!大丈夫な感じなんで
おべんきょ致します……!!煤ゥ
では!うるさいコメント失礼しましたー!\(^o^)/
うおおお書かせていただきましたぁああああああああ(ノ><)ノシ
なんか、すっごいうだうだしてたけど楽しかったです!
久々の紫千で千早がぴーぴー言ってるの相変わらずでございました(笑)
ゐ子ちゃんが二人でかけるならもうスイ●ラじゃね?と言ってくれたので妄想がパーンと\(^o^)/
絶対ナチュラルにあーんとかしてやがったよこいつらこのナチュラルホモが!←
でもあんまりむっくんのベクトル向けられてないかなぁと心配になっちゃいましたが…
いやいやいやもうアイドルパロ本家のゐ子ちゃんの小説がおもしろくて楽しくて!
今回のは本家ありきの番外編なので!
ほんとに続きを楽しみにしてます!
また番外編も書かせていただけたらなぁと思ってます!!!
ありがとうでしたー!!( ´ ▽ ` )ノ