「今日のはいい試合だったなー。青峰の奴、これ以上強くなってどーすんだ?」
「ふふ…味方だから頼もしい、ね」
「あー、まぁな。でも手合わせの時とか容赦ねぇんだよアイツ…」
定期的にある剣道の試合の帰り、僕はいつものように大我の勇姿を見に同行していた。
…本当は朝一番にでも言わなければならなかった、大切な話を胸に抱えたまま。
「お前も試合出てみりゃいいじゃねーか。筋いいんだからよ。絶対いいとこまで行けるって!」
「そ、そう…か、な…」
「青峰も言ってたぜ?もったいねーってさ」
「……」
大我はいつもそう言ってくれるけれど、僕達昔馴染みの間にはとてつもない壁があったんだ。
ねえ大我、君はこれっぽっちも気にしていないかもしれない。
でもね、僕は君のような家柄もない小さな農家の出だ。
…加えて唯一の肉親である姉さんを亡くしてからというもの、優しくしてくれる大我に…僕はずっと頼りきりで。
「あ、なぁ見ろよ葉佑。すげえ夕陽が綺麗だ」
「……本当だ…」
「明日もきっといい天気だな」
「そう、だね…」
隣で笑う大我はいつも、僕の光だ。
一人では何もできない僕の、唯一の道標。
ねえ大我、僕が初めて一人で決めたこれからのこと……知った君は何て言って僕を怒ってくれるんだろう。
「…、……」
…ねえ、大我。
僕は…僕はね、……明日、遊廓に入るんだ。
「っ……」
君が紹介してくれた…黒子くんが楼主の、黒菊屋に行くんだ。
……ねえ大我、君はやっぱり怒るのかな。
でも僕は…今の僕はもう、君がいないと生きていけない。
そうやって君を想う気持ちはいつか、どこまでも自由な君の負担になる日が来るんじゃないか。
…僕はそれが、一番怖いんだ。
誰より大切な君に依存し続ける僕は、いつか僕自身でさえ許せなくなる。
……その前に、僕は君から離れなければ。
君を…僕から解放しなければ……
「葉佑?どうしたんだ?疲れたか?」
「あ…ううん、大丈夫…だよ?」
こうやって隣を歩くことも、他愛のない話をすることも、…もうない。
本当は今日でお仕舞いなんだって、言えないまま。
いつの間にか握られた温かくて愛しい手は、そんな僕の想いに拍車をかけるように…切なく、強さを増す。
…僕達にはもういつもの明日が来ない。
君は、明朝届くはずの手紙を見て初めて僕らの別れを知る。
ねえ大我、僕はちゃんと…君を大切にできていたかな。
幾度も共に巡った季節を、もう過ごせないのは何よりつらいけれど…
大人になって君には君の生きる世界があって、君が全てだった僕だけが進むことさえできずにただ取り残されていく。
そうなる前に…今まで過ごした夢のような時間を、僕は大事に閉じ込めてこれから生きていく糧にするよ。
「…葉佑、ほんとに大丈夫か?」
「うん。平気だ、よ…?」
「なんか…調子悪いなら言えよ?」
「…うん、本当、に…」
本当に…好きだよ、大我。
僕の誰より、何より大切な人。
これ以上増えることのない想い出も、今のままで溢れる程に幸せだと思えるから。
大丈夫……僕は君なしで、生きていかなくちゃ。
「じゃ、また明日な!」
「……さよなら、…大我」
…ねえ大我。
僕は、……僕はね、大我…
「…葉佑、……葉佑」
「っ…?たい、が…?」
「わり、起こしちまったな」
「あ、ううん…大丈夫。寝てるより、大我が側にいることを実感できる方が…」
「お前なあ…、もう時間だってのに煽るようなこと言うんじゃねーよ」
「え、あ…え?」
布団の中で横になったまま口づけを交わし、差し込む光に目を細めた。
「…朝……」
「ああ、でもまた明日も来るからよ」
「……うん」
…ねえ大我、どうしてだろう。
僕はあの頃よりも少なからず、今が幸せだと感じてしまうんだ。
君を想う気持ちが、何より今の僕を強くしてくれる。
地に足をつけて、生きていると誇れるよ。
ねえ大我、……僕は幸せだ。
また今日も、明日も明後日も……君を想って生きていける。
沈む夕陽に 赤く染まる 帰り道で
“明日も晴れるね”と 笑う あなたの瞳
同じ空を 見上げるのは これが最後なんて 言えないまま
ほほえみ返して 握りしめた
その手のひらの温もりは 痛いくらい愛しくて 温かくて
また明日…あなたを
抱きしめる約束さえも 出来ないなら
今はただ限りない愛で あなたの事を包みたい
さよならも言えずに 私を呼ぶ声にさえ 答えられないけど
どんなに 遠く離れても 愛し続けてるから
眠る横顔 見つめながら 胸が痛む
あなたに 本当の愛 伝えられてたのかな?
同じ春を 同じ冬を ふたりで1つずつ越えてきたけど
想い出は もう増やせないの
そばで寄り添う 今さえも 奇跡のような幸せで 儚すぎて
もう2度と…この手で
抱きしめてあげる事さえ 出来ないなら
あなたを苦しめる すべて消す事が出来たなら
すねて泣いた顔も はしゃいでる その笑顔も
全部 かけがえのない ひとつとして失くせない 愛している
また明日…あなたを
抱きしめる約束さえも 出来ないなら
今はただ限りない愛で あなたの事を包みたい
さよならも言えずに 私を呼ぶ声にさえ 答えられないけど
どんなに 遠く離れても 愛し続けてるから
また明日も あなたを
終
**********
大変申し訳ございませんでした…!(土下座)
この遊廓パロを書き始めた当初から、葉佑くんのいきさつはこんな感じなんじゃないかと妄想に妄想を重ねておりました。
こうやって書く機会を与えて頂いて本当に感謝感謝です…!
そして勝手に設定いじくり倒してすみません!
姉さんを勝手に殺すなよ!
でも火神んに依存する状況を作るにはこうしたかったんであってごにょごにょすみませんでした←
葉佑くんは芯がしっかりしているので、近くにいることによってついとは火神に頼って依存してしまう自分自身が嫌だったんだと思います。
だからこの行動、ということで…
自分のためにも、何より火神のためにも自立しなければと思ったのだと。
すんません私の中ではこんなイメージで、愚直でいじらしくて真面目で、何より火神のことを想ってる。
それが葉佑くんだと思って書きました。
後の歌詞は「ま/た/明/日/…/J/U/J/U」でした。
大好きな歌なんですが、この遊廓入り前日のイメージにあまりにぴったりだったので。
本当は過去編のまま終わるつもりだったんですが、本編的には今の葉佑くんが重要なので少し強くなった葉佑くんを書かせていただきました。
どっちにしろ火神のため、ですけど←
何言っても言い訳になるのでそろそろやめます(笑)
大変お粗末さまでした!(土下座二回目)
もうありがとう…ありがとう!!
今さらだけれど本当に茜ちゃんになら
任せていいと心から思いましたああ!!orz感服←
ああもう葉佑のバカヤロオオけど絶対おまえは
そうするだろうなあああ!!!ああバカ!(;つД`)←
凄い火葉で、すごくオラ好みで頭がパーンしましたああー!!ヾ(@゜▽゜@)ノ
あと曲!すげぇそのまんまだあ!マイリス決定!
なるほどこれを聞きながら読んだら
涙腺崩壊する寸法ですね!理解!!←
あぁもう火葉熱駄目だ…
今の頭のなかはそれからの火神の反応とか
入ってばかりの火葉とかもう妄想が
留まるところを知りませんンン!!!orzorzorzオマ
何度いっても足りません…ありがとう!!ありがとう!!・゜・(つД`)・゜・
収集つかないのでここで切ります…
ホンマにありがとううう!!!(わかったから)
うへええええええすんませんんん!
これめっちゃ書きたかったんだ!
もうずっと妄想がとまんなくて…!
葉佑くんならこういういきさつなんじゃないかってもう…好きなんだ!←
結局行動の全てが「大我のため」なんじゃないかなって…
もうそんな葉佑くんが愛しくって…!
言葉少なだけど、頭の中では考えて考えて、それ考え抜いた結果ここに行き着いたんじゃないかなぁ。
たぶん最終的に声かけた悪魔はテツヤ様だと思うんだけど(笑)
そう!この後から現在まですっぽ抜けた間に何があったっていう\(^o^)/
とりあえず絶望に打ちひしがれる火神んは見ものだと思うんだ(自重)
曲は本当にオススメです!
もう夕暮れを火葉が歩いてる状況しか浮かばないもの!
静かな情景に思惑ばかりが巡る葉佑くんと何も知らないまま無邪気な火神ん。
たまらんです←
いやぁもう執筆許可いただいたばかりかこんな嬉しいコメントありがとうございます!!!
めちゃくちゃ自己満しちゃいました!(>_<)
少しでもゐ子ちゃんの考える火葉に近づけたなら幸いですー!