あいろこいろ

「千早、くん…大我がさっき……」


火神の見送りを終えた葉佑が見世の座敷に戻った。
…が、張りつめた空気に思わず顔を強張らせる。

「え………？」

他の娼年達の視線は少し困惑したように、千早と格子の外にいる男を交互に見据えている。
そしておそらく当事者であろう千早本人は、驚きというより半ば怯えたような目をしていた。


「チハヤ…ようやく見つけたよ…」

「……室にい、なんで…」


その男はまさに眉目秀麗という言葉がふさわしい、艶やかな黒髪の青年だった。


「知り合いっスかね？」

「さー…でもなんか、空気微妙じゃね…？」

「……」


…居場所を知られたくなかったのか。
少なくとも弥雅にはそう感じた。
それとも、余程会いたくなかったのか。
いつも何かしら明るく振る舞う千早が、ただただ黙って凍りつくなど。

『いねーよ。いても逢うことなんてねーし』

以前そのようなことを言っていたのは……



「あれ、氷室さん。どうもお久しぶりです」

「やあ黒子君。まさかキミの廓にチハヤがいるなんて…意外だったよ」

「え……黒子、くん…あの人と知り合いな、の…？」

「…黒子。いい加減俺達にも説明してもらおうか」


葉佑は不思議そうに首を傾げ、弥雅は高圧的に詰め寄った。
対して黒子はただ淡々と、普段と何ら変わらない口調で語る。


「彼は氷室辰也さん。簡単に言えば、火神君と同じく由緒ある武士の家系のご嫡男です」

「大我、と…？」

「そして緋賀君の幼馴染みでもあります」

「え…えええ！？」

「そ、そうなんスか！？」


ものすごくわかりやすい説明のもと、高尾と黄瀬はただ単純に驚いている。
だがそれだけでは千早の現在の態度に説明がつかない。


「ああ、せっかくですから座敷で話してはどうですか？上の部屋が空いてますよ」

「…！テツ！」

「ああ…悪いな」


千早の意見を聞く気など最初からないらしい。
黒子はさっさと入り口に回り、正面から氷室を迎え入れた。
すると氷室は真っ直ぐに格子の内側にあたる座敷へと足を早め…


「っ！」

「チハヤ…！」


千早を腕の中に閉じこめた。


「室、にい…」

「どれだけ……どれだけ探したと思ってる…！」

「………ごめ、ん…」

「心配したんだぞ…！オレだけじゃない。アツシだって…」

「…！？敦にはっ！」

「！」


思わずと言った様子で声を上げる千早。
その姿には少なくとも娼年達全員が驚いていた。


「…敦には、言わないで…！」

「……チハヤ」

「お願い…っ、だから……！室にいっ…！」


氷室は返事をしなかった。
だがすがるように乞う千早の肩を優しく抱いた。

…まるで世界が違う。
娼年達は漠然とそう感じてしまうのだ。
深く深く千早に根付いた絆を模した何かが、そこにはある気がした。




















続










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眠い←
…ので、こんな中途半端なところで切ることにします。


彼を予想した方、大変申し訳ありませんでした（笑）
最初から室ちんを出す気でした。

…しかしなんでこのパロこんなに日に日にシリアスになってくんだろう…
とりあえずさわりだけでも書けたからよしとせにゃ…かな…


書きたかったのは
・「見つけた」のは室ちん
・千早は室ちんの前から姿をくらまして黒菊屋にいる？
・探していたのは室ちんだけじゃないらしい
・むっくんにはここにいることを教えてほしくない
・見たこともないような顔ですがって頼む千早

こんな感じ。
書けてるかどうかとか出来とかは別で。

次も説明的話になりそう。
ほんま俺得なんで華麗にスルーしてやってください。

眠い！



お粗末様でした（土下座）