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ビニール傘でも、

泣き顔なら隠せる気がした。

この前の「雨」バトン、5つ中4つに傘が出てきていた件。
雨と傘は牛乳と乳酸菌ということですねわかります。


傘に隠れて



「傘」で小説を書く方向けお題。
といいつつ詩でも絵でも漫画でも、続く言葉を考えるだけでも。
タイトルにしても作品内に文章を使っても可。お好きなように。



****

・オレンジ色のチェックの傘

雨が降ってきた。
これは雨宿り客が増えるな、と私はレジに立ちながらぼんやり考えた。

今店内に居るのは、私と雨が降る前に来ていた女子高生の二人。
正確には休憩で奥に引っ込んでいる彼女も含めて三人だけど。

律儀に傘を傘立てに入れていた女子高生は、さっきからお菓子コーナーと飲み物コーナーを行ったり来たりしている。
まさか、こんな人の少ないコンビニで万引きでもする気じゃないだろうな、と彼女を注視していると、外を気にしていることがわかった。私にガン見されても気づかないほどに。

誰かと待ち合わせでもしてるんだろうかと私も入口を見ると、鞄を上に掲げながら男子高生が走ってきた。
ピンコン。自動ドアがなる。

「いらっしゃいませー」

彼は入口近くにあるビニール傘コーナーをしばらく見つめ、一本取った。
そのままレジに向かい、雨に濡れた鞄から財布を取り出す。
と、さっきまでうろうろしていた女子高生が、彼の後ろに並んだ。

「315円になります」
「…315円ちょうど頂きます。レシートは」
「あ、いいっす」

私の言葉を途中で制して、彼は後ろを振り向く。
「うおっ!」
と同時に仰け反った。

「ぐ、偶然だね!」

そう話しかける女子高生。

「…びっくりした。吉川も雨宿り?」
「え…あ、うん!」

最初は驚いたものの、直ぐに平静を取り戻した彼は、どうやらこの女子高生(もとい吉川さん)と知り合いらしい。
一瞬考えたあと、

「駅まで送ろうか?」

と申し出た。

「ぅえ!?」
「や…嫌なら良いんだけど…ほら、雨止みそうにないしさ」

傘、一つしかないけど。
彼が笑いながら言うと、

「え、い、良いの?ありがとう!」

頬を染めてはにかむように吉川さんも笑った。

結局、吉川さんは何も買わず二人仲良く帰っていった。

「休憩終わりました〜…どしたの?」
「やっべえ、甘酸っぱいものを見てしまった」

置いていかれた、オレンジ色のチェックの傘。
ちゃんと保管しといてあげようと思った。



****

・頼り無さげな傘

目の前にピョコピョコ揺れる黄色い傘。
全然雨が防げていないが、当の本人は全く気にせずに、長靴で水溜まりに飛び込んでいる。

「だからカッパにしな、って言ったのに」

ため息混じりに呟くと、五歳下の幼なじみはむっとした顔で振り向いた。

「もうおおきいからカサでもだいじょうぶだもん」
「こんなに濡れて、傘意味ないじゃん」
「いいの!だいじょうぶなの!」

そんなこと言われても、お前が風邪引いたら俺が母さんに怒られるんだけどな。

「何で傘がいいんだよ?」

傘をくるくる回してた幼なじみはピタリと動きを止め、唇を尖らせてこう言った。

「だって、おにいちゃんといっしょがいいんだもん」

あれ?なんかドキッとしたぞ?


****

・傘なんて存在自体を忘れていた

「俺晴れ男なんだよ」
「へ〜」
「だから今日も大丈夫だと思って、傘持ってこなかったんだよね」
「ふ〜ん」
「…なかなか止まないよな〜」
「…素直に言いなよ」
「傘に入れてください!」
「だが断る」



****

・赤い傘の女

なんか急に『リング0』が観たくなってさ、レンタルビデオ屋に言ったんだよ。
タイトルをばーっと辿ってたら、見慣れないタイトルがあってさ。『赤い傘の女』っていう。
まぁ、借りはしなかったんだけど。
そんで帰り道、うちのマンションの手前で、植え込みの前で何か探してるっぽい赤い傘の女がいるのに気づいて。
一気にあのタイトル思い出して、目を合わせずに早足で横通り抜けようとしたら「あ、ちょっと」とか声かけられるもんだから、全速力で3階までかけあがって、自分の家に閉じこもったわけよ。



「それが鍵を無くした彼女に対する言い訳ですか」
「いや、ほんとごめんなさい」
「もういい。帰る。鍵探さなくちゃいけないし」
「え!ちょっと待って帰らないで!」

私の腕を掴んでくる彼を一睨みすると、彼は眉をハの字にしてへらっと笑った。

「『リング0』明日返さないといけないんだけど、怖いから一緒に見てくんない?」
「…っこのバカ!」

****

・傘に隠れて

「夜目、遠目、傘の下っつってね」

傘をさしながら並んで歩いていると、彼が急にそんなことを言い出した。
傘を傾けて彼の方を覗き見ると、目が合って慌てて傘で顔を隠す。

「美人に見える条件らしいんだけど」

それに構わず彼は話を続ける。

「…俺はやっぱり、傘の下より、」

そう言って言葉を切ると、急に右手を引き上げられた。
私と彼の間に遮るものは何もない。

「そのままの方が可愛いと思うな」

頬がじわじわと熱くなったけど、傘で隠すこともできない。
せめて彼以外には見られないことを祈った。




ありがとうございました。おかげで雨の日も晴れやかに過ごせるような気がします。
ご意見ご感想などありましたらどうぞ。
→コンビニでバイトしたことないので、仕組みがわかりません。ビニ傘の値段もわかりません。それでも最初の話が書きたかった。
楽しかったです!



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