「…まるで凛々しい少年のようでしたね」
「まぁ!サリオキスさままたおっしゃって…」
「本当の事でしょう?」
クスクスと砂漠の鷹は笑う。若き美しき指導者サリオキス、そしてアビドス王の娘アウラ・メサ。二人はアビドス国の城の庭で話をしていた
「わたしが男勝りなのは昔からですもの。剣に弓、楽などよりもそちらの方が楽しいですわ」
「この時代には珍しい女性ですよ。戦う事に興味を示されるのは…」
「いけない事でしょうか…?」
アウラはそっとサリオを見上げた。女は戦いに赴く男の帰りを待つのが役目、自らが戦場に実を投じたりなど普通ではありえない
しかしアウラは自らを指揮官にしてくれと先日父親に頼んでいたのだ
「いえ悪い事ではありませんが…あなたに戦いは似合いませんよ」
「黙って帰りを待っていろ、と?」
「戦いの勝利を神に願い誰かを待つというのもあなたの役目だと私は思いますよ」
「………」
「不満ですか?」
サリオは苦笑してアウラを見る。むっとした表情でサリオを見つめていた
「わたしの方がそこらの男などよりも役に立ちますわ」
「ダメですよ。あなたは姫なのですから」
「女だから。…わたしが男になればサリオキスさまと共に歩めたのに…!」
アウラはまるで嘆くかのように顔を伏せる
「しかしあなたが女でなければわたしはこうする事は出来ない」
「っ!?」
サリオは俯く顔を上げさせて抱き寄せる。そして顎を掴みそっと接吻をした
突然の事にアウラは目を見開くが拒絶する事もなく受け入れた
「サリ、オ、キスさま…?」
「無礼をお許し下さい、姫。しかしこれはわたしからあなたへの贈り物」
「それ、は鷹として?それとも王子として?」
「それはあなたの御想像にお任せしますよ。…やはりじゃじゃ馬と呼ばれても中身は乙女なのですね?」
憧れの美しい指導者の接吻に酔っているまもなくじゃじゃ馬発言
アウラは感動の涙もぴたりと止んだ
「姫?」
「…何でもありませんわ。サリオキスさま…、もう一度もう一度して下さい…あなたの口付けを…」
「えぇ、アウラ姫」
その後砂漠に現れたアビドス国の軍勢を率いて来たのは王ではなくアウラ姫だった
「どうした?頭など抱えてらしくない」
「イザイ…女性とは難しいな」
「は?」
腹心の部下イザイにこんな事を漏らしていたとかいないとか