瞬間、心に雷が落ちてしまった感覚
「侵入者です!お逃げ下さい!!」
侍女達と共に湯浴みをしていたジョミーの元に伝令兵が入ってきた。驚く女達とは違いジョミーは落ち着いていた
「此処にまで来ないよ。彼らの目的はこの城の宝石か何かだから」
「し、しかしっ!」
「もし来たら怖いです!」
そう言って怯える侍女達をほうっておけるはずも無く壁に装飾として置かれている剣を取った。これでもジョミーには剣の腕には自信が有った。キースにはよく指導されていたからだ
何処から来るか分からない侵入者に構えると意外な場所から飛び出してきた
ザバアアァと音がした方向を見るとなんと侵入者はお湯の中から現れたのだ。悲鳴をあげて逃げる侍女達をよそにジョミーはシルクのカーテンを引きちぎり体に巻きつけた
濡れた髪の毛をかき上げた男を見てジョミーの心臓は止まりそうだった
「君は―――」
「あなたは―――」
電撃的な出会いだった。心に何か見えない電気が通い合った感覚だ
ジョミーは我に返ると男に向かって剣を突き立てる。しかしいとも簡単にねじ上げられてしまった
「君が【黄金の予言師】かい?」
「そうだけどそれが何か!」
「見つけた・・・・」
男はそう言うとジョミーを肩に担ぎ上げて湯殿の入り口を出ると兵士達をなぎ倒し庭の塀を飛び越えて予め用意してあった馬に飛び乗り街をかけていった
「無礼者!離しなさい!!」
「無理だね。それにしても・・・予言者様は随分と煽情的な格好をなさるんですね?」
「え!?」
ジョミーは改めて自分の姿を見る。湯殿の最中で着るものが手元に無くてカーテンを巻きつけていただけだ。白いシルクで自分の体は丸見えだ。もちろん胸から下まで全て今この男の眼前にさらけ出していた
「見ないで!!」
「もう遅いけどね」
くっくっとのどの奥で笑っている。恨めしそうに男を見上げるととても美しかった。月を映したような銀髪にルビーのような紅い瞳。彼が・・・侵入者?悪い人なのだろうか。ジョミーの中には疑問が残る
「あの、あなたは?」
「侵入者だよ」
「何の為に?」
「あなたを奪いに」
男は秀麗な顔に悪戯な笑みを浮かべた
しばらく馬を走らせると街から離れていき砂漠に出てしまった。夜の砂漠はとても寒くシルク一枚のジョミーは体を震わせた。それに気づくと男は自分の着ていたマントをジョミーに着せた
「あ、」
「そんな姿では風邪を引くだろう?それに大勢の前にその姿をさらすのはどうかと思うからね」
「お、大勢?」
「ああ。ほら彼らだ」
男の指差す先にいくつかの明かりが見えた。小さなテントがいくつも張られて馬に乗ってきた男に深く頭を下げている
「な、何なの?」
「これから分かるさ」
ブルーは馬から下りるとジョミーを抱き上げて台の上に立たせる。ジョミーの右手をブルーの手が握りしめる
「彼女が私の言った救世主だ」
凛とした声から発せられたのは驚くべきものだった。救世主!?この僕が!?
ジョミーの驚きとは比例して彼らは大歓声を送ってくるのだ
「ま、待って!訳わかんない!」
静止しようとするジョミーをよそにブルーは勝手に続けた
「彼女の予言で我々の国は再建を果たす!そして今度こそ世界を我らの手に!」
力強い声に彼らもまた大きく手を振り上げて大歓声を上げる。全く状況のつかめないジョミーはただ困惑するばかりで終わってしまった。そして男の口から告げられたのはジョミーにとっては辛い事実だった