スポンサーサイト



この広告は30日以上更新がないブログに表示されます。

静観塾・10

【静観塾/その10】

●丹田蓄気の練習へ


(一)

 「さて、あなた方が此の愚庵を訪れてきた目的であった〔丹田を感じたい〕という願いは実現出来てきましたか?」
 私は夏南と娃に訊ねてみた。
 「わたし…」
と、口を開いたのは娃だった。
 「〔体感ワープ〕とか〔四つのわた菓子〕など、何かの練習をしている時は、何かしら温かいような実感は出るんですが、何もしないで、ただ意守丹田をしようと思っても、まだ上手く感じられないんです。」
 それに夏南が続いた。
 「私も、練習している時は、丹田の温かさを感じれるようになり、その後しばらくは丹田感覚を保っておけても、娃と一緒で、意守丹田だけをしようとしても、何か感覚が弱いというか、何か違うンですよね。」
 気功は感覚の練習で、それはつまり脳の訓練なのだ。
 しっかりとしたフィードバックが出来る脳が作られるまでは、即ち、どういう脳の状態になれば意守丹田が出来るのかということを脳自身が覚えるまでは、彼女たちのように、気功的な訓練を何もしない状態で意守丹田すること、つまり、丹田を自らの意思で温かくすることは出来ないのだ。
 私は、〔フリーフォール〕の練習から先に奨めることにした。


(二)

 「では、今日は、丹田だけを使った練習をしてみましょうか。」
 私が言うと、二人は顔を見合わせてニコッと笑った。
 「まず、息を吐いて掌を感じて下さい。」
 「息は何処から吸うんですか?」
と、すかさず娃が訊いた。
 「フリーフォールのように尾骨から吸い上げるなんてことをする必要は無く、〔体感ワープ〕みたいな感じで、息を吐き終わった後、掌を感じてもらえばいいんですよ。
 吸う時も無理に胸の中を感じなくても、ずーっと掌に気持ちを残しておいて構わないんです。」
 「吐く時だけ掌を体感するんですね?」
と、夏南が言ったので、私は頷いた。
 二人は、それをしばらくしていたが、突然、 
「何か、掌がチリチリしてきました。」
と、娃が大きく声を上げ、夏南を見た。
 夏南も同意の顔で首を盾に振った。
 「では、そぉーっと皮膚一枚だけで掌を合わせてみて下さい。」
と、私が言うと、二人は合掌した。
 そして、二人で
「温かいね」
と言い合っていた。
 私は続けた。
 「はい、そのどちらでも構いませんので、片手を下腹、つまり一階に当て、丹田をたいかんしましょう。」
 「どうですか?」
 しばらく間をおいて私は訊いた。
 二人は黙したまま私を見て「感じてます」という顔をした。
 「では、次に行きますね。
 〔エアーエレベーター〕で、二つ目の中心軸での気の上げ下げをしてみましょう。」
 「気のボールは用いないんですか?」
と、夏南が言った。
 「はい、片手を一階に当てたまま、呼吸だけで誘導するんですが、今度も、特に、吐き降ろしていく時の感覚を丁寧に観察して下さい。
 勿論、吐き降ろした後の丹田感覚もよく味わって下さいね。
と、私は二人の声が入って来ないうちに説明を加えた。
 

(三)

 二人はしばらく中心軸での〔エアーエレベーター〕を練習していたが、夏南が核心に迫る内容の言葉を発した。
 「先生、吸い上げる気は、四階まで上げなくても、というか、その感覚はなくても、三階とか二階から降ろせますよね。」
 「はい、そこなんですよ。
 気沈丹田と言うけれど、胸の上から沈めていくというよりは、ちょっと二階に上がって降りてくるという具合になってくるんですね。
 娃さんはどう?」
 私が言うと、
「上げるというより、ただ吸ったものを丹田に押し込んでいくみたいな感じになってきています。」
と答えた。
 二人の訓練は、かなり進歩していた。
 「では、今度は手を離して、〔体感ワープ〕のように、息を吐いた時だけ丹田を感じるようにしてみて下さい。」
 「吸う時は感じなくてもいいんですね??」
という娃の問いに、
「先ほどと同じで、吸った時に無理に胸の中を感じる必要はありませんからね。」
と答えた。
 「息を吐いた時だけ丹田を体感していく練習ですね。」 
 「はい。それが〔丹田蓄気〕になるんです。」
と、夏南の問いに私は応えたのである。

静観塾・10

【静観塾/その10】




(一)

 「さて、あなた方が此の愚庵を訪れてきた目的であった〔丹田を感じたい〕という願いは実現出来てきましたか?」
 私は夏南と娃に訊ねてみた。
 「わたし…」
と、口を開いたのは娃だった。
 「〔体感ワープ〕とか〔四つのわた菓子〕など、何かの練習をしている時は、何かしら温かいような実感は出るんですが、何もしないで、ただ意守丹田をしようと思っても、まだ上手く感じられないんです。」
 それに夏南が続いた。
 「私も、練習している時は、丹田の温かさを感じれるようになり、その後しばらくは丹田感覚を保っておけても、娃と一緒で、意守丹田だけをしようとしても、何か感覚が弱いというか、何か違うンですよね。」
 気功は感覚の練習で、それはつまり脳の訓練なのだ。
 しっかりとしたフィードバックが出来る脳が作られるまでは、即ち、どういう脳の状態になれば意守丹田が出来るのかということを脳自身が覚えるまでは、彼女たちのように、気功的な訓練を何もしない状態で意守丹田すること、つまり、丹田を自らの意思で温かくすることは出来ないのだ。
 私は、〔フリーフォール〕の練習から先に奨めることにした。


(二)

 「では、今日は、丹田だけを使った練習をしてみましょうか。」
 私が言うと、二人は顔を見合わせてニコッと笑った。
 「まず、息を吐いて掌を感じて下さい。」
 「息は何処から吸うんですか?」
と、すかさず娃が訊いた。
 「フリーフォールのように尾骨から吸い上げるなんてことをする必要は無く、〔体感ワープ〕みたいな感じで、息を吐き終わった後、掌を感じてもらえばいいんですよ。
 吸う時も無理に胸の中を感じなくても、ずーっと掌に気持ちを残しておいて構わないんです。」
 「吐く時だけ掌を体感するんですね?」
と、夏南が言ったので、私は頷いた。
 二人は、それをしばらくしていたが、突然、 
「何か、掌がチリチリしてきました。」
と、娃が大きく声を上げ、夏南を見た。
 夏南も同意の顔で首を盾に振った。
 「では、そぉーっと皮膚一枚だけで掌を合わせてみて下さい。」
と、私が言うと、二人は合掌した。
 そして、二人で
「温かいね」
と言い合っていた。
 私は続けた。
 「はい、そのどちらでも構いませんので、片手を下腹、つまり一階に当て、丹田をたいかんしましょう。」
 「どうですか?」
 しばらく間をおいて私は訊いた。
 二人は黙したまま私を見て「感じてます」という顔をした。
 「では、次に行きますね。
 〔エアーエレベーター〕で、二つ目の中心軸での気の上げ下げをしてみましょう。」
 「気のボールは用いないんですか?」
と、夏南が言った。
 「はい、片手を一階に当てたまま、呼吸だけで誘導するんですが、今度も、特に、吐き降ろしていく時の感覚を丁寧に観察して下さい。
 勿論、吐き降ろした後の丹田感覚もよく味わって下さいね。
と、私は二人の声が入って来ないうちに説明を加えた。
 

(三)

 二人はしばらく中心軸での〔エアーエレベーター〕を練習していたが、夏南が核心に迫る内容の言葉を発した。
 「先生、吸い上げる気は、四階まで上げなくても、というか、その感覚はなくても、三階とか二階から降ろせますよね。」
 「はい、そこなんですよ。
 気沈丹田と言うけれど、胸の上から沈めていくというよりは、ちょっと二階に上がって降りてくるという具合になってくるんですね。
 娃さんはどう?」
 私が言うと、
「上げるというより、ただ吸ったものを丹田に押し込んでいくみたいな感じになってきています。」
と答えた。
 二人の訓練は、かなり進歩していた。
 「では、今度は手を離して、〔体感ワープ〕のように、息を吐いた時だけ丹田を感じるようにしてみて下さい。」
 「吸う時は感じなくてもいいんですね??」
という娃の問いに、
「先ほどと同じで、吸った時に無理に胸の中を感じる必要はありませんからね。」
と答えた。
 「息を吐いた時だけ丹田を体感していく練習ですね。」 
 「はい。それが〔丹田蓄気〕になるんです。」
と、夏南の問いに私は応えたのである。
前の記事へ 次の記事へ