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静観塾・10

【静観塾/その10】

●丹田蓄気の練習へ


(一)

 「さて、あなた方が此の愚庵を訪れてきた目的であった〔丹田を感じたい〕という願いは実現出来てきましたか?」
 私は夏南と娃に訊ねてみた。
 「わたし…」
と、口を開いたのは娃だった。
 「〔体感ワープ〕とか〔四つのわた菓子〕など、何かの練習をしている時は、何かしら温かいような実感は出るんですが、何もしないで、ただ意守丹田をしようと思っても、まだ上手く感じられないんです。」
 それに夏南が続いた。
 「私も、練習している時は、丹田の温かさを感じれるようになり、その後しばらくは丹田感覚を保っておけても、娃と一緒で、意守丹田だけをしようとしても、何か感覚が弱いというか、何か違うンですよね。」
 気功は感覚の練習で、それはつまり脳の訓練なのだ。
 しっかりとしたフィードバックが出来る脳が作られるまでは、即ち、どういう脳の状態になれば意守丹田が出来るのかということを脳自身が覚えるまでは、彼女たちのように、気功的な訓練を何もしない状態で意守丹田すること、つまり、丹田を自らの意思で温かくすることは出来ないのだ。
 私は、〔フリーフォール〕の練習から先に奨めることにした。


(二)

 「では、今日は、丹田だけを使った練習をしてみましょうか。」
 私が言うと、二人は顔を見合わせてニコッと笑った。
 「まず、息を吐いて掌を感じて下さい。」
 「息は何処から吸うんですか?」
と、すかさず娃が訊いた。
 「フリーフォールのように尾骨から吸い上げるなんてことをする必要は無く、〔体感ワープ〕みたいな感じで、息を吐き終わった後、掌を感じてもらえばいいんですよ。
 吸う時も無理に胸の中を感じなくても、ずーっと掌に気持ちを残しておいて構わないんです。」
 「吐く時だけ掌を体感するんですね?」
と、夏南が言ったので、私は頷いた。
 二人は、それをしばらくしていたが、突然、 
「何か、掌がチリチリしてきました。」
と、娃が大きく声を上げ、夏南を見た。
 夏南も同意の顔で首を盾に振った。
 「では、そぉーっと皮膚一枚だけで掌を合わせてみて下さい。」
と、私が言うと、二人は合掌した。
 そして、二人で
「温かいね」
と言い合っていた。
 私は続けた。
 「はい、そのどちらでも構いませんので、片手を下腹、つまり一階に当て、丹田をたいかんしましょう。」
 「どうですか?」
 しばらく間をおいて私は訊いた。
 二人は黙したまま私を見て「感じてます」という顔をした。
 「では、次に行きますね。
 〔エアーエレベーター〕で、二つ目の中心軸での気の上げ下げをしてみましょう。」
 「気のボールは用いないんですか?」
と、夏南が言った。
 「はい、片手を一階に当てたまま、呼吸だけで誘導するんですが、今度も、特に、吐き降ろしていく時の感覚を丁寧に観察して下さい。
 勿論、吐き降ろした後の丹田感覚もよく味わって下さいね。
と、私は二人の声が入って来ないうちに説明を加えた。
 

(三)

 二人はしばらく中心軸での〔エアーエレベーター〕を練習していたが、夏南が核心に迫る内容の言葉を発した。
 「先生、吸い上げる気は、四階まで上げなくても、というか、その感覚はなくても、三階とか二階から降ろせますよね。」
 「はい、そこなんですよ。
 気沈丹田と言うけれど、胸の上から沈めていくというよりは、ちょっと二階に上がって降りてくるという具合になってくるんですね。
 娃さんはどう?」
 私が言うと、
「上げるというより、ただ吸ったものを丹田に押し込んでいくみたいな感じになってきています。」
と答えた。
 二人の訓練は、かなり進歩していた。
 「では、今度は手を離して、〔体感ワープ〕のように、息を吐いた時だけ丹田を感じるようにしてみて下さい。」
 「吸う時は感じなくてもいいんですね??」
という娃の問いに、
「先ほどと同じで、吸った時に無理に胸の中を感じる必要はありませんからね。」
と答えた。
 「息を吐いた時だけ丹田を体感していく練習ですね。」 
 「はい。それが〔丹田蓄気〕になるんです。」
と、夏南の問いに私は応えたのである。

静観塾・10

【静観塾/その10】




(一)

 「さて、あなた方が此の愚庵を訪れてきた目的であった〔丹田を感じたい〕という願いは実現出来てきましたか?」
 私は夏南と娃に訊ねてみた。
 「わたし…」
と、口を開いたのは娃だった。
 「〔体感ワープ〕とか〔四つのわた菓子〕など、何かの練習をしている時は、何かしら温かいような実感は出るんですが、何もしないで、ただ意守丹田をしようと思っても、まだ上手く感じられないんです。」
 それに夏南が続いた。
 「私も、練習している時は、丹田の温かさを感じれるようになり、その後しばらくは丹田感覚を保っておけても、娃と一緒で、意守丹田だけをしようとしても、何か感覚が弱いというか、何か違うンですよね。」
 気功は感覚の練習で、それはつまり脳の訓練なのだ。
 しっかりとしたフィードバックが出来る脳が作られるまでは、即ち、どういう脳の状態になれば意守丹田が出来るのかということを脳自身が覚えるまでは、彼女たちのように、気功的な訓練を何もしない状態で意守丹田すること、つまり、丹田を自らの意思で温かくすることは出来ないのだ。
 私は、〔フリーフォール〕の練習から先に奨めることにした。


(二)

 「では、今日は、丹田だけを使った練習をしてみましょうか。」
 私が言うと、二人は顔を見合わせてニコッと笑った。
 「まず、息を吐いて掌を感じて下さい。」
 「息は何処から吸うんですか?」
と、すかさず娃が訊いた。
 「フリーフォールのように尾骨から吸い上げるなんてことをする必要は無く、〔体感ワープ〕みたいな感じで、息を吐き終わった後、掌を感じてもらえばいいんですよ。
 吸う時も無理に胸の中を感じなくても、ずーっと掌に気持ちを残しておいて構わないんです。」
 「吐く時だけ掌を体感するんですね?」
と、夏南が言ったので、私は頷いた。
 二人は、それをしばらくしていたが、突然、 
「何か、掌がチリチリしてきました。」
と、娃が大きく声を上げ、夏南を見た。
 夏南も同意の顔で首を盾に振った。
 「では、そぉーっと皮膚一枚だけで掌を合わせてみて下さい。」
と、私が言うと、二人は合掌した。
 そして、二人で
「温かいね」
と言い合っていた。
 私は続けた。
 「はい、そのどちらでも構いませんので、片手を下腹、つまり一階に当て、丹田をたいかんしましょう。」
 「どうですか?」
 しばらく間をおいて私は訊いた。
 二人は黙したまま私を見て「感じてます」という顔をした。
 「では、次に行きますね。
 〔エアーエレベーター〕で、二つ目の中心軸での気の上げ下げをしてみましょう。」
 「気のボールは用いないんですか?」
と、夏南が言った。
 「はい、片手を一階に当てたまま、呼吸だけで誘導するんですが、今度も、特に、吐き降ろしていく時の感覚を丁寧に観察して下さい。
 勿論、吐き降ろした後の丹田感覚もよく味わって下さいね。
と、私は二人の声が入って来ないうちに説明を加えた。
 

(三)

 二人はしばらく中心軸での〔エアーエレベーター〕を練習していたが、夏南が核心に迫る内容の言葉を発した。
 「先生、吸い上げる気は、四階まで上げなくても、というか、その感覚はなくても、三階とか二階から降ろせますよね。」
 「はい、そこなんですよ。
 気沈丹田と言うけれど、胸の上から沈めていくというよりは、ちょっと二階に上がって降りてくるという具合になってくるんですね。
 娃さんはどう?」
 私が言うと、
「上げるというより、ただ吸ったものを丹田に押し込んでいくみたいな感じになってきています。」
と答えた。
 二人の訓練は、かなり進歩していた。
 「では、今度は手を離して、〔体感ワープ〕のように、息を吐いた時だけ丹田を感じるようにしてみて下さい。」
 「吸う時は感じなくてもいいんですね??」
という娃の問いに、
「先ほどと同じで、吸った時に無理に胸の中を感じる必要はありませんからね。」
と答えた。
 「息を吐いた時だけ丹田を体感していく練習ですね。」 
 「はい。それが〔丹田蓄気〕になるんです。」
と、夏南の問いに私は応えたのである。

静観塾・9

【静観塾/その9】

●〔四点フィードバック〕から〔フリーフォール〕まで


(一)

 「ちょっと待ってて下さいね。」
 愚庵の座敷に腰を降ろした二人の女性にそう言い残し、私は奥の裏庭に降りていった。
 そして、
「娃さん、お待たせしました。」
と、まな板と包丁、それに井戸水で冷やしていた小降りのスイカを持って現れたのである。
 「あっ、スイカだ!」
 娃が叫ぶ。
 「私、します。」
と、夏南が包丁を取り、スイカを切り分け出した。
 「やっぱり夏はスイカだねー。」
 そう言って、娃は夏南が切り分けた扇形のスイカの一つを取って口にした。
 夏南も手に取り、私もその果肉を噛み、甘い果汁を飲み込んだ。
 娃は夏南と私の顔を交互に見て嬉しそうだった。
 そして私は、半分に切られたスイカを冷蔵庫にしまい、〔静観塾〕を始めたのである。
 最初に口火を切ったのは夏南だった。
 「先生、私、先生に習ったように家で練習しているんですが、〔エアーエレベーター〕の前にする気のボール当てですが、あれを一つの練習法として、独立した名前を付けた方が良いんじゃないかと思ったんですが…。」
 「というと?」
 私は訊ねた。
 「気のボールを作って四箇所に当て、体の中と外との感覚で気のボールを体感し、それから呼吸に寄って上げ下げする〔エアーエレベーター〕に入るんですが、気のボールを当てて体感するという練習も、それなりに練習時間が掛かると思うんです。
 ですから、それだけでも充分に大切な練習ではないのかなって感じたんです。」
 「なるほど」
と、私は思った。
 「確かにそうですね。
 〔四点フィードバック〕や〔体感ワープ〕、そして〔エアーエレベーター〕という練習と〔気のボール当て〕は少し違った内容を持つ練習ですね。」
 私は頷きながら娃を見て言った。
 「娃さん、気のボール当ての感覚から、何か思い付く良い名称、ありませんかねー?」
 娃は気のボールを当てる格好をしながら考えていたが、顔を上げて夏南を見て言った。
 「ねぇ、何だか、やわらかーいスポンジみたいな、わた菓子みたいな感じだよね。」
 「そうねぇ、丸々、空気って感じじゃないわよね。
 何か細かい粒子のような、細かな目の中に温かい空気が染みこんでいるような…、そんな感じよね。」
と、夏南は言った。
 「その感じを表すような名前はないですか?」
と、私は再度娃を見た。
 「そのまま単純に〔四つのわた菓子〕ってのは?」
と、娃が首を傾けた。
 「いいんしゃない!」
と、夏南が応えた。
 「それじゃー、〔四つのわた菓子〕にしておきましょう。
 みんなそれぞれに練習法の愛称ですから、変わっていくこともありますからね。」
 こうして、気のボール当ては〔四つのわた菓子〕として、独立した練習法に格上げされたのであった。

(二)

 「それと……、」
 今度は娃が問題を提起するようだ。
 「いまの〔四つのわた菓子〕で思ったんだけど、〔四点フィードバック〕もそうだけど、その四箇所にも名前、付けませんか?」
 「上腹部、下腹部は良いんだけれど、胸板の上側とか下側と言うのが判りづらいかもね。」
と、夏南が言った。
 既に二人は、この技を伝える側に立ってものを考えている。
 頼もしい二人であった。
 私は考えながら言葉を発した。
 「そうですねー、一般的には経穴の名前を使ってますねー。
 ダンチューウとかチュウカンとかね。
 でも、私がそうだったんですが、経穴の名前を使うと、その一点というイメージになってしまうんですね。
 気のボールの当たるところは、そんな小さな一点ではなく、掌を当てたり、特に気のボールが半分くらい染みこんでいるような場合では、広い面なんですよね。
 そんなところから、私は経穴名を避けて、胸板とか下腹部みたいな幅のある表現を使ってきたんです。
 でも、娃さんの仰るように、胸を上下に分ける表現は判りづらいんですよね。」
 しばらく沈黙が続いた。
 「わたし、言い出しっぺだから…」
と、娃が口を開いた。
 「練習には継続性というか、関連があった方がいいんしゃないかと思うんですが、〔エアーエレベーター〕がありますから、そのまま、一階、二階、三階、四階でもいいかな?って思います。」
 すると、夏南が言った。
 「それなら、いっそののこと、1、2、3、4でもいいんしゃないかな?」
 どうなんだろうという思いにふけりながら二人は互いに見合っていた顔を私に向けた。
 私に結論を求めているのだ。
 私は言った。
 「娃さんの言ったように、何階、何階にしておいて、実際の練習の場面では、夏南さんの言われたように、番号で呼べばどうですか?」
 二人は、手を胸板に当てたり、上下に動かしたりしながら考えていたが、ほぼ同時に、
「それでいいです!」
と言った。


(三)

 「少しまとめておきましょうか。」
 私はそう言いながら、部屋の隅に置いていたホワイトボードを取り出した。
「これまで練習してきた内容を書いてみますね。」
 そう言って、私はホワイトボードに次のように記していった。

1、四点フィードバック⇒四階、三階、二階、一階

2、体感ワープ?⇒一階、四階、一階、四階
 体感ワープ?も同様に

3、四つのわた菓子⇒一階、二階、三階、四階(逆でも可)

4、エアーエレベーター:前側⇒一階→二階→三階→四階→三階→二階→一階(これをくり返す)
 中心軸、後ろ側も同様に

5、フリーフォール⇒後ろ側の一階→二階→三階→四階→中心軸の四階に入って→三階→二階→一階で、これをくり返す。
 やがて、中心軸で降ろす時間を、4秒3秒、2秒、1秒と短くして行く

 「こんな感じになりますかねー。」
と、私は二人に向き直って言った。
 「先生!」
 娃が手を挙げた。
 「写真、撮っていいですか?」
 そう言って、娃はバッグからスマホを取り出した。
 夏南も同じだった。
 最近はノートに書かずにスマホで写真に撮っておくようである。
 その後、少し休憩してから、私たちは、ホワイトボードに随って、〔丹田強化法〕に取り組んだのである。

静観塾・8

【静観塾/その8】

●フリーフォール

(一)

 全国各地で甚大な被害をもたらした豪雨の元凶である梅雨前線もようやく日本を離れていく様子だ。
 梅雨でこの被害だから、台風の被害が案じられるというものだ。
 私は、ゆでて冷やしたトウモロコシを用意して二人の女性を待った。
 「おはようございまーす!」
 元気な娃の声が裏の庭まで届いてきた。
 そして、今日の〔静観塾〕は始まったのである。


(二)

 「気のエレベーターは、三本とも、順調に動くようになりましたか?」
 私が訊くと、
「わたし、真ん中のルートが、上げる時は真っ直ぐに上がるんだけど、降りる時、曲がっちゃう感じがします。」
と、娃が答えた。
 「そうですかー。
 そんな場合は、上がったところから坐骨の間を視るようにして、そこに向かって真っ直ぐに降ろしていくようにすると、上手くいくように成ってきますよ。」
と、私は応えた。
 夏南が言った。
「私、後ろ側の感じが、前と違って、皮膚の外の感じが殆ど無く、体だけの感覚なんですが…。」
 「それは仕方ないんですね。
 前だと気のボールを押し当てていた掌の感覚もありますが、後ろでは無理ですからね。」
と、私は答えた。
 そして、次のように付け加えたのだ。
 「本当に皮膚がゆるんでくると、その温かさが外に広がりますから、やがて後ろの空気と中のゆるんだ感覚が一つになってきますよ。」


(三)

 「さて、今日は、三本のルートのうちの二本を使っての練習です。」
 「名称は?」
 娃が言った。
 「まだ決まっていないんですよ。」
 私が言うと、
「どんなことをするんでしょうか?」
と、夏南が訊いた。
 「尾骨から背中まで上げた感覚を旨の中に入れ、真っ直ぐに丹田に降ろしていく練習なんですよね。」
 「後ろから上げて、真ん中で降ろすってこと?」
と、娃が首を捻り、夏南を見上げるようにして言った。
 夏南は娃から私に目を移して言った。
 「督脉で上げていき任脉で降ろしてきて、気を回していく小周天というのがありましたよね。
 先生は〔緩感貫採練の練習の最後の練である練丹の練習として、小周天から胴体周天へと、楕円形の動きを小さくされていたように思うんですが、その胴体周天とは違うンですね?」
 夏南は私のブログをよく読んでいる。
 そう言えば、この二人は、ブログなどを読んで練習していたが、それでも丹田感覚がつかめないという理由でこの愚庵を訪れてきたのだ。
 「勿論、そこから練習しても構わないんですが、健康のための気功、養生気功としては、丹田力をなるべく早く強くした方が良いんじゃないかと思いましてね、そこで、小周天や胴体周天ではなく、真ん中で丹田に吐き降ろしていくようにしたんですよ。」
 私の言葉に、Iは難しそうな顔で口を結んでいた。
 「その、後ろから上げて真ん中で丹田に吐き降ろすという練習ですが、その動きで何か思い当たるような具体的なものはありませんかねぇ?」
 私の問いに、娃の顔がほころんだ。
 何か思い付いたようだった。
 「娃さん、何かありますか?」
 「いま、思い付いたんだけど、テーマパークなどにあるアトラクションで、上まで連れて行ってから、真っ直ぐに急降下するのがありますよね。
 フリーフォールって言ったかな?
 そんな感じですよね。」
 すると夏南が口を出した。
 「急降下はしないんじゃない?」
 そこで私はきちんと説明をすることにしたた。


(四)

 「この練習は、気を丹田に蓄積していき、丹田の力を強くしていく練習でね、普通、気を丹田に沈めていくという意味で〔気沈丹田〕と呼ばれているんですが、沈めるというより、蓄えるという感じなので、私は〔蓄気〕と呼ぶ方が良いんではないかと考えていて、〔丹田蓄気〕と呼ぶことにしているんです。
 「なるほどー、丹田蓄気ですか。」
 娃が言った。
 「その為の練習ですが、最初のうちは上げるのと降ろすのを同じスピードで練習するんですが、やがて、降ろしていく時の時間を少しずつ短くして行くんです。
 最初、5秒だったとしたら、徐々にですが、それを4秒、3秒、2秒、1秒と短くしていって、最後は、まさにストンと落とせるようにして行くんですね。
 その感じで言えば、フリーフォールですか? そんな感じだと思うんですよね。
 そして、やがては吸い上げるというところも無しにして、普通にしているところから、ふっと丹田に気を降ろすというか集めるというか、とにかく〔体感ワープ〕のように丹田の感覚がさっと作れるようになってほしいんですね。」
 真剣に聴いていた二人は、首を建てに小さく振りながら、自分に納得させているようであった。
 そして、実際に〔エアーエレべーター〕から始め、〔フリーフォール〕までの練習に取り組んだのである。

静観塾・7

【静観塾/その7】

●三本の〔エアーエレベーター〕


(一)

 「前回教えて頂いた〔体感ワープ〕ですが、またし、あれ、気にいって続けてます。」
と、娃が庵に坐るなり切り出した。
 「何か楽しくて、ずーっとやってました。
 そしたら、胸の中も丹田も、割りと直ぐに感覚が出るようになってきました。」
 娃は体内での感覚が感じられたことが余程嬉しかったのだろう。
 気の訓練にはそれぞれの段階があり、それぞれに新しい感覚の体験があるものだ。
 それが嬉しくて、楽しくて、気功を学び深めていけるのだろうと思う。
 私も、気のボールが作れた時や気が動くのを感じられた時の喜びなどを思い出していた。
 「先生!」
 今度は夏南だった。
 「体感が出来てきたら〔体感ワープ〕も、手を当てないでしてみると、自分の進度が判るような気がするんですが…。」
 すると、
「どういうこと?」
と、娃が夏南を見て言った。
 「〔四点フィードバック〕の場合と同じよ。
 手を離すことで、フィードバックで体感できているかどうかが判るんじゃない?」
 「そうかぁ。」
 娃は納得したようだった。
 「夏南さんの言われた方法、加えた方が良いですね。」
と、私は言い、
「では、〔体感ワープ?〕として、前回の練習の次に続けて実習するようにしましょうか。」
と、応えた。
 こんな風に、訓練の方法が提案され、内容的に豊かになっていくのは嬉しいことだった。

(二)

 「では、今日の講習に入りましょう。
 今日は、三本の〔エアーエレベーター〕という練習です。」
 「また、新語ですね!」
と、夏南が言った。
 私は少し照れ顔になったが、それには答えず、話を続けた。
 「まず、気のボールを作り、丹田に気のボールを押し当てて下さい。」
 私も気のボールを作り、丹田に押し当てた。
 「〔四点フィードバック〕で感じたように気持ちを丹田に向け、現れてくる感覚を味わってみましょう。」
 すると、娃が声を出した。
 「先生、掌の気のボール感覚もあって、丁度、ボールの三分の一か二分の一がお腹の中に染みこんでいるような感じなんだけど…。」
 「私も!」
と、夏南も声を上げた。
 「そうなんです。
 〔四点フィードバック〕の場合だと、皮膚から皮下の感覚が主になるんですが、気のボールを当てると、掌からおなかの中までの感覚が出て、皮膚感覚が薄れ、中と外で一つの気のボール感覚になって来るんですよね。」
と、私は告げた。
 「確かに、皮膚はあるような無いような感じですね。」
と、娃がにこやかに言った。
 「では、前々回の〔四点フィードバック〕と同じ四ヶ所で気のボールを当てて、それぞれの感覚を体感してみましょう。
 次に、上腹部に当てて下さい。」
 私は言い、その後、同じように胸板の下側、上側と気のボールを当て、計四ヶ所での感覚を体感していったのである。


(三)

【はい、次は、呼吸によって気のボールを上下させ、その感覚を味わってみましょう。
 胸の気のボールを息を吐きながら下腹まで降ろし、息を吸いながら胸の上の方まで上げ、これをくり返しましょう。
 息を吸い上げながら気のボールを胸に上げ、息を吐き降ろしながら気のボールを丹田に降ろし、呼吸と気のボールを使って感覚を上げ下げするんです。】
 私の動きの誘導に随って、二人の気のボールの上げ下げが始まった。
 「この練習では、〔体感ワープ〕だけでなく、全体を通しての感覚の動きを体感してみましょう。」
 そして、私は二人の練習をしばらく観てから口を開いた。
 「やがて、感覚は動いていくその場その場の感覚から広がって、体の中と外との感覚で一つの円柱感覚、空気で出来た円柱感覚になり、その円柱の中を温かな気の感覚が上がり下がりしているような感じになってきます。 温かな気のエレベーターが空気の円柱の中を昇降しているようになってくるんですね。」
 「それで〔エアーエレベーター〕なんだ!」
と、娃が叫んだ。
 「まさにそんな感じがします。」
と、夏南も言った。
 そして、
「でも、これだけじゃぁ、エレベーターは一本ですよね?」
と、続け、残りの二本は何処かと訊ねた。
 「その練習が終わったら、感覚を坐骨の間に移し、そこから垂直に襟首の辺りまで吸い上げ、坐骨の間に向かって垂直に吐き降ろし、体の中心での円柱を作っていくんです。
 その後に、今度は尾骨から腰部、背部と吸い上げて、また尾骨に吐き降ろし、体の後ろ側での円柱も作っていくんですね。」
 そう私は答え、三ヶ所での〔エアーエレベーター〕の練習を続けたのである。
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