twitterでフォローさせていただいてる、某PPNさんのイラストを見て、ぽわわ〜んと幸せな気持ちになって書いてみた妄想です。
※あくまでも、妄想文です。暴君本編とは一切関係ありません。
【夢の子供】
うららかな小春日和。
こちらに駆けて来る足音がする。
「ねえねえ、おきて!ごほんよんで!」
子供の声。小さな手が、俺をゆさゆさと揺さぶる。
どうやら、ぽかぽかした日差しにうたた寝してしまったようだ。
・・・子供?
「そういちくん、おはよー」
目を開けると、にこにこ笑う3歳くらいの子供が俺の顔を覗き込んでいた。
「ぼく、おひるねおわったの。だからごほんよんでー」
子供用の布団がリビングに敷かれていて、そこから抜け出してきたようだ。
「ん、どれがいいんだ」
「えっとねえー」
おれの手を引いて、本棚の前に連れていくと、絵本がたくさん並ぶ中から、子供は二冊選び出した。
「なんだ、またこれか?好きだな、お前」
「うんっ!だっておもしろいもん!」
窓辺の日当たりのいい場所へ胡坐をかいて座ると、子供は当然のように足の間に座る。
俺を見上げて、またにっこりと笑う。
寝起きでもこいつはいつも機嫌がいいのだ。
あいつに似たのかな。
・・・あいつ?
この子供は、巴か、かなこ?
いや、違う・・・
「そういちくん、はやくー」
「お、おう。よし、読むぞ」
気に入りの絵本だからか、子供は文章を記憶している。
一緒に声を合わせて読んでいく。
こいつが楽しそうにしていると、こっちもつられて笑顔になる。
本好きなのは俺に似たかな?ふふ。
「ただいまー」
玄関から聞き慣れた声がした。
「あっ、かえってきたー」
ぱっ、と子供は立ち上がり、玄関に走っていく。
「てつひろくんおかえりー」
「ただいま!」
買い物袋をぶら下げた森永が現れる。
「いい子にしてた?」
「うん、おひるねおわって、そういちくんとごほんよんでた」
「そっか」
「きょうのごはん、なに?」
「ハンバーグだよー」
「やったー!」
買い物袋をキッチンに置くと、森永は子供を抱き上げ、リビングにやってきた。
「おかえり」
「ただいま、宗一さん」
子供を抱いたまま、森永は俺に近づいて、頬にちゅっ、とキスをした。
「ば、バカ!何すんだ子供の前で!」
「え、いつもしてるのになんで?変な宗一さん」
「ぼくもちゅーするー」
森永の腕から、俺の腕へやってきた子供は、唇を俺の頬にくっつけるだけの可愛いキスをしてきた。
「ぼくもー」
森永まで子供っぽく、調子に乗って、ぎゅうぎゅう抱きついてくる。
「お前ら、なんだよっ暑苦しい!」
「だってすきだもん!ねーっ」
「ねーっ」
まっすぐに好意をぶつけてくるところ、よく似てる。
顔は俺に似たのに、性格っていうか、行動がほんと、そっくりだなこいつら。
血は争えん……
「おかあさんだいすき!」
はっ、と宗一は目を覚ました。
温かい日差し、風に揺れるカーテン。
日曜日の昼下がり。
「……あ、……夢か……」
そりゃそうだ。俺は男だ。子供なんか産めるわけがない。
部屋の中はしんとしている。見回しても、子供用の布団も、絵本が詰まった本棚もない。
近くの公園で走り回る子供達の声が聞こえてくるだけだ。
「なんで、あんな夢……」
夢なんて大概理不尽だし、脈絡もない。そこに意味などないと分かっている。
それなのに、腕の中に、さっきまでの温もりと重さが残っている気がして、宗一は少し寂しくなった。
ふわふわして落ち着かない。
「ただいまー」
買い物に出かけていた森永が帰ってきた。
「お、おかえり」
「先輩、今日の夕飯ハンバーグでいいですか?ひき肉が安かったから、いっぱい買っちゃいました」
「えっ・・・」
夢の中との、不思議な符合に驚いて、宗一は森永の顔を見つめた。
「ん?ハンバーグ、いやですか?ならロールキャベツとか」
「い、いや、ハンバーグがいい」
「良かった。頑張りますね!」
森永がにっこりと笑う。
「……森永。ちょっと、こっちに来い」
「なんですか?」
近づいてきた森永の、袖をつかむと、やっと現実感が戻ってきた。
「せんぱい?」
「なんでもない」
「……せ……」
ちょっとだけ。ちょっとだけだ。
そう、心の中で繰り返して、宗一は森永の肩にそっと額をくっつけた。
「……どうしました?」
宗一は何も答えない。単なる夢だ。言っても仕方のないことだ。
森永に寂しそうな顔はさせたくない。
それ以上は聞かずに、森永は宗一を抱きしめてくれた。
息を吐き出して、体を預けて目を閉じる。
瞼の裏に、子供の姿が浮かぶ。
なあ、お前もハンバーグがいいよな。
もう、顔すら朧げな、夢の子供が笑った気がした。
end.
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あれ。なんか切ない方向に。おかしいな。
イラストはとってもラブラブだったのに!
あと兄さんは多分そんな甘えたじゃないですから!寂しがりやさんだけど!
寄り道いらっしゃいませ♪w
そうです!デキ婚イラストを見て萌え萌えして書きました。勝手にちび兄さんを二人の子供にしちゃいました。
夢見がちな乙女兄さんです。本当にすみません。
あ、でもこのお話の森永くんは役得かもですね。兄さんが自分から……なんてレアシチュですものね!
ありがとうございました〜